31 / 66
第5章 不穏すぎる乙女ゲーム
Side ラギー・サンメール
しおりを挟む
「君たちだね、ローズに嫌がらせしようとしてるっていうのは」
俺は目の前で小さく悲鳴をあげる女の子たちを眺めていた。用事があるというローズと分かれてすぐ、彼女の後をつけてきていた子たちに気がついたので声をかけてみた。
うん、顔も背格好も聞いていた通りだ。あってる。
腰に携帯している剣に触れてみせた。もちろん、弱いものいじめなんてしない。騎士団にいる者としてそれくらいの矜持はある。
ローズは中等部からずっとひそかにいじめられていた。それは高等部に入ってからも変わらなくて。ローズは強くて、いじめになんて怯まない。そういうところが大好きなんだ。ローズに恋愛感情があるか、と聞かれたら微妙だけど。
初めて会ったとき、話を分かってくれる子だと思って嬉しかったのを覚えている。家に帰ってから彼女の話をしたら『そういうお友達は一生大事にするのよ』と言われた。うん、俺も大切なひとはみんな家族のように接したいと思ってる。だから、ローズは俺の家族みたいなものなんだ。それから、ジルもそう。ジルは尊敬できるし一緒にいて楽しい。それからたぶん、ジルはローズのことが好きだから応援している。家族みたいに大好きな2人が幸せになってくれるなら、とっても嬉しい。だから俺の好きは、また温度が違うんだ。
「で、でもローズさん、花の乙女になったからってジル様やラギー様にも色目をつかっているんです! レイ様にだってそうですわ!」
「そうです! わたくしたちはラギー様をお守りしようと!」
「……は?」
何を言ってるんだろう。うるさい、羽虫たちみたいだ。俺の大好きなひとたちのことを勝手に侮辱して。何様のつもりなんだろう。俺の気持ちまで勝手に推し測ってきて、気持ち悪い。自分たちが可愛いだけなんだ。貴族だからプライドだけは高くて、自分たちは間違ってないと思ってる。ローズは俺と同じ伯爵家だけど、爵位を鼻にかけるようなことはしないし、花の乙女というこの国の女の子たちの憧れの力を手に入れても威張ることもない。
「黙ってよ、うるさいなあ」
相手をするのも面倒になってきた。学年は把握したし、あとはナイン会長に任せておこう。ナイン会長はローズのお兄さんだ。もしかしたらローズのことが好きなのかもしれないなあとは思っているけど、大切な友達のお兄さんだから大切にしようと思う。最初こそあまり好かれてはいなかったけれど、こうしてローズの護衛を任されるようになった。少しは信用してくれたのかなと思うと嬉しい。
俺としてはローズとジルが一緒になってくれたら幸せなんだけどなあ。そうしたら3人でいつも一緒にいられるから。だけど、ローズがお兄さんを選ぶならそれはそれで応援するって決めてるんだ。
そこに、最近少し不穏因子が現れた。
まずはレイ王子。ジルやナイン会長にローズのことを守るように頼まれていたけど俺は情けないことに、ロスト退治の護衛中に眠ってしまった。でも俺は訓練をしている身だし、気絶なんてしないし眠るなんてこと絶対にしない。何か怪しむとしたら、あのレイ王子がくれたポーションだ。匂いで勘づくべきだった。あれは普段飲んでいるものではなかったと思う。王子がくれるものは質の良いものなのかと完全に疑うことをしなかった。もし、あれを睡眠作用があると知っていて飲ませたなら。今回ローズは無事だったようだから追及はしないけど、注意しないと。
それから、もう1人。
ケイト・グリンデルバルドとかいう男だ。侯爵家の次男だったはず。なぜか最近ローズにちょっかいを出している。廊下の隅でうざったそうに彼をあしらうローズを眺めていた。
「ローズはあいつに誘拐された」
ナイン会長が言った誘拐の言葉にひどく耳を疑った。なんでも先日、俺と別れた直後に用具入れに閉じ込められたのだそうだ。俺がもう少し一緒にいれば。面倒な羽虫たちの相手なんてしなければよかった。
「やっぱり、護衛を頼むのは早かったかな」
俯いて拳を握り締める。
言う通りだ。ローズは大切なひとなんだから、守らないといけないのに。
「…………俺が至らないせいです。もっと鍛錬します」
「うん、そうだね。ローズはラギーくんのことをすごく信用しているし、僕は何より君がローズを家族のように思ってくれているところが好きだよ」
ナイン会長は相変わらずの掴めない笑顔を浮かべると、生徒会長の業務に戻っていった。
俺の世界は、俺が大切だと思うひとたちだけで構成したいんだ。そうだ、だから危険因子は排除しないと。そうした方がいいに決まってる。
ひとまず、俺はローズの元へ駆け出した。あのケイトという危険因子から引き離すために声をかけなくちゃ。
俺は目の前で小さく悲鳴をあげる女の子たちを眺めていた。用事があるというローズと分かれてすぐ、彼女の後をつけてきていた子たちに気がついたので声をかけてみた。
うん、顔も背格好も聞いていた通りだ。あってる。
腰に携帯している剣に触れてみせた。もちろん、弱いものいじめなんてしない。騎士団にいる者としてそれくらいの矜持はある。
ローズは中等部からずっとひそかにいじめられていた。それは高等部に入ってからも変わらなくて。ローズは強くて、いじめになんて怯まない。そういうところが大好きなんだ。ローズに恋愛感情があるか、と聞かれたら微妙だけど。
初めて会ったとき、話を分かってくれる子だと思って嬉しかったのを覚えている。家に帰ってから彼女の話をしたら『そういうお友達は一生大事にするのよ』と言われた。うん、俺も大切なひとはみんな家族のように接したいと思ってる。だから、ローズは俺の家族みたいなものなんだ。それから、ジルもそう。ジルは尊敬できるし一緒にいて楽しい。それからたぶん、ジルはローズのことが好きだから応援している。家族みたいに大好きな2人が幸せになってくれるなら、とっても嬉しい。だから俺の好きは、また温度が違うんだ。
「で、でもローズさん、花の乙女になったからってジル様やラギー様にも色目をつかっているんです! レイ様にだってそうですわ!」
「そうです! わたくしたちはラギー様をお守りしようと!」
「……は?」
何を言ってるんだろう。うるさい、羽虫たちみたいだ。俺の大好きなひとたちのことを勝手に侮辱して。何様のつもりなんだろう。俺の気持ちまで勝手に推し測ってきて、気持ち悪い。自分たちが可愛いだけなんだ。貴族だからプライドだけは高くて、自分たちは間違ってないと思ってる。ローズは俺と同じ伯爵家だけど、爵位を鼻にかけるようなことはしないし、花の乙女というこの国の女の子たちの憧れの力を手に入れても威張ることもない。
「黙ってよ、うるさいなあ」
相手をするのも面倒になってきた。学年は把握したし、あとはナイン会長に任せておこう。ナイン会長はローズのお兄さんだ。もしかしたらローズのことが好きなのかもしれないなあとは思っているけど、大切な友達のお兄さんだから大切にしようと思う。最初こそあまり好かれてはいなかったけれど、こうしてローズの護衛を任されるようになった。少しは信用してくれたのかなと思うと嬉しい。
俺としてはローズとジルが一緒になってくれたら幸せなんだけどなあ。そうしたら3人でいつも一緒にいられるから。だけど、ローズがお兄さんを選ぶならそれはそれで応援するって決めてるんだ。
そこに、最近少し不穏因子が現れた。
まずはレイ王子。ジルやナイン会長にローズのことを守るように頼まれていたけど俺は情けないことに、ロスト退治の護衛中に眠ってしまった。でも俺は訓練をしている身だし、気絶なんてしないし眠るなんてこと絶対にしない。何か怪しむとしたら、あのレイ王子がくれたポーションだ。匂いで勘づくべきだった。あれは普段飲んでいるものではなかったと思う。王子がくれるものは質の良いものなのかと完全に疑うことをしなかった。もし、あれを睡眠作用があると知っていて飲ませたなら。今回ローズは無事だったようだから追及はしないけど、注意しないと。
それから、もう1人。
ケイト・グリンデルバルドとかいう男だ。侯爵家の次男だったはず。なぜか最近ローズにちょっかいを出している。廊下の隅でうざったそうに彼をあしらうローズを眺めていた。
「ローズはあいつに誘拐された」
ナイン会長が言った誘拐の言葉にひどく耳を疑った。なんでも先日、俺と別れた直後に用具入れに閉じ込められたのだそうだ。俺がもう少し一緒にいれば。面倒な羽虫たちの相手なんてしなければよかった。
「やっぱり、護衛を頼むのは早かったかな」
俯いて拳を握り締める。
言う通りだ。ローズは大切なひとなんだから、守らないといけないのに。
「…………俺が至らないせいです。もっと鍛錬します」
「うん、そうだね。ローズはラギーくんのことをすごく信用しているし、僕は何より君がローズを家族のように思ってくれているところが好きだよ」
ナイン会長は相変わらずの掴めない笑顔を浮かべると、生徒会長の業務に戻っていった。
俺の世界は、俺が大切だと思うひとたちだけで構成したいんだ。そうだ、だから危険因子は排除しないと。そうした方がいいに決まってる。
ひとまず、俺はローズの元へ駆け出した。あのケイトという危険因子から引き離すために声をかけなくちゃ。
16
お気に入りに追加
486
あなたにおすすめの小説
ヤンデレ騎士団の光の聖女ですが、彼らの心の闇は照らせますか?〜メリバエンド確定の乙女ゲーに転生したので全力でスキル上げて生存目指します〜
たかつじ楓*LINEマンガ連載中!
恋愛
攻略キャラが二人ともヤンデレな乙女ーゲームに転生してしまったルナ。
「……お前も俺を捨てるのか? 行かないでくれ……」
黒騎士ヴィクターは、孤児で修道院で育ち、その修道院も魔族に滅ぼされた過去を持つ闇ヤンデレ。
「ほんと君は危機感ないんだから。閉じ込めておかなきゃ駄目かな?」
大魔導師リロイは、魔法学園主席の天才だが、自分の作った毒薬が事件に使われてしまい、責任を問われ投獄された暗黒微笑ヤンデレである。
ゲームの結末は、黒騎士ヴィクターと魔導師リロイどちらと結ばれても、戦争に負け命を落とすか心中するか。
メリーバッドエンドでエモいと思っていたが、どっちと結ばれても死んでしまう自分の運命に焦るルナ。
唯一生き残る方法はただ一つ。
二人の好感度をMAXにした上で自分のステータスをMAXにする、『大戦争を勝ちに導く光の聖女』として君臨する、激ムズのトゥルーエンドのみ。
ヤンデレだらけのメリバ乙女ゲーで生存するために奔走する!?
ヤンデレ溺愛三角関係ラブストーリー!
※短編です!好評でしたら長編も書きますので応援お願いします♫
この世界に転生したらいろんな人に溺愛されちゃいました!
めーめー
恋愛
前世は不慮の事故で死んだ(主人公)公爵令嬢ニコ・オリヴィアは最近前世の記憶を思い出す。
だが彼女は人生を楽しむことができなっかたので今世は幸せな人生を送ることを決意する。
「前世は不慮の事故で死んだのだから今世は楽しんで幸せな人生を送るぞ!」
そこから彼女は義理の弟、王太子、公爵令息、伯爵令息、執事に出会い彼女は彼らに愛されていく。
作者のめーめーです!
この作品は私の初めての小説なのでおかしいところがあると思いますが優しい目で見ていただけると嬉しいです!
投稿は2日に1回23時投稿で行きたいと思います!!
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
転生したので猫被ってたら気がつけば逆ハーレムを築いてました
市森 唯
恋愛
前世では極々平凡ながらも良くも悪くもそれなりな人生を送っていた私。
……しかしある日突然キラキラとしたファンタジー要素満載の異世界へ転生してしまう。
それも平凡とは程遠い美少女に!!しかも貴族?!私中身は超絶平凡な一般人ですけど?!
上手くやっていけるわけ……あれ?意外と上手く猫被れてる?
このままやっていけるんじゃ……へ?婚約者?社交界?いや、やっぱり無理です!!
※小説家になろう様でも投稿しています
軽い気持ちで超絶美少年(ヤンデレ)に告白したら
夕立悠理
恋愛
容姿平凡、頭脳平凡、なリノアにはひとつだけ、普通とちがうところがある。
それは極度の面食いということ。
そんなリノアは冷徹と名高い公爵子息(イケメン)に嫁ぐことに。
「初夜放置? ぜーんぜん、問題ないわ!
だって旦那さまってば顔がいいもの!!!」
朝食をたまに一緒にとるだけで、満足だ。寝室別でも、他の女の香水の香りがしてもぜーんぜん平気。……なーんて、思っていたら、旦那さまの様子がおかしい?
「他の誰でもない君が! 僕がいいっていったんだ。……そうでしょ?」
あれ、旦那さまってば、どうして手錠をお持ちなのでしょうか?
それをわたしにつける??
じょ、冗談ですよね──!?!?
ヤンデレお兄様に殺されたくないので、ブラコンやめます!(長編版)
夕立悠理
恋愛
──だって、好きでいてもしかたないもの。
ヴァイオレットは、思い出した。ここは、ロマンス小説の世界で、ヴァイオレットは義兄の恋人をいじめたあげくにヤンデレな義兄に殺される悪役令嬢だと。
って、むりむりむり。死ぬとかむりですから!
せっかく転生したんだし、魔法とか気ままに楽しみたいよね。ということで、ずっと好きだった恋心は封印し、ブラコンをやめることに。
新たな恋のお相手は、公爵令嬢なんだし、王子様とかどうかなー!?なんてうきうきわくわくしていると。
なんだかお兄様の様子がおかしい……?
※小説になろうさまでも掲載しています
※以前連載していたやつの長編版です
二度目の人生は異世界で溺愛されています
ノッポ
恋愛
私はブラック企業で働く彼氏ナシのおひとりさまアラフォー会社員だった。
ある日 信号で轢かれそうな男の子を助けたことがキッカケで異世界に行くことに。
加護とチート有りな上に超絶美少女にまでしてもらったけど……中身は今まで喪女の地味女だったので周りの環境変化にタジタジ。
おまけに女性が少ない世界のため
夫をたくさん持つことになりー……
周りに流されて愛されてつつ たまに前世の知識で少しだけ生活を改善しながら異世界で生きていくお話。
女性の少ない異世界に生まれ変わったら
Azuki
恋愛
高校に登校している途中、道路に飛び出した子供を助ける形でトラックに轢かれてそのまま意識を失った私。
目を覚ますと、私はベッドに寝ていて、目の前にも周りにもイケメン、イケメン、イケメンだらけーーー!?
なんと私は幼女に生まれ変わっており、しかもお嬢様だった!!
ーーやった〜!勝ち組人生来た〜〜〜!!!
そう、心の中で思いっきり歓喜していた私だけど、この世界はとんでもない世界で・・・!?
これは、女性が圧倒的に少ない異世界に転生した私が、家族や周りから溺愛されながら様々な問題を解決して、更に溺愛されていく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる