異世界転生した俺は、産まれながらに最強だった。

桜花龍炎舞

文字の大きさ
上 下
46 / 66

【誰だって過去はある】

しおりを挟む
「わ!な、なんだ!?」

 光が消えると俺は元いた武器屋に戻っていて、前には鍛冶屋のダルブと父さん達が驚きの表情で立っていた。

「いっ、今のはいったい?」

 父さんは混乱しているようだ。

 どうやら神と会った時と同じで此処では時間は経っていなかったようだ。

 「君は誰だ?」

 父さんがオレに向かって言う。

 「え?何の冗談‥」と思ったが、背後から俺の首元に絡みつく腕に気づき、バッと離れて振り返る。

 するとそこにいたのは

「こ、黒曜丸!?」

「ふむ。ハルの特質な魔力を汲々する事で我の能力が更に向上し、擬人化ができるようになったぞ。ふふん」

 ドヤ顔が腹立つ。

 そんな会話を無視して大きな声が響く。

「無い!剣が無い!!いったい何処へ!?」

  騒いだのはダルブだった。

「そんなに慌ててどうしたのです?」

 母さんがダルブに尋ねる。

「あ、あぁ。俺が師匠から譲り受けた刀が無くなったんだよ。」

「刀!?刀とはかの英雄オキタが使っていたという武器ですか?」

 流石は父さん。刀の存在を知っているようだ。

 けどお父さんの反応はいつにもましてテンションが上がっているように感じとれた。

「はは。それだとスゲエんだが、それのレプリカみたいなやつだよ。ナマクラでちっとも切れやしねえ。だが、思い入れのあるもんなんだよ。今そこに落ちたと思ったんだがなぁ。」

 ふとダルブは黒曜丸に目をむける。

 黒曜丸はフフンと鼻を鳴らしお決まりの厨二病のキメポーズを決める。

「どうやら我の存在がバレてしまったようだな。そう!!我こそが‥」
「嬢ちゃんごめんよ。いまはそれどころじゃないんだ。」

 黒曜丸がコケそうになる。

「ってま、待てダルブ!お主は刀を探しておるのではないのか!?」

「あぁ。っつか嬢ちゃん何で俺の名前を知ってんだ?」

「ふふ。よくぞ聞いた!我こそがその刀なのだ!!!」



「「「‥‥。」」」


「バカにしてんのか?」

 ズコー!!黒曜丸が前にヘッドスライディング。

 騒がしい奴だな。

 俺が苦笑いすると、隣に来たランスが俺に問いかける。

 「ハル。どうゆう事なの?いきなり光って収まったと思ったらこんな綺麗な女の子とくっついてるし。」

「クンクン。この女。妙な感じだど。。」

 プーたんは野生的な勘なのか黒曜丸が普通ではないと、何となくわかったようだ。

 まぁいきなり出てきてるのだから普通じゃないのは当たり前だけどな。

「えーと。説明しても信じてもらえないかもだけど彼女は黒曜丸。刀が長い時を経て意思を持ち擬人化したんだってさ。」

「え!?あの子、刀なの!?」

 ランスとプーたんの驚き様は面白いが、どうやら黒曜丸の言い分にダルブは子供のイタズラとばかりに信用しきれず、黒曜丸と口論になっていて、父さん母さんはそれの仲裁に入っていた。

 仕方ない。助けてやるか。

「ダルブさん。間違いなく、黒曜丸はさっきの刀ですよ。黒曜丸。もう一度刀に戻れないの?」

「む。無論戻れるぞ。ほれ!」

 黒曜丸は一瞬にして美しい黒刄の刀剣へと変化し、宙にふわりと浮いて見せた。

 なんとまぁ綺麗な刀だ。何度見ても心奪われる物であるが、本人が厨二病なだけに凄く、物凄く残念だ。

 俺の思考は置いといて、ダルブはその光景に驚きの表情を見せていた。

「こ、こんな事って。」

 勿論父さん母さん、ランスも驚きを隠せないようだった。



〇〇


「しかし、俺が師匠から譲り受けた刀がマジもん伝説の四刀の一振りだったとはな。」

「なぜ、今まで気付かなかったのです?」

 父さんの疑問はもっともだ。俺も気になっていた。

 何でこんなあからさまに凄い刀がこの領地、またこのダルブの元にずっとあったのか。

 ちなみに黒曜丸は人の姿に戻っている。

「まぁな。実際そうじゃねぇかとは思ってたんだ。現に其奴、いや今は嬢ちゃんか。嬢ちゃんを店からもってこうとした奴は何故か入り口で倒れちまいやがる。師匠は呪われた魔剣なんていってたが、なんやかんや大事にしててよ。特にこっちに何か気概があるわけでもねぇし、師匠が死んでからは店の厄除みたいに飾っておいたんだ。こいつは絶対価値のあるもんだってな。」

「ふふ。流石はダルブ。そうだ!そんなお主とガブリオスだからこそ例外としてわれに触れても危害は加えなかったのだ。しかし、我本来の力を振るう程の魔力は師匠共々に無かったがな。」

 黒曜丸の言葉にダルブは何故か安心したような表情を見せる。

「そうか。俺らが大切にしていたのは四刀だったか。今まで大切にしてきて心から良かったと思うぜ。これで師匠もようやく満足できて成仏できるだろうな。」

 ダルブは天位をみあげる。

 まぁ俺の知らない物語が其処にはあるのだろうな。

 詮索してもいいが、結構俺は気にならない事には無関心だからあえて聞かないけどね。

「ダルブさん?過去にな‥。」

 ランスが喋ろうとした瞬間にランスのみにテレパシーを飛ばす。

(長くなるから聞かないで!聞くなら俺のいない時にして!)

 俺の言葉でランスは苦笑いしつつ、出そうになった言葉を飲み込んだ。

「ふふ。しかし世の中面白いものだ。こうして合間見、会話を成せるとは思わなかったぞダルブ。いや昔の二つ名でここは呼ばせてもらおう。【混沌の審判カオス・ジャッジメント】よ!」

 黒曜丸がそう言うと、ダルブの顔が青ざめる。

 ぶ!!!思わず吹き出しそうになるのを手で押さえつける俺!

「な、なな‥」

 一瞬で脂汗が吹き出て言葉を詰まらせるダルブ。

 周りは首を傾げその事の重大さに気づいていない様だ。

 正にカオス!!!笑

 だめだ!!!ダルブの青ざめた顔を直視できない!

「な、なんだその驚き様は?共に鮮血の亡霊ブラッディファントムを打ち倒すべく死地を共にした仲だろうに。」

「!!!?」
!!?

「な、ななな、なにをいってるんだい?嬢ちゃん。」

 黒曜丸の言葉にダルブは動揺を隠せないようで目をキョロキョロと動かし定まらない。

「ブラッディファントム?‥。そんな組織あったかな?」

 父さんは本気でやっているのか本当に考える様に顎に手を当てる。

「な、そ、そんな組織あるわけないだろう!ネイブル君!」

 ダルブが慌てて父さんの肩に手を置く。

 君?何故に?

 あからさまに黒歴史がバレそうで動揺しているようにしか見えん。

 思わず口角が上がり吹き出しそうになる俺。

 いかんいかん。冷静を保てオレ!ゴホっゴホっ。

 ダメだぁ~!ニヤける!

 ニヤけてはいけないと必死に口を大きく開けて違う場所へ一点集中!全集中!!!

「むう。忘れてしまったのか?あの輝かしいまでの栄光の日々を!!見損なったぞダルブよ!!!こうなったら我の当時の名前を告げて思い出させてやろうぞ!!!我こそは漆黒刹那撲滅龍狼剣!!」

 でたぁぁぁあ!!!!俺は笑うのを堪える為に頭を地面にうちつけた。

 ダルブは石化した。

 ってか何この名前。

 龍と狼が混ざってるし、それっぽい漢字並べただけじゃね?笑

 まぁもっとも漢字なんてものはこの世界にないけど。

 あーだめだこれ。

 これだけで暫く寝る時思い出し笑いしちゃうよぉ~!!!笑

  
しおりを挟む
感想 71

あなたにおすすめの小説

異世界転生したら何でも出来る天才だった。

桂木 鏡夜
ファンタジー
高校入学早々に大型トラックに跳ねられ死ぬが気がつけば自分は3歳の可愛いらしい幼児に転生していた。 だが等本人は前世で特に興味がある事もなく、それは異世界に来ても同じだった。 そんな主人公アルスが何故俺が異世界?と自分の存在意義を見いだせずにいるが、10歳になり必ず受けなければならない学校の入学テストで思わぬ自分の才能に気づくのであった。 =========================== 始めから強い設定ですが、徐々に強くなっていく感じになっております。

神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜

月風レイ
ファンタジー
 グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。  それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。  と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。  洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。  カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。

転生したおばあちゃんはチートが欲しい ~この世界が乙女ゲームなのは誰も知らない~

ピエール
ファンタジー
おばあちゃん。 異世界転生しちゃいました。 そういえば、孫が「転生するとチートが貰えるんだよ!」と言ってたけど チート無いみたいだけど? おばあちゃんよく分かんないわぁ。 頭は老人 体は子供 乙女ゲームの世界に紛れ込んだ おばあちゃん。 当然、おばあちゃんはここが乙女ゲームの世界だなんて知りません。 訳が分からないながら、一生懸命歩んで行きます。 おばあちゃん奮闘記です。 果たして、おばあちゃんは断罪イベントを回避できるか? [第1章おばあちゃん編]は文章が拙い為読みづらいかもしれません。 第二章 学園編 始まりました。 いよいよゲームスタートです! [1章]はおばあちゃんの語りと生い立ちが多く、あまり話に動きがありません。 話が動き出す[2章]から読んでも意味が分かると思います。 おばあちゃんの転生後の生活に興味が出てきたら一章を読んでみて下さい。(伏線がありますので) 初投稿です 不慣れですが宜しくお願いします。 最初の頃、不慣れで長文が書けませんでした。 申し訳ございません。 少しづつ修正して纏めていこうと思います。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

転生貴族の異世界無双生活

guju
ファンタジー
神の手違いで死んでしまったと、突如知らされる主人公。 彼は、神から貰った力で生きていくものの、そうそう幸せは続かない。 その世界でできる色々な出来事が、主人公をどう変えて行くのか! ハーレム弱めです。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

処理中です...