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ランス視点。【ネイブルの過去】

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ランス視点



「うっ。」

 目を開けると見知らぬ古屋にいた。

「おっ。やっと目覚めたかい。」

 聴き慣れないしゃがれ声が聞こえると同時に聴き慣れた声もした。

「ランス様!」

 その聴き慣れた声のする人物は僕の胸に飛びつき泣きだした。

 淡いピンクのサラサラ髪。

 あぁ、プリスだ。

「心配しましたのよ!3日も寝たままで起きてこないのですもの!」

 涙を流すプリスの頬を指で脱ぎ取る。

「心配かけたね。」

 そういってプリスを抱き寄せようとすると、「オッホン」と声がしてその主へと目線をむける。

 そこにはズングリとした姿で髭面が特徴的なドワーフがいた。

「イチャイチャの所悪いの。」

 そう言われると恥ずかしい。

 バッとプリスから離れて咳払いをする。

「あ、貴方は?」

「わしゃ重蔵じゃ。腹が減っておるだろ?直ぐに用意してやる。まってろ。」

 そう言って重蔵は部屋から出た。

「あの方は命の恩人ですわ。あの方が助けてくださらなければ今頃‥」

 それから僕がこの場所にいる経緯をプリスが話てくれた。

 どうやら僕とプリスはあの爆発から奇跡的に逃れられたようだ。

 恐らくハルの転移魔法だろうけど、どうも場所の指定はできなかったのか、僕らのいた土地から果てしなく離れた場所、裏界のドラゴナの上空から僕達は落ちてきたそうだ。

 そこへ偶然にも通りかかったドワーフの【重蔵】さんが魔法で慌ててクッションを作り救ってくれたらしい。

 それがなければプリスも僕も死んでいたかもとプリスは言った。

 しばらくして良い匂いと共に重蔵さんが部屋に入ってきた。

「よう。取り敢えず食べやすいスープだ。食べな。」

 コトっと、ベットの横の小さなテーブルに置いてくれた。

「話はプリスから聞きました。助けて下さりありがとうございます。改めまして僕はランスと言います。」

「嬢ちゃんから聞いてるよ。しかしすげえ話もあったもんだな。お前さん達が空から降ってこなきゃ信じられん様な話だ。」

「えぇ。僕も未だに実感が沸かないです。」

「で、お前さんら王都レイドクスから来たっていうとったの。これからどうするつもりなんじゃ?」

 どうする?と聞かれると元いた場所に戻りたい。が本音だ。

 だけど、、

 あの化け物の存在が頭をよぎり身体が震えだす。

 なんだったんだあの化け物は?ハルの転移が無ければ死んでいたかもしれない。
 
 それよりも皆生きてるのかな?

 考えれば考えるほど不安が背中に胸に伸し掛かり締め付けられる感覚だ。

 そんな時。

 ふとプリスに目をむけるとプリスは不安な表情を浮かべ僕をみていた。

 いけない。僕が弱気になっちゃダメだ!

「重蔵さん。僕らは元いた場所に戻ろうと思います。家族の安否も心配なので。」

「うむ。じゃがどうやって帰る?話を聞く限りお前さんの屋敷とやらはもう無いんじゃないか?」

 それを言われると困るんだけど、、、今は戻る事が最優先な気がする。父上や母上、皆んなの安否を確認したい。

ここは頼むしかない。

「重蔵さん!もしよろしければ途中まででもいいので道案内をお願いできないでしょうか?それか方角だけでもいいんです。」

「ほう。それはワシにとってどんなメリットがあるかの?ましてや方角を教えたとしてワシが本当の事をゆうとも限らんて。」

 うっ。意地悪だ。

 けど!

 僕は頭を下げてもう一度お願いする。

「それでもお願いします!正直支払えるような物もなく、頼みとも言える家ももはやあるかは分かりません。ですが!何かお役にたてる事がありましたら全力で僕が協力させて頂きます!」

 重蔵はジッと僕をみつめ、僕はその目をはなさいようにしっかりと目を合わせた。

すると、

「ぶっ。がっはっはっはっは!」と豪快に笑いだし僕の背中を叩き始めた。

「よし気に入った!俺が責任もってお前達を家まで送ってやろう。」

「え!?いいんですか?家までは遠いんですよ。」

「あ?ガキがそんな心配すんじゃねぇよ。どうせ俺もここにはもう要がなくなっちまった所だったんだ。それにレイドクスにゃ、ちいと知り合いがいてなぁ。会いにいく用事ついでじゃ。」

「知り合い?」

「おうよ。お前さんが彼奴にあんまりにも似てるからついカラかっちまった。名はネイブルじゃ。」

「ネイブル!?」

 プリスと僕は目を合わせて驚いた。

「やはり知っとるか?」

「知ってるもなにも、」

「ネイブル様はランス様の父君です!」

「おー!やっぱりネイブルの子か!道理で初めて会った気がせんかったんじゃ!ほうほう。」

 重蔵は顎に手をあてマジマジと僕を見る。

「見れば見るほどネイブルの幼き頃とようにとる。」

 懐かしい者をみるように重蔵は感慨にふける。

「あの、父とは?」

「育ての親って所じゃな。つまりワシはお前の爺ちゃんみたいなもんじゃよ。」

「えぇ!?」

 驚く僕の顔を見て、重蔵さんはシワクチャな笑顔を作り僕の頭をワシャワシャ撫でた。

「がっはっはっ!こりゃめでてぇ!」


〇〇


 そんなこんなで翌朝。

 昨夜はあのまま驚きの連続で、父上と重蔵さんのエピソードを聞かせてもらった。

 父上はレイドクス出身ではなく、隣国のダフル領にある外れの山岳育ちだそうで、昔は孤児だったらしい。

 しかし他の孤児達とは違い、昔から知識欲が強く物事について何故と疑問を抱き、それを徹底し追求する変わった子だったそうだ。

 そんなある日、孤児達は山菜を取りに山に入った所に当時レイドクス国と戦時中の残兵と出会してしまう。
 残兵は身を潜める為、見られた者全て斬りつけ孤児達は全滅。

 だが、かろうじて致命傷にはならなかった父上は後に目をさます。

 現実は凄く辛いものだったはず、ましてや父上は当時6歳だ。

 泣いてどうしていいか分からないといった感じでもおかしくは無い。

 なのに一人孤児達の墓を作り神に祈りを捧げていたのだそうだ。

 そんな時、ダフル国の冒険者ギルドに当時所属していた重蔵がその残兵がいないかの調査で偶然にもそこへ寄り掛かった。

 重蔵さんは父上を見て驚いたのだという。

 まだ年端もいかぬ子が墓の前で決意にみちた目をしていたからだ。

 重蔵が後ろに立つと

「貴方は?」

「ワシャ冒険者ギルドに雇われた重蔵じゃ。お主はここで何を?」

「‥僕は戦争が嫌いです。お互いに潰しあって何も生まれない。生まれるのは悲しみだけです。貴方は見た所凄腕のようですね。」

 振り返った父上はとても子供とは思えない強い意志のある目をしていたという。

「あ、ああ。それなりに名は知られておるとは思うが‥」

「なら僕に戦い方を教えてもらえないでしょうか?僕は戦争の無い平和な世界を実現させようと思います。」

 それ以来父上は重蔵さんの元で鍛錬し、この世の生き方など様々な事を教わったのだという。

 そして後、父上はその才能を開花させレイドクス国とダフル国の平和条約の律役者とまで成り上がっていったそうだ。

 
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