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★港町ジャネスコ編★

167:船を探索だぁっ!!

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「午後の仕事が終わって、早目に帰宅できるはずだったんだけど、総合管理局を出た所でブーゼ伯爵の使いの者に声を掛けられて、秘密をばらされたくないならついて来なさいって言われて……。ブーゼ伯爵のお屋敷の応接間で、ブーゼ伯爵本人と対面して、お茶を勧められて飲んだところで気を失ってしまったの」

   うん、フェイアさん、今後は知らない人について行っちゃいけないし、怪しい人に勧められたお茶を飲んじゃいけないよ?

「何か、話した事とか、覚えてない?」

「う~ん……。応接間に案内されるともうブーゼ伯爵が椅子に座ってて、言われるままに私も席について、すぐにお手伝いさんがお茶を運んできて……。とりあえず飲みましょうって言われた事しか覚えていないの」

   うん、何も話してないって言うんだよそれ。

「次に気がついた時にはもう鎖に繋がれていて、手が痛くて……」

   なるほどな~。
   間違いなく、そのお茶に眠り薬か何かを盛られたんだ。
   と言うことはやっぱり、今回のこの事件の黒幕はユーク・ブーゼだって事だ!
   
   だけど、ブーゼ伯爵が黒幕だっていう証拠がないな。
   タークはこのまま船が港へ戻れば現行犯逮捕出来るだろうけど……
   フェイアの証言だけでは心許ないし……

   それに、なぜ、ブーゼ伯爵は船を盗まれたなどと言って、わざわざ警備隊に通報したんだろう?
   何か裏があるのだろうか??

「ブーゼ伯爵は、元々は王都であるモントール市の上級貴族だったのだけど、徐々に財力を失って、国政に直接関わることの出来る、いわばこの国の最高決定機関である貴族会から追放されたと言われているわ。その後はモントール市のお屋敷を売り払って、残りの財産と一緒に港町ジャネスコに移り住み、アンローク大陸への客船を運営する事で収入を得て、今じゃ町一番の財力者だとか……。そういう話を聞いた事があるの」

   ふむふむ。
   その貴族会から追放されたということは、いわば没落貴族ってわけだな?
   だったら、財力を取り戻す為に、違法である密猟を行なっていても不思議ではない。
   高値で売れるタジニの森の動物達を捕まえて、オルドール共和国で売りさばき、財力を得ている……、こう考えれば、いろんなことが合致するぞ!

「とにかく、何か証拠を掴まなきゃね。じゃないと、港に戻っても、本当の黒幕であるブーゼ伯爵本人を捕まえる事は出来ないと思う」

「そうね……。でも、証拠なんてどこにあるのかしら?  どんな物なら証拠になるの??」

「ん~、そうだな~……。例えば、これまでの密猟の記録とか?  ブーゼ伯爵がオルドール共和国の奴隷市場に売り出した形跡とか、そういうのが必要だと思う」

「じゃあ……。そういう物があるとすれば、この船の何処かにあるタークの部屋とか、かしら?」

「うん、そうだね。タークの部屋を探してみよう!」

「……けれど、タークの部屋が何処かなんて、私、わからないわ。この船はとても広いようだし、手当たり次第探すのも危険だし……。モッモさんも、知らないでしょ?」

   う、確かに、知らないな……
   時間がどれくらいあるのか分からないけど、船内をうろちょろするのは避けたい。

   あ!  でも、こういう時の為のあれがあるじゃないかっ!!

   俺は、首から下げている、お洒落なコンパスを取り出す。
   正式名称、望みの羅針盤。
   俺の欲しい物がある場所へと導いてくれる、超絶便利な神様アイテムだ!

「これで……、タークの部屋はどっち!?」

   俺の言葉に反応するかのように、コンパスの金色の針がスススと動く。
   よし、行けそうだな!

「フェイアさん、このコンパスは神様から貰った魔法道具なんだ!  これが、僕らの求める物がある場所を教えてくれる!!  さぁ、行こうっ!!!」

   多少驚きつつも、コクンと頷いたフェイア。

   よし、行くぞ!
   ブーゼ伯爵が密猟をしているという証拠を集める為に、船を探索だぁっ!!





「うらぁあぁぁ~!!」

「わっ!?  こ、子ウサギになれぇっ!!?」

   シュルシュルシュル

「……キュン?  キュッ!?  キュキューン!!」

「凄いわモッモさん!!!」

   船内の狭い通路で、ドキドキする心臓を抑えつつ、俺は両手で万呪の枝をギュッと強く握りしめる。
   ほんと、毎回思うけど、これがあって良かったわ~。

   何やら武器を取りに来た茶色ラビー族と鉢合わせしてしまった俺は、拳を振りかざす敵に、可愛らしい呪いをかけてしまった。
   俺の足元では、小さな子ウサギが小刻みに震えている。
   背後では、俺の勇姿を目の当たりにしたフェイアが、とても嬉しそうに黄色い歓声を上げた。

「奇妙な使い魔を操ったり、敵を戦えない姿に変えたり……。モッモさんは、素晴らしい魔法使いだったのね!」

   ニッコリと笑うフェイア。
   
   あ~ん、なんて可愛い顔で笑うの~ん?
   そんな笑顔を見た後じゃ、真実を告げられないじゃないの~ん!!
   奇妙な使い魔は水の精霊ウンディーネだし、今行使したのは魔法じゃなくて呪いなのよ~ん!!?

   しかし、ピグモル以外の誰かから、それもこんなに可愛い子に羨望の眼差しで見られるなど初めての事なもんで、俺はすっかり舞い上がってしまっている。

「はははっ!  さぁ、僕について来たまえっ!!」
   
   自信満々にそう言って、通路を進み始める俺。
   コンパスの金色の針は、前方の少し上を指している。
   方向的に、船首側を指しているようだ。
   と言うことは、もしかしたら、一度甲板に出なければいけないかも知れない。
   でも……

「かかって来いやおらぁあぁぁ~!??」

   ユティナの嬉々とした叫び声が、未だ俺の耳には届いている。
   ラビー族達が薙ぎ払われるような音と悲鳴も……
   出来れば、その場面は見たくないし、甲板に上がった俺の姿をユティナに見られるのも嫌だ。
   何か言われそう……、いや、きっと何か言ってくるに違いない。
   俺の柔なハートをぐさっと突き刺す、何か強烈な一言を……

   だがしかし、悲しい哉、コンパスの針は上を指していた。

「あ、あそこ。梯子があるね」

   フェイアの言う通り、前方には上へ向かう梯子がある。
   金色の針も、真っ直ぐにその梯子の上を指しているのだ。
  ……うん、あそこを登れってことですね。

   前方と後方を目視して、敵が迫っていない事を確認し、梯子に手をかける俺。
   ロープよりも数段登りやすい梯子を登り切ると、そこは書斎のような部屋だった。
   前方の壁には本がズラリと並び、重厚感のあるベッドが一つと、これまた重厚感のある机と椅子がそこにはあった。
   間違いない、ここがタークの部屋だろう。

「モッモさん、大丈夫?」

   梯子の下からフェイアが声を掛けてくる。

「あ、うん、大丈夫!  ここは僕が探すから、フェイアさんはそこで敵が来ないか見張っていて!!」

「わかったわ!」

   さて、どこから探そうかな?

   キョロキョロと辺りを見渡して、机の上にある沢山の書類に目が止まる俺。
   テクテクと近付いて、その書類の一部を取って内容を確認する。

「ふむふむ……。なっ!?  何ぃっ!??」

   そこには、驚くべき内容が記されていた。
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