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物語
三話
しおりを挟む自傷癖は、中学一年から始まった。
それは、まだ止んでおらず、中学二年になった頃には、サボり癖にも拍車が掛かって、もはや、給食を食べに行く為だけに、学校に行っていた。
授業は、一切受けず、中庭で時間を潰し、放課後、部活動に参加し、蓮と一緒に帰って、その家に上がり込む。
全く、学生らしくない、腐った生活を送っていた。
それでも、何とか、学校に出向けたのは、きっと、蓮と話が出来ていたからだと思う。
「修学旅行の、ホテルの部屋を決めたいと思います。なるべく二人組みでお願いします」
イベント事には、一応、参加していた。
体育祭は、一人、指定の体操服ではないジャージを着用し、誰彼が楽しんでいるところを遠目に見て、携帯を弄くっているだけだったけれど。
「蓮、」
修学旅行。
なんて、楽しそうだったから、俺は、また、蓮に縋って、
「ん?」
「ホテル、一緒の部屋でも良い?」
「あー・・・、えー、良いのかな。三人でも」
「・・・、」
蓮が向けた視線の先に居る、蓮の親友の小海の顔を見た。
「小海、良い?」
蓮は、少し、面倒臭そうに、そう問い掛ける。
「ん、良いけど?」
小海は、目を丸くさせて、頷いていた。
この頃になっても、俺は、小海の魅力には、気付けていないまま。
ただ、蓮の親友だから、と言う理由で、悪さは絶対にしなかった。
「・・・、ありがと。小海。ごめんね?」
「良いって。しゃーねぇよな」
「うん、ありがと」
そんな最低な理由だけれど、小海は、俺に、良くしてくれる。
「何らしくない顔してんの?」
俺の両頬に両手を宛がい、覗き込むようにこちらに顔を近づけて、小動物でも扱っているような、目で、そう言う。
「・・・、え?」
自然と俺の両肩が、キュと縮こまり、胸の奥には、緊張感が走る。
「いっつも楽しそうにしてんのに」
そう言って、容易く両手を離し、あちら側へとこちらに背を向けた。
「・・・、」
小海とは、案外と、音楽の好みを共有したりと、接点は、確かにあった。
しかし、小海は、そのように、一風変わっている人で、周りとの協調性はあるものの、掴みどころが無い。
気が付いたら、いつも、蓮の傍に居るような、いや、居ないような、よく分からないけど、たぶん、良い奴だった。
「・・・」
俺の声は、一年の頃と比べて、段々、小さくなっていった。
照れくさく、顔を背けて、また、中庭に逃げるように足を進めていく。
中学二年の頃の記憶は、ほぼ無い。
けれど、何やかんやで、三年のその修学旅行も、楽しむ事が出来た。
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