いけないですか

雪乃都鳥

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第1章

2,「屋上で」

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 屋上。雲がない空に、ひこうき雲が高く横切っていく。俺は寝っ転がって、足をばたつかせて叫んでいた。

「なんなんだよ!あの男!」

 なっ! 西村。と、隣りに返答を求める。俺を無視してこんにゃくゼリーを摂取していた。

 西村は眼鏡の奥から視線を送ると、深くため息をつく。

「知らないし」

 ことさら冷たい仕打ち。

「そんなこというなってば!だいたいさ、なんであの先輩は俺のこと見ないの ?! え ?  俺有名だよね ?  」
「だから、知らないって。まあ、少し変わった先輩なんじゃないの? 」

 その言葉に、俺は深く頷く。

「なんでいつもあの先輩、一人でいるんだろう」

 西村に聞いてみると、その手にはもうこんにゃくゼリーは無かった。

「一人が好きなんじゃない?」

 俺は腕を組んで唸る。そもそも先輩のこと、全く知らなかった。

 俺は自問自答した。

「あの子と自然に話せるのには、何をしたらいい?」

 とにかく、俺はあの子と話してみたい。必死に悩んでいると、横からツッコミが入る。

「そこ?」
「え ? 他に何かあるの ?」

 じっと見つめると、答えることなく西村はまた本に手を伸ばした。彼の有名な夏目漱石の本。

「いや、教えてくれよ」

 そう言っても、西村は無視して本のページをめくる。

 どうやら答えは自分で決めろということらしい。仕方ないので腕を組み考える。

 さっきより穏やかな声で西村が言った。

「気持ち悪い。成瀬なるせらしくない」
「き、きもい?!」
「うん。きもい」

 ひでーな、おいおい。と、俺は起き上がって胡座をかいて尋ねた。

「じゃあ、俺らしいってなんだよ」

 睨むように言うと、西村は淡々と言葉を並べていく。

「みんなの人気をとって、常に安全地帯を乗っ取り、女を上手く扱う。腹黒」

 真っ直ぐ伸びる西村の視線は、何もかもを読み通しとでも言うようだった。

「そうか、なに難しいこと考えてたんだ俺は」

 笑った。そうか、いつもの感じで落とせばいいんだ。簡単じゃないか。

「サンキュー、西村玲也れいや

 俺は立ち上がり、カバンを拾った。

「何をしようとしてる ? 」
「今日から、俺はあの子を落とす準備にかかるからさ」


 チャイムが鳴り、俺は校舎に戻った。
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