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★港町ジャネスコ編★

146:何事も包み隠さずに

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   午後七時半。
   国営軍駐屯所内のギルド出張所受付窓口にて。

「では、モッモ様、ギンロ様、こちらがお二人分の参加報酬10000センス、そしてこちらが討伐個体数に応じた報酬73000センスです。それともう一つ、奨励報酬がございます。お二人が倒したプラト・ジャコールの数は七十三匹。今回のクエスト内で二番目に数が多かったので、今後のお二人の活躍の為に、一人につき10000センスずつ支給されます。今後も、自らの心身を鍛え、様々なクエストにチャレンジされますよう、ギルド本部よりの心ばかりの贈り物です。では、全てを合わせて……、103000センスのお渡しとなります。ご確認ください」

   受付のお姉さんは、紙袋に入った紙幣を俺とギンロに差し出した。
   中にはちゃんと、百三枚の紙幣が入っていた。

「あ、はひ!  確かにっ!!」

   まさか、奨励報酬などというものが上乗せされるとは思っていなかったので、なかなかに俺のテンションは上がっている。

「はい♪  それから、懐中時計はこちらで回収しますね。……はい、確かに、ありがとうございます。では、本日のクエストは以上となります。お疲れ様でした!」

   ギンロが差し出した懐中時計を受け取ってニッコリと笑ったお姉さんに、ペコリと頭を下げるギンロと俺。

「ひょうれいひょうとは、やっはなモッモ!」

「うん!  うれひいねっ!!」

   正直、プラト・ジャコールの討伐なんて、最初は全然乗り気じゃなかったし、戦っている時も生きた心地がしなくて、かなり大変だったし、ルーリ・ビーの襲撃という予想外の悲劇にも見舞われたけど……
   思っていたより沢山のお金も手に入ったし、何より戦闘スキルが上がった気がするし(気の所為かも知れないけど……)、参加して良かった!

   こうして、俺のピグモル生初のクエストは、結果としては大成功に終わったのだった!!

   その後、カービィとグレコも窓口で報酬を受け取って、俺たちは宿屋、隠れ家オディロンへと帰って行った。





「171800センス……。ふぅ~。それで、宿代は全部でいくらになるって言ったかしら?」

「あ、はい、八泊朝夕付きなので16000センスかと……」

「なるほど……。で、どうして内緒にしていたのかしら?  ねぇ、モッモ、カービィ??」

「ひっ!?  ご、ごめんにゃしゃいっ!!」

「わ、わざとじゃねぇんだっ!  その、流れっていうかなんて言うか、話すタイミングがなくてだな」

「タイミング?  そんなのいくらでもあったはずよ??  いったい、どんなタイミングを見計らってたのかしら???」

「う、ぐ……、ご、ごめんなさい……」

   宿屋隠れ家オディロンの一室にて、グレコの尋問を受ける俺とカービィ。
   冷たい床の上に正座させられた俺とカービィを、グレコはふかふかのベッドに腰掛けて見下ろしている。
   ギンロは、なんとも言えない表情で部屋の隅っこに突っ立っている。

   駐屯所を出て通りを歩き、宿屋に着くと、ロビーにいたアマガエル獣人のリルミユに向かって、カービィが開口一番こう言ったのだ。

「ただいまリルミユさん!  モッモとギンロの大活躍のおかげで、宿代はちゃんと払えそうだぞ!!  なっはっはっはっ!!!」

   その一言のせいで、所持金が底をついていた事がグレコにばれて……
   で、この有様なのである。

   カービィが俺とギンロの手当てを終えて、リルミユさんの作ってくれた夕食をロビー横の食堂で頂いた後、部屋に戻るとすぐに始まったこの尋問タイム。
   グレコが怒っているのは、お金が無くなった事に対してではなく、なぜそれを秘密にしていたのか?  という点だ。
   ……さすがに、グレコにバレると怒られるから、とは言えまい。

「とにかく、お金を使ってしまった事を怒る権利は私にはないわ。私だって魔法弓を買ったし、モッモの盾だって……、まぁ、ちょっとお高い気もするけど、必要なものだったんだから仕方ないでしょ?  私が言いたいのは、所持金が無いなんてことはパーティーみんなの問題なのに、それを二人でどうにかしようと画策した点よ。いい?  これからは、みんなに関わるような事についての隠し事は一切なしよ??  わかった???」

「う……、はい、ごめんなさい、もうしません!」

「おいらも!  もうしません!!」

   全くの正論に、弁解する余地もない俺とカービィ。
   しかしグレコは、これ以上怒る気はなさそうだ。

「それで、ルーリ・ビーって言ったかしら?  命懸けで取ってきた蜂って……」

「うむ、リーシェが珍しいと言うのでな。モッモの呪いで石化したものと、蜂の巣と蜂蜜を取ってきたのだ」

「ルーリ・ビーはなかなか珍しい蜂だぞ。一度書物で読んだ事があるが、生息地が疎らで、養殖も出来ないから、ルーリ・ビーの蜂蜜は珍味とされてるんだ」

「ふ~ん。モッモのその、ローブに貼っついているのもそうなの?」

「あ、そういや忘れてたけど……」

   俺は、お尻で踏んづけたまま、ローブに蜂蜜と一緒に貼りついたままの、女王蜂ルーリ・ビーをちらりと見る。
   俺のお尻がふかふかだったせいか、思い切り踏んづけていた割には潰れてないし、原型を留めている。
   それに、周りの蜂蜜が固まったのだろう、まるで綺麗にコーティングされているかのように見える。

「珍しい蜂なら、それも売れるんじゃない?  この際、売れるものなら何でも売っちゃいましょ!  商船に乗るお金がどれくらいかかるかわからないからね」

「はいっ!  了解ですっ!!」

「おいらも!  了解ですっ!!」

「うん、じゃあ……。明日、みんなでその万物屋に行きましょう。店主に高値で買って貰えるよう交渉するのよっ!」

「ラジャー!!」

「ブ、ラジャー!!」

   ……おいカービィ、ブラジャーて。
   それこそグレコに怒られるぞ?
   てか、この世界にブラジャーあるのか??
 
   とにかく、グレコの尋問が思っていたより緩くて良かった。
   今後は、何事も包み隠さずに、正直に生きていこう!

   こうして、初めてのクエストを受注し、無事にクリアした俺たちパーティーの夜は、静かに更けていった。
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