上 下
247 / 801
★ピタラス諸島第一、イゲンザ島編★

237:そうなんだけど……

しおりを挟む
「オーラスは最初、この島に存在する有尾人達の村は、七つあると報告してきたポ。だけど、自分の目で空から確かめられたのは六つ……。不思議に思って、有尾人の代表者に再度尋ねると、村は六つだと言われたらしいポね。つまり、七つ目の村の存在を、有尾人達は隠したかった……。その理由は一つしかないポ。有尾人達は最初から、あたち達をそのグノンマルとやらに差し出す為に、陥れる気だったのポ」

   なっ!?  なんっ!?  なんだってぇっ!??

「だけど……、じゃあどうして、おいらとモッモとおまいは、井戸の底なんかに投げ入れられたんだ?  そのグノンマルって奴、魔力が欲しいなら、おいらとおまいのも欲しいって思うだろうよ。それにモッモは……、魔力ねぇけど……、別に戦えそうにも見えねぇし、プチッと殺しちまった方が早いと思わなかったのかなぁ??」

   おぉおいっ!  カービィ!!
   言っていいことと悪い事があるんだぞっ!??
   プチッとてっ!???
   なんちゅう恐ろしい事言いやがるんだこの野郎っ!!!!!

「これはあたちの推測に過ぎないポが……。おそらくあたちとカービィちゃんは、魔力が強すぎると判断されたのポ。正直、騎士団のみんなを軽んじるわけではないポが、あたちとカービィちゃんの魔力は、みんなのものと比べると桁違いポね。方法はわからないポが、あまりに大きな魔力の持ち主だから、逆に危険だと判断されたのだと思うポよ」

「ふむ……。ならば、モッモは何故だ?  カービィの言うように、一思いにやってしまった方が邪魔にもなるまい」

   おぉおいっ!  ギンロ!!
   一思いにやってしまった方が~って……、何をどうやるってんだよぉっ!??
   お前まで俺を殺す気かぁあぁっ!???
   お前は俺の守護者じゃなかったのかよぉおぉぉっ!!???

「これも推測ポが……。モッモちゃんは荷物が全て無事だったポね?」

「……え!?  あ、はいっ!!」

   ノリリアに問われて、ハッと我に返り、答える俺。
   カービィとギンロの言葉に、我を失いかけてたわ……

「モッモちゃんが身に付けているものは、そのほとんどが神様から貰った魔法アイテムポ。即ちそれらは、持ち主の意思なくして持ち主の体からは剥がれないようになっているのポね」

   ほう?  そうなのかね??

   首を傾げる俺の手を取り、おもむろに指輪を外そうと試みるカービィ。
   しかし、指輪はピクリとも動かない。

「ほんとだ、外れねぇや」

   ほほう?  そうだったのだね。

「おそらくポが、その現象を、有尾人達は異質だと思ったのポ。モッモちゃんの事を理解不能な力を持つ者と認識して、首長であるグノンマルの元へ連れて行く事を避けたのポね」

   ほほほう?  つまり俺は、知らず知らずの内に、神様の魔法アイテムに助けられていたわけか。
   神様ありがとう!!!

「謎が解けた所で、これからどうする?  我はすぐさま出立するにも問題ないが……。モッモとカービィは疲れておるのではないか?」

   ……うん、もうヘロヘロのクタクタ。

「おいらは平気だぞ?」

   えっ!?  カービィまじかよっ!??

   三人の視線が、一気に俺に向けられる。
   三人共、お前次第だぞ、さぁどうする、疲れてないよな?  って感じの目だ。

「しかし、ここから邪猿グノンマルの治める村までは、おおよそ半日以上歩かねばなりませんノコ。それでも皆様、今すぐ出発されますノコ?」

   うぇえぇっ!?  今から半日ぶっ通しで歩くのっ!??
   それはちょっと……、いや、絶対に無理。

「よっし!  じゃあ今すぐ行こうっ!!」

   えぇっ!?  俺まだ何にも言ってないぞっ!??

「そうポね。仲間の命がかかっているかも知れないポよ。のんびり寝てなんかいられないポね」

   今の今まであんた寝てたでしょうがぁっ!???

「さすれば皆、我の背に乗るが良い。全速力で走ろうぞ」

   無理ぃいぃ~!
   この疲れた状態で全速力のフェンリルに乗るなんて自殺行動ぅうぅっ!!

   そそくさと、出発の準備を始める三人。
   俺は、両手の拳をギュッと握りしめ、小さな体をプルプルと震わせて……

「ちょ……、ちょっと待てぇ~いっ!!!」

   あらん限りの声で、そう叫んだ。
   余りに大きな声で、余りに陳腐なそのセリフに、三人の動きがピタッと止まる。

「いっ、今からっ!  このまま、その……、助けに行くなんてっ!!  ぼっ、僕は無理っ!!!」

   勇気を振り絞って、そう言った。

「んな事言っても……。みんなが危険なのかも知れねぇんだぞ?」

   うっ……、それは、そうなんだけど……

「もし、グノンマルとやらの目的が魔力を喰らう事なのであれば、グレコもその対象だ。モッモよ、仲間の命を守ろうとは思わぬのか?」

   うっ……、それも、そうなんだけど……

「モッモちゃん……、疲れているのはわかるポが、事は一刻を争うポね。今すぐ向かわないと……。明日の朝にここを出て、夕方近くにそのグノンマルの所へ辿り着けたとしても、みんな既にやられてしまっているかも知れないポよ?」

   うっ……、ぐっ……、だったらいっそのこと……

「じゃっ!  じゃあっ!!  風の精霊を呼ぶよっ!!!」

   だぁあぁぁっ!?  
   言ってしまったぜ俺ってばっ!??

「ポポ?  風の精霊??」

「お、いいなそれ。精霊に連れてってもらうって事か?」

「ふむ、確か……、リーシェ殿、という名だったか?  彼女であれば、我らを運ぶ事も容易かろう」

   うぅう……、しまったぁ……
   つい口を突いて出てしまったぁ……
   本当は、ヘロヘロのクタクタなのにぃ……

『お呼びかしら?  モッモちゃん♪』

   聞き覚えのある声に、後ろを振り返ると……

「げっ!?  もう来たのっ!??」

   風の精霊シルフのリーシェが、半透明の体をふわふわと宙に浮かせて、ウフフと笑っていた。





「いいっ!?  本当に一瞬で、そのグノンマルとかいう奴の前まで移動しちゃうからねっ!??  みんな、戦う準備はできてるっ!???」

   簡易テントを片付け、焚き火を消し、右手に万呪の杖を握りしめ、左手にエルフの盾を装備した俺は、念押しでみんなに尋ねる。

「いつでもオッケーポ!」

   白のローブに身を包み、杖を手に持ったノリリアが答える。

「久しぶりの戦闘だなぁっ!?  派手に暴れてやるぜぇっ!!!」

   珍しく、魔導書と杖を手に持ったカービィは、妙にワクワクした雰囲気でそう言った。

「我が剣の前に立ちはだかるものはなし……。モッモよ、行こうぞっ!!!」

   既に二本の魔法剣を鞘から抜き出しているギンロは、いかにも魔獣らしい、飢えた肉食獣のような目つきをしている。

「助太刀致しますノコ。囚われた方々の解放は我にお任せあれ!」

   キノタンも、何やらヤル気満々で、金の剣を手に準備万端だ。

「よしっ!  じゃあ、行こうっ!!  リーシェお願いっ!!!」

   もうこうなりゃやけっぱちだこの野郎っ!!!

『キャハハ!  飛ばすわよぉ~!?  そぉ~れぇっ!!!』

   ギュンッ!  と突風が吹き付けて、体がグンッ!  と引っ張られたかと思うと、俺たち四人とキノタンは、瞬く間に、見知らぬ集落の入口へと辿り着いていた。

   暗闇の中、点在する松明の光に照らされるのは、生い茂る木々と、その間に造られた高床式の建物にある、数え切れない程の、様々な生き物であっただろう者達の頭蓋骨……
   あまりのおどろおどろしさに、周囲に視線を泳がすも、何処を見てもそれら頭蓋骨と目が合ってしまう。
   そして聞こえてきた、太鼓の音。

   ドンドコドンドン、ドコドコドン
   ドンドコドンドン、ドコドコドン

   血の匂いに混じって漂う、嗅いだ事のある良い匂い。
   これは……、間違いない。
   乾き始めたグレコが発する、ブラッドエルフ特有のあの甘い匂いだ。

「嫌な予感がするポね……。みんな、行くポよっ!」

「おぉおっ!!!」

   ノリリアを先頭に、俺たちは、集落の中へと駆け出した。
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

元34才独身営業マンの転生日記 〜もらい物のチートスキルと鍛え抜いた処世術が大いに役立ちそうです〜

ちゃぶ台
ファンタジー
彼女いない歴=年齢=34年の近藤涼介は、プライベートでは超奥手だが、ビジネスの世界では無類の強さを発揮するスーパーセールスマンだった。 社内の人間からも取引先の人間からも一目置かれる彼だったが、不運な事故に巻き込まれあっけなく死亡してしまう。 せめて「男」になって死にたかった…… そんなあまりに不憫な近藤に神様らしき男が手を差し伸べ、近藤は異世界にて人生をやり直すことになった! もらい物のチートスキルと持ち前のビジネスセンスで仲間を増やし、今度こそ彼女を作って幸せな人生を送ることを目指した一人の男の挑戦の日々を綴ったお話です!

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった! でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、 他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう! 主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!? はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!? いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。 色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。 *** 作品について *** この作品は、真面目なチート物ではありません。 コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております 重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、 この作品をスルーして下さい。 *カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

暇つぶし転生~お使いしながらぶらり旅~

暇人太一
ファンタジー
 仲良し3人組の高校生とともに勇者召喚に巻き込まれた、30歳の病人。  ラノベの召喚もののテンプレのごとく、おっさんで病人はお呼びでない。  結局雑魚スキルを渡され、3人組のパシリとして扱われ、最後は儀式の生贄として3人組に殺されることに……。  そんなおっさんの前に厳ついおっさんが登場。果たして病人のおっさんはどうなる!?  この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。

神に同情された転生者物語

チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。 すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情された異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。 悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。

辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~

雪月 夜狐
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。 他作品の詳細はこちら: 『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】 『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】 『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】

チート幼女とSSSランク冒険者

紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】 三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が 過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。 神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。 目を開けると日本人の男女の顔があった。 転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・ 他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・ 転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。 そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語 ※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

異世界転生!俺はここで生きていく

おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。 同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。 今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。 だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。 意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった! 魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。 俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。 それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ! 小説家になろうでも投稿しています。 メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。 宜しくお願いします。

処理中です...