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第一章 いざ、竜狩りへ
023 ダメ押し
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しめたといわんばかりにザックスは不敵な笑みをこぼした。
後ろでそわそわしていたマーブルは、ほっと胸をなでおろす。
対するネルビスは「悪知恵のはたらく奴だ」と悪態を吐いた。
「ただし、自分の身は自分で守れ。俺たちがしてやれることは、貴様が沼地へ行くことまでだ。それと、マーブルの依頼として俺たちは狩りへ赴く。約束の報酬もいただく。マーブルにとっては、重複依頼という形になるが、それで構わないか?」
ネルビスは、矛先をマーブルに変え、同意を求めた。ややこしい話にはなったが、依頼の体は保っているものの、一番の損失を被るマーブルがここで首を横に振れば、話は無かったことになる。
「よっぽど、ザックスと同行するのが嫌なのですのね、ネルビスさん。単純に、あなたが共闘してくれればいいだけではありませんこと? 私は、あなたにザックスのお供として同行していただき、その代わりに報酬をあなたの望む形で分配することを提案しているだけですわ」
マーブルもこれ見よがしに反撃する。あくまでも、依頼はザックスへ。ネルビスはその手伝いであり、依頼の報酬は譲っても手柄はザックスにあげたい。その意図は貫くつもりだった。
「む、ぅ……」
ネルビスは図星を突かれ、言葉に窮した。
「もう、いいんじゃないですかね、旦那」
「俺たちは別に文句ないっスよ。この坊主の護衛だっていうんなら、それはそれで対応できますんで」
「報酬も弾んでもらってるし、これ以上断る理由なんか無いじゃんよ」
ついには団員達からも、声が上がった。こんな雰囲気になってしまっては、ネルビスもいよいよ断るわけにはいかない。
「……分かった。その内容で受けてやる。ザックス、せいぜいマーブルに感謝でもするんだな」
ネルビスは苦虫をかみつぶしたような顔そっぽを向き、ザックスへと告げた。
「よっしゃ、交渉成立だな! 助かったぜ、マーブル」
「どういたしまして、ですわ」
謝辞を向けるザックスに、マーブルは自分も嬉しそうな笑みで返した。小柄な体躯が、小さく跳ねる。と、マーブルはザックスに小さく耳打ちした。
「実は、ザックスが倒れたあと、なぜビゴットさんがワイバーン狩りをあなたにお願いしたのか考えていたのですわ。最初は、単に低ランクの竜種だからかと思っていたのですけれど……よく考えたら、ザックスの武器では明らかに不向きな相手ですのに、おかしいなと思ったのですのよ。でも、ビゴットさんは『如何なる手段を使ってでも依頼を達成する』とおっしゃっていましたのよね」
だから、と一度マーブルは言葉を切った。
「きっと、ビゴットさんは誰かと協力して戦う事をザックスに教えたかったのですわ」
「ん~、どうだろうな……結果論な気がするぞ、それ」
「そうに違いありませんわ。だって、人類の歴史で最も竜を狩ったお方ですもの。それくらいの考えがあったのですわ」
「う~ん、親父がなぁ……」
いやにビゴットを持ち上げているマーブルだが、ザックスはあまり腑に落ちていない様子である。
「何をごちゃごちゃやっている」
ネルビスが腕を組み、小刻みに指打ちしていた。
後ろでそわそわしていたマーブルは、ほっと胸をなでおろす。
対するネルビスは「悪知恵のはたらく奴だ」と悪態を吐いた。
「ただし、自分の身は自分で守れ。俺たちがしてやれることは、貴様が沼地へ行くことまでだ。それと、マーブルの依頼として俺たちは狩りへ赴く。約束の報酬もいただく。マーブルにとっては、重複依頼という形になるが、それで構わないか?」
ネルビスは、矛先をマーブルに変え、同意を求めた。ややこしい話にはなったが、依頼の体は保っているものの、一番の損失を被るマーブルがここで首を横に振れば、話は無かったことになる。
「よっぽど、ザックスと同行するのが嫌なのですのね、ネルビスさん。単純に、あなたが共闘してくれればいいだけではありませんこと? 私は、あなたにザックスのお供として同行していただき、その代わりに報酬をあなたの望む形で分配することを提案しているだけですわ」
マーブルもこれ見よがしに反撃する。あくまでも、依頼はザックスへ。ネルビスはその手伝いであり、依頼の報酬は譲っても手柄はザックスにあげたい。その意図は貫くつもりだった。
「む、ぅ……」
ネルビスは図星を突かれ、言葉に窮した。
「もう、いいんじゃないですかね、旦那」
「俺たちは別に文句ないっスよ。この坊主の護衛だっていうんなら、それはそれで対応できますんで」
「報酬も弾んでもらってるし、これ以上断る理由なんか無いじゃんよ」
ついには団員達からも、声が上がった。こんな雰囲気になってしまっては、ネルビスもいよいよ断るわけにはいかない。
「……分かった。その内容で受けてやる。ザックス、せいぜいマーブルに感謝でもするんだな」
ネルビスは苦虫をかみつぶしたような顔そっぽを向き、ザックスへと告げた。
「よっしゃ、交渉成立だな! 助かったぜ、マーブル」
「どういたしまして、ですわ」
謝辞を向けるザックスに、マーブルは自分も嬉しそうな笑みで返した。小柄な体躯が、小さく跳ねる。と、マーブルはザックスに小さく耳打ちした。
「実は、ザックスが倒れたあと、なぜビゴットさんがワイバーン狩りをあなたにお願いしたのか考えていたのですわ。最初は、単に低ランクの竜種だからかと思っていたのですけれど……よく考えたら、ザックスの武器では明らかに不向きな相手ですのに、おかしいなと思ったのですのよ。でも、ビゴットさんは『如何なる手段を使ってでも依頼を達成する』とおっしゃっていましたのよね」
だから、と一度マーブルは言葉を切った。
「きっと、ビゴットさんは誰かと協力して戦う事をザックスに教えたかったのですわ」
「ん~、どうだろうな……結果論な気がするぞ、それ」
「そうに違いありませんわ。だって、人類の歴史で最も竜を狩ったお方ですもの。それくらいの考えがあったのですわ」
「う~ん、親父がなぁ……」
いやにビゴットを持ち上げているマーブルだが、ザックスはあまり腑に落ちていない様子である。
「何をごちゃごちゃやっている」
ネルビスが腕を組み、小刻みに指打ちしていた。
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