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【難を乗り切れ】

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 朝の日差しが顔にさし、鳥のさえずりが響き目がさめる。

 部屋の中はあちらこちらに枕から飛び出た羽毛が散らばっており、黒曜、肉まんはいつの間にかベットから落ちていて、何故か2人共うつ伏せで横たわり寝ている。

 プータンは自分専用の小さな座布団の上で大人しく丸く寝ていた。

 ふと横に気配を感じ横へ目線を移すと布の被った棺桶があった。

 夢じゃなかったか‥

 しかし、

「我ながらよくこの状況で寝れたもんだ。」と苦笑いを作る。

 さてと、今日はする事がいっぱいだな。

 とりあえず誰かにこの部屋を片付けてもらおう。

 瑠璃丸もこの状態のままにする訳にはいかないしな。

 メイドにでもこの処分を頼も‥って待て待て!

 よくよく考えたらこの状態の瑠璃丸を他の者に見せるのは良くないんじゃないか?

 いや!いかん!いかんぞこれは!!

 これは見られてはいけないものだ!

 もし見られでもしたら俺の存在そのものが皆から偏見の眼差しへと移り変わるのではないか?

 なんとしても他の者に見られる訳にはいかんぞ!

 しかしどうしたものか?

 思い悩む様に頭を抱えるとコンコンと部屋の扉がたたかれた。

 「ハル様。朝食の準備が出来ましたのでお呼びに来ました。起きてらっしゃいますか?」

 その声は最近入った新人メイドのメルシーだった。
 
 ガチャ、と扉のノブの音が響くと同時に飛びつくように慌てて扉を押さえこむ俺。

「あれ?鍵がかかってるのかしら?」

 ガチャガチャガチャ!何故か無理矢理こじ開けようとするメルシー。

 馬鹿!こいつ馬鹿!
 無理矢理開けようとすんじゃねぇ!

 ぐぅ!!

「?何かしら?何かに抑えつけられているような感覚です。ハル様!ハル様!聞こえてらっしゃいますか?いるのですか?」

 ガチャガチャガチャガチャ!さらに激しくノブを動かしこじ開けようとする。

 ぬぅ!!こ、この野郎!

 このままでは‥。

「応答がない。それに扉も開かない。となると、はっ!これはもしやハル様に何かあったのでは?」

 メルシーは何かを思いたったかのように近くの兵を呼び止めた。

「もし、そこの兵士様。ハル様からお返事が無く、扉も何かに抑えつけられているようで開かないのです。もしやハル様に何かあったのではと、」

「な!?なんとハル様が!!それは一大事!俺も手伝おう!」

 更にややこしくなったぁぁ!!

 咄嗟に農業フォークを取り出しドアにつっかえさせる。

「ぬ!?確かに開かぬな。」

 ガチャガチャガチャガチャ、ドン!ドン!

「ハル様!ハル様大丈夫ですか!?」

 ガチャガチャガチャガチャガチャ!

 おーい!!どんなけ開けたいの!?っつか俺は小さくても主の息子だよ!?もうやめてくれ!

 そんな中バットタイミングに瑠璃丸が目覚める。

 被せた布の凹凸が出た場所が揺れ動いたかと思うと窓から入ってきた風により布が落ちた。

「あぁ。これは、これは昨日の続きですの?最高です!最高ですわ!!また胸だけが、胸だけが冷たく曝け出されてますわぁ!!目覚め早々なんと!なんという褒美!!はぁ、はぁ、はぁ。」

「アホぉ!!声をだすんじゃねぇ!ばかぁ!!!」

「はっ!この声はハル様?」

 やっちまったぁぁぁ!思わず声だしちゃったじやないかぁ!!!

「しかも先程女性の声もした気が。‥まさか寝込みを襲われているのでは?」

「何ぃ!!?なんたる事だ!俺が今助けます!!ハル様!申し訳ありませんが扉を蹴破りますぞ!!」

 くぅ!もう無理だ!幼児の俺の力じゃ‥

 ドガァァァァン!!

 農業フォークがへし折れ扉が開かれた。



「ハル様!!!ご無事ですか!?」

「う、うーん。アレ?どうしたの?」

 あっぶねぇ!!

 我ながら咄嗟の起点から瑠璃丸を転移させ、あたかも寝ていたふりで起きるこの戦法。

 「寝ていらしたのですか?しかし、先程は何かが‥む?これはフォーク?それにこの散らかりよう。」

「あぁ、その農業フォークの事かな?昨日黒曜とかと夜遊んでた時につけてたんだ。そうか付けっぱなしだったか‥ごめんね。何か心配かけちゃったみたいで」

 笑顔を作ってみせると、兵士とメルシーは慌てだす。

「め、めっそうもございません。ハル様が無事なだけで私は!」

 ガヤガヤと話をしているとプータンが目をさます。

「ん?なんだど?朝から騒がしいど。」


〇〇。

 一方。

 「んん。」

 プリスがランスのベットから目を覚ましだす頃、ランスは既に着替えを済ませようと更衣室にあるクローゼットを開けた所だった。

ぬぅあ!!!!?

 バッシーン!!!

 ランスは驚きのあまりクローゼットを勢いよく閉めた。

 いやいやいやいやいやいや。

 何アレ!?

 嘘嘘嘘嘘嘘!!

 ランスは動揺してバクバクする心臓を手で宥める。

 きっと何かの見間違いだ。

 そうだよ!そうに決まってる!

 ランスはまた恐る恐るクローゼットを開ける。

 ボイーン、ボイーン。


「ぬ、なぁ!?」

 思わず鼻を抑えるランス。

 そしてその僅かな声の漏れを瑠璃丸は聞き逃さない。

「はっ!?そ、その声はランス様!?ランス様がそこにいらっしゃるのですね!!はぁ、はぁ、はぁ、はぁぁぁん!!ハル様!!ハル様最高‥」

 そしてバットタイミングな事に。

「ランス様?」

 バッシーン!!!!!

 勢いよくまたクローゼットを閉めるランス。

「ぷ、プププリス!!?」

 少し裏声気味になる。

「や、やぁ、おはよう。ど、どうしたの?」

 ランスの動揺にプリスは訝しむ表情を作る。

「先程何か聞こえた気がしましたが‥それにクローゼット‥」

「あ、あぁこれね?これは、その、えーと、なんか壊れてて勢いよく閉めなきゃ閉めれないんだよ。ははは‥」

「そう。‥でしたの?あ、そういえば今し方メイドの方がこられて朝食が出来ましたとお伝え頂きましたの。」

「あ、そ、そうか。うん。僕も着替えたら行くよ。悪いけどプリス先にいっててもらえる?」

「え?」

「え?」

 何が「え?」なのぉぉ!?

 僅かな間ができる。

 お願いだから先にいっててプリスぅ!!

「‥分かりましたの。」

 プリスは更衣室から出ていった。

 (ハルのバカぁぁぁ!!)


 その後、なんとかランスは瑠璃丸を刀に戻せるという事を思い出し、その難を逃れる事が出来たのであった。



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