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第一章 相田一郎
繁華街にて
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相変わらず誰にも遭遇することなく、雲と霧に包まれた無人とも思える孤独な静寂の郊外を突き進んでゆくと、そのうち町の中心部付近へと到達した。
町で一番人気の多いこの辺りまで来れば、本来ならかなり交通量は盛んになってくる。
もしこの町そのものが全滅していないというのなら、非感染者発見の期待値はとても高くなる。
現に自分という無事だった人間がここにいるわけだ。他に誰かが居てもおかしくはないだろう。
「あっ!」
とても喜ばしいものが見える。
通行人こそ見かけないが、走る車の姿がちらほらと!
これまで確認できただけでも少なくとも十台以上は目に留まる。
これは想像していたよりもずっと多い数だ。
おっ、また一台見かけたぞ。
『もしかすると自分以外に正常な人間など誰も存在していないんじゃないか?』と疑っていたが、有難いことにどうやらそれは思い過ごしだったようだ。
きっと彼らも俺と同じように今日起きた理由の分からない奇妙な現象に慌てふためいた後、家へ帰るところなのかもしれない。
ああ……安堵感に包まれる。
どこの誰かは分からない赤の他人達ではあるが、皆が共通の立場にある。
人々の繋がりというものを改めて認識し、その大切さを噛みしめる。
車はショッピングセンター前の右折信号待ちへと入った。前には自分以外に三台が連なっている。
早く帰りたいところだが俺達は救急車ではない。非常事態ではあるがさすがにここは繁華街、他にも少なからず走っている車はいるし時々、横からも来ている。速度違反もせずみんな律儀に道路交通法は守ることにしているようだ。
やがて赤色だった信号は青へと変わった。
対向車は来ていない。これならすぐに曲がれるだろう。
先頭の一台が右折を始めると二台目の車がそれに続く。そして三台目の軽自動車……
右方向から激しく唸るような音が聞こえる。車のエンジン音だ。それは衰えることなくどんどん大きくなってゆく。物凄い速さでこちらへと近付いている。
「危ない!!」
そう気付いた瞬間、凄まじい衝撃音が周辺一帯へと鳴り響く。
「うわっ!」
揺れる空気。揺れる車体。その衝撃波に思わず前屈みになる。
なんてことだ! 俺のすぐ目の前で正面の軽自動車と横から来た直進トラックが衝突した!!
無惨にも弾き飛ばされ、回転しながら細かい破片を撒き散らして宙を舞う軽自動車。
信号無視のトラックといえば……
まるで減速する気配を見せない。凄い速さでどんどん遠ざかってゆく。そんな事お構いなしと言わんばかりだ。
「あの野郎、逃げやがった!」
思わず激しい怒りの感情が湧き上がるが、それ以上に重要な事がある。
……こうなったら俺が救護するしかない!!
自分の車を右折先の路肩へと停め、ひっくり返っている大破した軽自動車へと駆け寄った。
「大丈夫ですか!?」
とても酷い有様だ……
車体の側面はへし折れ、回転中の幾度の着地衝撃によって原型を留めないほどにそこら中がボコボコになっている。
中の人は無事なのだろうか!?
割れたサイドガラスの向こうに目をやった。
「うっ!」
車の中には私服姿の年老いた男女が二人居た。おそらくは老夫婦なんだろう。
二人とも逆さで目を開けたままぐったりして人形のようにビクともしていない。
鼻と半開きの口からは血が流れ、それが雫となり垂れ落ち続けている。
おそらくは既に死んでいるのだろう……
町で一番人気の多いこの辺りまで来れば、本来ならかなり交通量は盛んになってくる。
もしこの町そのものが全滅していないというのなら、非感染者発見の期待値はとても高くなる。
現に自分という無事だった人間がここにいるわけだ。他に誰かが居てもおかしくはないだろう。
「あっ!」
とても喜ばしいものが見える。
通行人こそ見かけないが、走る車の姿がちらほらと!
これまで確認できただけでも少なくとも十台以上は目に留まる。
これは想像していたよりもずっと多い数だ。
おっ、また一台見かけたぞ。
『もしかすると自分以外に正常な人間など誰も存在していないんじゃないか?』と疑っていたが、有難いことにどうやらそれは思い過ごしだったようだ。
きっと彼らも俺と同じように今日起きた理由の分からない奇妙な現象に慌てふためいた後、家へ帰るところなのかもしれない。
ああ……安堵感に包まれる。
どこの誰かは分からない赤の他人達ではあるが、皆が共通の立場にある。
人々の繋がりというものを改めて認識し、その大切さを噛みしめる。
車はショッピングセンター前の右折信号待ちへと入った。前には自分以外に三台が連なっている。
早く帰りたいところだが俺達は救急車ではない。非常事態ではあるがさすがにここは繁華街、他にも少なからず走っている車はいるし時々、横からも来ている。速度違反もせずみんな律儀に道路交通法は守ることにしているようだ。
やがて赤色だった信号は青へと変わった。
対向車は来ていない。これならすぐに曲がれるだろう。
先頭の一台が右折を始めると二台目の車がそれに続く。そして三台目の軽自動車……
右方向から激しく唸るような音が聞こえる。車のエンジン音だ。それは衰えることなくどんどん大きくなってゆく。物凄い速さでこちらへと近付いている。
「危ない!!」
そう気付いた瞬間、凄まじい衝撃音が周辺一帯へと鳴り響く。
「うわっ!」
揺れる空気。揺れる車体。その衝撃波に思わず前屈みになる。
なんてことだ! 俺のすぐ目の前で正面の軽自動車と横から来た直進トラックが衝突した!!
無惨にも弾き飛ばされ、回転しながら細かい破片を撒き散らして宙を舞う軽自動車。
信号無視のトラックといえば……
まるで減速する気配を見せない。凄い速さでどんどん遠ざかってゆく。そんな事お構いなしと言わんばかりだ。
「あの野郎、逃げやがった!」
思わず激しい怒りの感情が湧き上がるが、それ以上に重要な事がある。
……こうなったら俺が救護するしかない!!
自分の車を右折先の路肩へと停め、ひっくり返っている大破した軽自動車へと駆け寄った。
「大丈夫ですか!?」
とても酷い有様だ……
車体の側面はへし折れ、回転中の幾度の着地衝撃によって原型を留めないほどにそこら中がボコボコになっている。
中の人は無事なのだろうか!?
割れたサイドガラスの向こうに目をやった。
「うっ!」
車の中には私服姿の年老いた男女が二人居た。おそらくは老夫婦なんだろう。
二人とも逆さで目を開けたままぐったりして人形のようにビクともしていない。
鼻と半開きの口からは血が流れ、それが雫となり垂れ落ち続けている。
おそらくは既に死んでいるのだろう……
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