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三十四話目 決闘5
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マシャは肩口からあふれる血の温もりを感じながら、必死に息を整えようとしていた。
まだ戦える。しかし、劣勢なのは間違いない。
先ほどまで援護をしてくれていたバラシアは、気を失っているようだ。もはや援護は望めない。
肩口の傷は深く、時間が経てば立つほど血が流れ体力が削がれていく。
早く決着をつけるしかない
マシャはそう思い、剣先をバグダムドに向ける。
そして、全力で走り出し、
「閃光突!!」
高速の突きを放った。この技はマシャが師匠から教わった最強の技である。
圧倒的速度で突きを放つ最終奥義。この剣を避けられる者はまずいない。人間が反応できる遥か上の速度で突きが放たれるからだ。
一度使えば心臓を貫かれ終了である。
しかし、
「危ない危ない」
暴虐王は突きを剣で受け止めていた。
「ぐ……!」
受け止められて、マシャの顔が悔しそうに歪む。
「今の攻撃はなかなかだったぞ。当たったらまずそうだから、本気を出して受け止めちまった。少し遅れていたら胸に風穴が出来ていたな」
バグダムドはそう言った後、マシャの剣を叩き落とすために、自身の剣を、マシャの剣に全力で振り下ろす。握力が著しく落ちたマシャはなす統べなく、剣を振り落とされる。
バグダムドはその剣を拾い、決闘場の外に放り投げた。
「終わったな」
「ぐ……」
武器を失ってもなお、マシャはバグダムドを睨みつける。
「俺様がよっぽど憎いらしいな」
「当たり前だ貴様は最悪の人間だ。私の母を、グロス王国の人々を苦しめる! 貴様のような人間の存在を許せるわけがない」
「ふん、くだらない」
バグダムドをそう言って、マシャの頬を手で掴み、そして持ち上げた。
「は、離せ」
「俺様がやりたい放題生きるのも、俺様が強いからだ。強いという事はただそれだけでありとあらゆる権利が得ることが出来るのだ。お前の母のあのドラゴンを好きに犯そうと、二度と子の作れない体にしようと俺様を邪魔できる奴などいない。何人殺そうが、すべてを略奪しようが、俺様に意見できる奴などいない。世界で一番強い俺様こそが、世界で一番偉く、すべての権利を所有しているのだ」
自分の言葉に何の疑問も持たずに言い放つ、そういうバグダムドをマシャは殺意を込めて睨みつける。
しかし、この状態から抵抗は不可能だ。
バグダムドのセリフを聞いていた観客達は悔しさを顔に滲ませる。
しかし、誰も何も言えなかった。事実だったからだ。
現状の王都では、バグダムドが気まぐれに子供を殺そうが、女を寝取ろうが、抵抗できるものなどいない。
バグダムドは絶対的な存在であり、彼の行動を制限できるものはいなかった。
確かにバグダムドはすべての権利を持っているといっても過言ではなかった。
「最後に一度チャンスを与えてやろう。俺様は歯向かってくる者は、すべて殺すか性奴隷にしてきた。お前は俺様のガキだから性奴隷には出来ないから、本来なら殺している所だが、俺様のガキだということでここで殺すのは少し惜しい。俺様にこれからは従うと誓えば、生かしてやろう。誓わなければ貴様はここで頭を粉砕して殺す」
バグダムドの言葉を聞いたマシャ。
彼女は一切悩む事なく、
「お断りだ。貴様に従うならここで死んだほうがましだ!」
そう言い放った。
「そうか。少し残念だ」
バグダムドは、マシャの顔を掴んでいる手の力を徐々に強める。
「死ね」
そう言った瞬間、
「バラシアー、助けに来たぞー」
少し気の抜けた男の声が聞こえてきた。
まだ戦える。しかし、劣勢なのは間違いない。
先ほどまで援護をしてくれていたバラシアは、気を失っているようだ。もはや援護は望めない。
肩口の傷は深く、時間が経てば立つほど血が流れ体力が削がれていく。
早く決着をつけるしかない
マシャはそう思い、剣先をバグダムドに向ける。
そして、全力で走り出し、
「閃光突!!」
高速の突きを放った。この技はマシャが師匠から教わった最強の技である。
圧倒的速度で突きを放つ最終奥義。この剣を避けられる者はまずいない。人間が反応できる遥か上の速度で突きが放たれるからだ。
一度使えば心臓を貫かれ終了である。
しかし、
「危ない危ない」
暴虐王は突きを剣で受け止めていた。
「ぐ……!」
受け止められて、マシャの顔が悔しそうに歪む。
「今の攻撃はなかなかだったぞ。当たったらまずそうだから、本気を出して受け止めちまった。少し遅れていたら胸に風穴が出来ていたな」
バグダムドはそう言った後、マシャの剣を叩き落とすために、自身の剣を、マシャの剣に全力で振り下ろす。握力が著しく落ちたマシャはなす統べなく、剣を振り落とされる。
バグダムドはその剣を拾い、決闘場の外に放り投げた。
「終わったな」
「ぐ……」
武器を失ってもなお、マシャはバグダムドを睨みつける。
「俺様がよっぽど憎いらしいな」
「当たり前だ貴様は最悪の人間だ。私の母を、グロス王国の人々を苦しめる! 貴様のような人間の存在を許せるわけがない」
「ふん、くだらない」
バグダムドをそう言って、マシャの頬を手で掴み、そして持ち上げた。
「は、離せ」
「俺様がやりたい放題生きるのも、俺様が強いからだ。強いという事はただそれだけでありとあらゆる権利が得ることが出来るのだ。お前の母のあのドラゴンを好きに犯そうと、二度と子の作れない体にしようと俺様を邪魔できる奴などいない。何人殺そうが、すべてを略奪しようが、俺様に意見できる奴などいない。世界で一番強い俺様こそが、世界で一番偉く、すべての権利を所有しているのだ」
自分の言葉に何の疑問も持たずに言い放つ、そういうバグダムドをマシャは殺意を込めて睨みつける。
しかし、この状態から抵抗は不可能だ。
バグダムドのセリフを聞いていた観客達は悔しさを顔に滲ませる。
しかし、誰も何も言えなかった。事実だったからだ。
現状の王都では、バグダムドが気まぐれに子供を殺そうが、女を寝取ろうが、抵抗できるものなどいない。
バグダムドは絶対的な存在であり、彼の行動を制限できるものはいなかった。
確かにバグダムドはすべての権利を持っているといっても過言ではなかった。
「最後に一度チャンスを与えてやろう。俺様は歯向かってくる者は、すべて殺すか性奴隷にしてきた。お前は俺様のガキだから性奴隷には出来ないから、本来なら殺している所だが、俺様のガキだということでここで殺すのは少し惜しい。俺様にこれからは従うと誓えば、生かしてやろう。誓わなければ貴様はここで頭を粉砕して殺す」
バグダムドの言葉を聞いたマシャ。
彼女は一切悩む事なく、
「お断りだ。貴様に従うならここで死んだほうがましだ!」
そう言い放った。
「そうか。少し残念だ」
バグダムドは、マシャの顔を掴んでいる手の力を徐々に強める。
「死ね」
そう言った瞬間、
「バラシアー、助けに来たぞー」
少し気の抜けた男の声が聞こえてきた。
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