29 / 44
第一章 相田一郎
想定外の脅威
しおりを挟む
何故こんな得体の知れないものが通路を妨害するかのように建設されているのか?
俺が最後に地方都市へ行ったのは先々週の日曜日。
もちろんその時はこんなものなどなかった。
ということは、これはごく最近になって造られたものだ。
今日は何曜日だったっけ……まあいい、少なくとも二週間以内にこれが建築されたことになる。
霧の中、見回すと壁は左右どちらにも満遍なく延びていて、見上げれば目視できる限界までそびえている。
なんて巨大な建造物なんだ……具体的な数値は分からないが、少なく見積っても百メートル以上の高さがあるようだ。
こいつのせいで地方都市との往来が途絶えていたんだな。
これは紛れもなく人工物だ。
自然にできたというのならこんな奇麗な面になるはずがないだろう。
じゃあどうやってこんな短期間で……
もういい、今はそんな事を考えている場合じゃない!
クソッ、このままでは先へと進めない……
どこかで途切れていないだろうか?
しかし参ったぞこれは……探すにしてもここから壁沿いに進むには急斜面の崖を自力で登ってゆくしかないようだ。
左右の崖には土砂災害対策のためにコンクリートの補強がなされている。
それには規則正しい菱形模様の細かな溝がある。
そこに指を入れていけば少しずつだが登っていけるのかもしれないが、俺は鍛え上げられたクライマーじゃない。
溝に指を入れ、試しにほんの少し壁を登ろうとするが、かなりキツい。指の力が全然足りていないのを実感する。
やはりこのやり方は危険だ、命綱すらないんだぞ。
これなら戻って登れそうな場所を探す方が良いのかもしれない。
どうしようかと壁と崖の近くをウロウロしているうちにある事に気付いた。
視界が……広くなっている?
間違いない。どんどん霧が晴れてきているんだ!
今日、目覚めた時からずっとこの町を包んで、遠くの視界を隠していた霧はようやく消滅の時を迎えそうだ。
これならどこか見晴らしの良い高い場所にでも移動すれば楽に壁の終わりが見つかるだろう。探せばどこかにあるはずだ。
思っているよりずっと早く霧は引いてゆく。
ここぞと言わんばかりに黒壁の範囲を左右上方向と満遍なく確認し続けるが、それでもまだまだ面積は増えてゆく。止まらない。
「そ ん な は ず は な い !!」
俺は思った事をありのままに叫んだ。
あまりにも常識外れで馬鹿馬鹿しかったからだ。
霧は完全に晴れていた。
全てが視える。遥か先の景色まで。
黒の面は果てしなく続いていた。
この峠の山は最大で標高七百メートル程だ。
壁の高さは山の頂上よりやや低い程度だが、それでも五百メートル近くはあるだろう。
幅に至っては終わりがどこにも見つからない。
「ここまでするか……」
この氷のような垂直の壁を人力で越えるのは不可能。
『させはしない』という強い意志を感じる。
これは……明確に、町と町とを隔離するために造られたものだ!!
人類の技術ではこんなもの二週間どころか百年かけても完成できないだろう……
だが実際にこれは存在している……
どういうことだ……?
頭の中で一つの可能性が浮かび上がる。
それは子供がまず最初に考えそうなとても馬鹿げた推理……
エイリアンだ……
「こんな事出来るのは宇宙人しかいない!!」
俺が最後に地方都市へ行ったのは先々週の日曜日。
もちろんその時はこんなものなどなかった。
ということは、これはごく最近になって造られたものだ。
今日は何曜日だったっけ……まあいい、少なくとも二週間以内にこれが建築されたことになる。
霧の中、見回すと壁は左右どちらにも満遍なく延びていて、見上げれば目視できる限界までそびえている。
なんて巨大な建造物なんだ……具体的な数値は分からないが、少なく見積っても百メートル以上の高さがあるようだ。
こいつのせいで地方都市との往来が途絶えていたんだな。
これは紛れもなく人工物だ。
自然にできたというのならこんな奇麗な面になるはずがないだろう。
じゃあどうやってこんな短期間で……
もういい、今はそんな事を考えている場合じゃない!
クソッ、このままでは先へと進めない……
どこかで途切れていないだろうか?
しかし参ったぞこれは……探すにしてもここから壁沿いに進むには急斜面の崖を自力で登ってゆくしかないようだ。
左右の崖には土砂災害対策のためにコンクリートの補強がなされている。
それには規則正しい菱形模様の細かな溝がある。
そこに指を入れていけば少しずつだが登っていけるのかもしれないが、俺は鍛え上げられたクライマーじゃない。
溝に指を入れ、試しにほんの少し壁を登ろうとするが、かなりキツい。指の力が全然足りていないのを実感する。
やはりこのやり方は危険だ、命綱すらないんだぞ。
これなら戻って登れそうな場所を探す方が良いのかもしれない。
どうしようかと壁と崖の近くをウロウロしているうちにある事に気付いた。
視界が……広くなっている?
間違いない。どんどん霧が晴れてきているんだ!
今日、目覚めた時からずっとこの町を包んで、遠くの視界を隠していた霧はようやく消滅の時を迎えそうだ。
これならどこか見晴らしの良い高い場所にでも移動すれば楽に壁の終わりが見つかるだろう。探せばどこかにあるはずだ。
思っているよりずっと早く霧は引いてゆく。
ここぞと言わんばかりに黒壁の範囲を左右上方向と満遍なく確認し続けるが、それでもまだまだ面積は増えてゆく。止まらない。
「そ ん な は ず は な い !!」
俺は思った事をありのままに叫んだ。
あまりにも常識外れで馬鹿馬鹿しかったからだ。
霧は完全に晴れていた。
全てが視える。遥か先の景色まで。
黒の面は果てしなく続いていた。
この峠の山は最大で標高七百メートル程だ。
壁の高さは山の頂上よりやや低い程度だが、それでも五百メートル近くはあるだろう。
幅に至っては終わりがどこにも見つからない。
「ここまでするか……」
この氷のような垂直の壁を人力で越えるのは不可能。
『させはしない』という強い意志を感じる。
これは……明確に、町と町とを隔離するために造られたものだ!!
人類の技術ではこんなもの二週間どころか百年かけても完成できないだろう……
だが実際にこれは存在している……
どういうことだ……?
頭の中で一つの可能性が浮かび上がる。
それは子供がまず最初に考えそうなとても馬鹿げた推理……
エイリアンだ……
「こんな事出来るのは宇宙人しかいない!!」
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説

聖女の如く、永遠に囚われて
white love it
ミステリー
旧貴族、秦野家の令嬢だった幸子は、すでに百歳という年齢だったが、その外見は若き日に絶世の美女と謳われた頃と、少しも変わっていなかった。
彼女はその不老の美しさから、地元の人間達から今も魔女として恐れられながら、同時に敬われてもいた。
ある日、彼女の世話をする少年、遠山和人のもとに、同級生の島津良子が来る。
良子の実家で、不可解な事件が起こり、その真相を幸子に探ってほしいとのことだった。
実は幸子はその不老の美しさのみならず、もう一つの点で地元の人々から恐れられ、敬われていた。
━━彼女はまぎれもなく、名探偵だった。
登場人物
遠山和人…中学三年生。ミステリー小説が好き。
遠山ゆき…中学一年生。和人の妹。
島津良子…中学三年生。和人の同級生。痩せぎみの美少女。
工藤健… 中学三年生。和人の友人にして、作家志望。
伊藤一正…フリーのプログラマー。ある事件の犯人と疑われている。
島津守… 良子の父親。
島津佐奈…良子の母親。
島津孝之…良子の祖父。守の父親。
島津香菜…良子の祖母。守の母親。
進藤凛… 家を改装した喫茶店の女店主。
桂恵… 整形外科医。伊藤一正の同級生だった。
秦野幸子…絶世の美女にして名探偵。百歳だが、ほとんど老化しておらず、今も若い頃の美しさを保っている。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
【Vtuberさん向け】1人用フリー台本置き場《ネタ系/5分以内》
小熊井つん
大衆娯楽
Vtuberさん向けフリー台本置き場です
◆使用報告等不要ですのでどなたでもご自由にどうぞ
◆コメントで利用報告していただけた場合は聞きに行きます!
◆クレジット表記は任意です
※クレジット表記しない場合はフリー台本であることを明記してください
【ご利用にあたっての注意事項】
⭕️OK
・収益化済みのチャンネルまたは配信での使用
※ファンボックスや有料会員限定配信等『金銭の支払いをしないと視聴できないコンテンツ』での使用は不可
✖️禁止事項
・二次配布
・自作発言
・大幅なセリフ改変
・こちらの台本を使用したボイスデータの販売

ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

放課後は、喫茶店で謎解きを 〜佐世保ジャズカフェの事件目録(ディスコグラフィ)〜
邑上主水
ミステリー
かつて「ジャズの聖地」と呼ばれた長崎県佐世保市の商店街にひっそりと店を構えるジャズ・カフェ「ビハインド・ザ・ビート」──
ひょんなことから、このカフェで働くジャズ好きの少女・有栖川ちひろと出会った主人公・住吉は、彼女とともに舞い込むジャズレコードにまつわる謎を解き明かしていく。
だがそんな中、有栖川には秘められた過去があることがわかり──。
これは、かつてジャズの聖地と言われた佐世保に今もひっそりと流れ続けている、ジャズ・ミュージックにまつわる切なくもあたたかい「想い」の物語。
あの人って…
RINA
ミステリー
探偵助手兼恋人の私、花宮咲良。探偵兼恋人七瀬和泉とある事件を追っていた。
しかし、事態を把握するにつれ疑問が次々と上がってくる。
花宮と七瀬によるホラー&ミステリー小説!
※ エントリー作品です。普段の小説とは系統が違うものになります。
ご注意下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる