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Re1話 RESTART
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「俺は…嵌められたのか…。」
男は軍の上層部が決行した囮作戦の囮部隊に組み込まれていた。囮部隊は自分たちが囮と知らずに戦地に赴き、上官の指示を遂行した。
雨が降りしきり、泥濘んだ地面に倒れている男、ケイトは自分の無力さを痛感していた。
「あぁ…痛みがないな…このままじゃ…死ぬかな…」
もはや声も出せない状態であり、死を悟る。
思い返せば俺はとことん平凡な男であった。
親は平民階級と呼ばれ、裕福ではなかったが特別貧乏な訳ではない。
自分が生きることに苦労という苦労はなかった。10歳程度の頃には王宮仕えの騎士団を夢見たが叶わず、18歳で就職したのは一般的な戦闘力があれば就職できる王国の近衛兵の一人であった。
それでも生きていくのには十分な給料は手に入り、結婚して子どもも二人授かった。
「俺が死んだら…マミナは…」
妻の名前をか細い声で絞り出した。
「…悲しむことは…ないか…」
そう、結婚して最初の頃こそ仲睦まじくおしどり夫婦なんて言われたこともあったが時が経て
ば変わってくる。
我が王国は列強の中の一国のため戦争が多い。
その中で同年代のものは出世を重ねる中でケイトは50歳になった今でも下から三番目の上等兵止まりである。戦闘が多いこの国では勤続32年はかなりベテランだが戦果は特になく、出世という出世はしなかった。
いつまでもぱっとしない旦那に妻の愛は年々冷めていくのも仕方ないのかもしれない。
「マミナは自分が死んで清々するかもな…」
子どもも成人になり、稼ぎのいいところで働いている。家族のことは心配ないと思えた。
「あぁ…もう駄目だ…眠たい…」
もはや雨の冷たさすら分からない。
この眠気に落ちたとき、もう目は覚まさない。
わかっているがもう抗えない。
今までの人生が走馬灯として思い浮かんでいる。いよいよだなと悟る。
最後の任務が蓋を開けてみれば囮だったことも、家族の愛が最後は感じれなくても、死ぬときは少しは充実感がでるものだと思っていた。
それはきっとこんな人生は【よくある人生】だと思っていたから。
ただ、死ぬ間際、最後に呟いた一言は未練に満ちた一言であった。
「もう一度…やり直したいなぁ…」
ケイトの息が、心臓が止まった。
目は開いているがもう光を捉えることはない。
その筈だった…。
(ん…なんだ…)
(俺は…死んだ…はず…)
(なんだ…体の感覚が…あるぞ…!)
(目…開けれる!)
(あの状態から助かったのか…!)
ケイトは理解はできないが目を開けた。
しかし、目を開けた先は雨が降りしきる戦場ではなく、とても懐かしく…そして聞き馴染みのある声が聞こえることになる。
「あら、ケイト。よく眠ってたわね。
おはよう。」
「おぉ、ケイトが起きたのか!」
(……!!??)
ケイトの目に映ったのは若き姿の父と母の姿であった。
(…あぁ。やっぱり死んだのか…)
ケイトは今見てるものは走馬灯の延長なのだと思った。
(最後は親に感謝でも伝えろということなのか…)
父はケイトが近衛兵になって2年後に病死し、母親もケイトが40の頃に病死した。
(死ぬ間際にはあんまり会話ができなかったからな…いい機会だ…。)
最後に産んでもらい、育ててくれたお礼を言うチャンスだと思い、口を開く。
「あぁー、うぅーぎゃっきゃ」
(ん…?うまく喋れないな…
喋ることはできないのか…?)
感謝を伝えられないじゃないかと思ったが母は優しそうな笑みで語りかけてくる。
「あらあら。可愛らしい。お父さん帰ってきて嬉しいのかしら?」
(俺の声は聞こえてはいるのか…てか可愛らしいなんてよしてくれや。俺はもう50歳だぞ…)
ケイトは久しく言われてなかった褒め言葉に戸惑いながら照れている。
しかし、よく見たら不思議な点が多い。
(んー…なんだか母さんと父さん…でかくないか…?)
ケイトは自分の見ている情景に違和感があった。そして次の父の言葉はかなり衝撃を与えるものになる。
「なんだなんだ!俺がいるのが嬉しいか!
よし。お父さんが抱っこしてやるぞ~」
(!?)
(何言ってんだ父さん!
俺もう中年のおっさんだよ!抱っこなんて…)
言葉を発する暇もなく父はケイトを抱き上げる。
(や、やめてくれぇ!!)
「ぎゃっぎゃっぎゃーー!」
やはりまともな言葉はでない。
だが、抱き上げた瞬間目の前の鏡に衝撃な姿が映し出される。
(あれ…?え…?父さんが…赤ん坊抱いてる…?)
そう。鏡には父親が赤ん坊を抱き上げてる姿が映っている。
「……ぎゃっ!?」
ケイトは一瞬の間を置いて理解した。
(俺…赤ん坊になってる!?)
「ギャッギャッ…ギャーーー!?」
言葉は出ないが驚きが声に出る。
「おお、ケイト元気だなー!」
父ははっはっはと高笑いしながらこちらの気も知らずケイトを抱きかかえる。
「もう、あなたったら。」
母も父の溺愛っぷりを微笑ましく見ている。
(なんで…赤ん坊に…!?
最後にこれじゃ…感謝なんて言えないな…)
(でも…最後に…いいもの見たって感じだな…)
ケイトはこれが最後だと思い、お別れを言えないが神様のプレゼントだと思い心の中でありがとうと呟いた。
しかし、この瞬間が最後になることはなかった。
このとき始まったのである。
凡人男の人生のやり直しが。
そう。人生の【RESTART】が。
男は軍の上層部が決行した囮作戦の囮部隊に組み込まれていた。囮部隊は自分たちが囮と知らずに戦地に赴き、上官の指示を遂行した。
雨が降りしきり、泥濘んだ地面に倒れている男、ケイトは自分の無力さを痛感していた。
「あぁ…痛みがないな…このままじゃ…死ぬかな…」
もはや声も出せない状態であり、死を悟る。
思い返せば俺はとことん平凡な男であった。
親は平民階級と呼ばれ、裕福ではなかったが特別貧乏な訳ではない。
自分が生きることに苦労という苦労はなかった。10歳程度の頃には王宮仕えの騎士団を夢見たが叶わず、18歳で就職したのは一般的な戦闘力があれば就職できる王国の近衛兵の一人であった。
それでも生きていくのには十分な給料は手に入り、結婚して子どもも二人授かった。
「俺が死んだら…マミナは…」
妻の名前をか細い声で絞り出した。
「…悲しむことは…ないか…」
そう、結婚して最初の頃こそ仲睦まじくおしどり夫婦なんて言われたこともあったが時が経て
ば変わってくる。
我が王国は列強の中の一国のため戦争が多い。
その中で同年代のものは出世を重ねる中でケイトは50歳になった今でも下から三番目の上等兵止まりである。戦闘が多いこの国では勤続32年はかなりベテランだが戦果は特になく、出世という出世はしなかった。
いつまでもぱっとしない旦那に妻の愛は年々冷めていくのも仕方ないのかもしれない。
「マミナは自分が死んで清々するかもな…」
子どもも成人になり、稼ぎのいいところで働いている。家族のことは心配ないと思えた。
「あぁ…もう駄目だ…眠たい…」
もはや雨の冷たさすら分からない。
この眠気に落ちたとき、もう目は覚まさない。
わかっているがもう抗えない。
今までの人生が走馬灯として思い浮かんでいる。いよいよだなと悟る。
最後の任務が蓋を開けてみれば囮だったことも、家族の愛が最後は感じれなくても、死ぬときは少しは充実感がでるものだと思っていた。
それはきっとこんな人生は【よくある人生】だと思っていたから。
ただ、死ぬ間際、最後に呟いた一言は未練に満ちた一言であった。
「もう一度…やり直したいなぁ…」
ケイトの息が、心臓が止まった。
目は開いているがもう光を捉えることはない。
その筈だった…。
(ん…なんだ…)
(俺は…死んだ…はず…)
(なんだ…体の感覚が…あるぞ…!)
(目…開けれる!)
(あの状態から助かったのか…!)
ケイトは理解はできないが目を開けた。
しかし、目を開けた先は雨が降りしきる戦場ではなく、とても懐かしく…そして聞き馴染みのある声が聞こえることになる。
「あら、ケイト。よく眠ってたわね。
おはよう。」
「おぉ、ケイトが起きたのか!」
(……!!??)
ケイトの目に映ったのは若き姿の父と母の姿であった。
(…あぁ。やっぱり死んだのか…)
ケイトは今見てるものは走馬灯の延長なのだと思った。
(最後は親に感謝でも伝えろということなのか…)
父はケイトが近衛兵になって2年後に病死し、母親もケイトが40の頃に病死した。
(死ぬ間際にはあんまり会話ができなかったからな…いい機会だ…。)
最後に産んでもらい、育ててくれたお礼を言うチャンスだと思い、口を開く。
「あぁー、うぅーぎゃっきゃ」
(ん…?うまく喋れないな…
喋ることはできないのか…?)
感謝を伝えられないじゃないかと思ったが母は優しそうな笑みで語りかけてくる。
「あらあら。可愛らしい。お父さん帰ってきて嬉しいのかしら?」
(俺の声は聞こえてはいるのか…てか可愛らしいなんてよしてくれや。俺はもう50歳だぞ…)
ケイトは久しく言われてなかった褒め言葉に戸惑いながら照れている。
しかし、よく見たら不思議な点が多い。
(んー…なんだか母さんと父さん…でかくないか…?)
ケイトは自分の見ている情景に違和感があった。そして次の父の言葉はかなり衝撃を与えるものになる。
「なんだなんだ!俺がいるのが嬉しいか!
よし。お父さんが抱っこしてやるぞ~」
(!?)
(何言ってんだ父さん!
俺もう中年のおっさんだよ!抱っこなんて…)
言葉を発する暇もなく父はケイトを抱き上げる。
(や、やめてくれぇ!!)
「ぎゃっぎゃっぎゃーー!」
やはりまともな言葉はでない。
だが、抱き上げた瞬間目の前の鏡に衝撃な姿が映し出される。
(あれ…?え…?父さんが…赤ん坊抱いてる…?)
そう。鏡には父親が赤ん坊を抱き上げてる姿が映っている。
「……ぎゃっ!?」
ケイトは一瞬の間を置いて理解した。
(俺…赤ん坊になってる!?)
「ギャッギャッ…ギャーーー!?」
言葉は出ないが驚きが声に出る。
「おお、ケイト元気だなー!」
父ははっはっはと高笑いしながらこちらの気も知らずケイトを抱きかかえる。
「もう、あなたったら。」
母も父の溺愛っぷりを微笑ましく見ている。
(なんで…赤ん坊に…!?
最後にこれじゃ…感謝なんて言えないな…)
(でも…最後に…いいもの見たって感じだな…)
ケイトはこれが最後だと思い、お別れを言えないが神様のプレゼントだと思い心の中でありがとうと呟いた。
しかし、この瞬間が最後になることはなかった。
このとき始まったのである。
凡人男の人生のやり直しが。
そう。人生の【RESTART】が。
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