最弱種族に異世界転生!?小さなモッモの大冒険♪ 〜可愛さしか取り柄が無いけれど、故郷の村を救う為、世界を巡る旅に出ます!〜

玉美-tamami-

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★港町ジャネスコ編★

126:良薬は口に苦し

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「はいはい。エルフ一名、獣人三名の、計四名様ね、はいはいはい。もうね、カービィちゃんのお友達だから、な~んも問題ないよ~。三階の海側の角部屋が空いてるから、すぐ連れてってやりな?  ゲコゲコ」

「ありがとう、タロチキさん!  さ、こっちだ!!」

   タロチキと呼ばれた、ヒキガエルのような獣人の宿屋の主人に軽く頭を下げて、俺たちはカービィについて行く。   
   階段を登って、廊下を歩き、指定された部屋へと急ぐ。

「おっし、ここだ!  グレコさん、一番大きなベッドにギンロを寝かせて!!」

「は、は~い……、ん~、よいしょっと……。ふ~、あぁ~重かったぁ~」

   部屋には四つベッドがあって、二つがギンロが寝ても十分な大きさの広いベッドで、残り二つは俺やカービィが寝るのにちょうどいい小ささのベッドだ。
   大きな窓があるものの、ピッタリと閉まっているようで室内の空気は重く、分厚いカーテンのために部屋の中は薄暗い。

   ここまでギンロに肩を貸していたグレコは、よほど重かったのだろう、体中汗びっしょりになっていて……、ちょっぴりセクシーだ。

「うぅ……、すまない、グレコ……」

「いいのよ、困った時はお互い様でしょ?」

   汗だくで、上着を脱ぎながら、謝るギンロに対してニッコリと笑うグレコ。
   うん、かなりセクシー……
   同じ事を思ったらしいカービィが、動きを止めて鼻の下を伸ばし、グレコをガン見している。

「……カービィ、ギンロに手当てしてあげられる?」

「……はっ!?  あ、あぁもちろんさっ!!!」

   我に返ったカービィは、鞄の中から小鉢とすり棒、色んな粉の入った瓶などを大量に出して、薬を作り始める。

「あ~、暑い……。モッモ、窓開けてくれない?」

「あ、はいっ!」

   ここまで何の役にも立っていない俺は、サササッと動いて、大きな窓のカーテンを開く。
   パーッと明るい日の光が差して来て、窓を開けると、心地よい潮風が部屋を吹き抜けた。
   そして、窓の向こう側に広がっているのは、何処までも続く青い海と空、産まれて初めて見る港の風景。

「うわぁ……、すっごぉ~い……」

   思わず感嘆の声を漏らす俺。
   港には、大小様々な船がたくさんあって、それぞれがカラフルな帆をはためかせている。
   そこでは沢山の獣人や人間たちが行き来しており、荷物を積んだり降ろしたり、船の甲板を掃除したり、出港準備をしていたりと、とても忙しそうで活気に満ち溢れていた。

   カービィが俺たちを連れてやって来たのは、大通りから裏道へと入っていった先にある、こじんまりした宿屋だった。

   この港町ジャネスコは、周りをグルリと巨大な石壁に囲まれて、東西と北に町への入り口である鉄門が設置されている。
   それぞれの鉄門から始まる道は大通りと呼ばれ、全てが先ほどの中心部である商店街へと真っ直ぐ伸びている。
   俺たちは、東門の東大通りを通って商店街へ行き、そこから西大通りを通ってこの宿屋までやって来たのだった。

   ここに来るまでに、大通りにも宿屋というか、大きなホテルのような宿泊施設が多数あったのだが、あれはどうやら貴族向けらしい。
   今のところ、テッチャのおかげでお金はたんまりあるけれど、カービィいわく、そういう高級な宿泊施設は何かと面倒だからと、行きつけのこの小さな宿屋を選んだ……と、いうわけだ。

   小さいといっても、外観も中も小綺麗で、置かれている家具はアンティーク調で素敵だし、どこか隠れ家的な雰囲気を醸し出していて、俺は好きだな♪

「うわぁ~すごいね~。船ってあんななんだぁ!」

   いつの間にか隣にいたグレコが、キラキラと目を輝かせる。
   そうか、エルフの村には海があったけど、船はなかった気がする。
   ということは、グレコは産まれて初めて船を見るわけだ。

「ほい、これ飲んで」

「ゴクゴク……、うぅ、に、苦い……」

   カービィに差し出された薬を飲んで、こちらがビビってしまうくらい、顔を歪めるギンロ。
   剥き出した牙をギリギリと食いしばり、怒っているのかと問いたくなるほど、その形相は恐ろしい。

   そ、そんなに苦いのか、可哀想に……
   ギンロはこう見えて甘党だからな。

「良薬は口に苦しだ。それ飲んでしばらくジッとしてりゃ、明日には治るはずさ」

   カービィはそう言ったが……

   ギンロの赤痣は相当なものだった。
   濡れタオルで痒みを和らげようと、服を脱がした俺とグレコは、また軽く悲鳴をあげる事となった。
   人のものとそう変わらないギンロの上半身は、白い肌の上に、凸凹と波打った、巨大な地図のような赤痣が広がっていたのだ。

   こりゃ、あれだな、アレルギー反応による蕁麻疹だな。
   カービィは、ロブスターが合わなかったと言っていたが、おそらくギンロは甲殻類アレルギーなのだろう。
   後で聞くと、故郷の小川で沢蟹を食べて死にかけた事がある、と言っていた。
   ……じゃあロブスター食うなよ、と言いたくなったが、蟹と海老が同じ甲殻類だなんて事をギンロが知るはずもない。
   今後は俺が気をつけていないとな、と肝に命じた俺だった。





「おいらがギンロを看ているから、おまいら、港を見学してこいよ?  宿屋の前の道を南に行けばすぐだから」

   カービィの言葉に甘えて、俺とグレコはスキップしながら港へ向かった。

「うわぁ~おっ!   すっごい賑わいっ!!」

「町も賑わっていたけど、ここも凄いねっ!」

   行き交う人々は見慣れない服装をしていたり、初めて見る獣人だったり、中には目を見張るほどの美女集団まで!
   海の男は屈強なり、荷物を運んだり船の整備をしたりして働いている人間や獣人は、みんなごつくて筋肉質、さらにはお決まりのようにみんなマリンテイストな服装をしている。
   
   そして、何よりも目を引くのは、港に浮かぶ大量の船だ。
   一人乗りの小舟のようなものが並んでいるかと思えば、いったい何人乗れるんだっ!?   という巨大なものまで……
   大きな船の先端には必ず、様々なモチーフの船首像がついていて、それを見ているだけでも面白い。
   各国の船がこのジャネスコにやってきているのだろう、船の甲板から垂らされた国旗も様々で、あ~こんなにも沢山の国が世界にはあるんだな~と、俺は溜息を漏らしていた。

   すると、背後から……

「お~お~、可愛らしい護衛だこった~」

   何やら嫌~な感じの、低い男の声。
   俺とグレコが同時に振り返ると、そこに立っているのは、ギンロよりも背が高くて、体中を黒い鱗に覆われたムキムキマッチョな、巨大ワニ顔人間だ!

   ぎゃあぁぁ!?   化け物ぉっ!??

   驚きの余り震え始めた俺と、鋭い瞳でキッと睨みつけるグレコに対し、ワニ顔人間はニヤニヤとした不敵な笑みを浮かべていた。
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