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第11話 深紅薬

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 ラーモスから逃げ切ることには成功した。

 その後、ゴブリンと遭遇し、普通に攻撃してきたので、そこで透明化が解けた誠司は知る。

 倒そうとするが、ラーモスが言っていた言葉を思い出し、ゴブリンから逃げた。

 スピードが違いすぎたので、あっさりと逃げることはできた。

 ボロボロの建物の跡があったので、そこで一旦止まり休憩する。

(はぁ……何なんだあいつは、あんな奴がいるなんて……)

 ラーモスの強さを思い出して、誠司は戦慄する。

(クソ……考えが甘かった)

 だいぶ自分を強化して、もうそう簡単にやられることはないだろうと、誠司は高を括っていた。

 それがあの異常な強さ。
 身体能力は大幅に劣っていない。
 パワーは数段ラーモスが上だが、体の頑丈さは誠司が上。
 スピードはわずかに劣るくらいだ。

 ただ、戦闘技術が圧倒的にラーモスが上だった。
 今のままだと勝てる姿は想像できない。
 多少強化して、ラーモスを身体能力で上回っとしても、勝利は不可能だ。

 今回は運良く逃げられたが、もう一度見つかったら逃げられないかもしれない。

(ラーモスは、魔物を殺したら感知できる。魔物を殺した時が俺の最後だ。って言ってたよな……ってことは、魔物を殺さない限り、奴と出くわす可能性は低いと見ていいか)

 魔物を殺して、それを感知したら捜索に動き出すという意味だろう。
 それまでは、どこかでじっとしてるはずだ。
 魔物を殺さなければ、ダンジョンに不利益は与えないし、放っておいても良い存在となる。

(……でも、ラーモスはここから脱出するには、私を倒せばいい、とも言ってた。ラーモスを倒さないと出ることができない仕組みなのか?)

 出会った時に言ってた言葉を誠司は思い出す。

(ここがダンジョンだとするならば、ボスとかがいてもおかしくない……ラーモスの異常な強さ……ラーモスはこのダンジョンのボスで、それを倒すまで出口が出現しない……とかだったら最悪だな)

 その推測が当たっていないことを、誠司は祈ったが、内心当たってそうだと強い不安を感じていた。

(……ここでじっとしていても仕方ない。もうちょっとダンジョンを探索しよう)

 誠司は立ち上がって探索を再開した。

 道中、レッド・マッシュを収集。
 筋力上昇ポーションを作成する。
 飲んで筋力を上げた。

 それ以外にステータスを上げる素材は見つからない。
 基本的にステータスを上げる素材は、レアである。
 そう簡単に見つかることはない。

 誠司としては筋力ではなく、スピードを上げられる素材が欲しかった。
 ラーモスとの一番の差は、戦闘の技量だ。
 筋力をいくら上げても、それは埋まらない。
 戦闘になって攻撃をまともに当てられる気がしていなかった。
 スピードで大幅に勝っていれば、いくらラーモスの技量が卓越しているとはいえ、攻撃を完全に避けることは不可能なはずだ。

 歩いていると、ダウジングの音がなった。

 だいぶ素材を見つけるのにもなれてきた。
 ダウジングの音を頼りに、素材を捜索。
 道中、狼みたいな魔物に襲われたので、逃げる。

 嚙まれても恐らくダメージは少ない。
 ただ、間違って殺してしまってはまずいので、逃げるのが一番いい選択だ。

 素材がある方向に歩き続ける。

 ダウジングの音がかなり大きくなる。

 目の前に、大きな深紅色の花がなっていた。
 ラフレシアくらいの大きな花だ。
 地球にあるラフレシアは、かなり臭いことで有名であるが、この花はいい匂いがする。

 接近すると、ダウジングの音が消えた。
 これが反応していた素材で間違いないようだ。
 誠司は花を根元から採取する。

 アプレイザルを使用する。

『クリムゾンフラワー レア度A  この花を原料に深紅薬を作成することができる』

 そう説明があった。

(深紅薬?)

 今までは、名を聞けばある程度効果を想像することが出来ていたが、この深紅薬に関しては、全く効果が想像できない。
 作った後、アプレイザルをかければ分かるだろう。
 そう考えた誠司は、とりあえず作ってみることにした。

(材料はこの花だけでいいのか? とりあえずやってみるか)

 誠司はクラフトを使用した。
 大きかった花弁が消滅する。

 誠司の手のひらに、親指大の丸い深紅色の球が転がっていた。あれだけ大きな花を使って、小さい薬を一個しか作れないようだ。

 アプレイザルを使って調べてみる。

(これはっ!)

 効果を聞き、誠司の心臓が大きく高鳴る。

 ――この深紅薬を使用すれば、ラーモスに勝てるかもしれない。

 誠司はそう思った。

 ラーモスを倒せば、ここから出られるかもしれない。

 ――挑むか?

 その考えが頭をよぎったが、

(駄目だ……リスクがデカすぎる。ラーモスに挑むのは、ほかの脱出方法が本当にないと判明してからだ。今はまだダンジョンの探索を続けよう)

 誠司は即座に自分の考えを否定した。

(まあただ、これを作れたのは良かった。いざという時は、使おう)

 誠司は深紅薬をリュックの中にいれた。
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