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物語
七話
しおりを挟む俺が行っていた定時制高校は、バイトをすると給食を貰える。
中学の頃から、給食ばかりを目当てにしていた俺は、釣られるように、バイトに務める。
午前、九時から、午後、三時まで。
自分に合う仕事先を、とにかく探しまくっていた。
これは悪い話ではあるが、人柄が合わずに、一日で飛んでしまったところもあった。
何も言われずに一日分の給料だけ頂いたが、それも、学生の時分だから、許されたのだろうけれど。
「面接をお願いするなら、髪を染め直してから出直してください」
有名なドーナツ店に、知り合いの伝で面接を希望した時には、そう言われて、門前払いを受けた。
髪を染めるならば、それ相応の仕事先があるのだけれど、俺は、手先が不器用で、おまけに服のセンスなども持ち合わせておらず、正しくあれるべきところでは、働かなかった。
「・・・、これ、どうやるんですか?」
そんな俺が選んで、何とか働かせてくれたのは、近所の、小さなたこ焼き屋さんだった。
「これを二つ使って、ぷくってなってきたら、丸くしていくだけだよ」
おばちゃんが、丁寧に教えてくれた。
始めこそ、不恰好なたこ焼きしか焼けなかったけれど、その指導のおかげで、お客様に文句は言われないだろうたこ焼きの形には、焼けるようになっていった。
と言うのも、後日談のようなもので。
「違う違う、それじゃタコが小さくなっちゃう」
「・・・、」
「こうやって、こう」
「・・・」
「違う違う、違うよ」
「・・・、ッはぁ!?」
「・・・・・・、はぁ?何だよ、やんのか?」
「ちまちまうっさいんじゃおめぇは。」
「うるさい?お前が出来てないからだろ?」
「・・・・・・~ッッ、」
と、俺がおばちゃんの指導に逆らい、名札を投げてそのまま帰宅した事もあった。
イライライライラ、今考えると何でイライラしていたのか不明だけれど、どうやら、その当時は、そのあまりのしつこさにキレ散らかしたんだろうな、と。折角教えてくれているのに、何やってんだ。馬鹿か。と思うが。
「・・・。」
それでも、不機嫌のまま学校に向かえば、今日も、バイトのおかげで給食が食べれた。
「・・・」
パン一枚と、牛乳一パック。
それだけ言うと、なんて質素な。などと言われそうではあるが、そのパン自体、意外と種類が豊富で、俺が一番好きだったのは、メロンパンだった。それが、中々美味であったのだ。
「・・・はぁ、」
昼間に起こったそんなストレスなんか、忘れ去ってしまうぐらい。
俺は、そのまま教室に戻って、また、真面目に授業を受けたのだった。
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