上 下
18 / 35

18話 潔白

しおりを挟む
「おお、捕らえましたか。よくやってくれました」

 大聖堂に到着すると、エメルテアがいる部屋まで運ばれた。
 こいつの命令で、俺たちは捕らえられたのか。

「その者たちはギャレク教の信者で、何らかの目的があって私に近づいた可能性があります。徹底的に調べ上げてください」

 エメルテアが命令するように言った。
 聖女に命令するというのに若干違和感を覚えたが、まあこいつらの内情はよく分からないからな。
 とにかくここは自身の潔白をきちんと証明しないといけない。

「俺はそのギャレク教とやらに何の関わりもない。さっき初めて聞いたくらいだ」
「嘘ですね。あなたに現れた紋章が、忠義の聖女だったことを考えれば、あなたがギャレク教に何の関わりもないということは、ありえないことでしょう」
「言っていることがまったく分からん。俺がこの子の守護騎士になったのは、師匠に預かってから成り行きでなっただけだ。ギャレク教とやらは、まったく関係ない」
「あくまでしらをきる気ですか」

 エメルテアは俺の言葉を信じる気は毛頭ないみたいだ。

「大司教。最初から疑ってかかるのも、だめですわ。もう少しちゃんと調べてみないと」

 イリーナがそう言った。

「二人が白だとでも?」
「ええ、私の勘では二人はギャレク教に関わりはないと思いますわ」
「ふむ……あなたの勘は結構鋭いですからね」

 エメルテアは考え込む。

「まあ、確かに最初から百パーセント黒だと決めてかかるのも、間違っているかもしれませんね。あれを使って調べてみますか」

 あれとは何だ?
 よく分からないが、何か調べる方法でもあるのだろうか。

 エメルテアが、パン! と一度手を叩いた。
 叩いてからしばらくすると、騎士たちが部屋に何かを運んできた。
 大きな白い半透明の球体だ。

「何だこれは」
「お二人ともこの球に手で触れてください」

 エメルテアが指示をしてきた。
 俺とミリアは、少し戸惑いながら球に触れる。

「これは真実球。この球に触れている状態で嘘をつくことは出来ません。これから私の質問に、正直に答えてください」

 何だよそれ。
 そんなもんあるなら、最初から使っておけよ。そしたら俺がギャレク教とやらと何の関係もないことがすぐ証明できていたのに。

「さて質問します。あなたたちはギャレク教の信者ですか?」
「違う」
「ちがいます」

 エメルテアの質問を否定する。
 俺たちが質問に答えると、エメルテアは注意深く真実球を観察する。
 見る限りでは、何の反応もない。

「ふむ……。あなたたちが、私に近づいた目的はなんですか?」
「守護騎士になったが、どういうものかよくわからないので、情報を得たかったからだ」
「……え、えーと……リストさんが行ったから、わたしもついていきました」

 反応はない。

「ふむ……。これはちゃんと作動しているのでしょうか? 試しに嘘をついてみてください。質問に答えるのは守護騎士だけで結構ですよ。あなたは男ですか?」

 疑い深い奴だな。
 わざと嘘をつけって事だな。

「違う」

 そう答えた瞬間、球が赤色になる。
 突然の事で少しびっくりする。
 数秒後元に戻った。

「正常ですかね。あなた女ではないですよね」
「どこからどう見ても男だろうが!」
「うーん…………、念のため、もう一度嘘をついてみてください。あなたは目が三つ以上ありますか?」
「ある」

 もう一度、球が赤く染まった。

「あなた目が背中にあったりしませんよね」
「ねーよ! 俺は普通の人間だ」
「ですよね……。やっぱり正常ですか。もう一度聞きますが、あなたたちはギャレク教には何のかかわりもないのですね?」
「ない」
「ありません」

 真実球は赤く染まらず、白いままだ。

「どうやら嘘はついていないようですね」

 俺たちの潔白が証明されたようだ。



しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

転生墓守は伝説騎士団の後継者

深田くれと
ファンタジー
 歴代最高の墓守のロアが圧倒的な力で無双する物語。

妹と寝たんですか?エセ聖女ですよ?~妃の座を奪われかけた令嬢の反撃~

岡暁舟
恋愛
100年に一度の確率で、令嬢に宿るとされる、聖なる魂。これを授かった令嬢は聖女と認定され、無条件で時の皇帝と婚約することになる。そして、その魂を引き当てたのが、この私、エミリー・バレットである。 本来ならば、私が皇帝と婚約することになるのだが、どういうわけだか、偽物の聖女を名乗る不届き者がいるようだ。その名はジューン・バレット。私の妹である。 別にどうしても皇帝と婚約したかったわけではない。でも、妹に裏切られたと思うと、少し癪だった。そして、既に二人は一夜を過ごしてしまったそう!ジューンの笑顔と言ったら……ああ、憎たらしい! そんなこんなで、いよいよ私に名誉挽回のチャンスが回ってきた。ここで私が聖女であることを証明すれば……。

シンメトリーの翼 〜天帝異聞奇譚〜

長月京子
恋愛
学院には立ち入りを禁じられた場所があり、鬼が棲んでいるという噂がある。 朱里(あかり)はクラスメートと共に、禁じられた場所へ向かった。 禁じられた場所へ向かう途中、朱里は端正な容姿の男と出会う。 ――君が望むのなら、私は全身全霊をかけて護る。 不思議な言葉を残して立ち去った男。 その日を境に、朱里の周りで、説明のつかない不思議な出来事が起こり始める。 ※本文中のルビは読み方ではなく、意味合いの場合があります。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

ボロボロになるまで働いたのに見た目が不快だと追放された聖女は隣国の皇子に溺愛される。……ちょっと待って、皇子が三つ子だなんて聞いてません!

沙寺絃
恋愛
ルイン王国の神殿で働く聖女アリーシャは、早朝から深夜まで一人で激務をこなしていた。 それなのに聖女の力を理解しない王太子コリンから理不尽に追放を言い渡されてしまう。 失意のアリーシャを迎えに来たのは、隣国アストラ帝国からの使者だった。 アリーシャはポーション作りの才能を買われ、アストラ帝国に招かれて病に臥せった皇帝を助ける。 帝国の皇子は感謝して、アリーシャに深い愛情と敬意を示すようになる。 そして帝国の皇子は十年前にアリーシャと出会った事のある初恋の男の子だった。 再会に胸を弾ませるアリーシャ。しかし、衝撃の事実が発覚する。 なんと、皇子は三つ子だった! アリーシャの幼馴染の男の子も、三人の皇子が入れ替わって接していたと判明。 しかも病から復活した皇帝は、アリーシャを皇子の妃に迎えると言い出す。アリーシャと結婚した皇子に、次の皇帝の座を譲ると宣言した。 アリーシャは個性的な三つ子の皇子に愛されながら、誰と結婚するか決める事になってしまう。 一方、アリーシャを追放したルイン王国では暗雲が立ち込め始めていた……。

妹に婚約者を奪われ、聖女の座まで譲れと言ってきたので潔く譲る事にしました。〜あなたに聖女が務まるといいですね?〜

雪島 由
恋愛
聖女として国を守ってきたマリア。 だが、突然妹ミアとともに現れた婚約者である第一王子に婚約を破棄され、ミアに聖女の座まで譲れと言われてしまう。 国を頑張って守ってきたことが馬鹿馬鹿しくなったマリアは潔くミアに聖女の座を譲って国を離れることを決意した。 「あ、そういえばミアの魔力量じゃ国を守護するの難しそうだけど……まぁなんとかするよね、きっと」 *この作品はなろうでも連載しています。

召喚魔法使いの旅

ゴロヒロ
ファンタジー
転生する事になった俺は転生の時の役目である瘴気溢れる大陸にある大神殿を目指して頼れる仲間の召喚獣たちと共に旅をする カクヨムでも投稿してます

転生することになりました。~神様が色々教えてくれます~

柴ちゃん
ファンタジー
突然、神様に転生する?と、聞かれた私が異世界でほのぼのすごす予定だった物語。 想像と、違ったんだけど?神様! 寿命で亡くなった長島深雪は、神様のサーヤにより、異世界に行く事になった。 神様がくれた、フェンリルのスズナとともに、異世界で妖精と契約をしたり、王子に保護されたりしています。そんななか、誘拐されるなどの危険があったりもしますが、大変なことも多いなか学校にも行き始めました❗ もふもふキュートな仲間も増え、毎日楽しく過ごしてます。 とにかくのんびりほのぼのを目指して頑張ります❗ いくぞ、「【【オー❗】】」 誤字脱字がある場合は教えてもらえるとありがたいです。 「~紹介」は、更新中ですので、たまに確認してみてください。 コメントをくれた方にはお返事します。 こんな内容をいれて欲しいなどのコメントでもOKです。 2日に1回更新しています。(予定によって変更あり) 小説家になろうの方にもこの作品を投稿しています。進みはこちらの方がはやめです。 少しでも良いと思ってくださった方、エールよろしくお願いします。_(._.)_

処理中です...