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第1話 異世界転移
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――まだ死ねない!
失いかけつつある意識で俺はそう強く願った。
妹と弟をあんな理不尽な理由で殺したあの男に復讐を果たすまで絶対に死ねない。
そう強く願ったが、それでも現実は非情だ。
体中に怪我を負い、大量の血が流れている。もはや、痛みも消えていた。
――駄目だ、死ねない。死ねないんだ……
意識が暗い闇へと落ちていく。
その間際。
『スキル"死霊王"を発動します』
その声が俺の頭の中に響き渡った。
〇
「お兄ちゃん! 大変だ!」
朝8時。
俺、田宮信二は、その声と共に深い眠りから叩き起こされた。
何事かと思い体を起こし、周囲の様子を確認する。
妹の茜が部屋の入り口に立っていた。
後ろには弟の青葉もいる。
二人は一卵性の双子だ。年齢は14歳。
俺より十歳も年下だ。
茜が姉で青葉が弟である。
顔はそっくりだが、髪型が違うので、見分けはつく。
茜はツインテールで、青葉はショートカットである。
ただ、茜があまり胸などが出ておらず、青葉も華奢な体つきをしているので、髪型が一緒だと区別がつかないかもしれない。
「何が大変なんだ……?」
俺は眠気を我慢して、ベッドに腰をかけながら二人の話を聞く。
2年前、両親が事故で死んだので、今は俺と茜、青葉は三人で暮らしていた。
歳もだいぶ離れているし、親代わりとしてここ二年間は過ごしてきた。まあ、お金に関しては保険とか遺産とかがあったから、俺が働いて出しているというわけではないんだが。
主に精神面で親代わりになっていた。
「何かリビングに変なのが出来てたんだ!」
「変なのってなんだよ……」
「えーと……と、とにかく変なのなの!」
茜は要領を得ない説明をする。
「青葉解説を頼む」
「リビングの床に、白い光を放つ円が描かれていたんだ。魔法陣って言えば分かりやすいかな」
青葉は反対にしっかりと説明をした。
一卵性の双子で顔などは似ているのだが、内面には結構違いがある。
しかし魔法陣だ? ファンタジー作品とかにある?
誰かの悪戯か? でも光ってるって言ってたしな。
二人の見間違いか?
茜は早とちりする性格なのであり得るが、青葉が見間違えるとは考えづらい……
「何か怖いからお兄ちゃん来てよー」
「分かった分かった。袖引っ張るな」
茜が袖を引っ張ってくるので、俺は立ち上がる。
その後、部屋を出て階段を降り、一階のリビングに向かう。
話通り、リビングの床に魔法陣が描かれていた。
大きさは半径5mくらい。俺の予想より大きかった。
「あ、あれ? あんなに大きかった?」
「……! 確かに、倍くらいになってる!」
茜と青葉が驚きながら魔法陣を見た。
魔法陣を注意深く見ていると、じわじわと広がっていっているのが分かった。
それに茜と青葉も気づいたみたいだ。
「こ、怖いよー」
「……」
怖がりな茜は声を振るわせながら俺の腕にしがみついてた。青葉は冷静に魔法陣を観察している。
確かに不気味ではあるが、そこまで恐怖することではない。
あの魔法陣に触れたらなんかあるかも知れないが、触れなければ多分大丈夫だろう。
「あれに触れないように一旦家から出るぞ」
俺がそういうと、二人はコクコクと頷いた。
家を出るため一歩目を歩き出した、その時。
魔法陣が急速に広がり、俺たちは一瞬で魔法陣の内側に入った。
「!?」
その瞬間。
視界が真っ白に染まった。
な、何が起こった?
混乱していると、ザワザワと人々の喋り声が聞こえてきた。
正直、聞きなれない言語である。日本語でもなければ、恐らく英語でもない。
真っ白に染まっていた視界が、徐々にだが正常に戻ってきた。
周囲を確認すると、そこはリビングではなかった。
数十人の人間たちが俺たちを驚いた表情で見ていた。
その人間たちは、白人で恐らく日本人ではない。
ほとんどが男で、女は3名だけだ。
部屋は広く、床には赤いカーペットが敷かれており、壁には何やら壮大な絵が描かれていたり、ステンドグラスがあったりとやたら豪華だ。
ど、どういうことだこれは……
あの魔法陣の仕業か?
人間はいるみたいだが、何をいっているか分からないし。
そもそも、聞いても素直に教えてくれるのか?
「ど、何処ここ……」
戸惑う茜の声が間近で聞こえる。
青葉も後ろにいた。俺一人が妙な目に遭っているというわけではなさそうだった。
ズキッ!
何の前触れもなく、強烈な頭痛が頭を襲った。
反射的に俺は頭を抑える。
「痛っ!」「った!」
茜と青葉も声を上げながら頭を抑えた。
どうやら、同時に頭痛がしたらしい。
頭痛が収まってくる。
すると、俺たちを見ていた白人男の一人が、こちらを見つめならが口を開いた。
「……かるか……? 分かるか? 私の言葉が分かるか?」
「!!」
さっきまで分からなかった言葉が、不思議と理解できるようになった。
俺は頷く。
茜と青葉も同じく頷いた。
「良かった。困惑しているだろうから、教えてあげましょう」
男は衝撃的な言葉を口にした。
「ここはあなた達が今まで住んでいた世界ではありません。あなた達からすると、"異世界"と言うべき世界です」
失いかけつつある意識で俺はそう強く願った。
妹と弟をあんな理不尽な理由で殺したあの男に復讐を果たすまで絶対に死ねない。
そう強く願ったが、それでも現実は非情だ。
体中に怪我を負い、大量の血が流れている。もはや、痛みも消えていた。
――駄目だ、死ねない。死ねないんだ……
意識が暗い闇へと落ちていく。
その間際。
『スキル"死霊王"を発動します』
その声が俺の頭の中に響き渡った。
〇
「お兄ちゃん! 大変だ!」
朝8時。
俺、田宮信二は、その声と共に深い眠りから叩き起こされた。
何事かと思い体を起こし、周囲の様子を確認する。
妹の茜が部屋の入り口に立っていた。
後ろには弟の青葉もいる。
二人は一卵性の双子だ。年齢は14歳。
俺より十歳も年下だ。
茜が姉で青葉が弟である。
顔はそっくりだが、髪型が違うので、見分けはつく。
茜はツインテールで、青葉はショートカットである。
ただ、茜があまり胸などが出ておらず、青葉も華奢な体つきをしているので、髪型が一緒だと区別がつかないかもしれない。
「何が大変なんだ……?」
俺は眠気を我慢して、ベッドに腰をかけながら二人の話を聞く。
2年前、両親が事故で死んだので、今は俺と茜、青葉は三人で暮らしていた。
歳もだいぶ離れているし、親代わりとしてここ二年間は過ごしてきた。まあ、お金に関しては保険とか遺産とかがあったから、俺が働いて出しているというわけではないんだが。
主に精神面で親代わりになっていた。
「何かリビングに変なのが出来てたんだ!」
「変なのってなんだよ……」
「えーと……と、とにかく変なのなの!」
茜は要領を得ない説明をする。
「青葉解説を頼む」
「リビングの床に、白い光を放つ円が描かれていたんだ。魔法陣って言えば分かりやすいかな」
青葉は反対にしっかりと説明をした。
一卵性の双子で顔などは似ているのだが、内面には結構違いがある。
しかし魔法陣だ? ファンタジー作品とかにある?
誰かの悪戯か? でも光ってるって言ってたしな。
二人の見間違いか?
茜は早とちりする性格なのであり得るが、青葉が見間違えるとは考えづらい……
「何か怖いからお兄ちゃん来てよー」
「分かった分かった。袖引っ張るな」
茜が袖を引っ張ってくるので、俺は立ち上がる。
その後、部屋を出て階段を降り、一階のリビングに向かう。
話通り、リビングの床に魔法陣が描かれていた。
大きさは半径5mくらい。俺の予想より大きかった。
「あ、あれ? あんなに大きかった?」
「……! 確かに、倍くらいになってる!」
茜と青葉が驚きながら魔法陣を見た。
魔法陣を注意深く見ていると、じわじわと広がっていっているのが分かった。
それに茜と青葉も気づいたみたいだ。
「こ、怖いよー」
「……」
怖がりな茜は声を振るわせながら俺の腕にしがみついてた。青葉は冷静に魔法陣を観察している。
確かに不気味ではあるが、そこまで恐怖することではない。
あの魔法陣に触れたらなんかあるかも知れないが、触れなければ多分大丈夫だろう。
「あれに触れないように一旦家から出るぞ」
俺がそういうと、二人はコクコクと頷いた。
家を出るため一歩目を歩き出した、その時。
魔法陣が急速に広がり、俺たちは一瞬で魔法陣の内側に入った。
「!?」
その瞬間。
視界が真っ白に染まった。
な、何が起こった?
混乱していると、ザワザワと人々の喋り声が聞こえてきた。
正直、聞きなれない言語である。日本語でもなければ、恐らく英語でもない。
真っ白に染まっていた視界が、徐々にだが正常に戻ってきた。
周囲を確認すると、そこはリビングではなかった。
数十人の人間たちが俺たちを驚いた表情で見ていた。
その人間たちは、白人で恐らく日本人ではない。
ほとんどが男で、女は3名だけだ。
部屋は広く、床には赤いカーペットが敷かれており、壁には何やら壮大な絵が描かれていたり、ステンドグラスがあったりとやたら豪華だ。
ど、どういうことだこれは……
あの魔法陣の仕業か?
人間はいるみたいだが、何をいっているか分からないし。
そもそも、聞いても素直に教えてくれるのか?
「ど、何処ここ……」
戸惑う茜の声が間近で聞こえる。
青葉も後ろにいた。俺一人が妙な目に遭っているというわけではなさそうだった。
ズキッ!
何の前触れもなく、強烈な頭痛が頭を襲った。
反射的に俺は頭を抑える。
「痛っ!」「った!」
茜と青葉も声を上げながら頭を抑えた。
どうやら、同時に頭痛がしたらしい。
頭痛が収まってくる。
すると、俺たちを見ていた白人男の一人が、こちらを見つめならが口を開いた。
「……かるか……? 分かるか? 私の言葉が分かるか?」
「!!」
さっきまで分からなかった言葉が、不思議と理解できるようになった。
俺は頷く。
茜と青葉も同じく頷いた。
「良かった。困惑しているだろうから、教えてあげましょう」
男は衝撃的な言葉を口にした。
「ここはあなた達が今まで住んでいた世界ではありません。あなた達からすると、"異世界"と言うべき世界です」
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