追放賢者の領地改革! 〜成長魔法で優秀な人材を育てまくっていたら、弱小領地が最強領地になってた〜

未来人A

文字の大きさ
上 下
4 / 31

第4話 救出

しおりを挟む
 数日後、僕の護送がスタートした。

 あまり厳重な警備ではなかった。

 馬車で運ばれ、僕は馬車の荷台に乗せられた。

 荷台の前にはやる気のなさそうな態度の騎士が一人だけ。

 僕は、特に繋がれたりもせず、動ける状態だった。

 逃げようと思えば逃げられる状態である。

 恐らく、今の僕など逃がしても問題ないと思っているのだろう。

 魔法も使えず、身寄りもない。
 ゴミみたいな犯罪者だ。

 逃げても、僕に居場所なんてない。
 このままローエン島に行くのが、一番生存率の高い選択だと思えた。

 その時、いきなり馬車が停止した。

 外の様子は確認できない。しかし、声は聞こえてきた。どうやら、大きな木が道に倒れており、通行を止めているようだ。

 とにかくどかそうとしているようで、僕を見張っていた騎士も木をどかすのを手伝った。

 見張りがなくなった状態。逃げようと思えば逃げられるが、意味のない行為である。

 僕は何もせず、座っていた。

 すると、何者かが荷台に入ってきた。

 そして、僕を抱えた。

「な、何?」
「助けに来た。叫ぶな」

 と小声でその者は言った。声からして女性であるようだった。いわゆるお姫様抱っこの形になって、男として非常に情けない思いをしたが、特に抵抗せずに、運搬された。

 あっさりと馬車からは出ることができた。

 木をどかしている騎士たちも、全く気づいていない。

 しばらく女は僕を抱えたまま走り続けた。

 そして、別の馬車がある場所に到着した。

「姫様。お連れいたしました」
「ご苦労」

 姫様と呼ばれた人物の顔を僕は見たことがあった。

 最近会ったパーティーで出会った、トレンス王国の第二王女、シンシア・ファーサスだ。

 印象に残っていたので、間違いない。
 パーティーの時はドレスを着ていたが、今日は男が着るような黒いスーツを身に着けている

「やはり思った通りになったな。君の出自を調べて知ってから、こうなることは予想がついていた」

 僕がスラム出身だと言うことは、公にはなっていなかった。弱小貴族の出となっていたはずだ。

 だが、スラム出身だと知っている者もそれなりにいるので、誰かから聞いたのだろう。

「ライル・ブランドン。私を覚えているか?」
「はい……シンシア様……ですよね」
「そうだ。覚えていてくれて嬉しい」
「あの……あなたは僕が無罪だと思っているんですか?」
「あんな犯罪を起こす理由がないからな。不自然すぎる。それとも、本当だったのか?」
「いえ、僕は、僕は無罪です……」
「だろうな。まあ、私だけでなく、君が無罪だと思っているものは、それなりにいるだろう。皇帝が怖くて言い出せないだけでな」

 彼女は淡々とした口調でそういった。

 僕が無罪だと知っているから助けたのだろうか? いや、それでも今の僕は魔法が使えない雑魚だ。助けるメリットなんてないはずだ。

「なぜ、僕を助けたのですか?」
「君が欲しいからだ?」
「え?」

 つまりその意味は……

 彼女は僕に惚れたのだろうか? あのパーティーで。一目惚れ?

「え、えと、でも、その……あんまりお互いのこと知らないのに……」
「何か勘違いしているようだな。君の力が欲しいという意味だ」
「え? あの、僕がもう魔法使えないって、聞いてなかったんですか?」
「使えるさ。君が知らないだけでな」
「??」

 シンシアが何を言いたいのか、僕には理解できなかった。

「『成長魔法』というのを君は聞いた事はあるか?」
「……無いです」
「だろうな。君は魔法が何種類に分類されるか知っているな?」
「はい。攻撃魔法、回復魔法、支援魔法、防御魔法の四つです」

 魔法は主にこの四種類に分類される。

 ここからさらに、属性、難易度などで分けられることにはなるが、大まかな分類はこの四つである。

「正解だ。成長魔法はその四つのどれでもない。我がファーサス家だけが知っている秘密の魔法群だ。ありとあらゆる手を使い、秘密が漏れないようにしてきた。トレンス王国が、帝国の属国になった今も、その秘密は漏れていない」
「それって……」
「成長魔法は通常の魔法検査には出ない。特殊な魔法検査紙を使う必要がある。君にはその成長魔法がほかの魔法と同様、大量に使える可能性が高いと思い、私は君を助けた」

 驚きの話であった。成長魔法など聞いたこともなかったし、想像したことすらなかった。

 そんなものがあったとは。

 しかし、

「僕は確かに他の魔法はたくさん使えましたが、その成長魔法が使えるとは限りません」

 測ってみなければそれはわからないことである。

「それはそうだな。しかし、君は全ての魔法が百以上使えたんだろ?」
「はい」
「成長魔法だけ全く使えないなんて、逆に不自然だと思うがね」
「……」

 素直に頷けないが、僕も何となく使えるような気はしていた。

 シンシアは絶対に使えるのだと、信じているようだった。

「まあ、調べてみれば分かることだ。馬車に乗りたまえ。今から我が城へ移動する」

 拒否権はなさそうだった。
 秘密と言っていたし、知ってしまった僕をそのまま返す事はあり得ないだろう。

 僕は大人しく馬車に乗る。

 すぐに馬車は動き始めた。

 シンシアは僕の目の前で、足を組んで座っていた。
 その隣には、僕を拉致した女が座っている。

「彼女は私の騎士、ファリアナ・シルベスターだ」

 ファリアナと呼ばれた女は、無言で軽く会釈をした。
 全くの無表情。何を考えてるのかわからない表情に、少し恐怖心を覚えた。

「僕が魔法を使えなかったらどうなるんですか?」
「秘密を知られた以上、返すわけにもいかないが、殺すのは可哀想だ。城の召使いでもやってもらうか。三食昼寝付きで、給金もそれなりに出すぞ」
「……もし、成長魔法がたくさん使えたら?」

「――その時は君を領主にしよう」

 シンシアは即答した。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

【完結】帝国から追放された最強のチーム、リミッター外して無双する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】  スペイゴール大陸最強の帝国、ユハ帝国。  帝国に仕え、最強の戦力を誇っていたチーム、『デイブレイク』は、突然議会から追放を言い渡される。  しかし帝国は気づいていなかった。彼らの力が帝国を拡大し、恐るべき戦力を誇示していたことに。  自由になった『デイブレイク』のメンバー、エルフのクリス、バランス型のアキラ、強大な魔力を宿すジャック、杖さばきの達人ランラン、絶世の美女シエナは、今まで抑えていた実力を完全開放し、ゼロからユハ帝国を超える国を建国していく。   ※この世界では、杖と魔法を使って戦闘を行います。しかし、あの稲妻型の傷を持つメガネの少年のように戦うわけではありません。どうやって戦うのかは、本文を読んでのお楽しみです。杖で戦う戦士のことを、本文では杖士(ブレイカー)と描写しています。 ※舞台の雰囲気は中世ヨーロッパ〜近世ヨーロッパに近いです。 〜『デイブレイク』のメンバー紹介〜 ・クリス(男・エルフ・570歳)   チームのリーダー。もともとはエルフの貴族の家系だったため、上品で高潔。白く透明感のある肌に、整った顔立ちである。エルフ特有のとがった耳も特徴的。メンバーからも信頼されているが…… ・アキラ(男・人間・29歳)  杖術、身体能力、頭脳、魔力など、あらゆる面のバランスが取れたチームの主力。独特なユーモアのセンスがあり、ムードメーカーでもある。唯一の弱点が…… ・ジャック(男・人間・34歳)  怪物級の魔力を持つ杖士。その魔力が強大すぎるがゆえに、普段はその魔力を抑え込んでいるため、感情をあまり出さない。チームで唯一の黒人で、ドレッドヘアが特徴的。戦闘で右腕を失って以来義手を装着しているが…… ・ランラン(女・人間・25歳)  優れた杖の腕前を持ち、チームを支える杖士。陽気でチャレンジャーな一面もあり、可愛さも武器である。性格の共通点から、アキラと親しく、親友である。しかし実は…… ・シエナ(女・人間・28歳)  絶世の美女。とはいっても杖士としての実力も高く、アキラと同じくバランス型である。誰もが羨む美貌をもっているが、本人はあまり自信がないらしく、相手の反応を確認しながら静かに話す。あるメンバーのことが……

「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。

桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。 「不細工なお前とは婚約破棄したい」 この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。 ※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。 ※1回の投稿文字数は少な目です。 ※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。 表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇ 2024年10月追記 お読みいただき、ありがとうございます。 こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。 1ページの文字数は少な目です。 約4500文字程度の番外編です。 バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`) ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑) ※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~

そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」 「何てことなの……」 「全く期待はずれだ」 私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。 このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。 そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。 だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。 そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。 そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど? 私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。 私は最高の仲間と最強を目指すから。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

処理中です...