14 / 22
13.胸がいっぱいになる
しおりを挟む
「……というわけだから、玲さんもオスカーさんもしばらく私に付き合ってくださいね」
鏡花は一連の話を玲とオスカーにし終える。もちろん条件うんぬんは言っていないし、これを成功させたら白羽家の当主に、なんて玲には言いづらい。玲とオスカーは頷いてみせる。オスカーも基本大人しい様子で、鏡花には玲が2人いるように思えてならない。そしてお互い波長があったのかすっかりオスカーは玲に懐いている。
「あ、あの、玲さん鏡花さん。しばらく僕をおいてくださるとかで……本当にありがとうございます」
オスカーはぎこちなくそう頭を下げた。もう敬語も使いこなせるのね、と感心する一方そう言われてしまうと何も言えなくなる。オスカーがいたら、しばらく2人で会話することは少なくなるだろうな、なんて鏡花は思う。
「いいわ。オスカーさんも一生懸命働いて頂戴ね。そうしたら白羽家を挙げて日本の芸術作品をお見せするわ」
「いいんですか……!? ありがとうございます!」
目を輝かせるオスカーはなんだか子犬のように思えてしまった。今にも尻尾を振る様子が見えてしまいそう。白羽家はそういったものも取り入れた商品を卸しているためにいくらでもオスカーを日本の芸術に埋もれさせることができる。ふふん、と得意げに笑ってから鏡花は「頑張りましょうね」と声をかけた。
***
「で、さっそく会場の下見というわけだな」
「ええ……まあ藤はまだ咲ききっているわけではないけれどね」
次の日、鏡花は玲とオスカーを連れて会場となる場所の下見に来ていた。見渡す限り藤の花が広がっている、知る人ぞ知る神秘的な場所という雰囲気が漂う。オスカーはさっそく「これは何という花ですか!?」と大はしゃぎで鏡花は見ていてなんだか和んでしまう。
「ここには来たことが?」
玲に不意に尋ねられ、鏡花は頷いてみせた。一瞬玲の顔が曇る。
「……誰と?」
「ええと、家族とよ」
「そうか」
ふいと申し訳なさそうに玲は顔を逸らした。鏡花はなんとなく玲が言いたかったことが分かったような気がして小さく苦笑した。
「昔ね、母とよく来たの。すごく好きな場所なの」
目を細めて、鏡花は昔を思い返す。深月と話した時は咄嗟にこの場所のことがでてきてしまったけれど、この思い出の場所でできるかもしれないなんて、運命というか、夢のようというか。
「きっと母君も喜ばれるだろうな」
「ええ、思い出の地を失敗で台無しにしたくないもの。精一杯やりきってみせるわ」
改めて意気込んで鏡花は大きく深呼吸をした。玲はその様子を見てふわりと微笑む。思わず、玲がその頭へと手を伸ばしかけたそのとき、鏡花はぐるんっと玲の方へ顔を向けた。
「どうしたの、その手」
「い、いや。なんでもないんだ」
わたわたと玲は手を引っ込めた。まさか、貴女の頭を撫でたいと思った、なんて言えるはずもなく。
「まあ、いいわ。実はね、実際私たちも体験してみようと思ってお菓子を持ってきているの」
「高級菓子ではないけれどね」と包みを見せると鏡花はオスカーにも手を振って呼びかけた。
「休憩がてらお茶にしましょ」
藤の花の中心部にある東屋へ移動すると、日の光に照らされて東屋全体がが紫がかった色に染まっている。ふわりと鼻をかすめる良い香りとお茶の香りが心地いい。
「鏡花さん、こことってもいいですね。僕、気に入りました。それにとっても芸術的です」
「そう言ってもらえて嬉しいわ。芸術的っていう感想はさすが彫刻師って感じね」
「はい。おそらく日光が当たる角度も計算された上でここにこの場所を作ったのだと思います」
「へぇ……その話詳しく」
メモを取りながら熱心にオスカーの話を聞く鏡花を見て、玲はなんだか胸にちくりとした痛みを感じていた。それは、さっき誰とこの場所へきたか、と尋ねたときと同じ種類のものだけではないように思えた。
「ですって。玲さんはどう思う?」
「へ、あ、すまないよく聞いていなかった」
慌てて謝ると鏡花は頬を膨らませて「よく聞いててくださいよ」とぷりぷり言う。
どうやらこの東屋を生かすべきではないかという話だった。オスカーはさすが彫刻師というべきか今ある美しさを最大限生かすのがいいと言う。
「東屋を綺麗にして、そうね、飾り付けを少しすればだいぶ様になると思うの」
「いいんじゃないか。この東屋なら天皇皇后両陛下もゆったりと過ごせるだろう」
「よかったわ。そうだわ、オスカー。東屋を改装したら少し彫刻をお願いしてもいいかしら?」
鏡花がオスカーにそう尋ねればオスカーは嬉しそうに「僕でよければ!」と喜んで承諾した。
「そうとなればさっそく東屋改装の許可を得てこなくっちゃね。それからお菓子はどうかしら?」
手元には最中とあんが入った和菓子が用意されている。玲はあまり和菓子を食べたことはなかったが、これが老舗のものであるとはわかった。
「美味しいです! 僕日本の甘味は初めて食べましたがとっても美味しいです!」
「そうよね。フランスのお菓子や中国のお菓子とはまた違っていいでしょう?」
オスカーがにこにこーっとまるで子犬のように笑うからか鏡花も自然と顔が綻んでいる。これでは美味しいと口に出しても気が付かないだろう、と玲は口をつぐむ。
「これはね、私の幼馴染の和菓子職人が作ったものなの。オスカーがそんなに気に入ってくれたのなら安心ね。葵に頼みに行くことにするわ」
上機嫌の鏡花に、玲の眉がピクリと反応する。幼馴染の男、ということは確定だろうけれど……と何故か悶々とした気持ちが胸を覆い尽くす。
「……頼みに行くのはいつ?」
「ええと、早い方がいいから少なくとも明後日には行くわ。幼馴染といえど明日では失礼だものね」
「明後日……」
明後日に思いを巡らせ、玲は固まった。生憎の仕事、絶対に外せない類のものだ。これでは同行することはできない。それならば、とオスカーに向き直る。
「ああ、明後日は僕も製作の方をしたいと思ってまして……こちらのお仕事が忙しくなる前に終わらせておきたくて」
と、断られてしまった。しかし玲はそこでなぜこんなにも自分は焦っているのかとはたと思い留まった。だが、それでも一人でその男に会わせたくないという気持ちが込み上げる。
「……その幼馴染というのは、その、貴女はどう思っているんだ」
気がつけばそう尋ねていた。鏡花も不思議そうに首を傾げ、なぜそんなことを聞かれたのかと考える。
「別に、どうも。彼は少し変わっているから。かえって私1人の方が好都合よ」
面倒くささでいえばアクセサリーショップのジョニーと兄の深月の中間くらいだ、とため息を吐いた鏡花に玲も思わず笑ってしまった。
「ですから、私のことは気にせず2人とも頑張ってね。私も面倒なのと対峙してくるから」
図らず、そう笑う鏡花に玲は胸を占めていた悶々としたものがすっぽ抜かれたような気さえした。
しかし「藤の花ってなんだかこう、見ていると胸がいっぱいになるわよね」と呟いた鏡花のおかげで、玲は今日もその悶々の気持ちの正体に気がつかぬまま納得してしまったのだった。
鏡花は一連の話を玲とオスカーにし終える。もちろん条件うんぬんは言っていないし、これを成功させたら白羽家の当主に、なんて玲には言いづらい。玲とオスカーは頷いてみせる。オスカーも基本大人しい様子で、鏡花には玲が2人いるように思えてならない。そしてお互い波長があったのかすっかりオスカーは玲に懐いている。
「あ、あの、玲さん鏡花さん。しばらく僕をおいてくださるとかで……本当にありがとうございます」
オスカーはぎこちなくそう頭を下げた。もう敬語も使いこなせるのね、と感心する一方そう言われてしまうと何も言えなくなる。オスカーがいたら、しばらく2人で会話することは少なくなるだろうな、なんて鏡花は思う。
「いいわ。オスカーさんも一生懸命働いて頂戴ね。そうしたら白羽家を挙げて日本の芸術作品をお見せするわ」
「いいんですか……!? ありがとうございます!」
目を輝かせるオスカーはなんだか子犬のように思えてしまった。今にも尻尾を振る様子が見えてしまいそう。白羽家はそういったものも取り入れた商品を卸しているためにいくらでもオスカーを日本の芸術に埋もれさせることができる。ふふん、と得意げに笑ってから鏡花は「頑張りましょうね」と声をかけた。
***
「で、さっそく会場の下見というわけだな」
「ええ……まあ藤はまだ咲ききっているわけではないけれどね」
次の日、鏡花は玲とオスカーを連れて会場となる場所の下見に来ていた。見渡す限り藤の花が広がっている、知る人ぞ知る神秘的な場所という雰囲気が漂う。オスカーはさっそく「これは何という花ですか!?」と大はしゃぎで鏡花は見ていてなんだか和んでしまう。
「ここには来たことが?」
玲に不意に尋ねられ、鏡花は頷いてみせた。一瞬玲の顔が曇る。
「……誰と?」
「ええと、家族とよ」
「そうか」
ふいと申し訳なさそうに玲は顔を逸らした。鏡花はなんとなく玲が言いたかったことが分かったような気がして小さく苦笑した。
「昔ね、母とよく来たの。すごく好きな場所なの」
目を細めて、鏡花は昔を思い返す。深月と話した時は咄嗟にこの場所のことがでてきてしまったけれど、この思い出の場所でできるかもしれないなんて、運命というか、夢のようというか。
「きっと母君も喜ばれるだろうな」
「ええ、思い出の地を失敗で台無しにしたくないもの。精一杯やりきってみせるわ」
改めて意気込んで鏡花は大きく深呼吸をした。玲はその様子を見てふわりと微笑む。思わず、玲がその頭へと手を伸ばしかけたそのとき、鏡花はぐるんっと玲の方へ顔を向けた。
「どうしたの、その手」
「い、いや。なんでもないんだ」
わたわたと玲は手を引っ込めた。まさか、貴女の頭を撫でたいと思った、なんて言えるはずもなく。
「まあ、いいわ。実はね、実際私たちも体験してみようと思ってお菓子を持ってきているの」
「高級菓子ではないけれどね」と包みを見せると鏡花はオスカーにも手を振って呼びかけた。
「休憩がてらお茶にしましょ」
藤の花の中心部にある東屋へ移動すると、日の光に照らされて東屋全体がが紫がかった色に染まっている。ふわりと鼻をかすめる良い香りとお茶の香りが心地いい。
「鏡花さん、こことってもいいですね。僕、気に入りました。それにとっても芸術的です」
「そう言ってもらえて嬉しいわ。芸術的っていう感想はさすが彫刻師って感じね」
「はい。おそらく日光が当たる角度も計算された上でここにこの場所を作ったのだと思います」
「へぇ……その話詳しく」
メモを取りながら熱心にオスカーの話を聞く鏡花を見て、玲はなんだか胸にちくりとした痛みを感じていた。それは、さっき誰とこの場所へきたか、と尋ねたときと同じ種類のものだけではないように思えた。
「ですって。玲さんはどう思う?」
「へ、あ、すまないよく聞いていなかった」
慌てて謝ると鏡花は頬を膨らませて「よく聞いててくださいよ」とぷりぷり言う。
どうやらこの東屋を生かすべきではないかという話だった。オスカーはさすが彫刻師というべきか今ある美しさを最大限生かすのがいいと言う。
「東屋を綺麗にして、そうね、飾り付けを少しすればだいぶ様になると思うの」
「いいんじゃないか。この東屋なら天皇皇后両陛下もゆったりと過ごせるだろう」
「よかったわ。そうだわ、オスカー。東屋を改装したら少し彫刻をお願いしてもいいかしら?」
鏡花がオスカーにそう尋ねればオスカーは嬉しそうに「僕でよければ!」と喜んで承諾した。
「そうとなればさっそく東屋改装の許可を得てこなくっちゃね。それからお菓子はどうかしら?」
手元には最中とあんが入った和菓子が用意されている。玲はあまり和菓子を食べたことはなかったが、これが老舗のものであるとはわかった。
「美味しいです! 僕日本の甘味は初めて食べましたがとっても美味しいです!」
「そうよね。フランスのお菓子や中国のお菓子とはまた違っていいでしょう?」
オスカーがにこにこーっとまるで子犬のように笑うからか鏡花も自然と顔が綻んでいる。これでは美味しいと口に出しても気が付かないだろう、と玲は口をつぐむ。
「これはね、私の幼馴染の和菓子職人が作ったものなの。オスカーがそんなに気に入ってくれたのなら安心ね。葵に頼みに行くことにするわ」
上機嫌の鏡花に、玲の眉がピクリと反応する。幼馴染の男、ということは確定だろうけれど……と何故か悶々とした気持ちが胸を覆い尽くす。
「……頼みに行くのはいつ?」
「ええと、早い方がいいから少なくとも明後日には行くわ。幼馴染といえど明日では失礼だものね」
「明後日……」
明後日に思いを巡らせ、玲は固まった。生憎の仕事、絶対に外せない類のものだ。これでは同行することはできない。それならば、とオスカーに向き直る。
「ああ、明後日は僕も製作の方をしたいと思ってまして……こちらのお仕事が忙しくなる前に終わらせておきたくて」
と、断られてしまった。しかし玲はそこでなぜこんなにも自分は焦っているのかとはたと思い留まった。だが、それでも一人でその男に会わせたくないという気持ちが込み上げる。
「……その幼馴染というのは、その、貴女はどう思っているんだ」
気がつけばそう尋ねていた。鏡花も不思議そうに首を傾げ、なぜそんなことを聞かれたのかと考える。
「別に、どうも。彼は少し変わっているから。かえって私1人の方が好都合よ」
面倒くささでいえばアクセサリーショップのジョニーと兄の深月の中間くらいだ、とため息を吐いた鏡花に玲も思わず笑ってしまった。
「ですから、私のことは気にせず2人とも頑張ってね。私も面倒なのと対峙してくるから」
図らず、そう笑う鏡花に玲は胸を占めていた悶々としたものがすっぽ抜かれたような気さえした。
しかし「藤の花ってなんだかこう、見ていると胸がいっぱいになるわよね」と呟いた鏡花のおかげで、玲は今日もその悶々の気持ちの正体に気がつかぬまま納得してしまったのだった。
0
お気に入りに追加
27
あなたにおすすめの小説
生贄巫女はあやかし旦那様を溺愛します
桜桃-サクランボ-
恋愛
人身御供(ひとみごくう)は、人間を神への生贄とすること。
天魔神社の跡取り巫女の私、天魔華鈴(てんまかりん)は、今年の人身御供の生贄に選ばれた。
昔から続く儀式を、どうせ、いない神に対して行う。
私で最後、そうなるだろう。
親戚達も信じていない、神のために、私は命をささげる。
人身御供と言う口実で、厄介払いをされる。そのために。
親に捨てられ、親戚に捨てられて。
もう、誰も私を求めてはいない。
そう思っていたのに――……
『ぬし、一つ、我の願いを叶えてはくれぬか?』
『え、九尾の狐の、願い?』
『そうだ。ぬし、我の嫁となれ』
もう、全てを諦めた私目の前に現れたのは、顔を黒く、四角い布で顔を隠した、一人の九尾の狐でした。
※カクヨム・なろうでも公開中!
※表紙、挿絵:あニキさん

私も処刑されたことですし、どうか皆さま地獄へ落ちてくださいね。
火野村志紀
恋愛
あなた方が訪れるその時をお待ちしております。
王宮医官長のエステルは、流行り病の特効薬を第四王子に服用させた。すると王子は高熱で苦しみ出し、エステルを含めた王宮医官たちは罪人として投獄されてしまう。
そしてエステルの婚約者であり大臣の息子のブノワは、エステルを口汚く罵り婚約破棄をすると、王女ナデージュとの婚約を果たす。ブノワにとって、優秀すぎるエステルは以前から邪魔な存在だったのだ。
エステルは貴族や平民からも悪女、魔女と罵られながら処刑された。
それがこの国の終わりの始まりだった。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
【第一部・完結】七龍国物語〜冷涼な青龍さまも嫁御寮には甘く情熱的〜
四片霞彩
恋愛
七体の龍が守護する国・七龍国(しちりゅうこく)。
その内の一体である青龍の伴侶に選ばれた和華(わか)の身代わりとして、青龍の元に嫁ぐことになった海音(みおん)だったが、輿入れの道中に嫁入り道具を持ち逃げされた挙句、青龍が住まう山中に置き去りにされてしまう。
日が暮れても輿入れ先に到着しない海音は、とうとう山に住まう獣たちの餌食になることを覚悟する。しかしそんな海音を心配して迎えに来てくれたのは、和華を伴侶に望んだ青龍にして、巷では「人嫌いな冷涼者」として有名な蛍流(ほたる)であった。
冷酷無慈悲の噂まである蛍流だったが、怪我を負っていた海音を心配すると、自ら背負って輿入れ先まで運んでくれる。
身代わりがバレないまま話は進んでいき、身代わりの花嫁として役目を達成するという時、喉元に突き付けられたのは海音と和華の入れ替わりを見破った蛍流の刃であった。
「和華ではないな。お前、何者だ?」
疑いの眼差しを向ける蛍流。そんな蛍流に海音は正直に身の内を打ち明けるのだった。
「信じてもらえないかもしれませんが、私は今から三日前、こことは違う世界――『日本』からやって来ました……」
現代日本から転移したという海音を信じる蛍流の誘いでしばらく身を寄せることになるが、生活を共にする中で知るのは、蛍流と先代青龍との師弟関係、蛍流と兄弟同然に育った兄の存在。
そして、蛍流自身の誰にも打ち明けられない秘められた過去と噂の真相。
その過去を知った海音は決意する。
たとえ伴侶になれなくても、蛍流の心を救いたいと。
その結果、この身がどうなったとしても――。
転移先で身代わりの花嫁となった少女ד青龍”に選ばれて国を守護する人嫌い青年。
これは、遠い過去に願い事を分かち合った2人の「再会」から始まる「約束」された恋の物語。
「人嫌い」と噂の国の守護龍に嫁いだ身代わり娘に、冷涼な青龍さまは甘雨よりも甘く熱い愛を注ぐ。
┈┈┈┈┈┈┈ ❁ ❁ ❁┈┈┈┈┈┈┈┈
第一部完結しました。最後までお付き合いいただき、誠にありがとうございました。
第二部開始まで今しばらくお待ちください。
┈┈┈┈┈┈┈ ❁ ❁ ❁┈┈┈┈┈┈┈┈
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
鉄格子のゆりかご
永久(時永)めぐる
恋愛
下働きとして雇われた千代は、座敷牢の主である朝霧の世話を任される。
お互いを気遣い合う穏やかな日々。
それはずっと続くと思っていたのに……。
※五話完結。
※2015年8月に発行した同人誌に収録した短編を加筆修正のうえ投稿しました。
※小説家になろうさん、魔法のiらんどさんにも投稿しています。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
あまやかしても、いいですか?
藤川巴/智江千佳子
恋愛
結婚相手は会社の王子様。
「俺ね、ダメなんだ」
「あーもう、キスしたい」
「それこそだめです」
甘々(しすぎる)男子×冷静(に見えるだけ)女子の
契約結婚生活とはこれいかに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる