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★虫の森、蟷螂神編★
81:トンテントン♪
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「それではっ! 今宵は、我が村に新しく加わりしダッチュ族の子らを歓迎し!! 盛大に祝おうぞっ!!!」
「うおぉぉぉおぉぉっ!!!」
毎度お馴染みの、ピグモルの宴が始まった。
みんなでキャンプファイヤーを取り囲み、飲めや食えや、歌えや踊れやのどんちゃん騒ぎである。
そこにダッチュ族の子供達も加わって、もはや村全体がお祭り騒ぎだ。
広場には山ほど食べ物が用意され、ダッチュ族の子供達は初めて見る様々な料理に興味津々。
卵はというと、先程グレコが作ってくれた子供達の即席の寝床に収められて、村のみんなが代わる代わる温めている。
そのおかげで、ダッチュ族の子供達は存分に宴を楽しめているようだ。
さすがにお酒はまだ早いだろうとの事で、代わりにリリコの実の搾りたてジュースが出されていた。
タイニーボアーの肉も焼き上がって、ピグモルたちのテンションは最高潮に達する。
誰からともなく、ダッチュ族の子供を一羽ずつ胴上げする、という謎の行動まで始まる始末。
「我らの新しい仲間に!」
「新しい家族に! 乾杯っ!!」
「ダッチュ族の子らよ! 健やかなれっ!!」
大声を上げながら、この場の空気に任せて大盛り上がりするピグモルたち。
広場にはぞくぞくと、酔っ払いピグモルが出来上がっていった。
「モッモ!」
タイニーボアーの肉と、リリコのジュースを手にしたポポが、楽しそうにニコニコと笑いながら近付いて来た。
「あ、ポポ。どう? 楽しめてる??」
今夜は少しばかりお酒を飲んでいる俺は、ふんわりした気分で話しかける。
俺の隣に、ちょこんと腰を下ろすポポ。
「うん! ここは最高だねっ!! あたい、こんなに楽しいの初めてだよ!!!」
「そっか! それは良かったよ!!」
上機嫌に笑って、お酒をグイッと飲む俺。
もう結構酔っているので、このくらいでやめておこうかな~、なんて考えてたら……
ポポが、スーッと涙を流している事に気がついた。
キャンプファイヤーや、騒ぐピグモルたち、仲間のダッチュ族の子どもらを見つめながら、声を出すでもなく、ただただ涙を流しているのだ。
「ど……、どうしたの?」
ハッとして、動揺する俺。
つい数秒前まで、酔ってふわふわしていたのだが、途端に目が覚めたかのように意識がハッキリしてきた。
「あたい……、今、とっても楽しい……。けど、喜んでいいのか、分かんないんだ。おっかぁもいない、おっとぉもいない。これから先、ずっといない……。けど、今はとても楽しいんだ。だけど、どうしてか、涙が出てくるんだよ……」
笑いながら、ポロポロと、大粒の涙を零すポポ。
どう声をかけていいのか、分からない……
ポポは今、ようやく、両親の死と向き合う事が出来たのだ。
ここまでは、生き残る事に必死で、泣いている暇なんてなかったのだろう。
それはつまり、ここが……、この村が、ピグモルのみんなが、ポポやその他のダッチュ族の子供達を、心から安心させてあげられている、という事なのだろう。
だがしかし、やはり、どう声をかけていいのか、俺には分からなくて……
言葉が出ないままに、そっとポポの肩に手を回して、ギュッと自分の体に引き寄せる俺。
言葉にはできないけど、一人じゃないよって、ポポに伝えたかった。
しばらくの間ポポは、俺の隣で静かに涙を流していた……
「もうちょっと右~、あっ!? 待って! ちょっと左~、行き過ぎ行き過ぎっ!! もうちょっと、もうちょっ……、う~、オッケィ!!!」
トンテンカンカン、トンテントン♪
翌日、村のピグモル総出で、ダッチュ族の子供達の為の家造りが始まった。
家と言ってもまぁ、本当に簡単な、太い丸太を支柱にして、それに細い丸太を斜めに立て掛けて作る……、そう、ダッチュ族の里にあった彼らの家だ。
住み慣れた形の方がいいだろうと、みんなと相談して決めたのだ。
けれどもまぁ、ここに住むピグモルならではの工夫がいろいろと付け加えられておりますので、ご紹介致しましょう。
まず、建物は、地面から1メートルほど離した高床式となっております。
こうしておけば、雨が降った時に困らないのです。
次に、いくつか窓を設けました。
換気ができた方が、ダッチュ族特有の鳥臭さが家の中に篭らないで済むからです。
そして家の中には、ちゃんとしたベッドを用意しました。
これまでの彼らの寝床は、とても寝る場所とは言えないようなものだったので……
ついでに枕と布団も用意しましたよ。
慣れるまでは違和感ありありでしょうが、子供は慣れが早いからね、きっとすぐに、ベッドとお布団の良さを分かってくれると思います。
加えて、子供達の衣服ですが、今までは木の皮と葉っぱで出来た、なんとも原始的且つ貧相な服を着ていたので、ちゃんとした布の服を全員分用意しました。
こちらも、最初は着慣れないでしょうが、しばらく経てば問題無いと思われます、はい。
…‥という感じで、グレコにテッチャ、ギンロも手伝ってくれたので、なんとか日暮れまでに全ての作業を終える事が出来た。
ポポを含め、ダッチュ族の子供達は、家にも服にも大変満足してくれたようだ。
良かった良かった~♪
「良かった、これで卵も無事に孵れるわね」
グレコがにっこり微笑む。
「わしがちゃんと見ておくからの、心配はせんでええ。それよりあれじゃな……。子供らには後々、わしの仕事を手伝ってもらおうかのぉ。等価交換じゃてなぁ~」
タダで家造りを手伝っていたわけではなかったのね、テッチャよ。
さすが守銭奴……
ともかくこれで、当面の間、ダッチュ族の心配はせずに済むだろう。
彼らの世話は村のみんなが甲斐甲斐しくしてくれるはずだし、何よりここは安全だ。
なんてったって、守護神ガディス様が村を守ってくれているのだから!
さて、残る問題は、と……、チラリ。
隣に立つ、ギンロをチラ見する俺。
昨日より表情は幾分かマシではあるものの、ずっと無口を貫いているのだ。
おそらくそれは意図的ではなく、無意識に、なのだろうが……
このままじゃ、駄目だよな。
仕方がない……
このモッモ様が、一肌脱いで差し上げようじゃないかっ!!!
「うおぉぉぉおぉぉっ!!!」
毎度お馴染みの、ピグモルの宴が始まった。
みんなでキャンプファイヤーを取り囲み、飲めや食えや、歌えや踊れやのどんちゃん騒ぎである。
そこにダッチュ族の子供達も加わって、もはや村全体がお祭り騒ぎだ。
広場には山ほど食べ物が用意され、ダッチュ族の子供達は初めて見る様々な料理に興味津々。
卵はというと、先程グレコが作ってくれた子供達の即席の寝床に収められて、村のみんなが代わる代わる温めている。
そのおかげで、ダッチュ族の子供達は存分に宴を楽しめているようだ。
さすがにお酒はまだ早いだろうとの事で、代わりにリリコの実の搾りたてジュースが出されていた。
タイニーボアーの肉も焼き上がって、ピグモルたちのテンションは最高潮に達する。
誰からともなく、ダッチュ族の子供を一羽ずつ胴上げする、という謎の行動まで始まる始末。
「我らの新しい仲間に!」
「新しい家族に! 乾杯っ!!」
「ダッチュ族の子らよ! 健やかなれっ!!」
大声を上げながら、この場の空気に任せて大盛り上がりするピグモルたち。
広場にはぞくぞくと、酔っ払いピグモルが出来上がっていった。
「モッモ!」
タイニーボアーの肉と、リリコのジュースを手にしたポポが、楽しそうにニコニコと笑いながら近付いて来た。
「あ、ポポ。どう? 楽しめてる??」
今夜は少しばかりお酒を飲んでいる俺は、ふんわりした気分で話しかける。
俺の隣に、ちょこんと腰を下ろすポポ。
「うん! ここは最高だねっ!! あたい、こんなに楽しいの初めてだよ!!!」
「そっか! それは良かったよ!!」
上機嫌に笑って、お酒をグイッと飲む俺。
もう結構酔っているので、このくらいでやめておこうかな~、なんて考えてたら……
ポポが、スーッと涙を流している事に気がついた。
キャンプファイヤーや、騒ぐピグモルたち、仲間のダッチュ族の子どもらを見つめながら、声を出すでもなく、ただただ涙を流しているのだ。
「ど……、どうしたの?」
ハッとして、動揺する俺。
つい数秒前まで、酔ってふわふわしていたのだが、途端に目が覚めたかのように意識がハッキリしてきた。
「あたい……、今、とっても楽しい……。けど、喜んでいいのか、分かんないんだ。おっかぁもいない、おっとぉもいない。これから先、ずっといない……。けど、今はとても楽しいんだ。だけど、どうしてか、涙が出てくるんだよ……」
笑いながら、ポロポロと、大粒の涙を零すポポ。
どう声をかけていいのか、分からない……
ポポは今、ようやく、両親の死と向き合う事が出来たのだ。
ここまでは、生き残る事に必死で、泣いている暇なんてなかったのだろう。
それはつまり、ここが……、この村が、ピグモルのみんなが、ポポやその他のダッチュ族の子供達を、心から安心させてあげられている、という事なのだろう。
だがしかし、やはり、どう声をかけていいのか、俺には分からなくて……
言葉が出ないままに、そっとポポの肩に手を回して、ギュッと自分の体に引き寄せる俺。
言葉にはできないけど、一人じゃないよって、ポポに伝えたかった。
しばらくの間ポポは、俺の隣で静かに涙を流していた……
「もうちょっと右~、あっ!? 待って! ちょっと左~、行き過ぎ行き過ぎっ!! もうちょっと、もうちょっ……、う~、オッケィ!!!」
トンテンカンカン、トンテントン♪
翌日、村のピグモル総出で、ダッチュ族の子供達の為の家造りが始まった。
家と言ってもまぁ、本当に簡単な、太い丸太を支柱にして、それに細い丸太を斜めに立て掛けて作る……、そう、ダッチュ族の里にあった彼らの家だ。
住み慣れた形の方がいいだろうと、みんなと相談して決めたのだ。
けれどもまぁ、ここに住むピグモルならではの工夫がいろいろと付け加えられておりますので、ご紹介致しましょう。
まず、建物は、地面から1メートルほど離した高床式となっております。
こうしておけば、雨が降った時に困らないのです。
次に、いくつか窓を設けました。
換気ができた方が、ダッチュ族特有の鳥臭さが家の中に篭らないで済むからです。
そして家の中には、ちゃんとしたベッドを用意しました。
これまでの彼らの寝床は、とても寝る場所とは言えないようなものだったので……
ついでに枕と布団も用意しましたよ。
慣れるまでは違和感ありありでしょうが、子供は慣れが早いからね、きっとすぐに、ベッドとお布団の良さを分かってくれると思います。
加えて、子供達の衣服ですが、今までは木の皮と葉っぱで出来た、なんとも原始的且つ貧相な服を着ていたので、ちゃんとした布の服を全員分用意しました。
こちらも、最初は着慣れないでしょうが、しばらく経てば問題無いと思われます、はい。
…‥という感じで、グレコにテッチャ、ギンロも手伝ってくれたので、なんとか日暮れまでに全ての作業を終える事が出来た。
ポポを含め、ダッチュ族の子供達は、家にも服にも大変満足してくれたようだ。
良かった良かった~♪
「良かった、これで卵も無事に孵れるわね」
グレコがにっこり微笑む。
「わしがちゃんと見ておくからの、心配はせんでええ。それよりあれじゃな……。子供らには後々、わしの仕事を手伝ってもらおうかのぉ。等価交換じゃてなぁ~」
タダで家造りを手伝っていたわけではなかったのね、テッチャよ。
さすが守銭奴……
ともかくこれで、当面の間、ダッチュ族の心配はせずに済むだろう。
彼らの世話は村のみんなが甲斐甲斐しくしてくれるはずだし、何よりここは安全だ。
なんてったって、守護神ガディス様が村を守ってくれているのだから!
さて、残る問題は、と……、チラリ。
隣に立つ、ギンロをチラ見する俺。
昨日より表情は幾分かマシではあるものの、ずっと無口を貫いているのだ。
おそらくそれは意図的ではなく、無意識に、なのだろうが……
このままじゃ、駄目だよな。
仕方がない……
このモッモ様が、一肌脱いで差し上げようじゃないかっ!!!
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