最弱種族に異世界転生!?小さなモッモの大冒険♪ 〜可愛さしか取り柄が無いけれど、故郷の村を救う為、世界を巡る旅に出ます!〜

玉美-tamami-

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★港町ジャネスコ編★

134:自分の身は自分で守る!

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   ギルド出張所窓口の横にある、クエストが書かれたビラが沢山貼られている掲示板を見上げる俺たち。

「ん~と……。あ、あった!  あれだあれっ!!」

   カービィが指差す先に、それはあった。


-----+-----+-----

●魔物一斉討伐クエスト●

   対象:プラト・ジャコール

   場所:ジャネスコ北門より外、ジャネスコ周辺の森

   日時:クガの月、二十五日、午後二時

   目的及び内容:昨今、このジャネスコ近隣で、夜間に運行されている行商馬車が、南部より生息地を広げてきたプラト・ジャコールに襲われる事件が多発している。治安維持のために、ジャネスコ周辺に潜んでいるプラト・ジャコールを一斉討伐する。午後二時~午後七時までの間にプラト・ジャコールを狩り、ここジャネスコ駐屯所に運んで来る事。その個体数に応じて報酬と経験値を与える。安全のため、二人以上のパーティーで参加する事。参加希望者は、当日の午後一時より受付を開始する。

   依頼主:モントリア公国国営軍

-----+-----+-----


「はは~ん。国営軍直々のクエストとなれば、報酬も経験値もかなり入るだろうな♪」

「そうなんだ!  けど、倒したプラト・ジャコールをここまで運ぶとなると、そんなに数を倒せないわね。倒せたとしても運べないもの」

「……しかし、あの小娘との狩勝負に勝つためには、一体でも多く、ジャコールを倒さねばならぬ」

   魔物一斉討伐にノリノリな三人と、掲示板を見上げたまま、青褪めた表情の俺。

「そうなるとだなぁ……。とりあえず、おいらとモッモは別々にならないとな。おいらは縮小魔法で倒したジャコールを小さくして運べるし、モッモはその鞄があれば倒したジャコールをいくらでも運べるだろ?」

「あ、なるほどそうね。じゃあ……、でも、私はモッモを守りながらあのジャコールと戦う勇気はないわよ?」

「……確かに、グレコさんには荷が重いかも知れないな。魔法弓だって初めて実戦で使うわけだからな」

「ならば我がモッモと組もう。モッモを背に乗せて、ジャコール供を根絶やしにしてくれるわ」

「ははっ!   ギンロは頼もしいなぁ!!   モッモ、そういう事だがいいか?」

   カービィの言葉に、ゆっくりと、無表情で頷く俺。

「うし!   じゃあ、明日は午前中に身分証明書を総合管理局まで取りに行って、昼飯を食べてからここに来る感じで!!」

「あのさ……。その、ごごとか、ごせんとか、にじとか?   何なのそれ??」

「えっ!?   あ、あ~そうか!   グレコさん、時計を知らないんだったな!!」

「……我もわからぬのだが」

「えっ!?   ギンロもか!??   えっとぉ~、そうだなぁ~……。まず、世の中には時間という概念があってだな、頭の良い学者たちが一日を二十四時間に分けたんだ。それでだな~」

   カービィは、時計はおろか、時間の概念すら怪しいグレコとギンロに、何やら長~い説明をし始めた。
   俺はというと、ギルド出張所窓口のすぐ隣にあるベンチに腰掛けて、ぼんや~りとしている。

   ……明日、プラト・ジャコールの一斉討伐に、俺は参加する。
   俺は覚えているぞ、暗闇の中で無数に光る、あいつらの凶暴な目を。
   時間が昼からだから、あそこまで暗闇では無いにしろ、それでもあいつらが恐ろしい事には変わりない。
   剥き出しの牙、尖った爪に、仲間を呼ぶ遠吠え……

   なぜに?   なぜにこの俺が、あんなに恐ろしい獣を狩に行かねばならんのだ??
   こんなにふわふわで、ぷくぷくなピグモルの俺が???
   世界最弱で、最も可愛いこの俺が????
   なぜにだぁあぁぁぁっ?????

   周りには、屈強な国営軍や冒険者たちがわらわらといる。
   彼らなら、プラト・ジャコールを仕留める事など朝飯前だろう。
   だけど、俺は違うぞ。
   俺は、どちらかと言うと、仕留められる事なら朝飯前、だ……
   どう考えても、狩られるのは俺の方だろうよ。

「はぁ~~~~~」
 
   思わず、深く深い溜息を吐く俺。

   もぉ~、いったいぜんたい、誰のせいでこんな事になったのさぁ~?
   狩勝負??
   そんなのしなくていいじゃんかぁ~、仲良くいこうよぉ~。

   もうあれだな、なりふり構わず万呪の枝でジャコールに呪いをかけまくって、そんでもって危険な時は風の精霊リーシェを迷わず呼ぼう。
   ギンロは俺を背負って戦うなんて言っているけど、後ろからジャコールに飛びかかられれば、それこそ一貫の終わりだ。
   俺はギンロの背で、無残にも生ハムになってしまう事だろう……
   そんなのは嫌だぁっ!!
   ギンロの事を信用していないわけではないが、最低限、自分の身は自分で守れるように考えておかないとな。
   となると……

   まだ、時間の概念と時計について説明しているカービィと、なかなか理解できなさそうなグレコとギンロを見て、俺はこの後に提案する言葉を頭の中で整理していた。





「此方なんて如何ですか?  重さはさほどなく、水に強いビギーの背皮と、耐久性があるセモノの樹で作られていますので、お客様でも安心して装備して頂けるかと♪」

   俺の手にピッタリなサイズの盾を手渡して、営業スマイルを見せる店員。
   山羊のような獣人で、目が顔の両端についているのでちょっと怖い……
   女性らしいのだが、年齢は俺たちよりだいぶ上だろう、おばさんに見える。

「出来れば、皮じゃなくて金属の盾がいいよな?  この大きさのでないのか??」

   カービィが、山羊おばさんに催促する。

   ここは、商店街の一角にある、盾の専門店だ。
   自分の身は自分で守る!  と決めた俺は、昼食を終えた後で、カービィと一緒に盾を買いに来たのだ。

「生憎、お客様のような小さな方でも持てるサイズの盾は此方しか……。いえ、あるにはあるのですけど、ちょっと値が張るので、ご購入は難しいかと……」

   ふむ、なるほどな。
   俺が金無しに見えると言うのだね、山羊おばさんめ。

「あるんならとりあえず見せてくれ。買うかどうかは見てから決めるからさ」

   カービィの言葉に山羊おばさんは、カウンター奥にある扉の向こうから、緑がかった銀色の、美しい花の細工が施された盾を持ってきた。

   ……なんだろうな?  どっかで見た事があるようなデザインだ。

「これは、少しばかり昔の物になるんですけど……。エルフの行商人が売って行った物でして、大きさも中途半端だし、何より目立つ細工が施されているので冒険者向きでは無いものなんですけど……。一応、プラチナ鉱石で表面がコーティングされた銀の盾です。それも、作り手は恐らくエルフなので、何かしらの守護魔法が掛けられていると思います」

   あ~、なるほどエルフのか!
   通りで見た事があるわけだ!!

   エルフの隠れ里に入るための鍵となる鏡、そこに施されている細工とこの盾の細工が、とてもよく似ているのだ。

「おお、いいじゃないかそれ!?   モッモ、持ってみろよ!??」

   カービィに促されるままに、銀の盾を手に持ってみると……、あら不思議!
   なんて俺の手にピッタリなのでしょう!!
   まるで、俺の為に作られた盾かのように、大きさも重さもジャストフィットだ!!!

「あ~、これいいなぁ~♪」

「うん、なかなか良さそうだな!   おばちゃん、これいくらするんだ!?」

   カービィの質問に、山羊おばさんは少し困った顔をしながら言った。

「それを買い取ったのが私のお爺さんで、かなりの年季物だから、こんな額を言うのは恥ずかしいのですが……。一応、希望価格は640000センスですねぇ~」

   六十四万!?   こりゃまた高いなぁっ!??
   でも、この盾欲しいしなぁ……

「う~ん……。どうするモッモ?」

「……買いますっ!!!」

   即決した俺に、山羊おばさんは驚きの表情で、目をパチクリさせていた。
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