向日葵畑の君へ

茶碗蒸し

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主人公

馬渕珱柳という人間3

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解放された俺は放心状態になりながらも何とか部活に行った。




解放された日は大会初戦の夜。試合は終わってるからミーティングしてるだろう、そう思ってミーティングルームに行った。



俺は皆から心配されると思った、何してたんだとかどこ行ってたんだって、ひょっとしたら行方不明です警察沙汰担ってるんじゃないかと思ったのに。それとは別に俺を見た皆の反応は冷たいものだった。





『お前、大会すっぽかして男と乱交してたんだってな』




第一声がそれ。何も答えられなくて呆然としていたら突きつけられたスマホの画面。そこには俺が、俺だけが素っ裸でいろんな液でべとべとになった姿が収められていた。その手にはありえないおぞましいものを握らされていて、これではどう考えてもどう見ても俺がその行為が好きでやってるとしか思えない写真だった。



その場にいた監督からは




『お前が姿を消し一週間前から皆必死になってお前を探しいた。そしたら多喜からお前が見つかったという連絡があってな、その時にこの写真を見せてもらった。一体どういうつもりなんだ?、この大事な時期に性欲が優先か?淫乱なやつだな。この数年間お前に期待してやっていた俺を、仲間をお前は裏切ったんだぞ。この淫乱。』




『あぁ、それと、その写真を見たときにお前の大会への選手登録を取り消しておいたぞ。』




『スポーツマンとしての不適切な行為があった、として』






皆の声が聞こえるはずなのに聞こえてなくてどこか遠くでやけにうるさく騒いでいた。そんな中立ち尽くす俺を泣きながら抱きしめてきた奴がいた。多喜だ。自然と強張る俺の反応を奴は楽しみながらこっそりと耳打ちしてきた。



『スパイクもブロックもサーブもトスも全てに秀でるくせに、なんでよりによってリベロを選んだの?。ねぇ、俺の元親友。お前が先に俺を落とそうとしたのだから俺に同じことされても仕方ないよねぇ?』



誰にも聞こえず俺には良く聞こえたその声。それを言い残してあの時と、俺を輪姦させたときと同じくらいの力で俺のみぞおちを思いっきり殴って泣いたフリをしながら去っていった。それを見た仲間達も同じように俺を殴ったり蹴ったりし始める。監督は黙認。




『そんなに男が好きならさ今度俺らにもヤラせろよ』




仲間だった奴らの目は俺を汚物を見るように見ていた。




まぁ、それでもへこたれずに部活に通おうとしたんだけどね。ボール触った瞬間、俺こんな汚れてしまった身体でバレーしていいのかって思っちゃってさ。それ感じ始めたら無理だった。スパイクもサーブもトスもレシーブも、ボールが俺の手に触れるたびにそのボールも汚れていく気がした。




俺はバレーボールに触れられなくなった。




もちろん人にも触れられなくなった。





偶に噂を聞きつけて俺をレイプしようとしてくる奴らもいてもう最悪だったね。誰がそんなこと好きだっつったんだよ。そんなこと言っても誰も聞かなかった。淫乱淫乱そう言って。



バレー部の奴らにすら犯されたし。




ただ、俺が出れなかった試合よりもたくさんの試合で俺は活躍してきた。その功績は高校の強豪校からは無視できないものだったらしい。スポーツマンとして不適切な人物というレッテルで選手取り消しされたのにも関わらずたくさんの推薦が俺のもとに届いた。俺の中学自体強いから俺以外にも推薦は何人ももらってたと思う。あの多喜も。



もともとバレーで高校行くつもりだったから、高校入試の勉強なんてできるはずがない。かといって高校でバレーやる気もない。もうこんな俺じゃバレーする資格ない。悩んでたけど就職もしたくなかったし、どこか適当な強豪の推薦受けて怪我で不参加にしといて後々退部すればいいやって思った。だから監督にはどこでもいいんで同じ中学の奴らが推薦もらってないところにしてくださいってそう頼んだ。





もう二度とこの洛南第一の奴らと会いたくなかった。








そして俺は春高最多出場、最多優勝回数を誇る強豪校山陽学園高等学校に入学した。





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