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124 常識って…

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精霊樹の分体だという木は、きらきらと上から差し込む光を受け、水の中だというのに大きく枝を広げ、葉を茂らせていた。その葉の中を住処にしているのか、魚や妖精たちが行き交う実に幻想的な姿だった。

「にぇ~にぇ~ぎんしゃま~」
『なんだ?』
呆然と水の中の巨木を眺めているとサーヤが質問してきた。

「せいれいじゅっちぇ、いっぱいありゅにょ?」
『さぁ、私は聞いたことがないな』
「しょっか~」
そもそも精霊樹が複数あるなど考えたこともなかった。

『ねぇねぇ~お父さん』
『知らん』
『まだ何も聞いてないのにぃ』
『すまん。つい』
あまりに驚きすぎて思考が固まってしまった。
『も~精霊樹の精様はこれ知ってるかな?』
『わからんな』
あの精霊樹の精様は計り知れないところがあるからな…

「あちょで  ききゅ」
『それしかないね~』
『そうだな…』

「『『……』』」
『そう言えばあったわねぇ~とか』
「わしゅりぇちぇちゃ~ちょか」
『そう言えばに、忘れてた…どっちもありそうだな』
精霊樹の精様だしな。

『なんだ?精霊樹の精様の話かのぉ?』
「あい」
『そうだよ~』

こうなったら亀じぃに聞くしかないな。
『亀じぃ、精霊樹は一箇所に二本もあるものなのだろうか?』
『んん?そんなこと聞いたこともないのぉ』
やはり、そうだよな。

『そうなの~?でも今は二本、上と下にあるよね~?』
『それは、精霊樹が今、この森にあるってことかのぉ?』
ハクの言葉にさすがの亀じぃも驚いているな。

「あい。しょうにゃにょ」
『なんかね~?エルフと人間が嫌でね、すごい前に引っ越してきてたんだって~』

『は?』
『『『『ええええ?』』』』
これには亀じぃだけじゃなく、妖精たちも驚いている。

『そうなるよな。実はな、何百年も前から、この森にいらっしゃっていたらしいんだ。知らぬ間に…』
『はぁ?』
『『『『へ?』』』』
驚く声がどんどんおかしくなるな。さすがに気の毒になってくるぞ…

『それでね~、あれ?昨日?もっと前な気がするね~?まぁ、いっかぁ。サーヤに会いたいからって、はちさんとクモさんと一緒に僕たちのお家に引っ越してきたんだよ~』
「ずし~ん  ずし~ん♪ぶ~んぶん♪」
『「ね~♪」』
ハクとサーヤが、当然のように話しているが…

『ずし~んずし~ん?』
『ぶ~んぶん?』
『なぁに?』
『どういうこと~?』
これには奇声しかあげてなかった妖精たちも聞いてきた。

『…ギンよ。解説してくれんかのぉ』
『気持ちは分かるが、そのままだ。引っ越してらしたんだよ。精霊樹を歩かせて。樹に住まわせているジャイアントビーの女王たちごとな』
歌いながら精霊樹やハチたちを引き連れてきた息子たちの姿は決して忘れられぬ…

『はぁ?』
『『『『えぇぇぇ~!!』』』』
今日一番の声が返ってきた。

『そうだよな。普通はそういう反応だよな。嬉しいよ。仲間が出来て…』
つい、しみじみしてしまっても悪くないはずだ。ハクは…
『何かおかしいのかな?』って言う顔で首をかしげてるな…

「さーにゃは、みんにゃいっちょ、うりぇちい♪」
『そうだよね~♪みんな一緒で嬉しいよね~♪』
『「ね~♪」』
ハクとサーヤはみんな一緒で嬉しいと喜んでいるが

『ハク、サーヤ、そうなんだけどな、そうじゃないんだ…』

『ギンよ。苦労しているようだのぉ』
『亀じぃ…常識ってなんだっただろうかと思うんだ…』
少なくとも木が自分で歩くことではないはずだ…

『そうさのぉ~普通、精霊樹が歩くとは思わんのぉ~』
そうだよな…

『亀じぃ…ハクとサーヤ達に普通を理解することは出来るだろうか…』
『ギンよ、(少し)大人になったのぉ(まだ序の口だろうがのぉ)』
 
『無理じゃないかな?』
『無理だと思う~』
『無理だよね~』
『うん。きっと無理~』
妖精達にまで無理だと言われてしまった。

『はぁ~ぁ』
『まぁ、頑張るんだのぉ』
まるで他人事のようだな…

「うにゅ?」
『どうしたのかな?』
「へんにゃにょ~」
『変だね~』
『「ね~」』

『『はぁ~ぁ』』
ぽんぽん
『『『『ギン様、頑張って~』』』』 

『ありがとう』
ああ、ハクたちのこの先が心配だ
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