上 下
143 / 800
★港町ジャネスコ編★

135:グレコにばれないようにする同盟!

しおりを挟む
「ニ十八、ニ十九、三十……。うん、何度数えても同じだな」

「うぅ~、どうしよぅ~」

   宿屋、隠れ家オディロンに戻って来た俺とカービィ。
   どうやら、ギンロとグレコは二人でどこかへ出かけたらしいのだが……
   今、ここにグレコがいなくて良かったと、俺は心底思っている。

   頭を抱える俺と、眉間に皺を寄せて腕組みするカービィ。
   ベッドの上には、紙幣と硬貨が並べられていて……
   何度数えてもそれは、31300センス、しかない。
   そう、これは、今現在の、俺たちパーティー四人の全財産である。

「ちょっと調子に乗って装備品を買い過ぎたな~」

   いつものヘラヘラした様子ではなく、神妙な面持ちのカービィ。

「うぅ~、僕があんなに高い盾を買ったりしたからぁ~」

   壁に立て掛けられている、プラチナでコーティングされた、エルフの銀の盾を恨めしく見る俺。
   しかし、その盾があまりに美しい為に、今更払い戻しに行く気にはなれない。

   ギンロの魔法剣が810000センス、グレコの魔法弓が360000センス、俺のエルフの銀の盾が640000センス……、つまり合計で1810000センスもの大金を、計画性もなくポーン!  と使ってしまったのだ。
   テッチャとオーベリー村で購入した資材はおよそ150000センスほどだったので、ここまでの宿代とか食事代を合わせれば、財布の中の残金が三万ちょっとである事は当然であろう。

「まぁ、買っちまったもんは仕方ねぇさ。これからどうするかを考えよう!」

   カービィの言葉に、項垂れていた俺は姿勢を正す。

「まず、ここの宿代だけど、八泊朝夕食事付きだから、一人一泊500センス、それが四人で一泊2000センス……。つまり、支払いは16000センス必要なわけだ。それだけなら、昼飯を普通に食ってもなんとか今の所持金で足りるわけだけども……」

「……けども?」

「商船に乗せてもらう金が足りねぇな」

   ……オーマイガー。
   商船に乗るためにここまで来たって言うのに、まさかの商船に乗れないフラグですか?

「商船に乗るのって、いくらくらいかかるの?」

   ……お願いカービィ。
   案外安いってオチにして!!

「船にもよるだろうけど、ピタラス諸島を経由してパーラ・ドット大陸まで運航している船はそうそうないだろうからな……。もしかしたら、足元見られてぼったくられるかも……」

   ……ま、マジかぁ~。
   え、じゃあ何?  やっぱ乗れない感じ??
   完全に、詰んじゃった感じ???

「それって……。いくらくらいするのかなぁ?」

「おいらがアンロークからここまで乗せて貰った時は、ちょっと豪華な商船で、一部屋借りるのに30000センスだったけど……。どこも経由せずに、三週間ほど船で缶詰状態での値段だったからなぁ~。パーラ・ドット大陸までは、半月、もしくは一ヶ月ほどかかる旅のはずだし……。たぶんだけど、ピタラス諸島の各島々で四泊ずつくらいはするはずなんだ。物資を売ったり買ったりするわけだからな。となると……、ん~……」

   おいおいおい、三週間で、しかも一人30000センスだったのなら、明らかに足りないじゃないかよぉっ!?

「うぅぅ~。どうしよぅ~。グレコに怒られるぅ~」

   怒った時の、あの恐ろしく怖いグレコの顔が頭に浮かんで、俺はカタカタと前歯を震わせた。

「いや、まぁ、なんとかなると思うぞ?」

   ……いやいやいや、状況わかってますかカービィさん?
   所持金が既に三万ほどだってのに、どうしたらなんとかなるんだよっ!??

「……無理じゃない?」

「なんでだ?  明日の一斉討伐の報酬があるだろう??」

   ……え?   あ??   そっか、なるほど。

「報酬って、お金で貰えるの?」

「ん?  うん、そうだぞ。何だと思ってたんだ??」

   ……いや、一斉討伐に参加する事自体が嫌過ぎて、報酬があるとかないとか、何なのかとか、あんまりちゃんと考えてなかったんだよ。

「たぶん、国営軍直々のクエストだから、かなり報酬は高いはずだ。モントリア公国は貴族の国だからな、財源も潤っているはずだし、国家直属の国営軍のクエストなんだから、それなりの報酬がないと様にならないだろう?」

   ほほう、モントリア公国は貴族の国だったのか。
   と言うことは、カービィが言うように、報酬は期待出来るわけなんだな?

「どれくらい貰えるのかなぁ?」

「おいらの経験からすると、まず参加者全員に参加報酬が払われるだろう。それプラス、ジャコールの討伐数に応じての個別報酬も払われるはずだ。一匹に付き何センスなのかは、たぶん開始前に発表されるはずだ、士気を高めるためにもな。けど、相手が肉食の獣で、かなり危険度の高いクエストだから、おそらくだけど、個別報酬もなかなかに高額だとおいらは考えてる」

   お、おぉ~……
   なんだか、何とかなりそうな気がして来たぞ!

「出来れば、あと100000センスくらいは手元にあった方が安心だろうから……。モッモ、明日は死ぬ気で頑張るぞ!」

「おっ、おうっ!」

「そして、とにかく……。お金が残り少ない事は、グレコさんには内緒だぞ!  きっと……、いや、絶対に怒られるっ!!」

「もっ、もちろんっ!  口が裂けても言わないっ!!」

   こうして、俺とカービィは、残り少ない所持金をグレコにばれない様にする同盟!  を組み、明日のプラト・ジャコール一斉討伐に臨むこととなったのだった。





「くはぁ~。癒されるぅ~」

「ジェジェ~♪」

「ゴラ、お前も気持ちいいかい?」

「ジェジェジェ、ジェ~♪」

   一人、温かい湯船に浸かって、おっさん臭い声を出す俺。
   隣には、桶に入れたお湯に浸かるマンドラゴラのゴラ。
   昼間はずっと、俺のズボンのポケットの中でおとなしくしていてくれるので、たまに存在を忘れそうになるのだが……
   大丈夫です、ゴラはちゃんと生きていますよ!

   夜にゴラを、食事代わりの水に浸してあげるのがここ最近の俺の日課なのだが、お湯はどうなのだろう?  とふと思ったので、一緒に風呂場に連れて入ったのだ。
   ゴラはお湯でも平気なようで、可愛らしい顔をニパニパとさせながら、気持ち良さそうに浸かっている。
   ……しかしあれだな、ふやける前に出してやらないとな。
   
   今夜は、先にグレコに入って貰ったので、今はお風呂を独り占めである。
   グレコのスタイル抜群な体を拝めるのはたいそう有難い事なのだけれども、拝むだけで何も出来ないのは生殺しもいいところなので、頼むから一人で入らせてくれ!  と、俺は懇願したのだった。
   逆にカービィは、頼むから一緒に入らせてくれ!  と、グレコに土下座までしていたのだが、冗談は顔だけにしなさい、とグレコに言われて、猛烈に凹んでいた。

「湯加減は大丈夫ですかぁ~?」

「あ、はい~、とても気持ち良いです~」

   風呂場の外で、薪をくべてくれているリルミユに返事をする俺。
   最初は怪しい人かと思ったけど、カービィに話を聞いてからは何とも思わなくなっていた。
   ……まぁ、予言者にしてはなんかこう、パッとしないって言うか、のんびりしてるなぁ~、とは思うけどね。

「そういえば、明日の一斉討伐に参加されるんですってねぇ?  ケロケロ」

「あ、はい。あ、でもあの、お金が無いからとかじゃないですよ、ちゃんと宿代は払いますから!」

「ふふふ、は~い、ケロロン♪」

   クスクスと笑うリルミユ。
   別にリルミユは、俺が宿代を払えない、なんて事は思ってはいなかっただろうけど……
   
「モッモさん、一つだけいいですか?」

「え?  あ、はい」

「大きな木と木の間を通る時は、足元に注意してくださいね」

「大きな、木?  それは、えっと……、どうしてですか?」

「う~ん……。針が刺さる、からですかねぇ~?」

   ……針?  木の間に、針があるのか??
  何かの罠とか??? 
  けど、何のための罠だそれ????

「わ、わかりました、気をつけます」

「は~い、ふふふ♪   頑張ってくださいね、ケロケロロン♪」

   リルミユの言葉の真意は分からなかったが、一応、大きな木の間を通る時には気をつけようかな?  と、俺は思うのであった。
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

転生弁護士のクエスト同行記 ~冒険者用の契約書を作ることにしたらクエストの成功率が爆上がりしました~

昼から山猫
ファンタジー
異世界に降り立った元日本の弁護士が、冒険者ギルドの依頼で「クエスト契約書」を作成することに。出発前に役割分担を明文化し、報酬の配分や責任範囲を細かく決めると、パーティ同士の内輪揉めは激減し、クエスト成功率が劇的に上がる。そんな噂が広がり、冒険者は誰もが法律事務所に相談してから旅立つように。魔王討伐の最強パーティにも声をかけられ、彼の“契約書”は世界の運命を左右する重要要素となっていく。

家ごと異世界ライフ

ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

豪華地下室チートで異世界救済!〜僕の地下室がみんなの憩いの場になるまで〜

自来也
ファンタジー
カクヨム、なろうで150万PV達成! 理想の家の完成を目前に異世界に転移してしまったごく普通のサラリーマンの翔(しょう)。転移先で手にしたスキルは、なんと「地下室作成」!? 戦闘スキルでも、魔法の才能でもないただの「地下室作り」 これが翔の望んだ力だった。 スキルが成長するにつれて移動可能、豪華な浴室、ナイトプール、釣り堀、ゴーカート、ゲーセンなどなどあらゆる物の配置が可能に!? ある時は瀕死の冒険者を助け、ある時は獣人を招待し、翔の理想の地下室はいつのまにか隠れた憩いの場になっていく。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しております。

異世界のリサイクルガチャスキルで伝説作ります!?~無能領主の開拓記~

AKISIRO
ファンタジー
ガルフ・ライクドは領主である父親の死後、領地を受け継ぐ事になった。 だがそこには問題があり。 まず、食料が枯渇した事、武具がない事、国に税金を納めていない事。冒険者ギルドの怠慢等。建物の老朽化問題。 ガルフは何も知識がない状態で、無能領主として問題を解決しなくてはいけなかった。 この世界の住民は1人につき1つのスキルが与えられる。 ガルフのスキルはリサイクルガチャという意味不明の物で使用方法が分からなかった。 領地が自分の物になった事で、いらないものをどう処理しようかと考えた時、リサイクルガチャが発動する。 それは、物をリサイクルしてガチャ券を得るという物だ。 ガチャからはS・A・B・C・Dランクの種類が。 武器、道具、アイテム、食料、人間、モンスター等々が出現していき。それ等を利用して、領地の再開拓を始めるのだが。 隣の領地の侵略、魔王軍の活性化等、問題が発生し。 ガルフの苦難は続いていき。 武器を握ると性格に問題が発生するガルフ。 馬鹿にされて育った領主の息子の復讐劇が開幕する。 ※他サイト様にても投稿しています。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

転生した体のスペックがチート

モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。 目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい このサイトでは10話まで投稿しています。 続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

処理中です...