七草渚冴はループする

kyouta

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第一話 七草渚冴はループに気づく

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 七草渚冴ななくさなぎさは男である。下の名前が女の子っぽいから、名前だけ聞いた人は僕を女の子だと勘違いする人も少なくない。

 辛うじては男の子っぽい気がするけど、名前でこの字が使われてる人をあんまり見たことがないな。

 何でこんなどうでもいい話を物語の序盤から書いているかって? 現実逃避に決まっているじゃないか。

 僕はどうやら、6月25日から30日をループしているらしい。30日の金曜日を死ぬ気で乗り切って、土日はゲームやラノベを読み漁ろうと思っていたんだけど、そんな夢の一時は永遠に訪れることはなかった。

 ちなみに気づくのにどれだけループしたかは覚えていない。全然土曜日がやってこないなと不思議に思って、金曜日の寝る前にしっかりと日付を確認してから朝起きたら25日だった。ショックで何も考えずにまた一週間無駄にしたのは内緒の方向でお願いします……。

 両親も、中学生の妹も、クラスメイトも、綺麗なお天気キャスターのお姉さんも何の違和感なく過ごしている。僕以外にループを自覚している人はいないんじゃないか。

 そもそも何故、このタイミングでループしているのか。夏休み中だったらとかいって騒いでいたかもしれないけど、ただの平日にループは鬼畜過ぎやしないか?

 ネットで『ループする 原因』と調べても、年頃のお子さんがそういったことを言った際は、暖かい目で見守ってあげてください……。としか書いていない。

 誰が厨二の男子高校生だコラ。僕は異世界モノを希望するねどうせなら。

 一人で脳内会議をしていたら、23時58分になっていた。今まで僕は23時には眠りについていた。普段は夜更かししているけど、金曜日は疲れていて早めに寝ていたからだ。

 もし、日付が変わるタイミングに起きていたらどうなるんだろう。寝ることがループに入るスイッチなのか、日付が変わることがスイッチなのか。

 残り1分を切ったところで、心臓の鼓動が早くなるのを感じる。ベットで寝たときに、少し首を起こすと見える位置に時計が壁にかかっている。

 今日はやけに静かだ。秒針が進む音と、心臓の鼓動の音しか聞こえない。

 土曜日まで、3、2、1。

 ここで僕は意識を失った。時計の三本の針が全て12で重なる所を見ることは出来なかった。

 アラームが鳴っている。学校のある日は毎朝7時にセットしている。休みの日はセットしていないから、今日は平日だ。つまりまた25日に戻ってしまった。

 今までと違って、強制的に戻された気分だ。ループしていても能天気だったけど、今回は少し怖いな。

 筋肉痛でもないのに、今日は体が重かった。
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