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第一章 相田一郎
生まれ育った小さな町2
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そんな俺の名は相田一郎。23歳の会社員だ。
工業高校出身というわけではないが、この町の高校を卒業した後、大学へは進学せずにすぐにこの町の小さな鉄鋼業会社へと就職した。当時は大変な就職難の時代であったそうだがこの町での就職はあっけない程に簡単なものだった。
昔からの親友たちはというとみんなこの町を出ていった。進学する者、職探しに行く者、誰もが広くて新しい外の世界へ希望を抱いていたことだろう。
今ではもう誰も帰ってはこない。連絡先すらも分からない。
俺のことなんてもう忘れてるだろうな。みんなうまくやっているだろうか?
きっと充実した人生を過ごしているに違いない。
俺は一人になったが現状に不満はない。両親と一緒に暮らしているし、会社へ行けば話し相手ぐらい他にもいる。仕事だって慣れてきた。
こんな俺のことを親はどう思っているんだろうか?
親は何も俺に将来のことについて問うことはない。
いつまでも結婚する素振りすら見せず、彼女すら作らず、繰り返しのダラダラとした消極的な毎日を送る息子を見て諦めのようなものを感じているのかもしれない。
いや、案外それでいいと思っているのかもしれない。
母親というのは息子をいつまでも手元に置いておきたがる生き物だ。
もし息子が結婚するようなことがあればどこか遠くへ行ってしまうのかもしれないのだから。
なぜだろうな?
今夜はいろいろ考えてしまう。明日も仕事だというのにもうこんな時間だ。
さて、そろそろ眠るとするか。
またいつもの日常が始まる。
――それではおやすみなさい。
工業高校出身というわけではないが、この町の高校を卒業した後、大学へは進学せずにすぐにこの町の小さな鉄鋼業会社へと就職した。当時は大変な就職難の時代であったそうだがこの町での就職はあっけない程に簡単なものだった。
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今ではもう誰も帰ってはこない。連絡先すらも分からない。
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今夜はいろいろ考えてしまう。明日も仕事だというのにもうこんな時間だ。
さて、そろそろ眠るとするか。
またいつもの日常が始まる。
――それではおやすみなさい。
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