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★ピタラス諸島第二、コトコ島編★
287:切るな切るなっ!
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「話をまとめると……。時の神の使者はグレコではなく、グレコの下部獣のふりをしていたモッモ、そなたであり、姫巫女様は数日の後に我らの前に現れるであろう異形な怪物の討伐を、そなたに命じたと……。そういう事だな?」
「はい、仰る通りです」
ベンザの言葉に、深く深く頷く俺。
その鋭い目は、俺の頭のてっぺんから足の先までを、ジロジロ、ギロギロと観察している。
こ、怖い……
今度こそ本当に、食べられちゃうんじゃなかろうか……?
ガクブルガクブル
小刻みに震えながらも俺は、なんとかその場に立って、ベンザの次の言葉を待つ。
隣に立つグレコは、俺ほどには怖がっていないものの、とても緊張した面持ちでベンザを見つめていた。
ついさっき、オマルとネフェと共に、俺とグレコはベンザの家へと戻った。
俺は、いの一番に、俺が時の神の使者である事、グレコは俺の保護……、守護者である事を、自らの口でベンザに明かした。
そして、姫巫女様から直々に異形な怪物の討伐命令を受けた事、その経緯などを、ザックリとだが説明したのだ。
ベンザは、静かに俺の話を聞いてくれてはいたが……
その顔は、なんだこいつ? 喋れるのかっ!? とでも言いたげな、かなり複雑かつ怒った表情をしておられました。
まぁ、無理もないよね。
さっきまではただの一言も喋らなかった野ネズミ紛いの生き物が、突然流暢にペラペラと喋るんだもの。
そりゃ驚くだろうし、騙されていたとなれば怒るのも当たり前だ。
当たり前なんだけど……
おっ、お願いっ! あんまり怒らないでぇっ!!
「姫巫女様が命じられたという事は……。オマル、我らの憶測は、どうやら現実になるという事だな?」
「あぁ、そういう事だ。しかし……、何故姫巫女様は、異形な怪物が現れると断定されたんだろうな? やはり、泉の古の獣には、何か謂れがあるんだろうか??」
「わからぬ……。わからぬが、間違いなく、異形な怪物は我らを襲ってくるに違いない。姫巫女様は、モッモに奴の討伐を命じたと言うが……。案ずるなモッモよ。我ら紫族も共に戦うぞ」
あ……、良かった、身分を偽っていた事は全然怒っていなさそうだ。
俺に向かって笑みを讃えるベンザを見て、俺はホッと安堵の息を吐いた。
「それで、折り入ってお願いがあるんです。もし本当に、異形な怪物が現れるとしたら……。私一人ではモッモを守れない。だから、仲間をここへ呼びたいんです」
「ふむ、仲間とな? 他にも仲間がいたのか??」
ベンザの問い掛けに、グレコは少々渋い顔をしつつ……
「その……、ベンザさんが偵察に行っていた先の、ヘラヘラ笑っていた奴が私たちの仲間かと……」
意を決してそう言った。
「何っ!? もしや、あの桃色の狸かっ!??」
……無論、カービィの事であろう。
「あ、えと……、はい。でも、彼だけではなくて、他の者もみな仲間です」
グレコは、俺たちのそもそもの目的である、コトコの洞窟の探索と、遺品の捜索の事も、包み隠さず話した。
「なるほど、そうであったか……。それで……。ようやく合致がいったな。……よし、わかった。そなたらの仲間をこの村へと呼び寄せるが良い。村の者には私から話しておこう」
「い、いいのか勉坐? お前が最も嫌う外者達だぞ??」
ベンザの言葉に、オマルは戸惑いを隠せない表情だ。
「構わぬ。事は一刻を争うのだぞ? 確かに私は、古きを尊び、掟を守る事が正義だと考えているが……。迫り来る脅威より皆を守る事が、首長たる私が最も優先しなければならない事だと思っている。姫巫女様がこの者達に託されたのは、我ら紫族の未来だ。それを知って尚、己が正義を貫く為に、皆を危険に晒そうなどとは思わぬ故な。お前もそうだろう? 雄丸よ」
わぁ~……
なんか、ちょっと難しい言い回しだけど、ベンザがすっごくカッコよく見えるぅ~。
「そうか……。そうだな。初めてお前と意見が合った様な気がするぜ」
ニヤリと笑うオマル。
「ぬかせ。私は今から、戦闘団の者達に話をしてくる。老齢会の者共も、姫巫女様の命令とあらば逆らうまい。お前も一度村へと戻るが良いぞ、雄丸。事態が変わった故な、西の村の連中にも知らせておく方がいい」
「わかった。袮笛と砂里は置いていくぞ? ここまで連れて来たグレコとモッモを守る義務があるだろう??」
「勿論だ。何が起こるか皆目見当も付かないが……。私と砂里は、グレコとモッモの側にいよう」
ふむ、何やら慌ただしくなってきましたな。
ベンザは東の村のみんなに話をしに出かけて、オマルは西の村のみんなに話をしに戻って、ネフェとサリは俺たちと一緒に居てくれる……、て事か!
「炊事場に食物がある。モッモ、グレコ、口に合うものを好きに食べておけ。そして私が戻り次第、モッモには石碑の解読を手伝ってもらおう。それまでに、仲間をここへ呼び寄せるが良い」
「わかったわ!」
「イエッサ!」
ベンザはそう言うと、家を出て行った。
「それじゃあ、一時の別れだ。モッモ、グレコ、また会おう。袮笛、砂里、二人をよろしく頼んだぞ」
そう言って、オマルも家を出て行った。
ふぅ……、何はともあれ、これでようやく……
キュルルルル~
「……モッモ?」
気が抜けた途端に、俺のお腹が小さく鳴き声を上げた。
「ははは。お腹空いたな~」
間抜けな俺の様子に、グレコもネフェもサリも、屈託無く笑った。
「カービィ~? 応答せよ~??」
絆の耳飾りを使って、カービィを呼び出す俺。
「うわぁ~、見てこれ凄いっ! モッモ、これも食べる!?」
「あ、うん、じゃあそれもっ!」
俺の隣では、グレコが様々な食材の山を掻き分けながら、楽しそうに声を出す。
ベンザの家の炊事場には、沢山の野菜や果物が保存されていた。
どれもこれも見たことの無い、奇妙な形の物だらけだけど、野ネズミさんの丸焼きよかよっぽどいい。
それに、不思議な事に、ここには動物性の食物が一切無いのだ。
即ち、血の臭いも獣臭もしない。
ベンザって確か、野ネズミ風の獣、リーラットの生肉が好物だったはずよね?
妙だなぁ~??
「ほいっ! こちらカービィっ!!」
お、出た出た。
絆の耳飾りから、カービィのいつもの元気な声が聞こえてきた。
「こちらモッモ! カービィ君、至急応援を要請しますっ!! 緊急事態のため、部隊を編成し、こちらへ来てくださいっ!!!」
俺は、半ばふざけてそう言ったのだが……
「了解しました! 部隊を編成し、至急向かいますっ!! ではっ!!!」
「おおおいっ! 切るな切るなっ!!」
慌ててカービィを制止する俺。
ノリが良すぎるんだよこの野郎っ!
「はっはっはっ! どうしたんだぁ?」
「いや、その、ちょっと……。かくかくしかじかの、かくかくかくかくしかじかうまうま、でして~」
「そりゃまたっ!? えっ!?? この洞窟、偽物なのかぁっ!???」
驚愕するカービィ。
「らしいよ、本当かどうか分かんないけど」
「ん~、でも、そうか……。わかった! とりあえず、ノリリアに状況説明しなきゃどうなるか分かんねぇけど……、おいらとギンロだけでもそっちに行くよ!! けど、場所がわかんねぇからさ、ほら、風の精霊さんを使わせてくれねぇか?」
「あ、そうだね、オッケー! リーシェに迎えに行ってもらうよ!!」
「うしっ! じゃあ、また後でなっ!!」
「は~い!!!」
……まるで、遊びに行く約束をしたかのように、お気楽に交信を終えた俺。
「カービィとギンロが来てくれるってさ」
「あ、良かった! 二人がいてくれれば私も安心だわ~」
「うん、僕も! それで、リーシェを呼ばなきゃいけないから、ちょっと外出るね」
「わかった。勝手口があるから、そこから出たら?」
「へいへ~い」
グレコの指示に従って、炊事場の隅にある扉から外に出ると、そこには小さな裏庭が広がっていた。
色んな種類の、小粒の果実がついた背の低い木々が植えられていて、辺りは爽やかな香りで満ちている。
少し狭いが日当たりも良く、四方が骨の壁に囲まれている為に、ここなら外部からの視線も気にならないな。
「お~い、リーシェ~!?」
空に向かって叫ぶ俺。
『はいは~い。久しぶりねモッモちゃん、どうしたのかしら? キャハ♪』
いつもの調子で、風の精霊シルフのリーシェが現れた。
相も変わらず、体が半透明ですね。
「ここから南に行った火山の麓に、カービィとギンロがいるんだけど、ここまで連れて来て欲しいんだ」
『あら、それならお安い御用よ。行ってくるわね~♪』
「よろしくね~♪」
スーッと空へと飛んで行くリーシェを見送りながら俺は、なかなかに精霊召喚師が板についてきたかしら?と、上機嫌になるのであった。
「はい、仰る通りです」
ベンザの言葉に、深く深く頷く俺。
その鋭い目は、俺の頭のてっぺんから足の先までを、ジロジロ、ギロギロと観察している。
こ、怖い……
今度こそ本当に、食べられちゃうんじゃなかろうか……?
ガクブルガクブル
小刻みに震えながらも俺は、なんとかその場に立って、ベンザの次の言葉を待つ。
隣に立つグレコは、俺ほどには怖がっていないものの、とても緊張した面持ちでベンザを見つめていた。
ついさっき、オマルとネフェと共に、俺とグレコはベンザの家へと戻った。
俺は、いの一番に、俺が時の神の使者である事、グレコは俺の保護……、守護者である事を、自らの口でベンザに明かした。
そして、姫巫女様から直々に異形な怪物の討伐命令を受けた事、その経緯などを、ザックリとだが説明したのだ。
ベンザは、静かに俺の話を聞いてくれてはいたが……
その顔は、なんだこいつ? 喋れるのかっ!? とでも言いたげな、かなり複雑かつ怒った表情をしておられました。
まぁ、無理もないよね。
さっきまではただの一言も喋らなかった野ネズミ紛いの生き物が、突然流暢にペラペラと喋るんだもの。
そりゃ驚くだろうし、騙されていたとなれば怒るのも当たり前だ。
当たり前なんだけど……
おっ、お願いっ! あんまり怒らないでぇっ!!
「姫巫女様が命じられたという事は……。オマル、我らの憶測は、どうやら現実になるという事だな?」
「あぁ、そういう事だ。しかし……、何故姫巫女様は、異形な怪物が現れると断定されたんだろうな? やはり、泉の古の獣には、何か謂れがあるんだろうか??」
「わからぬ……。わからぬが、間違いなく、異形な怪物は我らを襲ってくるに違いない。姫巫女様は、モッモに奴の討伐を命じたと言うが……。案ずるなモッモよ。我ら紫族も共に戦うぞ」
あ……、良かった、身分を偽っていた事は全然怒っていなさそうだ。
俺に向かって笑みを讃えるベンザを見て、俺はホッと安堵の息を吐いた。
「それで、折り入ってお願いがあるんです。もし本当に、異形な怪物が現れるとしたら……。私一人ではモッモを守れない。だから、仲間をここへ呼びたいんです」
「ふむ、仲間とな? 他にも仲間がいたのか??」
ベンザの問い掛けに、グレコは少々渋い顔をしつつ……
「その……、ベンザさんが偵察に行っていた先の、ヘラヘラ笑っていた奴が私たちの仲間かと……」
意を決してそう言った。
「何っ!? もしや、あの桃色の狸かっ!??」
……無論、カービィの事であろう。
「あ、えと……、はい。でも、彼だけではなくて、他の者もみな仲間です」
グレコは、俺たちのそもそもの目的である、コトコの洞窟の探索と、遺品の捜索の事も、包み隠さず話した。
「なるほど、そうであったか……。それで……。ようやく合致がいったな。……よし、わかった。そなたらの仲間をこの村へと呼び寄せるが良い。村の者には私から話しておこう」
「い、いいのか勉坐? お前が最も嫌う外者達だぞ??」
ベンザの言葉に、オマルは戸惑いを隠せない表情だ。
「構わぬ。事は一刻を争うのだぞ? 確かに私は、古きを尊び、掟を守る事が正義だと考えているが……。迫り来る脅威より皆を守る事が、首長たる私が最も優先しなければならない事だと思っている。姫巫女様がこの者達に託されたのは、我ら紫族の未来だ。それを知って尚、己が正義を貫く為に、皆を危険に晒そうなどとは思わぬ故な。お前もそうだろう? 雄丸よ」
わぁ~……
なんか、ちょっと難しい言い回しだけど、ベンザがすっごくカッコよく見えるぅ~。
「そうか……。そうだな。初めてお前と意見が合った様な気がするぜ」
ニヤリと笑うオマル。
「ぬかせ。私は今から、戦闘団の者達に話をしてくる。老齢会の者共も、姫巫女様の命令とあらば逆らうまい。お前も一度村へと戻るが良いぞ、雄丸。事態が変わった故な、西の村の連中にも知らせておく方がいい」
「わかった。袮笛と砂里は置いていくぞ? ここまで連れて来たグレコとモッモを守る義務があるだろう??」
「勿論だ。何が起こるか皆目見当も付かないが……。私と砂里は、グレコとモッモの側にいよう」
ふむ、何やら慌ただしくなってきましたな。
ベンザは東の村のみんなに話をしに出かけて、オマルは西の村のみんなに話をしに戻って、ネフェとサリは俺たちと一緒に居てくれる……、て事か!
「炊事場に食物がある。モッモ、グレコ、口に合うものを好きに食べておけ。そして私が戻り次第、モッモには石碑の解読を手伝ってもらおう。それまでに、仲間をここへ呼び寄せるが良い」
「わかったわ!」
「イエッサ!」
ベンザはそう言うと、家を出て行った。
「それじゃあ、一時の別れだ。モッモ、グレコ、また会おう。袮笛、砂里、二人をよろしく頼んだぞ」
そう言って、オマルも家を出て行った。
ふぅ……、何はともあれ、これでようやく……
キュルルルル~
「……モッモ?」
気が抜けた途端に、俺のお腹が小さく鳴き声を上げた。
「ははは。お腹空いたな~」
間抜けな俺の様子に、グレコもネフェもサリも、屈託無く笑った。
「カービィ~? 応答せよ~??」
絆の耳飾りを使って、カービィを呼び出す俺。
「うわぁ~、見てこれ凄いっ! モッモ、これも食べる!?」
「あ、うん、じゃあそれもっ!」
俺の隣では、グレコが様々な食材の山を掻き分けながら、楽しそうに声を出す。
ベンザの家の炊事場には、沢山の野菜や果物が保存されていた。
どれもこれも見たことの無い、奇妙な形の物だらけだけど、野ネズミさんの丸焼きよかよっぽどいい。
それに、不思議な事に、ここには動物性の食物が一切無いのだ。
即ち、血の臭いも獣臭もしない。
ベンザって確か、野ネズミ風の獣、リーラットの生肉が好物だったはずよね?
妙だなぁ~??
「ほいっ! こちらカービィっ!!」
お、出た出た。
絆の耳飾りから、カービィのいつもの元気な声が聞こえてきた。
「こちらモッモ! カービィ君、至急応援を要請しますっ!! 緊急事態のため、部隊を編成し、こちらへ来てくださいっ!!!」
俺は、半ばふざけてそう言ったのだが……
「了解しました! 部隊を編成し、至急向かいますっ!! ではっ!!!」
「おおおいっ! 切るな切るなっ!!」
慌ててカービィを制止する俺。
ノリが良すぎるんだよこの野郎っ!
「はっはっはっ! どうしたんだぁ?」
「いや、その、ちょっと……。かくかくしかじかの、かくかくかくかくしかじかうまうま、でして~」
「そりゃまたっ!? えっ!?? この洞窟、偽物なのかぁっ!???」
驚愕するカービィ。
「らしいよ、本当かどうか分かんないけど」
「ん~、でも、そうか……。わかった! とりあえず、ノリリアに状況説明しなきゃどうなるか分かんねぇけど……、おいらとギンロだけでもそっちに行くよ!! けど、場所がわかんねぇからさ、ほら、風の精霊さんを使わせてくれねぇか?」
「あ、そうだね、オッケー! リーシェに迎えに行ってもらうよ!!」
「うしっ! じゃあ、また後でなっ!!」
「は~い!!!」
……まるで、遊びに行く約束をしたかのように、お気楽に交信を終えた俺。
「カービィとギンロが来てくれるってさ」
「あ、良かった! 二人がいてくれれば私も安心だわ~」
「うん、僕も! それで、リーシェを呼ばなきゃいけないから、ちょっと外出るね」
「わかった。勝手口があるから、そこから出たら?」
「へいへ~い」
グレコの指示に従って、炊事場の隅にある扉から外に出ると、そこには小さな裏庭が広がっていた。
色んな種類の、小粒の果実がついた背の低い木々が植えられていて、辺りは爽やかな香りで満ちている。
少し狭いが日当たりも良く、四方が骨の壁に囲まれている為に、ここなら外部からの視線も気にならないな。
「お~い、リーシェ~!?」
空に向かって叫ぶ俺。
『はいは~い。久しぶりねモッモちゃん、どうしたのかしら? キャハ♪』
いつもの調子で、風の精霊シルフのリーシェが現れた。
相も変わらず、体が半透明ですね。
「ここから南に行った火山の麓に、カービィとギンロがいるんだけど、ここまで連れて来て欲しいんだ」
『あら、それならお安い御用よ。行ってくるわね~♪』
「よろしくね~♪」
スーッと空へと飛んで行くリーシェを見送りながら俺は、なかなかに精霊召喚師が板についてきたかしら?と、上機嫌になるのであった。
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