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★港町ジャネスコ編★
147:カランカラン
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翌日。
「ここが、世界中の珍しい物を集めて売っているよろず屋、その名も万物屋よ!」
グレコとギンロに連れられて、俺たち四人がやって来たのは、町の中心部である商店街から少し離れた、西大通り寄りの裏道に、一際目立つ真っ赤な暖簾を構える、少しばかり怪しい店。
ショーウィンドウの向こう側に並べられているのは、見た事のない、また何なのか見当もつかないヘンテコな物ばかりだ。
丸いガラスの瓶に入った光る植物の様な物、埃にしか見えない灰色のもわもわ、生きたまま籠に入れられて展示されている様々な美しい虫たち、先っちょに動物の尻尾のような長い毛束が生えた杖や、目のような模様がいっぱい掘られた気持ち悪い盾、頭身がグニャグニャに曲がった大剣に、それ着る人いるか? と思うほどにド派手な金ピカのスーツ上下一式などなど……
ここから見るだけでも、ヘンテコすぎて、俺なら中には入らないでおこうと思ってしまう。
けど、グレコとギンロは一度この店に来ているんだよな。
それも、店主と話までしたわけで……
……うん、グレコもギンロも、カービィに負けず劣らず、頭がおかしいのかも知れない。
「こんな店あったんだなぁっ!? 知らなかったぜっ!!」
元祖頭おかしい奴代表のカービィは、俺の隣で目をキラキラさせている。
どうやらカービィにとって、この店は相当魅力的らしい。
ん~、確かに未知のものがあるって点では、ワクワクしないでもないけれど……
でもほら、あれ見て?
棚の向こう側に、小さな獣人だったんだろうなぁ~ってわかる骨の模型が立ってるよ??
……まさか、本物じゃないよね???
うぅぅ~、不気味すぎるぅ~。
「もう開いているみたいだし、入りましょ?」
う~、何だろうこの気持ち~。
店に入ると良くない事が起こりそうな~、起こらなさそうな~。
こんな不気味な店を開いている店主なんざ、まともな奴じゃないだろうなぁ……
カランカラン
店の扉に付いていた鐘が、乾いた音を鳴らす。
中は……、想像通り……、いや、想像以上にやぶぁ~い雰囲気だ。
日当たりが悪いのか店内は薄暗く、そこかしこに生き物の剥製が飾られている。
商品を陳列しているのであろう棚には、瓶詰めの虫とか目玉とかが普通に置かれているし、並べられている書物の背表紙には決まって《呪い》の文字が……
床には食虫植物のような奇妙な形をした草花が植わっている鉢が何種類も置かれているし、部屋の隅にある大きめの樽には武器らしき(武器だと、思う……)物が雑然と入れられている。
そして、これは絶対に呪われた鎧だろうな、と素人の俺が見てもわかるほどの、禍々しい外見のトゲトゲした黒い鎧が立てられている真横に、小さな小さなカウンターがあって……、ん? あれ??
「お、いらっしゃい♪」
カウンターの向こう側で椅子に腰掛けているのは、どこからどう見てもピグモルらしき獣人。
体の大きさは俺とほぼ同じくらい、目も耳も大きくキュートで、お腹周りには余分なお肉がついている。
声から察するに男性のようだが……
前歯がかなり長めで、毛並みはどこかくたびれているため艶がない。
どうやら俺より随分年配のようだ。
……どことなく、ピグモルの長老に似ているような気もする。
「ちょっとモッモに似ているでしょ?」
グレコがこっそり耳打ちしてきたが、その言葉に若干呆れてしまう俺。
ちょっと似てるって……、どっからどう見てもピグモルじゃんかっ!?
「おや? この間のお嬢さんと剣士さんじゃないか。また立ち寄ってくれたんだね、ありがとぉ~」
どうやらここの店主らしいその獣人は、顔をクシャクシャにして笑った。
「実は、売りたい物があって寄ったのだ」
おお、ギンロよ、挨拶もなしに直球だな!
「そうかいそうかい、それはありがとよぉ。珍しい物でも見つけたかね?」
ピグモル紛いの獣人は、めちゃめちゃ度のきつい眼鏡を取り出してかける。
眼鏡のせいで、大きな目が倍の大きさに膨らんで、まるで眼鏡猿のような顔になった。
「モッモ、ほら、ぼーっとしてないで出して!」
グレコに小突かれて、ハッとする俺。
急いで鞄の中から、石化の呪いをかけて固まったままのルーリ・ビーを一匹と、蜂の巣のかけらと、蜂蜜でコーティングされてしまった女王蜂を取り出す。
「ほうほうほう……? おぉっ! ルーリ・ビーじゃないかねこれは!? またなかなか珍しい物を持ってきてくだすったなぁっ!!」
分厚い眼鏡の向こう側で、驚きと喜びが入り混じった表情で笑う店主さん。
やはりルーリ・ビーは珍しかったらしい、さも貴重な物でも扱うかのごとく、そぉろっと、石化したルーリ・ビーに触れている。
「ふむふむ……、こいつらはぁ~、どうなってこうなっておるんだ?」
首を傾げる店主さん。
「あ、えと、僕が呪いを掛けました、石化の呪いです」
俺が声を出すと、ようやく店主と俺の目が合って……
「……はっ!?」
目を見開き、身震いして、驚く店主。
その驚き方と、余りに急だったのとで、俺も全身をビクゥッ! とさせてしまう。
……しばしの沈黙。
店主は、俺の頭の先から足の先までを、眼鏡で大きくなりすぎた目でジロジロと観察した。
そして……
「お、お前は……、いやいやそんなはずは……。し、しかし、もしかして……」
ま、まさか、俺がピグモルだってバレたのか!?
ドキドキする俺たち四人。
そして、店主はこう言った。
「わ、吾輩の隠し子かっ!?」
……は、はぁあぁぁ~???
余りに突拍子のないその言葉に、俺たち四人は、揃いも揃って、店主を不審な目で睨むしかなかった。
「ここが、世界中の珍しい物を集めて売っているよろず屋、その名も万物屋よ!」
グレコとギンロに連れられて、俺たち四人がやって来たのは、町の中心部である商店街から少し離れた、西大通り寄りの裏道に、一際目立つ真っ赤な暖簾を構える、少しばかり怪しい店。
ショーウィンドウの向こう側に並べられているのは、見た事のない、また何なのか見当もつかないヘンテコな物ばかりだ。
丸いガラスの瓶に入った光る植物の様な物、埃にしか見えない灰色のもわもわ、生きたまま籠に入れられて展示されている様々な美しい虫たち、先っちょに動物の尻尾のような長い毛束が生えた杖や、目のような模様がいっぱい掘られた気持ち悪い盾、頭身がグニャグニャに曲がった大剣に、それ着る人いるか? と思うほどにド派手な金ピカのスーツ上下一式などなど……
ここから見るだけでも、ヘンテコすぎて、俺なら中には入らないでおこうと思ってしまう。
けど、グレコとギンロは一度この店に来ているんだよな。
それも、店主と話までしたわけで……
……うん、グレコもギンロも、カービィに負けず劣らず、頭がおかしいのかも知れない。
「こんな店あったんだなぁっ!? 知らなかったぜっ!!」
元祖頭おかしい奴代表のカービィは、俺の隣で目をキラキラさせている。
どうやらカービィにとって、この店は相当魅力的らしい。
ん~、確かに未知のものがあるって点では、ワクワクしないでもないけれど……
でもほら、あれ見て?
棚の向こう側に、小さな獣人だったんだろうなぁ~ってわかる骨の模型が立ってるよ??
……まさか、本物じゃないよね???
うぅぅ~、不気味すぎるぅ~。
「もう開いているみたいだし、入りましょ?」
う~、何だろうこの気持ち~。
店に入ると良くない事が起こりそうな~、起こらなさそうな~。
こんな不気味な店を開いている店主なんざ、まともな奴じゃないだろうなぁ……
カランカラン
店の扉に付いていた鐘が、乾いた音を鳴らす。
中は……、想像通り……、いや、想像以上にやぶぁ~い雰囲気だ。
日当たりが悪いのか店内は薄暗く、そこかしこに生き物の剥製が飾られている。
商品を陳列しているのであろう棚には、瓶詰めの虫とか目玉とかが普通に置かれているし、並べられている書物の背表紙には決まって《呪い》の文字が……
床には食虫植物のような奇妙な形をした草花が植わっている鉢が何種類も置かれているし、部屋の隅にある大きめの樽には武器らしき(武器だと、思う……)物が雑然と入れられている。
そして、これは絶対に呪われた鎧だろうな、と素人の俺が見てもわかるほどの、禍々しい外見のトゲトゲした黒い鎧が立てられている真横に、小さな小さなカウンターがあって……、ん? あれ??
「お、いらっしゃい♪」
カウンターの向こう側で椅子に腰掛けているのは、どこからどう見てもピグモルらしき獣人。
体の大きさは俺とほぼ同じくらい、目も耳も大きくキュートで、お腹周りには余分なお肉がついている。
声から察するに男性のようだが……
前歯がかなり長めで、毛並みはどこかくたびれているため艶がない。
どうやら俺より随分年配のようだ。
……どことなく、ピグモルの長老に似ているような気もする。
「ちょっとモッモに似ているでしょ?」
グレコがこっそり耳打ちしてきたが、その言葉に若干呆れてしまう俺。
ちょっと似てるって……、どっからどう見てもピグモルじゃんかっ!?
「おや? この間のお嬢さんと剣士さんじゃないか。また立ち寄ってくれたんだね、ありがとぉ~」
どうやらここの店主らしいその獣人は、顔をクシャクシャにして笑った。
「実は、売りたい物があって寄ったのだ」
おお、ギンロよ、挨拶もなしに直球だな!
「そうかいそうかい、それはありがとよぉ。珍しい物でも見つけたかね?」
ピグモル紛いの獣人は、めちゃめちゃ度のきつい眼鏡を取り出してかける。
眼鏡のせいで、大きな目が倍の大きさに膨らんで、まるで眼鏡猿のような顔になった。
「モッモ、ほら、ぼーっとしてないで出して!」
グレコに小突かれて、ハッとする俺。
急いで鞄の中から、石化の呪いをかけて固まったままのルーリ・ビーを一匹と、蜂の巣のかけらと、蜂蜜でコーティングされてしまった女王蜂を取り出す。
「ほうほうほう……? おぉっ! ルーリ・ビーじゃないかねこれは!? またなかなか珍しい物を持ってきてくだすったなぁっ!!」
分厚い眼鏡の向こう側で、驚きと喜びが入り混じった表情で笑う店主さん。
やはりルーリ・ビーは珍しかったらしい、さも貴重な物でも扱うかのごとく、そぉろっと、石化したルーリ・ビーに触れている。
「ふむふむ……、こいつらはぁ~、どうなってこうなっておるんだ?」
首を傾げる店主さん。
「あ、えと、僕が呪いを掛けました、石化の呪いです」
俺が声を出すと、ようやく店主と俺の目が合って……
「……はっ!?」
目を見開き、身震いして、驚く店主。
その驚き方と、余りに急だったのとで、俺も全身をビクゥッ! とさせてしまう。
……しばしの沈黙。
店主は、俺の頭の先から足の先までを、眼鏡で大きくなりすぎた目でジロジロと観察した。
そして……
「お、お前は……、いやいやそんなはずは……。し、しかし、もしかして……」
ま、まさか、俺がピグモルだってバレたのか!?
ドキドキする俺たち四人。
そして、店主はこう言った。
「わ、吾輩の隠し子かっ!?」
……は、はぁあぁぁ~???
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