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物語

一話

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安全ピンを凶器に見立てる。
周りに害が無いなら良いかな、と。

「では、教科書、15ページを開いてください―・・・」

俺自身、そんな、人の為を思うような人間じゃないけれど。
何かに邪魔されるように、いつも、自分自身を傷付けるばかりだ。

「・・・」

腕は、傷だらけで、硬いところには、ピンまでくっ付いている。
ヘンテコリンなのは分かっているのだけれど、それで、どうにか正気を保っていると言ったところだろう。

「植物には、雄蕊と雌蕊があり、この花の場合、ミツバチのおかげで、増殖出来ています」

教師が並べる言葉は、ほとんど聞きそびれている。
ノートを取っていたのも、初めの数ヶ月のみ。
まともになろうと思ったって、そんな短期間しか、もたない。

「先生!なら、ミツバチが居なかったら、その花は、絶滅してしまうのでしょうか?」

同じクラスの誰かが、手を上げて、そう問うた。
俺は、教室外に目を向けて、授業の終わりを待っているだけ。

「そうですね。ミツバチが先に絶滅したら、そうなるかもしれませんね」

あと数分すれば、給食の時間だ。
俺は、それだけが楽しみで、学校に来ているようなもので、授業に楽しみを見出した事は、一切無い。

「人と人は、助け合って生きています。しかし、人は、人だけでは生きていけません」

誰が何と言おうと、俺は、出来る事のみに集中していた。
授業を受けたって、よく分からないのだ。
人の話を聞くと言う脳が無いのだと思う。

「地球上にあるモノ全ては、必然的に何かの為になっていて、迷惑だなんだと騒いだって、それは、脅かされているだけなのです」

つまんない。
今日も、午後からは、保健室で、プリントでもしていようかな、なんて。
不真面目なのだけれど、自分でする分には、頑張れる、まさに、ヘンテコリン。

「要らないものは、無いのですが、絶滅してしまった動物は、何故、地球上から排除されてしまったのでしょうか?」

教師は、何の悪気無く、そう伝える。
俺は、右から左へと聞き流していたけれど、

「きっと、脅威にやられて、他の生命に、迷惑を掛けすぎてしまったのかもしれませんね」

案外、俺の事を言っていたのかもしれないって、後になって、思った。




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