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2024春の特別編
ぶつかりおじさん
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ここはとある地方の駅。
この場所にはある都市伝説があります。
それは謎の小太り中年男性が何故か体当たりしてくるらしいのです。そしてその中年男性は女性だけを狙ってくるそうなのです。
ただ、女性といっても誰でもいいわけではないらしいです。四つの言い伝えがあるのです。
まず一つに一人であること
二つ目に地味そうであること
三つ目に体が大きくないこと
最後に四つ目、美人すぎずブサイクすぎないこと
そんな馬鹿な話、あるはずがない。痴漢ならともかくこんな無駄なことをして一体何をしたいのでしょうか?
私にはとても信じられません。
でも心のどこかに『私が狙われたらどうしよう?』という不安な気持ちがあるのです。
私は最近ここへ仕事のために引っ越してきたOLで、この駅へ来たのは初めてです。
今日は出勤のために一人です。そして私の見た目は黒髪ストレートで化粧も派手ではなく真面目そうです。ハッキリ言って地味だと思います。
身長だって150cm台であまり高くはありませんしスリム体型です。
顔に関しては普通だと思います。
これって四つ全ての条件に当てはまっているのではないでしょうか?
なんだか怖いです。すれ違う男性がみんなぶつかりおじさんに見えてくるのです。
『そんなものは存在しない』
そう自分に言い聞かせ私は券売機へと向かいました。
あっ!?
正面に何かいます。気付きがあるのです。明らかにこの人だけ何かが違うように感じます。
すごくみすぼらしいです。競馬場にいそうな雰囲気です。髪の毛は脂ぎっててボサボサで、目つきもおかしいし歩き方もヨチヨチ赤ちゃんみたいで確実に不審者です。
『お願い、このまま通り過ぎて!』
私はそう心で祈りました。
私とその男とはラインが違います。このまま真っ直ぐ歩けばまずぶつかることはありません。男との距離はどんどん狭まっていきます。
もう少しですれ違う距離です。
その時です。
男は素早く不自然な動きをしました。それはまるで獲物に仕掛ける鷹のようでした。明らかに意図的にこちらのラインへと移動し、肩と肩が激しくぶつかったのです。
「あっ!」
思わず声が出てしまいました。私の体は弾き飛ばされ後方へと仰け反ったのです。
「は~い現行犯~!」
突然、若い男性の大きな声が聞こえました。
声の方を向くとビデオカメラを持ったツーブロックのイカつい男性がこちらへ向かって走ってきます。
そして彼はぶつかりおじさんの進行方向を妨げるように前に立つと語りかけました。
「撮れてるからね、分かってるよね? 自分のやったこと。これ傷害だから」
そして走って逃げようとするぶつかりおじさんを羽交い締めにすると、そのまま関節技をキメるのでした。
後に分かったことですが、若い男性は私人逮捕系ユーチューバーでぶつかりおじさんを狙っていたようです。
捕まったおじさんはというと「向こうからぶつかってきた」と言い訳をしたらしいのですが、動画を見せられると観念して「女にモテなくてイライラしていた」と自供したそうです。
それからおじさんは書類送検されたらしいです。
それ以来、この駅で奇妙な現象は起きなくなりました。
――――――――――――――――――
喪田「この世は弱肉強食。獲物を狙っていたはずのハンターが獲物になる側だった……皮肉な話ですね」
―ぶつかりおじさん 完―
この場所にはある都市伝説があります。
それは謎の小太り中年男性が何故か体当たりしてくるらしいのです。そしてその中年男性は女性だけを狙ってくるそうなのです。
ただ、女性といっても誰でもいいわけではないらしいです。四つの言い伝えがあるのです。
まず一つに一人であること
二つ目に地味そうであること
三つ目に体が大きくないこと
最後に四つ目、美人すぎずブサイクすぎないこと
そんな馬鹿な話、あるはずがない。痴漢ならともかくこんな無駄なことをして一体何をしたいのでしょうか?
私にはとても信じられません。
でも心のどこかに『私が狙われたらどうしよう?』という不安な気持ちがあるのです。
私は最近ここへ仕事のために引っ越してきたOLで、この駅へ来たのは初めてです。
今日は出勤のために一人です。そして私の見た目は黒髪ストレートで化粧も派手ではなく真面目そうです。ハッキリ言って地味だと思います。
身長だって150cm台であまり高くはありませんしスリム体型です。
顔に関しては普通だと思います。
これって四つ全ての条件に当てはまっているのではないでしょうか?
なんだか怖いです。すれ違う男性がみんなぶつかりおじさんに見えてくるのです。
『そんなものは存在しない』
そう自分に言い聞かせ私は券売機へと向かいました。
あっ!?
正面に何かいます。気付きがあるのです。明らかにこの人だけ何かが違うように感じます。
すごくみすぼらしいです。競馬場にいそうな雰囲気です。髪の毛は脂ぎっててボサボサで、目つきもおかしいし歩き方もヨチヨチ赤ちゃんみたいで確実に不審者です。
『お願い、このまま通り過ぎて!』
私はそう心で祈りました。
私とその男とはラインが違います。このまま真っ直ぐ歩けばまずぶつかることはありません。男との距離はどんどん狭まっていきます。
もう少しですれ違う距離です。
その時です。
男は素早く不自然な動きをしました。それはまるで獲物に仕掛ける鷹のようでした。明らかに意図的にこちらのラインへと移動し、肩と肩が激しくぶつかったのです。
「あっ!」
思わず声が出てしまいました。私の体は弾き飛ばされ後方へと仰け反ったのです。
「は~い現行犯~!」
突然、若い男性の大きな声が聞こえました。
声の方を向くとビデオカメラを持ったツーブロックのイカつい男性がこちらへ向かって走ってきます。
そして彼はぶつかりおじさんの進行方向を妨げるように前に立つと語りかけました。
「撮れてるからね、分かってるよね? 自分のやったこと。これ傷害だから」
そして走って逃げようとするぶつかりおじさんを羽交い締めにすると、そのまま関節技をキメるのでした。
後に分かったことですが、若い男性は私人逮捕系ユーチューバーでぶつかりおじさんを狙っていたようです。
捕まったおじさんはというと「向こうからぶつかってきた」と言い訳をしたらしいのですが、動画を見せられると観念して「女にモテなくてイライラしていた」と自供したそうです。
それからおじさんは書類送検されたらしいです。
それ以来、この駅で奇妙な現象は起きなくなりました。
――――――――――――――――――
喪田「この世は弱肉強食。獲物を狙っていたはずのハンターが獲物になる側だった……皮肉な話ですね」
―ぶつかりおじさん 完―
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