その輝きを失わないで

茶碗蒸し

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依存

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俺が黒妖国に来て既に一週間が経過していた。




「あー平和だな」



今はお昼。自分の国にいた時は毎日毎日夜は奇襲攻撃、朝はそれの後処理、それから一日自室に戻るまではひたすら自己鍛錬もしくは軍事訓練、そしてまた夜…といった感じで常に戦争に対して準備している日常だった。黒妖に連れてこられてからというもの、一応王族から奴隷扱いすると聞いていたけど実際はそんなことなくむしろほんとに客人としてもてなされてる。丸一日暇なのだ。俺は俺の部屋から出ちゃいけないからほんっとに暇。セルシウスがずっと俺に付き纏うのかと思ってたがそんなこと全然ない。むしろあいつ俺に会いにこない日もある。俺が必要とか言ってたくせにどこがだよ。んで俺もできることはやってた。
セルシウスがいないってことは俺を抑制できる人がいないってことだぜ?そりゃ自分の国と連絡とるとかスパイ活動するとかしますよ。

だけど俺拉致られる時に自分で通信装置捨てちゃってて、朱輝とソンに話したいのに連絡できないし。それじゃ残りの一択、部屋抜け出してこの国について調べる。というわけで絶賛お城の城下町みたいなとこ探索中。


目の前に並ぶ屋台、そこには見たこともない美味しそうなご飯達が!何か透明な膜に包まれた美味しそうなお肉、でっかい海老や魚、貝がバター醤油風に味付けされた串焼き、中にあんこ?のようなものをつめたふわっふわのおまんじゅう、果物なんて光り輝いてつやっつや、何でか俺の国の食べ物より一回りも二周りもサイズがでかい。うわぁ全部食べたい。すごい美味しそう。お金払わないと食べれないよな。俺は既に屋台を何周もしていたからなのか周りの黒妖人がちらちらと俺を見てるのに気づいた。やば、と思った時にはもう遅くてあるお肉屋さんの女の人が俺に向かって声をかけた。


「何?あんた食べたいのかい?」


ええっと、正直に答えようかすっごい迷う。一応この国の人間じゃないしローブ羽織ってるから顔はっきりと見られてないから俺が誰だとか分からないだろうけどバレたらこの国の人達にとっては敵みたいなもんだし。でもそんなふうに迷ったのは一瞬で、女の人の横に並ぶ肉を見てたらもう駄目で本能が答えを口にした。



「あ、はいっ!大っきい肉が…」


だけど言いかけてまた口を噤む。だから!金がないんだって!その女の人は俺が喋るのを黙って待ってたけどなんとなく悟ったのか代金はいいよ、と言ってくれた。


「見たところ旅の人って感じだろう?来たばっかりかな?。ならこの国のお金ないだろうからね、」



「…」



「それに、何周もずっと食べたそうな顔で見つめられてたらあげたくなるわよ。」



「うっ…バレてましたか…」




ふふ、と女の人は笑ってお肉をお皿に大盛りによそってくれた。


「ありがとうございますっ!」



一応、がっつき過ぎたらマナー違反なので「いただきます」のポーズを軽く取って食いつく。一口食べたら口の中にジュワっと肉汁、お肉を包んでいた透明な膜は味がついててプルンプルンだった。1枚あっという間に食べきって次のやつ食べたらなんと!!透明の膜の味付けが違ってこれもまた絶品!




「あ、あの、とっても美味しかったです!ごちそうさまでした!」




そうやってお皿を下げたら女の人は驚いたような顔をした。



「あんた…その顔…」



やっばい!食べるときに勢いよく食べてたもんだから顔にかかってたローブがとれたのに気づかなかった。完全に顔見られてばっちりと目が合う。女の人が不自然に固まったものだから周囲にいた人々も不審げにこちらを眺め始める。俺はどうしたらいいかわかんなくってぼうっとしてた。だってこの国の今ちょうど俺がいる所を壊滅させたの俺だし。平民は殺さないようにしたけど兵士は徹底的に殺戮の限りを尽くしたし。謝ったほうがいいのだろうか?でもそんなことして何になる?



「うわっ!」



突っ立ってたら女の人が自分たちが注目を浴びたのに気づいたらしくて、俺の手を引っ張って店の裏へと連れて行った。



「私、あんたのことを知ってるわ。だけど…責めたりしないわよ。何でここにいるのか詳しいことも聞かない。秘密にするわ。だからそんな顔をしないで」



向き直ってそう言われた。え、と思って顔をしかめる。そんなに不細工だったのかな、結構ショック。



「…すみません。」



口にした声は掠れていた。カタカタと震えそうになる手を何とか制しながら。そしたらその人は俺のローブをかけ直した。


「だから!その顔!」


といってパチンっと俺の顔を両手で軽く叩いた。


「私の名前はアゲハよ。また来て。いつでも美味しいご飯を提供するわ。」



そう言ってまた店へと戻っていった。俺もこそっと店裏から抜け出して俺の部屋と戻る。帰る途中ずっと彼女のことで頭がいっぱいになった。




「俺が6代神だって…完全にわかってた顔だったよな…」



バレた時、アゲハさんはそのまま周りに伝えて俺をリンチするとかできたはず。恨みがないわけじゃないだろうな。だって俺って認識した瞬間、ほんとに一瞬目の色が変わったから。なのにそれを抑えて俺を周りにバレないように隠してくれた。いい人だったな、うん。それに対して俺はてんで駄目だ。この国に側の人間…それも首謀者なのに。それが最善って思ったんだ。それしかないって、今更その判断が間違ってたなんて謝るなんて、それこそ罪だ。俺に殺された兵士の人達だって守るべき家族がいたはず。兵士の帰りを待って家族だっているはず。多くの人から大切なものを奪ったのが判断ミスでした、なんて無責任だ。俺が…俺だけは謝っちゃだめだ。そうだ…




カタカタとまた手が震え始める。



甘かった、自分は。国民の姿を見るまでは自分がしたことについて考えもしなかった。下界の人間に復讐することしか考えてなくて。実際に目の当たりにして、目がくらんだ。背中にはずっしりとその重荷がのってて…。





「ふーっ」





ようやく自分の部屋の扉の前まで来て、あとはバレないように部屋に入るだけだった。そんな時に、





「あれー?6代神様?どして外にいるんですかー?」





「うげ」




「いや、うげって何ですよ。」




この明るくチャラけてる男は確か才華の第一王子のリー・ハオラン。一応王族だし、うげっていうのは不味かったなと思い直しぺこりと会釈する。リーは気にしなくていいよとひらひら手を振りながら俺に近づいてきた。



「リー……才華国王子殿は何故ここに?」



ついつい年下だもんで呼び捨てにしようと思ってしまった。セルシウスに敬語をやめろと言われて言われて以来つい緩みがちだ。いかんいかん気を引き締めろ自分。

 

「あー呼び捨てでいいですよ。それよりも…」




「?」




「どう見ても今帰りって感じですけど、これはどういうことですか?」



ぐいっと顔を近づけてにっこりとあどけない表情で迫られる。ち、近い。別にこいつになにかされても実力的に俺のが圧倒的に強いから怖くないけど。さすがにこの迫力で迫られたら普通に引く。それで始めてあ、抜け出してたのバレたと内心冷や汗ダラダラだった。



「んんん…ト、トイレに行ってました。」


  
「へー?」


 
うわぁ嘘ってバレバレ。だって部屋にトイレとかお風呂とかついてるもん。さすがにわかるか。




「ま、別にいーですよ。俺は見逃してあげます。」



ふー、何とかなった。多分っていうか完全にバレバレだけど咎められないってことは別にいいってことか??いやでも咎められたくない。まだいろいろ下見できてないし、今日あったアゲハさんにもなんとなくまた会ってみたいし、。正直この国のこと知るのは気が引けるけど俺はやっぱり加害者として知らなきゃだめだ。大部分はその責任感、あとちょっとはアゲハさんがくれたお肉。あれはぜひともまた頂戴したいものだ。



「だけどセルシウス様ももうすぐここに来られますよ?」



リーが言ってすぐ廊下の向こう側からコツコツと人の歩く音が聞こえ始めた。俺はリーを押しのけて慌てて自室へと逃げ込んだ。入ってまもなくして二人の男が会話する声が聞こえる。




「リーか。何のようだ?」




「この前の件調べさせていただきました。今日実行されますか?」




「……早いな、流石だが。」





「歴史を調べればごくごく普通のことでしたので。…ですけどまだ時期が早いとおっしゃるなら今日でなくとも構いません。」




「いや、今日やる。」




そう言って会話が終わったなあと思ってたのもつかの間、セルシウスとリーは俺の籠もる部屋へと入ってきた。いやいや、会話の流れからして怖すぎるんですけど??なんとなく二人の男から感じられる雰囲気から嫌な予感が拭いきれなかった。




「紫輝、出てこい」




いや!絶対に出てきたくないんですけど?!
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