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10.きちんと婚約者に
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「婚約者だったとはいえ、彼女は今正式に俺と婚約を結んでいるんだ。それに、そんなやり方では彼女が傷つくだろう」
物腰は柔らかいが、玲の優雅の腕を掴む力は強く、骨を折ってしまうのでは、というほどだった。そこで我に返ったのか、優雅は目を白黒させて泣き出しそうな顔で頭を下げた。床に頭を擦り付ける勢いの謝罪はなんだか見ている鏡花の方が苦しくなってしまう。「もう行きます、すみません」と客間から出ていこうとする優雅を、鏡花は思わず呼び止めた。
きっと、優雅はこの後ろめたさから鏡花を避けるようになるだろう。しかし、鏡花が全く彼の気持ちに気がつかず踏みにじってきたことが優雅を傷つけていた。そう分かった今、どうしてもこれで終わらせてはいけないと思った。
「……また、どこかで会ったときは私とお話してくれませんか」
口をついて出た言葉はあまりにもありきたりなものだった。優雅は鏡花たちには背を向けたままだった。
「…………君が僕といるときからそのくらい素直だったら、僕たち幸せな夫婦になれたかもしれないな」
そうこぼして、優雅は部屋を出て行った。これは、つまりノー、ということなのだろうか。
「そうよね、私が傷つけていたんだもの……」
ぽろりと、言葉を落とす。なんて虫のいい、と思ったに違いない。経営者だの、やり手だの言っていても肝心の一生のパートナーになるはずだったひとのことすら理解できないで。鏡花ははだけた着物の裾をぎゅっと掴む。そんな鏡花をふわりとぬくもりが包み込んだ。玲が鏡花を優しく抱きしめている。
「……誰にだって間違いはある。それに、どんな理由があろうと女性に強引に迫るなんてことは許されない。だから、貴女が悔やむ必要はない」
「……ありがとう。それから、来てくれてありがとう」
玲は多くは聞かなかった。ただ鏡花を安心させるように抱きしめている。しかし、鏡花のひどく安堵した顔を見てその抱きしめる力は強くなる。
「無事で、よかった」
「……お仕事の邪魔をしてしまってごめんなさい」
「いや、謝らなくていい。そんなものより貴女が無事であることの方が大事だ」
聞けば、玲はかよから優雅が訪ねてきていることを伝えてもらっていたのだという。
「来るか迷った。貴女たちは長らく婚約者どうしだったわけで、積もる話もあるだろうと、そう思ったんだ。だけど、貴女たちが2人きりで過ごしていると聞いていてもたってもいられなくなった。愛情を確かめ合って、貴女がいなくなってしまうことが、怖いと思ったんだ」
あのとき、息が荒かったのはそういうことだったのね、と1人納得した鏡花はそれがまるで愛の告白のように思えて顔を赤らめる。
「まず、謝らせてほしい。俺はあなたに都合の良い婚約関係を提示したことをずっと悔やんでいた。俺のしたことも、あなたを傷つけていたと思うと、本当に申し訳ない」
「い、いえ、謝らないでください……!」
「いいや、謝ってすむ話ではないな」
頭を擦り付けようとする玲を必死で制す。それから無我夢中になって叫んでいた。
「私も、同じように思っていたので……! この関係を利用しようと思っていました、私も玲さんと一緒です。だから謝らないで」
「…………と、いうと?」
「私は、百貨店を開くことが夢なんです。だけど玲さんのように宝石の知識を豊富に持っているわけではないので……だからこの婚約を通してそれを得ようと」
言ってしまった、と鏡花は顔を手で覆った。助けに来てくれた相手に言うものではない、と嫌悪感に苛まれる。それに、婚約破棄しようとしているひとに目的をしゃべってしまうなんて。玲はきょとんとしていたが、やがてふはは、と声を上げて笑い始める。
「あなたのいうそれは利用でもなんでもないな。だって婚約とは相手に何かしらの利益を求めるものだろう? だから利用も何もない」
「でもでも、こう、知識を搾り取ろうって、思ってたんですよ!?」
「うん、やり手と呼ばれるだけあるな。さすがだ」
そうして玲はまた謝罪の体勢に入ってしまう。玲の中では鏡花の考えていたことは全く気に留めることではないらしかった。しかし、一方的に謝られるのもおかしな話だ。
「私、婚約破棄まで考えていたんです!! だから謝罪なんてしないでください!」
くわっと叫ぶと、さすがの玲も動きを止めた。幻滅されただろうか……そう鏡花が玲を見つめていると玲は体勢を変えた。それも、王子がひざまづくように。
「じゃあ、もう一度、伝えておく必要があるな。俺と婚約してくれませんか」
「……え、ええと」
「これからはきちんと、貴女の婚約者になりたい」
まっすぐ見つめてくるサファイアの瞳に、鏡花は吸い込まれるように頷く。すると玲は幸せそうに微笑んだ。
「どうしてコレクションルームへ連れて行ったか尋ねただろう? さっきは上手い表現が見つからなかったが、今分かったんだ」
「そう、なの?」
「ああ。俺は貴女のことが――鏡花のことが大切なんだ」
ぼっと顔が熱を帯びたのが分かった。同時に先ほどまで胸中にあったもやもやが消えた感覚がした。それに、そろそろキャパオーバーだと脳が告げている。目的、それも婚約破棄しようとしていたことまで曝け出してしまい、暖かくなるようなことばかりかけてくれる。だからか、鏡花は思わず玲の服の袖を摘んでいた。それからゴニョゴニョと告げる。
「あの、私も玲さんのこともっと知りたいです」
「……ありがとう。じゃあ、1日数十分では足りなくなるな」
「ふふ、そうですね」
***
「…………で、どうして婚約破棄しようと?」
「うっ……やっぱり怒ってます?」
「いいや、気になるだけだ」
顔も正常の色に戻り、だいぶ落ち着きを取り戻した鏡花は、向かい合って座りお茶を飲む玲から追撃を受けていた。おそらく言ったところで怒られはしないだろうけど、言うのはなんだか気が引ける。
「……宝石まにあは面倒くさい、と思っていたの」
「ああ……そうか」
「い、今はそんなふうに思ってないです! ああ、でもコレクションルームがもっとこう、マニアックな感じが溢れていたらちょっとわからなかったですけれど……」
分かりやすく眉を下げた玲に、どことなく子犬さを感じながら取り繕う。事実は事実だが、これから先、顕著にその兆候が現れ出したら考えてしまうところではある。というか、ここ最近は玲のいちいちの言動に振り回されている感じが否めない。非常に自分らしくないと思っていてもそれが嬉しいと思ってしまうのはおかしいのだろうか。
……まあ、でもしばらく婚約破棄っていう考え方は封印しようかしら。
そう考えていると、玲がまっすぐ自分を見つめていることに気がつく。
「俺も百貨店を開く、その夢を手伝いたいと思ったのだが、駄目だろうか」
「いいの!?」
飛び出した素晴らしい提案に鏡花は勢い余って玲の手を取る。玲は一瞬顔を赤らめるが、鏡花は喜びのあまり気がつかない。
「宝石があるだけで、百貨店は華やかになる。俺も婚約者として、協力しよう」
「本当に嬉しい! 玲さんが手伝ってくれるなら百貨店の夢もすぐそこに感じるわ」
鏡花は「ありがとう」と満面の笑みを浮かべる。玲は絆されたように笑顔を浮かべたのだった。
物腰は柔らかいが、玲の優雅の腕を掴む力は強く、骨を折ってしまうのでは、というほどだった。そこで我に返ったのか、優雅は目を白黒させて泣き出しそうな顔で頭を下げた。床に頭を擦り付ける勢いの謝罪はなんだか見ている鏡花の方が苦しくなってしまう。「もう行きます、すみません」と客間から出ていこうとする優雅を、鏡花は思わず呼び止めた。
きっと、優雅はこの後ろめたさから鏡花を避けるようになるだろう。しかし、鏡花が全く彼の気持ちに気がつかず踏みにじってきたことが優雅を傷つけていた。そう分かった今、どうしてもこれで終わらせてはいけないと思った。
「……また、どこかで会ったときは私とお話してくれませんか」
口をついて出た言葉はあまりにもありきたりなものだった。優雅は鏡花たちには背を向けたままだった。
「…………君が僕といるときからそのくらい素直だったら、僕たち幸せな夫婦になれたかもしれないな」
そうこぼして、優雅は部屋を出て行った。これは、つまりノー、ということなのだろうか。
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ぽろりと、言葉を落とす。なんて虫のいい、と思ったに違いない。経営者だの、やり手だの言っていても肝心の一生のパートナーになるはずだったひとのことすら理解できないで。鏡花ははだけた着物の裾をぎゅっと掴む。そんな鏡花をふわりとぬくもりが包み込んだ。玲が鏡花を優しく抱きしめている。
「……誰にだって間違いはある。それに、どんな理由があろうと女性に強引に迫るなんてことは許されない。だから、貴女が悔やむ必要はない」
「……ありがとう。それから、来てくれてありがとう」
玲は多くは聞かなかった。ただ鏡花を安心させるように抱きしめている。しかし、鏡花のひどく安堵した顔を見てその抱きしめる力は強くなる。
「無事で、よかった」
「……お仕事の邪魔をしてしまってごめんなさい」
「いや、謝らなくていい。そんなものより貴女が無事であることの方が大事だ」
聞けば、玲はかよから優雅が訪ねてきていることを伝えてもらっていたのだという。
「来るか迷った。貴女たちは長らく婚約者どうしだったわけで、積もる話もあるだろうと、そう思ったんだ。だけど、貴女たちが2人きりで過ごしていると聞いていてもたってもいられなくなった。愛情を確かめ合って、貴女がいなくなってしまうことが、怖いと思ったんだ」
あのとき、息が荒かったのはそういうことだったのね、と1人納得した鏡花はそれがまるで愛の告白のように思えて顔を赤らめる。
「まず、謝らせてほしい。俺はあなたに都合の良い婚約関係を提示したことをずっと悔やんでいた。俺のしたことも、あなたを傷つけていたと思うと、本当に申し訳ない」
「い、いえ、謝らないでください……!」
「いいや、謝ってすむ話ではないな」
頭を擦り付けようとする玲を必死で制す。それから無我夢中になって叫んでいた。
「私も、同じように思っていたので……! この関係を利用しようと思っていました、私も玲さんと一緒です。だから謝らないで」
「…………と、いうと?」
「私は、百貨店を開くことが夢なんです。だけど玲さんのように宝石の知識を豊富に持っているわけではないので……だからこの婚約を通してそれを得ようと」
言ってしまった、と鏡花は顔を手で覆った。助けに来てくれた相手に言うものではない、と嫌悪感に苛まれる。それに、婚約破棄しようとしているひとに目的をしゃべってしまうなんて。玲はきょとんとしていたが、やがてふはは、と声を上げて笑い始める。
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「でもでも、こう、知識を搾り取ろうって、思ってたんですよ!?」
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そうして玲はまた謝罪の体勢に入ってしまう。玲の中では鏡花の考えていたことは全く気に留めることではないらしかった。しかし、一方的に謝られるのもおかしな話だ。
「私、婚約破棄まで考えていたんです!! だから謝罪なんてしないでください!」
くわっと叫ぶと、さすがの玲も動きを止めた。幻滅されただろうか……そう鏡花が玲を見つめていると玲は体勢を変えた。それも、王子がひざまづくように。
「じゃあ、もう一度、伝えておく必要があるな。俺と婚約してくれませんか」
「……え、ええと」
「これからはきちんと、貴女の婚約者になりたい」
まっすぐ見つめてくるサファイアの瞳に、鏡花は吸い込まれるように頷く。すると玲は幸せそうに微笑んだ。
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分かりやすく眉を下げた玲に、どことなく子犬さを感じながら取り繕う。事実は事実だが、これから先、顕著にその兆候が現れ出したら考えてしまうところではある。というか、ここ最近は玲のいちいちの言動に振り回されている感じが否めない。非常に自分らしくないと思っていてもそれが嬉しいと思ってしまうのはおかしいのだろうか。
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飛び出した素晴らしい提案に鏡花は勢い余って玲の手を取る。玲は一瞬顔を赤らめるが、鏡花は喜びのあまり気がつかない。
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