最弱種族に異世界転生!?小さなモッモの大冒険♪ 〜可愛さしか取り柄が無いけれど、故郷の村を救う為、世界を巡る旅に出ます!〜

玉美-tamami-

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★港町ジャネスコ編★

198:貧乏パーティー

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「どう?  さっきのより似合っているかしら??」

「……うん、似合ってると思う」

「……うむ、よく似合っているぞ」

「そう?  うふふ♪  でもこっちのも捨て難いしな~。ちょっとこれも着てみていい??」

「……うん、いいよ」

「……うむ、好きにするがよい」

「は~い♪  ちょっと待っててね~♪」

   試着室のカーテンをサッと閉めて、再度お着替えにかかるグレコ。

「……はぁ~」
「……ふぅ~」

   ほぼ同時に、俺とギンロは溜息をついた。
   かれこれ小一時間ほど、グレコの服選びに付き合わされているのだ。
   女の買い物は長いとよく言うけれど……
   グレコさん、そろそろ決めて頂けませんか?
   どれもとてもよくお似合いですよ??
   ……なんならもう、お金はあるんだから、欲しい服全部買って差し上げますよ???

   商船タイニック号の乗船権を無事に獲得した翌日、俺たちは船旅に必要な物資を買う為に、町へと繰り出していた。
   無論、明日の出航前夜祭で行われるノリリアテストに向けて勉強しなければいけないカービィは、隠れ家オディロンにてお留守番中である。

   結局、持ち金だけじゃ到底足りないというグレコの判断の下、銀行から200000センスを引き下ろすこととなった。
   よって、銀行の残高は300000センス。
   魔黒石でできた銀行証に浮かぶその文字に、今後はちゃんと節約しよう!  と、俺は心に誓ったのであった。

   しかし今……

   枕とシーツを四人分と、ギンロの風除けのマントと、俺とカービィの着替えとはすぐに購入できたのだけど……
   グレコがもう、悩む悩む……

   もうね、いいよ別に。
   まだお金はあるしさ、宿代はさっきタロチキさんに先払いしておいたし、この後テトーンの樹の村のみんなの為に物資を買う予定だけど、たぶん足りるだろうからさ。
   だからさ、もう悩まず、その試着した服全部買わないかい?

「ジャーン!  どう!?  やっぱりこっちの方がいいかしら??」

「……ん~、いいね、それ」

「……うむ、よく似合っているぞ」

   ギンロ、さっきからずっと、その台詞しか言ってないよね。

「やっぱり!?  あ~どうしよう、悩むわぁ……。さすがに三着全部は買えないし……。せめて二着に絞らないとぉ……」

「……別に、絞らなくてもいいよ」

「……うむ、好きにするがよい」

   ギンロ、それもさっき言ってたよね。

「絞らなくていいって……、だってこれ、一着20000センスもするんだよ?  ギンロのマントも、モッモやカービィの着替えも、もっと安かったじゃない??  どうしてこの服だけこんなにお高いのかしら???」

   深刻そうな顔で小首を傾げるグレコ。

   お高いのかしら?  って言うけどさ、そりゃ高いだろうよ。
   だってここ、どう見たって何かのブランド店だよ?
   お気付きでなかったのですか、グレコさん??

   どうしても入ってみたいってグレコが言うから、銀行でお金を下ろして、町の中心部に位置する商店街に移動して、枕やらシーツやらを買い物した後に、再度わざわざ北大通まで戻ってきたわけだけどさ……
   アンティーク調のデザインの物ばかり置いてあるから、一見すると古めかしい店に思えるかも知れないけど……
   田舎者のグレコは気付いていないだろうが、きっと、かな~り高級な店なんだよここ。

   現在の財布の中身は、宿代を払い、諸々のお買い物をし、残金210000センス。
   今悩んでる三着の服を買っても、残金は150000センスある。
   テトーンの樹の村のみんなに手渡されたメモに書いてある資材や雑貨は、高く見積もっても、おそらく十万ほどで買い揃えられるだろう。
   だからさ、ほら、もう悩むのはやめて……

「ねぇグレコ、三着とも買おうよ。どれも、とってもとってもお似合いだからさ。僕、その服を着たグレコと一緒に旅したいな~」

   出来るだけ棒読みにならないように気を付けながら、俺はそう言ってみた。

「う~ん……、いいの?  まぁ、モッモがそこまで言うなら、三着とも買っちゃおうかなっ!?」

   パァッ!  と、ここ最近で一番の笑顔になるグレコ。
   そうそう、女の人はね、ご機嫌なのが一番ですよ、うんうん。
   ……まぁ、お支払いをするのは俺なんですけどね。

   こうして、ようやくグレコの服選びに決着が付いたのだった。
   三着……、プラス、インナーの替え数枚と新しいベルトで、合計73000センスなり~。
   そして残金は、137000センスなり~。
 
     
   ……うん、この店にはもう来ないよ。
   武器に比べればめちゃくちゃ安いんだろうけど、防具ではなくてただの服だからねそれ。
   お洒落だけど薄っぺらいし、いい生地なんだろうけど戦いには不向きだろうしね。

   ……くっ、このボッタクリめっ!
   デザイン性より機能性が大事だろうがこの野郎めっ!!
   ブランド店なんて大嫌いだぁっ!!!

   その後、町の中心部にある商店街の資材屋で、オーベリー村のマッサのビルド屋では購入出来ないような金属資材を購入。
   小さな雑貨屋で、安い銀製の(子供用の)食器類を大量に購入。
   そして、ギンロは先に宿屋へと戻り、俺とグレコの二人で、導きの腕輪でオーベリー村のマッサのビルド屋までテレポート。
   質の良い木製の資材を沢山購入して、これで残金は50500センスとなりました。

「はぁ……。貧乏パーティー……」

「ほら、そんなに気を落とさないの!  なんだかテトーンの樹の村に帰るの久しぶりに感じるわね~。さ、早く行きましょ!?」

   欲しい服を三着も買えたグレコはさぞ気分が良いのだろう、満面の笑みでそう言った。
  
   願わくば、テッチャが裏ルートで売り捌く予定のあの大きなウルトラマリン・サファイアが、目玉が飛び出るほど高額で売れますように!

   そんな事を思いつつ……

「じゃあ行くよ?  ワープ!!」

   俺とグレコは、テトーンの樹の村へと一時帰宅したのだった。
   
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