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★港町ジャネスコ編★

156:幼馴染たちと

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   モッモが帰ってきているぞ!  と、村で騒いだ奴がいるらしく、数名のピグモルたちがテッチャの家にやって来た。

   兄のコッコ、弟のトット、そして、初紹介だろうか?  幼馴染のソアラとロアラ、タックとルルー。
   合計六匹のピグモルがテッチャの家に押しかけて来たわけだが、みんな同じ年に生まれたピグモルなので、思い出話が弾む弾む。
   それに加えて、これまでの俺の冒険譚を聞きながら、外の世界を想像し、みんなキラキラと目を輝かせていた。

「エルフの村から貰ってきた果樹の中でも、ルブーベリーは最高よ!  甘酸っぱくて、食べ始めたら止まらなくなっちゃう!!」

「そうそう!  乾燥させてから保存食にしても美味しいの!!  私もソアラも、毎日食べてるよ♪」
   
   ソアラとロアラは、揃って栗色の毛並みを持つ、二本隣のテトーンの樹に住む双子の姉妹だ。
   ただ、二匹とも男勝りと言うか、負けん気が強いというか……
   幼い頃は俺たち三兄弟と喧嘩をする事もしばしばあったのだが、一度も勝てた記憶がない。

「畑が広くなったからな、多少見回りが大変だけど……。バーバー族たちが体の割にとても力持ちで、畑仕事をするには大助かりだぁ~」

   タックは、黒に近い焦げ茶色の毛並みの男の子。
   どこかぼーっとしてる所があるけれど、畑仕事は黙々とこなしてくれるいい奴。

「井戸の位置はあそこで問題ないだろうけど、なかなか作業が難しい。けど、井戸が出来れば、生活の質がグンと上がると思う」

   ルルーは、白い毛並みのイケメンピグモル。
   俺たちの中で一番頭が良くて、俺が大人たちに家を樹の上に移そうと提案した時も、幼いながらに味方をしてくれた頼もしい奴だ。

   みんなは、テトーンの樹の村復興計画に積極的に参加しているらしく、ここをこうして欲しいとか、こう出来ないか?  とか、テッチャに注文を付けていた。
   そして最終的には、俺が次に村に帰ってくるまでに井戸と畑は完成させておくから、こういう物を手に入れてきてくれ、という要望まで出してきたのだ。

   うん、嬉しいよ、ピグモルの将来を担う若者であるみんなが、こんなに一生懸命に村の事を考えてくれていてさ。
   ……けどさ、ちょっと要望多くない?

   テッチャがみんなからの要望をまとめたメモ紙は、五枚にも及んだのだ。
   旅の目的が一気に増えたなこりゃ……

   そして、いつの間にか、気がつくと、外は夕焼け空へと変わっていた。

「おぉ、もう日暮れか。そろそろ夕食の時間だな。モッモ、今夜は家に泊まって行くだろ?」

   コッコが尋ねる。

「ん~どうしようかなぁ?  仲間に何も言わずにここまで来ちゃったから、心配しているかもだし……」

   と、俺が言った瞬間だった。

「モッモ!  何処にいるのっ!?」

「わわわわっ!??」

   耳元で、既にガチギレ気味のグレコの声が大音量で響いた。
   あまりに突然の出来事で、驚き、慌てふためく俺。
   もちろん、周りには聞こえていないので、みんなキョトン顔になる。

「ぐ、グレコ!?  どうしたの??」

「あっ!?  モッモ!!?  どうしたも何もないでしょっ!???  今何処にいるのっ!?  何処へ行ってるのよっ!??」

   ……かな~り、お怒りな御様子である。
   ケンケンとした声が頭の中に響く。

   隣ではテッチャが、事態を把握できないみんなに絆の耳飾りの事を説明し、どうやらグレコが突然いなくなった俺を心配して連絡してきているようだ、と話している。

「あ、えと……、ちょぉ~っと、テトーンの樹の村に帰っておりましてぇ……」

「はぁっ!?  どうしてよっ!??」

   きゃ~!?  怒らないでぇ~!!

   俺は、ダッチュ族の雛が孵った事、バーバー族の家を造る為に木の蔓が必要で、商店街で購入してこちらまで届けに帰った事などを簡潔に説明した。
   グレコは、かなり苛々した様子ではあるものの、ちゃんと最後まで話を聞いてくれた。
   そして、聞いた上で、再度おキレになる。

「一人で出掛けちゃ駄目でしょっ!?  危ないったらありゃしないわっ!!  それに、出掛けるなら書置きの一つくらいしていきなさいっ!!!  こっちはみんなで手分けして町中探し回って大変だったんだからねっ!!!!」

   うひゃ~!?  そんな事になっていたとはつゆ知らず……

「ご、ごめんなさい……」

「でっ!?  もう用事は終わったんでしょ!??  サッサとこっちに戻りなさいっ!!!」

「あ、でも……、ゆ、夕食はこっちで……」

   と、言ったのだが、グレコからの返事はなく。
   もう耳飾りの使用をやめてしまったらしい。
   通信は、途絶えた……

   うぅぅ~、怖いよぅ~。
   帰ったらまたきっと説教を喰らうぞぉ~?

「……とりあえず、戻った方がいいんじゃねぇか?」

   事を理解したテッチャが、なかなかに笑いを堪えた顔でそう言った。
   みんなも、心配するより先に、俺の慌てっぷりを見て笑っている。

   何がおかしいんだよぅっ!?
   俺は、テッチャのお使いでここへ帰ったまでだぞっ!!?
   そんな、あんなに怒られるような事は何もしてないはずなのにぃっ!!!

「モッモも大変なんだな。母ちゃんにはよろしく言っておくよ!」

   うん、そうしておくれ兄ちゃん。
   そしてどうか、俺の無事を祈っていてくれ。

   テッチャの家を出て、みんなに見送られながら、港町ジャネスコにテレポートしようとする俺。
   本当は、久しぶりに母ちゃんの手料理が食べたかったんだけどな……、グスン。

   すると、木々の影から、ガディスがのそっと現れた。

「あ、ガディス!  ……タイミング悪いね」

「む?  何のことだ??  ……もう行くのか???」

「うん、なんかちょっと……。グレコが怒っていて……」

「そうか、なるほど……。モッモ、急いでいるところで悪いのだが」

「……なに?」

「うむ。何処かで、【死界の石】という物を見つけたら、我の為に持って帰ってくれぬか?」

「しかいの、石?  何それ??」

「……頼んだぞ」

「え、はっ?  ちょっ、ガディス!?」

   ガディスは、意味不明なお願いをして、サッサと森の中へ消えて行った。

   何だよ、しかいの石って……
   説明もなしに探せったって、そんなの無理じゃないか?

「おい、はよぉ行った方がええぞ?」

   背後でテッチャが呟く。

   そうだ!  とりあえず戻らないとっ!!
   これ以上遅くなると、グレコにお尻ペンペンされちゃうかもぉっ!!?

「テッチャ!  みんな!!  またねっ!!!」

   セカセカと手を振って、合言葉を口にするのも忘れたままに、俺は港町ジャネスコにテレポートした。
   既に日は暮れて、辺りは薄暗くなり始めていた。
   
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