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★始まりの場所、テトーンの樹の村編★
20:時の神の使者
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『うまい……、うまいうぉ……』
自らの尻尾の先にある炎を焚き火に移し、火力を調節しながら、タイニーボアーの焼いた肉を食べ、満足そうに笑うバルン。
「いやぁ……、まさか本物のサラマンダーだとはね……。初めて見たわ。書物でしか見たことなかったから……、驚いたわ~」
丸太に腰掛けて足を組み、その上に頬杖をついたポーズで、肉をバクバク食べるバルンを物珍しそうに凝視するグレコ。
「もぐもぐ、ゴックン! ……んん? そんなに珍しいものなの、精霊って??」
タイニーボアーの肉は、こんがり焼くと臭みがなくなって、それはそれは美味しいステーキとなった。
グレコが持参していた岩塩を少々振り掛けると、もう最高っ!
これなら村のみんなも喜んでくれそうだ。
あとで岩塩の入手方法をグレコに聞いておこう!!
「珍しいも何も、自然発生する精霊なんて、一生のうちに会えるか会えないかくらいの確率よ!? だから伝説の存在として書物に載ってるんじゃない!!」
信じられないっ!? と言った感じで、口調がきつくなるグレコ。
おおぅ……ちょっと怖いな。
しかしなるほど、精霊とはそんなに稀有な存在だったのか。
一昨日から立て続けに精霊やら神様やらに出会ってきたもんだから、この世界ではそれが普通なのだと思っていたが、どうやら違ったらしい。
「それにしてもあなた、バルンって言った? どうして急に現れたの?? まさかとは思うけど……、召喚されたの???」
バルンに問いかけながら、何故かチラリと俺の事を見るグレコ。
ほう? 精霊は召喚しないと現れないものなのか??
てか、今何故俺を見た???
次の肉に手を伸ばし、齧り付こうとした俺を、バルンが指差す。
ん、なんだ? この肉が欲しいのかな??
これは駄目だぞ、しっかり焼けるまで待ってたんだから、俺が食べるんだいっ!
『モッモ。モッモに呼ばれて、バルンはここに来たうぉ』
……はい???
「やっぱり!? さっきモッモが、火力が欲しいって言った途端に出て来たものね! けどどうして? 召喚の儀も何もしてなかったでしょ?? なのにどうしてそんな……、すんなり現れたのっ!??」
……グレコ、怖いよ。
なんか、黒髪になってから気が強くなってなぁ~い?
『モッモ、【時の神の使者】うぉ。使者の望みを叶えるの、うおの役割、仕事』
は? 時の神の使者?? なんだそれ???
「何ですってぇえぇぇっ!!???」
「ぐっ!? ぐほぉっ!!?」
グレコが急に大声を出して立ち上がったもんだから、口の中でもぐもぐしてた肉が勝手に喉の方に降りてしまい、俺は危うく窒息しかける。
「モッモ!? あなた、時の神の使者だったのっ!?? そんなこと……、一言も言ってなかったじゃないのっ!!??」
何? なんなの、何の話っ!?
てか、まだ喉に肉が……
「えほっ、えほっ……、ぐっ。な、何? なんて??」
「だ! か!! ら!!! あなたが、【時の神クロノシア・レア】の使者なのかって、聞いてるのっ!!!!」
ううぅ、何? 誰それ??
てか怖いよグレコ、目が血走ってるよ???
「おかしいと思ったのよ! 見るからに貧弱なピグモルなのに、平然とこの森を歩いているし!! 居なかったはずのところに急に現れるし!!! 魔法の鞄とか言って、あの大量の肉をしまい切ってしまうしっ!!!!」
あのぅ……、何故にキレてるのかなグレコさん?
それに、見るからに貧弱って酷くない??
「えっと……、その……、話が見えないんだけど……。どうしてグレコは、怒っているのかな??」
「これが怒ってるように見えるっ!?」
え? あ、はい、見えますけど……
違うんですか??
そんなに額に青筋立てて、怒ってないと???
「けど……、あ~もうっ! やっと巫女様のお告げが外れて力が無くなったのかと思ったのに!! 結局お告げ通りじゃないっ!? やってらんないわっ!!!」
酷く憤慨した様子で、グレコはどすんっ! と腰を下ろし、良い感じに焼けているタイニーボアーの肉にかぶりついた。
バルンは、そんなグレコと俺のやり取りなど全く無視し、すでに四つ目であろう肉に手を伸ばしている。
えっと、だからその……
とりあえず、俺の正体がバレたと言うことだろうか。
しかし、なんかこう、俺が思っているより事は複雑そうだな。
「えっと……、白状すると、その……。実は、北の山々の聖地に行って、その……、神様とやらに会って来た帰りなんだよね、僕」
俺の白状に、先ほどよりも更に怒った表情で、口の中にある肉をグッチャグッチャと噛み、眉間に激しく皺を寄せるグレコ。
そのお顔がめっちゃ怖くて、プルルと体が震える俺。
「そ、それで……、神様に会って、いろいろアイテムは貰ったけど……。さっき、グレコが言ったような、か、神様の名前とか、使者?とか……、どうしてここにバルンがいるのかとか、僕が呼んだのかとか……、そ、そういうことはその、ちんぷんかんぷん、なんだけど……?」
俺の言葉に、噛んでいた肉を飲み込んで、グレコは「はぁ~」と溜息をついた。
「仕方ない、私が教えてあげる。モッモ、あなたは、私の探していた神の力を宿しし者なの。即ち、世界の均衡を保つ為にこの世に生を受けた、選ばれし者なのよ!」
あ~……、うん。
なんとな~く、そんな気はしてたけど。
けどさ、世界の均衡なんて、俺に保てる気がしないんだけど?
自らの尻尾の先にある炎を焚き火に移し、火力を調節しながら、タイニーボアーの焼いた肉を食べ、満足そうに笑うバルン。
「いやぁ……、まさか本物のサラマンダーだとはね……。初めて見たわ。書物でしか見たことなかったから……、驚いたわ~」
丸太に腰掛けて足を組み、その上に頬杖をついたポーズで、肉をバクバク食べるバルンを物珍しそうに凝視するグレコ。
「もぐもぐ、ゴックン! ……んん? そんなに珍しいものなの、精霊って??」
タイニーボアーの肉は、こんがり焼くと臭みがなくなって、それはそれは美味しいステーキとなった。
グレコが持参していた岩塩を少々振り掛けると、もう最高っ!
これなら村のみんなも喜んでくれそうだ。
あとで岩塩の入手方法をグレコに聞いておこう!!
「珍しいも何も、自然発生する精霊なんて、一生のうちに会えるか会えないかくらいの確率よ!? だから伝説の存在として書物に載ってるんじゃない!!」
信じられないっ!? と言った感じで、口調がきつくなるグレコ。
おおぅ……ちょっと怖いな。
しかしなるほど、精霊とはそんなに稀有な存在だったのか。
一昨日から立て続けに精霊やら神様やらに出会ってきたもんだから、この世界ではそれが普通なのだと思っていたが、どうやら違ったらしい。
「それにしてもあなた、バルンって言った? どうして急に現れたの?? まさかとは思うけど……、召喚されたの???」
バルンに問いかけながら、何故かチラリと俺の事を見るグレコ。
ほう? 精霊は召喚しないと現れないものなのか??
てか、今何故俺を見た???
次の肉に手を伸ばし、齧り付こうとした俺を、バルンが指差す。
ん、なんだ? この肉が欲しいのかな??
これは駄目だぞ、しっかり焼けるまで待ってたんだから、俺が食べるんだいっ!
『モッモ。モッモに呼ばれて、バルンはここに来たうぉ』
……はい???
「やっぱり!? さっきモッモが、火力が欲しいって言った途端に出て来たものね! けどどうして? 召喚の儀も何もしてなかったでしょ?? なのにどうしてそんな……、すんなり現れたのっ!??」
……グレコ、怖いよ。
なんか、黒髪になってから気が強くなってなぁ~い?
『モッモ、【時の神の使者】うぉ。使者の望みを叶えるの、うおの役割、仕事』
は? 時の神の使者?? なんだそれ???
「何ですってぇえぇぇっ!!???」
「ぐっ!? ぐほぉっ!!?」
グレコが急に大声を出して立ち上がったもんだから、口の中でもぐもぐしてた肉が勝手に喉の方に降りてしまい、俺は危うく窒息しかける。
「モッモ!? あなた、時の神の使者だったのっ!?? そんなこと……、一言も言ってなかったじゃないのっ!!??」
何? なんなの、何の話っ!?
てか、まだ喉に肉が……
「えほっ、えほっ……、ぐっ。な、何? なんて??」
「だ! か!! ら!!! あなたが、【時の神クロノシア・レア】の使者なのかって、聞いてるのっ!!!!」
ううぅ、何? 誰それ??
てか怖いよグレコ、目が血走ってるよ???
「おかしいと思ったのよ! 見るからに貧弱なピグモルなのに、平然とこの森を歩いているし!! 居なかったはずのところに急に現れるし!!! 魔法の鞄とか言って、あの大量の肉をしまい切ってしまうしっ!!!!」
あのぅ……、何故にキレてるのかなグレコさん?
それに、見るからに貧弱って酷くない??
「えっと……、その……、話が見えないんだけど……。どうしてグレコは、怒っているのかな??」
「これが怒ってるように見えるっ!?」
え? あ、はい、見えますけど……
違うんですか??
そんなに額に青筋立てて、怒ってないと???
「けど……、あ~もうっ! やっと巫女様のお告げが外れて力が無くなったのかと思ったのに!! 結局お告げ通りじゃないっ!? やってらんないわっ!!!」
酷く憤慨した様子で、グレコはどすんっ! と腰を下ろし、良い感じに焼けているタイニーボアーの肉にかぶりついた。
バルンは、そんなグレコと俺のやり取りなど全く無視し、すでに四つ目であろう肉に手を伸ばしている。
えっと、だからその……
とりあえず、俺の正体がバレたと言うことだろうか。
しかし、なんかこう、俺が思っているより事は複雑そうだな。
「えっと……、白状すると、その……。実は、北の山々の聖地に行って、その……、神様とやらに会って来た帰りなんだよね、僕」
俺の白状に、先ほどよりも更に怒った表情で、口の中にある肉をグッチャグッチャと噛み、眉間に激しく皺を寄せるグレコ。
そのお顔がめっちゃ怖くて、プルルと体が震える俺。
「そ、それで……、神様に会って、いろいろアイテムは貰ったけど……。さっき、グレコが言ったような、か、神様の名前とか、使者?とか……、どうしてここにバルンがいるのかとか、僕が呼んだのかとか……、そ、そういうことはその、ちんぷんかんぷん、なんだけど……?」
俺の言葉に、噛んでいた肉を飲み込んで、グレコは「はぁ~」と溜息をついた。
「仕方ない、私が教えてあげる。モッモ、あなたは、私の探していた神の力を宿しし者なの。即ち、世界の均衡を保つ為にこの世に生を受けた、選ばれし者なのよ!」
あ~……、うん。
なんとな~く、そんな気はしてたけど。
けどさ、世界の均衡なんて、俺に保てる気がしないんだけど?
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