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11 私のかわいい孫
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本日1話目です。よろしくお願いします。
☆。.:*・゜☆。.:*・゜
ある日、突然息子が死んだと知らされた。
交通事故だった。
道に飛び出した見知らぬ子を助けたらしい。
優しく、正義感の強いあの子らしいとは思ったが、褒める気にはならなかった。だって、結婚し、奥さんのお腹には子供が宿ったばかりだったのに。二人を残して逝くなんて⋯。親の私より先に逝くなんて⋯。
彼女には何かあったら私に何でも言って欲しいと、孫が出来たら教えて欲しいと伝えた。私のところで暮らしてもいいのよとも伝えたが、断られた。
それ以上何も言えず、その場は別れたのだが、孫が生まれたはずなのに、何の便りもない。
おかしいと思い、教えてもらっていた住所に行ってみたが、そこはもぬけの殻だった。
私は必死に探した。二年かかった。
探し当てた時、二歳になっているはずの孫は一歳にもなっていないように見えた。小さすぎる体は傷だらけで、ひと目で虐待されていると分かった。
付き添ってくれた警察官と、駆けつけてくれた児童相談所の職員、そして運び込まれた病院の方々の協力を得て、証拠写真をとり、診断書を作ってもらい、彼女に孫を奪われないように証拠を作った。
残念ながら、逮捕しようと家の前で待機していた警官に気づき、彼女は男と共に逃げたという。警察に謝られた。
私はお医者さんから話を聞いた。明らかに食事も与えられず、暴力もふるわれている。発達に障害がでているし、恐らくこの先、障害が残るだろう。このまま引き取って私が育てるのは大変だ。然るべき施設で預かるという手もあると言われた。
だけど、そんなことはさせない。
この子は私が育てる。
障害が残ると言うなら、私がこの子がひとりでも生きていけるように精一杯のことをしよう。
父親が叶わなかった分も私が愛そう。
そう誓って、一緒に暮らし始めた。
赤ん坊なのに、虐待されたせいで、泣きもしない。声も出さない。表情も能面のように動かない。
この子の目は見えているはずなのに、何も映していない。
隣のお家に住む源さんに、これから一緒に住むからよろしくね。と伝えた時も同じ顔だった。源さんも必死に隠していたが、動揺が顔に出ていた。その位、異様だったのだ。
それでも私は諦めなかった。源さんも諦めなかった。
長い虐待で食べることが苦手になってしまった孫のために、少しでもいい物をと、無農薬の野菜を作り始めた。源さんも自分の飼っている牛から絞ったお乳を毎日のように届けてくれた。
毎日毎日、笑顔で話しかけた。
源さんも色々調べてくれては色々試してくれた。アニマルセラピーがいいらしいと沢山の動物を飼い始めてくれたり。
その甲斐があってか、だんだん笑うようになった。
いつしか、能面の様だった表情はなくなり、笑顔が絶えない明るい子になってくれた。
ただ、医師の予想は当たってしまった。やはり脳に障害が残ったのだ。
そのせいで上手く話すことが出来ない。体の方もやはり食が細く、成長が遅い。運動も⋯まずは真っ直ぐ歩く練習からしたほどだ。
走れば足をからませて転んでしまう。だが、気だけはお転婆な孫は、それを忘れて直ぐに走り出すので、周りはいつもハラハラしている。
「おばあちゃん、だだちゃまみぇ、ちょーちょ、きちゃ!」にぱっ
『そうねぇ。だだちゃ豆が美味しそうだから、蝶々も来てくれたのかもね』
「おばあちゃん、ちょーちょ、おいちいにぇ!」
『あらあらまあまあ、それじゃ蝶々が美味しいものに聞こえちゃうわね』
「ありゃ?えへ~?」
『笑って誤魔化したわね』
そんな感じで、楽しく、周りの協力を得ながら、楽しく暮らしていた。
あの時までは⋯
☆。.:*・゜☆。.:*・゜
お読みいただきありがとうございます。お気に入り登録、エールなどありがとうございます。
『転生初日に~』『小さな小さな花うさぎ~』もよろしくお願いします。
☆。.:*・゜☆。.:*・゜
ある日、突然息子が死んだと知らされた。
交通事故だった。
道に飛び出した見知らぬ子を助けたらしい。
優しく、正義感の強いあの子らしいとは思ったが、褒める気にはならなかった。だって、結婚し、奥さんのお腹には子供が宿ったばかりだったのに。二人を残して逝くなんて⋯。親の私より先に逝くなんて⋯。
彼女には何かあったら私に何でも言って欲しいと、孫が出来たら教えて欲しいと伝えた。私のところで暮らしてもいいのよとも伝えたが、断られた。
それ以上何も言えず、その場は別れたのだが、孫が生まれたはずなのに、何の便りもない。
おかしいと思い、教えてもらっていた住所に行ってみたが、そこはもぬけの殻だった。
私は必死に探した。二年かかった。
探し当てた時、二歳になっているはずの孫は一歳にもなっていないように見えた。小さすぎる体は傷だらけで、ひと目で虐待されていると分かった。
付き添ってくれた警察官と、駆けつけてくれた児童相談所の職員、そして運び込まれた病院の方々の協力を得て、証拠写真をとり、診断書を作ってもらい、彼女に孫を奪われないように証拠を作った。
残念ながら、逮捕しようと家の前で待機していた警官に気づき、彼女は男と共に逃げたという。警察に謝られた。
私はお医者さんから話を聞いた。明らかに食事も与えられず、暴力もふるわれている。発達に障害がでているし、恐らくこの先、障害が残るだろう。このまま引き取って私が育てるのは大変だ。然るべき施設で預かるという手もあると言われた。
だけど、そんなことはさせない。
この子は私が育てる。
障害が残ると言うなら、私がこの子がひとりでも生きていけるように精一杯のことをしよう。
父親が叶わなかった分も私が愛そう。
そう誓って、一緒に暮らし始めた。
赤ん坊なのに、虐待されたせいで、泣きもしない。声も出さない。表情も能面のように動かない。
この子の目は見えているはずなのに、何も映していない。
隣のお家に住む源さんに、これから一緒に住むからよろしくね。と伝えた時も同じ顔だった。源さんも必死に隠していたが、動揺が顔に出ていた。その位、異様だったのだ。
それでも私は諦めなかった。源さんも諦めなかった。
長い虐待で食べることが苦手になってしまった孫のために、少しでもいい物をと、無農薬の野菜を作り始めた。源さんも自分の飼っている牛から絞ったお乳を毎日のように届けてくれた。
毎日毎日、笑顔で話しかけた。
源さんも色々調べてくれては色々試してくれた。アニマルセラピーがいいらしいと沢山の動物を飼い始めてくれたり。
その甲斐があってか、だんだん笑うようになった。
いつしか、能面の様だった表情はなくなり、笑顔が絶えない明るい子になってくれた。
ただ、医師の予想は当たってしまった。やはり脳に障害が残ったのだ。
そのせいで上手く話すことが出来ない。体の方もやはり食が細く、成長が遅い。運動も⋯まずは真っ直ぐ歩く練習からしたほどだ。
走れば足をからませて転んでしまう。だが、気だけはお転婆な孫は、それを忘れて直ぐに走り出すので、周りはいつもハラハラしている。
「おばあちゃん、だだちゃまみぇ、ちょーちょ、きちゃ!」にぱっ
『そうねぇ。だだちゃ豆が美味しそうだから、蝶々も来てくれたのかもね』
「おばあちゃん、ちょーちょ、おいちいにぇ!」
『あらあらまあまあ、それじゃ蝶々が美味しいものに聞こえちゃうわね』
「ありゃ?えへ~?」
『笑って誤魔化したわね』
そんな感じで、楽しく、周りの協力を得ながら、楽しく暮らしていた。
あの時までは⋯
☆。.:*・゜☆。.:*・゜
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