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43 知られざる過去

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魔力は魔素の集まり。魔神様が見えるようにしてくれたこのキラキラが魔素。色んな色があるわね。

『ねえ?色の違いは何なのかしら?』

『属性の違いだと思います』
エルフのお父さんが私の疑問に答えてくれた。 

『属性?』

『はい。魔法には属性というものがあります。主だったものだと、水、火、風、地などですね』

『なるほど』

『この世界の者は皆、多かれ少なかれ魔力を持っています。そして、生まれながらに得意な属性がある程度決まっています』

『じゃあ、その持って生まれた属性しか使えないの?』

『いいえ。そんなことはありません。大気の中にはご覧の通り色とりどりの魔素があります。これを上手に取り込める者は色々な魔法を使えます。または・・・』

『または・・・?』
何かしら?

『私たちのように妖精や精霊たちと意思疎通ができるものは、信頼関係の元、仲良くなった妖精や精霊たちの力を借りることが出来ます。それゆえ私達は隠れ里でひっそりと暮らしていたのです』

『なるほど』
ん?それは、どういう?

〖エルフはね、昔はみんな妖精や精霊たちと仲が良かったのよ。それがいつしか、一部のものが驕りだしてね。ほかの種族を見下し始めたのよ〗

『はい?』
何それ?魔神様、すごいお顔になってますよ?あら、ほかの神様たちも

『そうなのです。ですが、妖精や精霊は清い心を好みます。邪な心を嫌うのです。その内、大半のエルフが妖精や精霊を見ることも、声を聞くことも出来なくなりました』

『ええ・・・』
バカなの?

〖その通り。バカだよね~。そうなるとどうなると思う?レイさん〗

『え?どうって・・・』
主神様の悲しそうな顔・・・。あ、先日の神罰の元が

『ご想像通りです。妖精や精霊を魔法で無理に従わせたり、私たちのように妖精たちと仲のいい同族を奴隷にし、自分たちのいいように使いだしたのです。中でも酷い扱いをされたのが、我々を守ってくれていた精霊樹様とその精霊様でした。精霊樹様は動けませんから』

『ひどい・・・』
なんてことを

『私たちの先祖は精霊樹様に伝えたそうです『自分たちが精霊様たちと意思疎通が出来ることを知られたら、更に精霊様たちを傷つけることになる。だから、自分たちはエルフの国を抜け出して、これからひっそりと暮らすことにする』と』

『そんなことが・・・』
なんて悲しい

『お優しくて強い精霊樹様はその時既に酷い状態だったそうです。昼夜問わず体を襲われ、枝を折られ、葉を毟られ、皮を剥がれ、眠ることも許されずボロボロだったとか・・・』

〖あの馬鹿、なんでそこで私たちに助けを求めないのよ〗ギリっ
〖お母様・・・〗
いつの間にか神様たちが涙を堪えて悔しがっていた

〖僕たちもね、その事を知ったのがつい最近なんだよ〗
『え?』
つい最近?
〖お父様、レイ、今はお話を聞きましょう〗
〖そうだね。エルフさん。精霊樹は僕たちとも友達なんだ。でも、その辺のことを彼女たちはあまり教えてくれなくてね。知ってることを教えてもらえるかな?〗
主神様が泣きそうな顔でお願いすると

『申し訳ありません。私も詳しくは知らないのですが・・・。精霊樹様はそんなボロボロの状態で、その時に何とか七本の枝を私たちの先祖に渡してくれたのだそうです。ご自分の魔力を込めて、これで杖を作り、気配を消してエルフの里を出るようにと・・・。そのお陰で私たちの先祖は何とかエルフの里を出ることが出来、杖の数だけ別れて、それぞれ隠れ里を作り、ひっそりと暮らしてきたのです』

『・・・』
なんてこと・・・

〖あの馬鹿は、その後にブチ切れて逃げ出したのね〗ぐすっ
〖きっと、あなた方の先祖が逃げきれたのを確認してから行動に出たのですね〗ずずっ

『『『『え?』』』』
どうやら神様はその後のことを知っているみたいね

〖精霊樹の精がね、精霊樹をその地から引っこ抜いてね、夜の闇に紛れて海を渡って違う大陸に逃げたんだよ。一度でも地に降りれば形跡が残ってしまうからって、何日も休むことなく飛び続けたそうだよ。それが今、聖域のある大陸の森の中だったんだよ〗
〖その時にエルフの王の城を潰して来たらしいわ。先日破壊した城はその後作られた城でしょうね〗
〖私たちがなぜ最近になってそれを知ったかと言うとね?愛し子がその地に降り立ったことで聖域が出来て、その影響で精霊樹が目覚めたからなの〗

『・・・っ、では、では、あれからずっと精霊樹様は』ぶるぶる

〖長命なエルフが代替わりするほど長い間、眠りについていたことになるわね・・・〗

『そんな・・・』
震える手でエルフのお父さんが取り出したのは・・・

〖・・・それが、その時の杖かい?〗

『はい。代々隠れ里の長となった者が引き継いでまいりました』ううっ

〖見せてもらっていいかな?〗
『はい。どうぞ』
主神様が杖を受け取ると・・・

『これ・・・』
『精霊樹の記憶じゃの』
『ひでぇな・・・』
空中に映し出されたのは、その当時の記憶

〖あの馬鹿!大バカに格上げよ!話に聞いてたよりもっと酷いじゃない!〗バンッ
〖お母様そんな言い方・・・でも、同感ですわ〗
テーブルを思わず叩きつける魔神様を女神様が止めているが、その目からは涙が溢れている。
映し出された映像は、魔法で攻撃され倒れるエルフや妖精、精霊たち。それを庇ってやはり攻撃を受ける精霊樹の精様。それも四方八方から・・・

『酷すぎる・・・』
『神罰は遅すぎるくらいだったかもしれんのぉ』
『だな・・・』
本当にその通りもしれない。この後もずっと似非エルフはこんなことを続けてきたのだから

〖君たちの先祖が無事に逃げることが出来てよかったよ〗
〖そうだな。お前さんたちを助けることも出来てよかった〗
〖ここでその当時のことをほんの少しだが知ることが出来たのもな〗
主神様、鍛冶神様、武神様が泣き崩れているエルフさん達に話しかける

〖そうね。今、聖域には元気になった精霊樹と精霊樹の精がいるわ。どうか精霊樹の傍で愛し子たちを守ってくれないかしら?精霊樹たちと共に〗
〖そうですね。その為に私たちも喜んで力を貸しますよ〗

『『『『は、はい』』』』
『『私たち夫婦、喜んで聖域に行かせていただきます』』
『私たちも!お助けできるように』
『頑張って強くなります!』

大気中にキラキラ輝く魔素。思わぬところから過去に触れて、より一層、絆と決意が強くなったようだ。

☆。.:*・゜☆。.:*・゜
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