30 / 44
第一章 相田一郎
合理的な手段
しおりを挟む
この巨大隔離壁、廃人ウイルス、そしてミミズの木……これらはほぼ同時期に発生した。
そしてそのどれもが人類の判断から見て超自然的なものだ。
だが、もし高度なテクノロジーを有したエイリアンが何かの目的によってそれらを意図的に仕掛けたというのならば、そこには一貫した整合性が存在する。
侵略だ。
各地へとばら撒いたウイルスにより自らが直接手を下す事なく有無も言わず人類をあっという間に無力化させ、万が一に俺のような耐性を持った者が大勢集まらないようにエリア毎に壁で分けて隔離する。
そして後はじっくりと邪魔をされずに自分達の惑星の生物を植え付ていく……テラフォーミングだ。
それならなぜ人々はさっさと殺されないのだろうか?
きっとそれは後で集めてまとめて始末するか、何らかの方法で労働力や知識を含めた資源として再利用するからなのだろう。
利用できるものは残しておくというわけか。
体が震えてくる……
なんて恐ろしいまでに冷徹で合理的で計画性を持った連中なんだ……
まだ直接攻めてくるのなら悪足掻きに人類の意地を思い知らせてやる事ぐらいは出来ただろうが、人々は奴らの存在すら認知できずそれすらも許されない。
奴らにとってこれは戦争ですらなくただの作業だ。
あまりにも手慣れている……無理だ……
人類ごときが勝てる相手じゃない!!
きっと壁の向こうの地方都市、いや日本全土は既に奴らの支配下にあるのだろう。
ヘリの一台も飛んでやしない。
もし無事であるならば、これだけ目立つ物体があるのだから調査しに地上が駄目でも空から誰かしら近寄ってくるはずだ。
俺が足掻いてきた事は何もかも無駄だったというのか……
「帰ろう母さん」
車へ乗り込み、今はもうもの言わぬ母さんへそう伝えると俺達は来た道を引き返していった。
帰りの峠道で考え続ける。
これから俺はどうすればいいのだろうか?
愛してやまないこの町で人類の歴史が終わってゆくのを、為すがままにただ黙って眺めていくしかないというのか。
多分、俺は奴らに見つかり次第イレギュラーな存在と見なされ処刑されるか、より完璧なウイルス作成のため、研究材料にされるのだろう。
人生で何も成せず、誰も救えず、最後の時が来るまで家に住み着いた鼠のように惨めに怯えてコソコソと生き続けなければならないというのか。
この世の本質は弱肉強食。
弱者に正義や選択肢など存在しない。
一方的に強者からあらゆるものを搾取され、何もかもが力によって定められる。
勝った者こそが正義なのだから。
それも運命か……
また海岸沿いを走る。
海は相変わらず荒れている。
いっそのことボートに乗ってどこかへ行くことも許されそうにない。
タイミングが良すぎる。きっとこれも攻撃の一部なのだろう。
奴らは徹底的にどこまでも抜かりがない。
この町は既に奴らに管理されているんだ。
ほら、また例のものが見えてきた。もうあまり驚きはしないぞ。
せっかくだから近くで見てやろうじゃないか。
もう必要のなくなった行為ではあるが、交通文化の名残りにより路肩に車を停めた。
「母さん、少し待っててくれ」
そして海沿いの草の茂みへと入り、侵略生物の前へと歩み寄った。
そしてそのどれもが人類の判断から見て超自然的なものだ。
だが、もし高度なテクノロジーを有したエイリアンが何かの目的によってそれらを意図的に仕掛けたというのならば、そこには一貫した整合性が存在する。
侵略だ。
各地へとばら撒いたウイルスにより自らが直接手を下す事なく有無も言わず人類をあっという間に無力化させ、万が一に俺のような耐性を持った者が大勢集まらないようにエリア毎に壁で分けて隔離する。
そして後はじっくりと邪魔をされずに自分達の惑星の生物を植え付ていく……テラフォーミングだ。
それならなぜ人々はさっさと殺されないのだろうか?
きっとそれは後で集めてまとめて始末するか、何らかの方法で労働力や知識を含めた資源として再利用するからなのだろう。
利用できるものは残しておくというわけか。
体が震えてくる……
なんて恐ろしいまでに冷徹で合理的で計画性を持った連中なんだ……
まだ直接攻めてくるのなら悪足掻きに人類の意地を思い知らせてやる事ぐらいは出来ただろうが、人々は奴らの存在すら認知できずそれすらも許されない。
奴らにとってこれは戦争ですらなくただの作業だ。
あまりにも手慣れている……無理だ……
人類ごときが勝てる相手じゃない!!
きっと壁の向こうの地方都市、いや日本全土は既に奴らの支配下にあるのだろう。
ヘリの一台も飛んでやしない。
もし無事であるならば、これだけ目立つ物体があるのだから調査しに地上が駄目でも空から誰かしら近寄ってくるはずだ。
俺が足掻いてきた事は何もかも無駄だったというのか……
「帰ろう母さん」
車へ乗り込み、今はもうもの言わぬ母さんへそう伝えると俺達は来た道を引き返していった。
帰りの峠道で考え続ける。
これから俺はどうすればいいのだろうか?
愛してやまないこの町で人類の歴史が終わってゆくのを、為すがままにただ黙って眺めていくしかないというのか。
多分、俺は奴らに見つかり次第イレギュラーな存在と見なされ処刑されるか、より完璧なウイルス作成のため、研究材料にされるのだろう。
人生で何も成せず、誰も救えず、最後の時が来るまで家に住み着いた鼠のように惨めに怯えてコソコソと生き続けなければならないというのか。
この世の本質は弱肉強食。
弱者に正義や選択肢など存在しない。
一方的に強者からあらゆるものを搾取され、何もかもが力によって定められる。
勝った者こそが正義なのだから。
それも運命か……
また海岸沿いを走る。
海は相変わらず荒れている。
いっそのことボートに乗ってどこかへ行くことも許されそうにない。
タイミングが良すぎる。きっとこれも攻撃の一部なのだろう。
奴らは徹底的にどこまでも抜かりがない。
この町は既に奴らに管理されているんだ。
ほら、また例のものが見えてきた。もうあまり驚きはしないぞ。
せっかくだから近くで見てやろうじゃないか。
もう必要のなくなった行為ではあるが、交通文化の名残りにより路肩に車を停めた。
「母さん、少し待っててくれ」
そして海沿いの草の茂みへと入り、侵略生物の前へと歩み寄った。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説

聖女の如く、永遠に囚われて
white love it
ミステリー
旧貴族、秦野家の令嬢だった幸子は、すでに百歳という年齢だったが、その外見は若き日に絶世の美女と謳われた頃と、少しも変わっていなかった。
彼女はその不老の美しさから、地元の人間達から今も魔女として恐れられながら、同時に敬われてもいた。
ある日、彼女の世話をする少年、遠山和人のもとに、同級生の島津良子が来る。
良子の実家で、不可解な事件が起こり、その真相を幸子に探ってほしいとのことだった。
実は幸子はその不老の美しさのみならず、もう一つの点で地元の人々から恐れられ、敬われていた。
━━彼女はまぎれもなく、名探偵だった。
登場人物
遠山和人…中学三年生。ミステリー小説が好き。
遠山ゆき…中学一年生。和人の妹。
島津良子…中学三年生。和人の同級生。痩せぎみの美少女。
工藤健… 中学三年生。和人の友人にして、作家志望。
伊藤一正…フリーのプログラマー。ある事件の犯人と疑われている。
島津守… 良子の父親。
島津佐奈…良子の母親。
島津孝之…良子の祖父。守の父親。
島津香菜…良子の祖母。守の母親。
進藤凛… 家を改装した喫茶店の女店主。
桂恵… 整形外科医。伊藤一正の同級生だった。
秦野幸子…絶世の美女にして名探偵。百歳だが、ほとんど老化しておらず、今も若い頃の美しさを保っている。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
【Vtuberさん向け】1人用フリー台本置き場《ネタ系/5分以内》
小熊井つん
大衆娯楽
Vtuberさん向けフリー台本置き場です
◆使用報告等不要ですのでどなたでもご自由にどうぞ
◆コメントで利用報告していただけた場合は聞きに行きます!
◆クレジット表記は任意です
※クレジット表記しない場合はフリー台本であることを明記してください
【ご利用にあたっての注意事項】
⭕️OK
・収益化済みのチャンネルまたは配信での使用
※ファンボックスや有料会員限定配信等『金銭の支払いをしないと視聴できないコンテンツ』での使用は不可
✖️禁止事項
・二次配布
・自作発言
・大幅なセリフ改変
・こちらの台本を使用したボイスデータの販売

ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
あの人って…
RINA
ミステリー
探偵助手兼恋人の私、花宮咲良。探偵兼恋人七瀬和泉とある事件を追っていた。
しかし、事態を把握するにつれ疑問が次々と上がってくる。
花宮と七瀬によるホラー&ミステリー小説!
※ エントリー作品です。普段の小説とは系統が違うものになります。
ご注意下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる