その輝きを失わないで

童話

（前）

これは遠い昔のお話ー。

世界は5つの国からできていました。

それぞれの国は豊かで、争いはなく

平和できれいな世界でした。

ある時、神様がひとりの少女に恋をしました。

少女はこの世界では珍しい銀色の髪の毛と

黄金に光る瞳のとてもきらきらした美しい

人間で、

そして透き通ったきれいな心を持っていました。


神様は少女を特別に思い、自分のものにしたいと思うようになります。


しかし、人間と恋に落ちることは天界では
禁じられていました。


せめて神様は少女を自分の手で幸せにしたいと思い、

少女に翼を与え、ある魔法をかけました。


少女が美しいままでいられるように…。


年老いて朽ちていくことがないように…。



しかし、少女が幸せになることはありませんでした。


翼が生え、年を取らない少女を人々は恐れて
しまったのです。

なぜ、年を取らなくなったのか…

なぜ、翼が生えたのか…

少女は何もわかりませんでした。

そして、少女は人々からひどい仕打ちを受けるようになります。


少女は生きることを諦めました。

自分で自分の体にナイフを刺して、

死んでしまったのです。


神様は少女に不老の魔法はかけましたが


不死の魔法はかけませんでした。


神様は少女が死んだことにひどく悲しみ、


自分のしたことを後悔しました。


そして、少女の魂を持って帰りました。


神様はお空の雲の上に国をつくり、


自分の使いである天使をそこに住まわせました。


そして、少女に新たな生を与えました。


少女が今度こそ、幸せになれるようにと、


天使たちに少女を可愛がらせました。


そのころには、少女はただの人間ではなく


神や天使に近い存在となっていたので、


神様の姿が見えるようになっていました。


少女は神様を責めることはしませんでした。


少女は神様にありがとうと言いました。


少女は天使たちと暮らす中で、

ときどき神様とあってしゃべるようになりました。


しだいに少女は神様に惹かれていきました。


でも、やっぱり少女は人間なので神様と恋をすることは許されませんでした。


ある日、神様が少女に「何か他に欲しいものはあるか？」と尋ねました。



少女は「神様の愛のカケラがほしい」と言いました。



神様は少女の瞳にお星さまを与えました。


少女はとても喜びました。





そして、長い長い年月が経って


少女は年老いて死んでしまいました。


一度生き返らせた魂が二度目の死を迎えると、


魂自体がなくなってしまうので、


少女が神様に会えることはもうありませんでした。


神様は少女とむすばれることはできませんでしたが、


少女と過ごした日々はとても幸せでした。


少女が死ぬその時まで、そばで見守っていました。


神様は少女がいなくなった国を、


そのまま残すことにしました。


こうして、世界に6つ目の国ができました。