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第7章 夏休みは安全快適?
歪 ナイン・アメリア
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ローズは最近危険に遭いすぎている。
誘拐に装飾の落下。ただでさえ日々いじめをしようとする者がうろついているのに。
ローズがお転婆で、花の乙女で、そういう目に遭いやすいのは重々承知している。けれど、僕が側にいながら守れない。だから夏休みの間だけでも、僕が側にいてローズを守りたい。
両親はおそらく僕の気持ちに気がついているだろう。僕が繕った説明に「遠回しに言うなあ」と父は言い、夏休みに田舎の領地に行くことを提案したのだった。
中等部からローズへの想いの種類について考えてきた。
純粋に危なっかしい妹を思う気持ちかもしれない。けれどローズがクラスメイトや友達と話していると嫌な気持ちになるし、早くいなくなってほしいとさえ思う。これは妹を思う気持ちで括っていいのだろうか――
「……頼もしいおにいさまがいて、わたしは幸運ですね」
守る、という言葉は曖昧だと思う。家族として、好きなひととして。どうとでも受け取れるから。
しかしローズの表情は、否を示していた。ローズはおそらく僕のこの行き過ぎた兄妹愛に勘づいている。それでいて僕を対象には見れない……そう語っていた。僕は、予想通りその反応に傷ついていた。
その日の夜は寝付けなかった。
ローズが望むなら、僕は兄らしくいよう。けれど、僕が抱えているのはきっとローズを1人の女性として見ている愛情だ。この気持ちを捨てて、隠して兄らしく振る舞う……けれど、正しい兄らしさが分からない。
「ねえ、ローズ。僕はどうしたらいいのかな……」
目を瞑り、魔法を発動させた。ローズの杖にかけた追跡魔法を確認するためだ。こんなことをしている時点で、兄妹愛とは言い難いだろうな……そう苦笑してから杖の位置が移動していることに気がついた。動き方からして、外から家に戻ってきているらしい。僕は慌ててローズの部屋へ走った。
「じゃあね」と、部屋の中から声がした。男の声だ。
――誰と一緒にいた?
部屋に入って問い詰めたかったけれど、僕は堪えて踵を返した。
正しい兄なら、そんなことはしない。ローズに嫌われたくない。
ねえ、これはローズの求める『おにいさま』?
明日からまた面倒な学園生活が始まる。
領地から家に帰ってきて荷解きをしていると、手紙が目に映った。ブラックウェル家の紋章と王家の紋章だ。内容を少しだけ確認する。僕はスタスタと暖炉に向かって火をつけた。婚約を進めている? 王家のパーティに招待したい?
「え……燃やしちゃって大丈夫ですか?」
「うん。2ヶ月も前に届いたものだから必要ないかなって」
ローズが近寄ってきて少し焦ったけれど暖炉を見ると、紙たちがパチパチと燃えていて文章が読めるとは思えない。「重要なものはなさそうだったよ」と言う。加えて今更返したって迷惑だとも言った。ローズは「そうですよね」と納得したらしかった。馬車に長い時間揺られていたからか、少し疲れ気味だ。部屋に戻って休むよう促す。その背を見送ってから、僕は灰になった手紙たちを見つめた。
『おにいさま』でいたいと思うけれど、僕だってローズのことが大好きで、それを捨てることなんてできないんだよ。このまま誰からの好意も気が付かなければいいと思うし、ずぅっと僕の側にいてほしい。
だから、ごめんね?
誘拐に装飾の落下。ただでさえ日々いじめをしようとする者がうろついているのに。
ローズがお転婆で、花の乙女で、そういう目に遭いやすいのは重々承知している。けれど、僕が側にいながら守れない。だから夏休みの間だけでも、僕が側にいてローズを守りたい。
両親はおそらく僕の気持ちに気がついているだろう。僕が繕った説明に「遠回しに言うなあ」と父は言い、夏休みに田舎の領地に行くことを提案したのだった。
中等部からローズへの想いの種類について考えてきた。
純粋に危なっかしい妹を思う気持ちかもしれない。けれどローズがクラスメイトや友達と話していると嫌な気持ちになるし、早くいなくなってほしいとさえ思う。これは妹を思う気持ちで括っていいのだろうか――
「……頼もしいおにいさまがいて、わたしは幸運ですね」
守る、という言葉は曖昧だと思う。家族として、好きなひととして。どうとでも受け取れるから。
しかしローズの表情は、否を示していた。ローズはおそらく僕のこの行き過ぎた兄妹愛に勘づいている。それでいて僕を対象には見れない……そう語っていた。僕は、予想通りその反応に傷ついていた。
その日の夜は寝付けなかった。
ローズが望むなら、僕は兄らしくいよう。けれど、僕が抱えているのはきっとローズを1人の女性として見ている愛情だ。この気持ちを捨てて、隠して兄らしく振る舞う……けれど、正しい兄らしさが分からない。
「ねえ、ローズ。僕はどうしたらいいのかな……」
目を瞑り、魔法を発動させた。ローズの杖にかけた追跡魔法を確認するためだ。こんなことをしている時点で、兄妹愛とは言い難いだろうな……そう苦笑してから杖の位置が移動していることに気がついた。動き方からして、外から家に戻ってきているらしい。僕は慌ててローズの部屋へ走った。
「じゃあね」と、部屋の中から声がした。男の声だ。
――誰と一緒にいた?
部屋に入って問い詰めたかったけれど、僕は堪えて踵を返した。
正しい兄なら、そんなことはしない。ローズに嫌われたくない。
ねえ、これはローズの求める『おにいさま』?
明日からまた面倒な学園生活が始まる。
領地から家に帰ってきて荷解きをしていると、手紙が目に映った。ブラックウェル家の紋章と王家の紋章だ。内容を少しだけ確認する。僕はスタスタと暖炉に向かって火をつけた。婚約を進めている? 王家のパーティに招待したい?
「え……燃やしちゃって大丈夫ですか?」
「うん。2ヶ月も前に届いたものだから必要ないかなって」
ローズが近寄ってきて少し焦ったけれど暖炉を見ると、紙たちがパチパチと燃えていて文章が読めるとは思えない。「重要なものはなさそうだったよ」と言う。加えて今更返したって迷惑だとも言った。ローズは「そうですよね」と納得したらしかった。馬車に長い時間揺られていたからか、少し疲れ気味だ。部屋に戻って休むよう促す。その背を見送ってから、僕は灰になった手紙たちを見つめた。
『おにいさま』でいたいと思うけれど、僕だってローズのことが大好きで、それを捨てることなんてできないんだよ。このまま誰からの好意も気が付かなければいいと思うし、ずぅっと僕の側にいてほしい。
だから、ごめんね?
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