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第4章 卒業パーティー
1. 前日準備
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あっという間に月日は巡り、気がつけば明日で卒業だ。
さらに明日は偶然にもわたしの16歳の誕生日とドンピシャだった。わたしは卒業パーティに出たあと、家に帰ってきてもパーティをすることになるという祝われデーなのである。もちろん着ていくドレスも、何もかも決めていたのだけれど。
「え、なにこれ……」
「その、ブラックウェル様から先ほど届きまして……」
メイドさんは困ったようにそう言う。メイドさんに連れられて来た部屋にはドレスが置かれていた。純白のドレスにピンク色のバラの花弁を彷彿とさせるレースが散りばめられている可愛いドレスだ。よく見ればバースデーカードがぶら下がっていて、そこには偉く達筆な字で『パーティにはこれを着ろよ』と書かれている。
なんなんだ、本当に勝手だ。張り切って用意したドレスがあったけれど、間もなく公爵を継ぐジルのプレゼントを押し切って着るわけにはいかない。わたしはとほほ、と肩を落としながらドレスを眺めたのだった。
「ねえ、酷いと思わない!? せっかくドレス用意してたのに……!」
「まあ、仕方ないって。ジルのためにも着てやってよ」
うう、ラギーまであいつの味方なのね。ラギーはわたしを雑に慰めつつ、せっせと会場準備をしている。
わたしたちは生徒会に入ったおかげで卒業パーティの会場準備をしていた。卒業パーティで次の生徒会に委嘱作業をするため、わたしたちはまだ生徒会なのだ。まったく、こういうのは下級生が用意するものじゃないのか。
ちなみに、生徒会長はジルだ。わたしはほぼ試験で学年1位を譲らなかったために教師とジルに半ば無理矢理、副会長にさせられていた。ラギーは生徒会のお手伝いメンバーだ。
とまあ、わたしは結局3年間攻略対象であるジルとラギーと過ごした。友達として仲良くやってきていて、今のところ執着の兆しはない。ジルは急速に爵位を継ぐ勉強をしていてすごいなあと思うし、ラギーは最近騎士団にトップの正式で加入した。わたしはというと、3年間ひたすらに勉強、魔法、剣術、筋トレの毎日。もはやヒロインらしい柔らかそうな感じとかはない、締まった身体つきになったと思う。魔法もかなりの腕前になった。
「ああ、ローズさん。この度はご卒業おめでとうございます」
「ウィルさん! ありがとうございます」
声をかけられ、振り返るとウィルが花束を抱えて立っていた。わたしのために? と受け取りかけたけれどどうやら装飾用らしい。
「なんだかバラが多いような気がしますね?」
勘違いしたのも無理はない。ウィルが抱えているのはほぼピンクのバラだ。もちろんそれ以外にも花はあるけれどバラの本数が多すぎて目立たない。
「それはもちろん、ローズさんの大事な卒業パーティですから。会場の至る所をバラで装飾しなければいけません」
「そ、そうですか……」
「ああ、僕はそろそろ装飾作業に取り掛かります。後で直接花束を渡したいので、いつもの場所にいらしてくださると嬉しいです」
こくりと頷いた。いつもの場所、とはもちろん植物園のことだ。わたしが植物園に通っていることはバレてしまったけれど、なんだかんだで通えている。一回ジルが植物園を取り壊そうとする、という完璧職権濫用事件が起きたがなんとか説得した。あと、どうやらウィルと話もしてきたらしく「あいつはたぶん大丈夫なやつだわ」と言っていた。きっとウィルが良い人だと分かったのだと思う。それから落ち着いた。
それにしても、なんだかバラばかりで申し訳ない。他にも花がモチーフの名前の子は大勢いると思うけれど、その子たちはいいのか……しかし、会場もバラ、わたしのドレスもバラ。これではピンクだらけでチカチカしてしまいそうだ。
「やっぱり、自分で用意したドレスにしようかな」
「は、そんなの許さねーけど」
「げっ」
ジルだ。笑っているのか怒っているのか微妙なラインの表情。けれど、これに物怖じするほど軟弱ではない。わたしの用意したドレスを着られないようにしようとしているお前の罪は重い!
「なんでジル様が用意したものを着なくてはいけないんですか!? わたし、せっかく可愛いドレス用意したんですよ!?」
「うっ……それは悪かった。また別の機会に着てくれよ。ああ、もちろん俺と出かけるときな」
「いや、それも決定事項なんですか……」
じとおっとジルを見た。なぜかは知らないけれどジルは最近2人で出かけたがる。しかも必ずと言っていいほど、毎度ブラックウェル家の馬車に乗せられている。婚約話を持ち出してくることも増えたし……爵位を継ぐためにやっぱり婚約者がいた方がいいのかもしれないけれど。
「まあ、何にせよ……素敵なプレゼントをありがとうございます」
とりあえず、誕生日プレゼントとしてくれたことは間違い無いのでお礼を言おう。まあ、可愛かったしいいけれど。ジルは「おう」とだけ言った。前は顔を背けていたから照れていると気がつけたけれど、最近はポーカーフェイスも上手くなってしまってつまらない。
その後ラギーも加わってわたしたちは最終チェックに取り掛かったのだった。
さらに明日は偶然にもわたしの16歳の誕生日とドンピシャだった。わたしは卒業パーティに出たあと、家に帰ってきてもパーティをすることになるという祝われデーなのである。もちろん着ていくドレスも、何もかも決めていたのだけれど。
「え、なにこれ……」
「その、ブラックウェル様から先ほど届きまして……」
メイドさんは困ったようにそう言う。メイドさんに連れられて来た部屋にはドレスが置かれていた。純白のドレスにピンク色のバラの花弁を彷彿とさせるレースが散りばめられている可愛いドレスだ。よく見ればバースデーカードがぶら下がっていて、そこには偉く達筆な字で『パーティにはこれを着ろよ』と書かれている。
なんなんだ、本当に勝手だ。張り切って用意したドレスがあったけれど、間もなく公爵を継ぐジルのプレゼントを押し切って着るわけにはいかない。わたしはとほほ、と肩を落としながらドレスを眺めたのだった。
「ねえ、酷いと思わない!? せっかくドレス用意してたのに……!」
「まあ、仕方ないって。ジルのためにも着てやってよ」
うう、ラギーまであいつの味方なのね。ラギーはわたしを雑に慰めつつ、せっせと会場準備をしている。
わたしたちは生徒会に入ったおかげで卒業パーティの会場準備をしていた。卒業パーティで次の生徒会に委嘱作業をするため、わたしたちはまだ生徒会なのだ。まったく、こういうのは下級生が用意するものじゃないのか。
ちなみに、生徒会長はジルだ。わたしはほぼ試験で学年1位を譲らなかったために教師とジルに半ば無理矢理、副会長にさせられていた。ラギーは生徒会のお手伝いメンバーだ。
とまあ、わたしは結局3年間攻略対象であるジルとラギーと過ごした。友達として仲良くやってきていて、今のところ執着の兆しはない。ジルは急速に爵位を継ぐ勉強をしていてすごいなあと思うし、ラギーは最近騎士団にトップの正式で加入した。わたしはというと、3年間ひたすらに勉強、魔法、剣術、筋トレの毎日。もはやヒロインらしい柔らかそうな感じとかはない、締まった身体つきになったと思う。魔法もかなりの腕前になった。
「ああ、ローズさん。この度はご卒業おめでとうございます」
「ウィルさん! ありがとうございます」
声をかけられ、振り返るとウィルが花束を抱えて立っていた。わたしのために? と受け取りかけたけれどどうやら装飾用らしい。
「なんだかバラが多いような気がしますね?」
勘違いしたのも無理はない。ウィルが抱えているのはほぼピンクのバラだ。もちろんそれ以外にも花はあるけれどバラの本数が多すぎて目立たない。
「それはもちろん、ローズさんの大事な卒業パーティですから。会場の至る所をバラで装飾しなければいけません」
「そ、そうですか……」
「ああ、僕はそろそろ装飾作業に取り掛かります。後で直接花束を渡したいので、いつもの場所にいらしてくださると嬉しいです」
こくりと頷いた。いつもの場所、とはもちろん植物園のことだ。わたしが植物園に通っていることはバレてしまったけれど、なんだかんだで通えている。一回ジルが植物園を取り壊そうとする、という完璧職権濫用事件が起きたがなんとか説得した。あと、どうやらウィルと話もしてきたらしく「あいつはたぶん大丈夫なやつだわ」と言っていた。きっとウィルが良い人だと分かったのだと思う。それから落ち着いた。
それにしても、なんだかバラばかりで申し訳ない。他にも花がモチーフの名前の子は大勢いると思うけれど、その子たちはいいのか……しかし、会場もバラ、わたしのドレスもバラ。これではピンクだらけでチカチカしてしまいそうだ。
「やっぱり、自分で用意したドレスにしようかな」
「は、そんなの許さねーけど」
「げっ」
ジルだ。笑っているのか怒っているのか微妙なラインの表情。けれど、これに物怖じするほど軟弱ではない。わたしの用意したドレスを着られないようにしようとしているお前の罪は重い!
「なんでジル様が用意したものを着なくてはいけないんですか!? わたし、せっかく可愛いドレス用意したんですよ!?」
「うっ……それは悪かった。また別の機会に着てくれよ。ああ、もちろん俺と出かけるときな」
「いや、それも決定事項なんですか……」
じとおっとジルを見た。なぜかは知らないけれどジルは最近2人で出かけたがる。しかも必ずと言っていいほど、毎度ブラックウェル家の馬車に乗せられている。婚約話を持ち出してくることも増えたし……爵位を継ぐためにやっぱり婚約者がいた方がいいのかもしれないけれど。
「まあ、何にせよ……素敵なプレゼントをありがとうございます」
とりあえず、誕生日プレゼントとしてくれたことは間違い無いのでお礼を言おう。まあ、可愛かったしいいけれど。ジルは「おう」とだけ言った。前は顔を背けていたから照れていると気がつけたけれど、最近はポーカーフェイスも上手くなってしまってつまらない。
その後ラギーも加わってわたしたちは最終チェックに取り掛かったのだった。
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