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★始まりの場所、テトーンの樹の村編★
14:油断せず行こうっ!!!
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サクサクサクサク
森を歩くのは、神様から貰った隠れ身のローブを、裏返しにして身にまとう俺。
このローブは、見た目は普通の雨ガッパなのだが、裏返して着る事で自らの姿を消す事の出来る、超絶便利な神様アイテムなのである。
フードをすっぽりと被った俺の体は、完全に森の風景と同化して、透明になっているはずだ。
それでも、できるだけ木々の近くを歩き、前も後ろも右も左も十分に気を配りながら、慎重に慎重に、俺は歩を進めていた。
……先ほどは、危なかった。
非常に、危なかった。
パニックになってて、本当に危なかった。
下山した途端、あんな恐ろしい巨鳥に襲われようとは……、全く、想像だにしていなかった。
あの後、しばらくの間、また巨鳥がどこからともなく襲ってくるのではと、俺は木の陰に隠れて震えていた。
けれども巨鳥が戻ってくる事は無く、どうやら本当にどこかに行ってしまったようで、俺はホッと一安心すると共に我に返った。
そうだよっ!?
こんな時こそ、神様アイテムを使えばいいんじゃないかっ!!?
……そう。
知らない森を一人で歩くのだ、これ以上に危険な事はない。
それなのに俺は、なんだかこう気を抜き過ぎていて、警戒心ってものが全然足りてなかった!
せっかく神様が、身を守る為のアイテムを授けて下さったというのに、みすみす死ぬところだったぜ!!
まぁ、死んでしまっても、時空の指輪で生き返る事ができるんだけどな……、って事も、ついさっき気付いた。
だけど、出来れば死にたく無いでしょっ!?
普通に考えてさっ!!?
とにもかくにも、俺は一命を取り留めたのだ。
九死に一生を得る、とはまさにこの事である。
ここからは気を抜かず、集中して、森を進まなくては……
油断せず行こうっ!!!
日が暮れてきた。
辺りが夕日のオレンジ色に染まり始める。
幸いにも、あの巨鳥以降、何ものにも出会わずに済んだ俺は、今晩の寝床を探そうと頭上を仰ぎ見た。
地面で眠るのは……、うん、危険過ぎるだろう。
やはり樹上が安全だ。
けれど、さっきの巨鳥みたいな奴が他にもいるかも知れないし、眠る場所は慎重に選ばないとな。
くるくると辺りを見回しながら歩いていると、なんだか懐かしい匂いを、よく効く俺の鼻が嗅ぎ取った。
その匂いを頼りに歩いて行くと、なんとラッキーな事に、一本のテトーンの樹を発見した。
よしっ! これで今晩は安心だ!!
小走り気味に、テトーンの樹に近寄る俺。
しかし、樹の真ん前まで来たところで足が止まる。
……なんだろう? 妙な匂いと音がする。
シュッシュッシュッ、という何かを削る音と、なんだか甘~い、嗅いだ事のない良い匂い。
おそるおそる樹に近付いてみると、俺がいる場所とは反対側の樹の根元に、何者かが座り込んでいるではないか。
その体格、服装、特徴的な耳からして、相手が何者であるか察しが付く俺。
ドキドキと、心臓の鼓動が速くなっていく。
も、もしかして……?
いや、もしかしなくても、あれは……!?
だがしかし、ピグモルになってからは一度も出会った事のない種族だ。
というか、前世でもきっと、出会った事はないだろう。
何故ならば前世では、それは幻想世界の生物で、架空の生き物だったのだから。
でも、あそこに居るのはきっと、本物だ……!!
ドキドキドキドキ
ピンと上を向いて尖った耳に、陶器のように白い肌。
美しいウェーブのかかった、長く、輝くような金髪。
緑を基調とした衣服を身にまとい、背には弓矢を背負っている。
シュッシュという音は、短剣で木の枝を削いでいる音らしい。
こちらに気付く気配の無い彼女からは、俺が先程から感じていた、ほのかに甘い香りが漂っている。
間違いない、あれは……!!!
「エルフ?」
おっ!? 思わず声に出してしまったぁっ!
「誰っ!?」
彼女は瞬時に立ち上がり、こちらを向いて、手に持っていた短剣を身構える。
そのお顔立ちはとても美しく、赤い瞳が印象的な、女の子でたる。
思っていたよりも年は若いようで、幼さの残るあどけない顔つきをしている。
「どこにいるっ!? 出てきなさいっ!」
エルフの女の子は、短剣を構えたまま、森の中に目を凝らす。
既に、両手を上げて降参のポーズをとっていた俺だったが……
あ……? そうだ、俺……
今、透明なんだった!
「出て来ないなら、こっちから行くわよっ!?」
キッと俺の方を睨み、ゆっくりと近づいてくるエルフの女の子。
相手が見えないというのに、なんて勇敢な行動だろう。
だがしかし、この状況……
いったいどうすればいいんだ?
確か、エルフは人間のことが嫌いな種族だ。
自らを高潔な種族だと考えているとかなんとか、薄らとだがそういった記憶がある。
そういう種族に、無闇に近づいていいものか……
けれど、今の俺は人間ではない。
世界で最弱の種族、ピグモルだ。
決してあの子に危害を加えるような事はしないし、できないし……
恐らく、相手も俺の姿を見て、攻撃しようとは思わないはずだ。
……まぁ、ピグモルって種族を知っていればの話だけれども。
どうしよう、どうしようと悩み、どんどんと近づいてくるエルフの女の子を前にドキドキしていると、その子は俺の脇をスッと歩いて、通り過ぎて行ってしまった。
あ……、気付かれなかった……?
そりゃそうか、透明だもんね。
ど、どうしよう……??
もう夕暮れ時だし、テトーンの樹から離れるのはあの子も危険なはずだ。
こうなりゃ、一か八かだな。
「あのう……」
隠れ身のローブをそっと脱いで、後ろを向いてしまっているエルフの女の子に向かって、俺はおそるおそる声をかけた。
「そこかぁっ!? きゃっ!!?」
勢いよく振り向いたその子は、自分の足で自分の足を絡めとってしまい、盛大に尻餅をついた。
「痛ぁ~い……。んん?」
お尻をさするエルフの女の子。
ポカーンとする俺。
そして、互いの目が、バッチリと合って……
「え? なに?? 可愛い……???」
俺を見て、戸惑っているかのような表情でそう言った彼女の言葉に、俺はニヘラと笑った。
あ、いや……、どうしよう、この状況……?
森を歩くのは、神様から貰った隠れ身のローブを、裏返しにして身にまとう俺。
このローブは、見た目は普通の雨ガッパなのだが、裏返して着る事で自らの姿を消す事の出来る、超絶便利な神様アイテムなのである。
フードをすっぽりと被った俺の体は、完全に森の風景と同化して、透明になっているはずだ。
それでも、できるだけ木々の近くを歩き、前も後ろも右も左も十分に気を配りながら、慎重に慎重に、俺は歩を進めていた。
……先ほどは、危なかった。
非常に、危なかった。
パニックになってて、本当に危なかった。
下山した途端、あんな恐ろしい巨鳥に襲われようとは……、全く、想像だにしていなかった。
あの後、しばらくの間、また巨鳥がどこからともなく襲ってくるのではと、俺は木の陰に隠れて震えていた。
けれども巨鳥が戻ってくる事は無く、どうやら本当にどこかに行ってしまったようで、俺はホッと一安心すると共に我に返った。
そうだよっ!?
こんな時こそ、神様アイテムを使えばいいんじゃないかっ!!?
……そう。
知らない森を一人で歩くのだ、これ以上に危険な事はない。
それなのに俺は、なんだかこう気を抜き過ぎていて、警戒心ってものが全然足りてなかった!
せっかく神様が、身を守る為のアイテムを授けて下さったというのに、みすみす死ぬところだったぜ!!
まぁ、死んでしまっても、時空の指輪で生き返る事ができるんだけどな……、って事も、ついさっき気付いた。
だけど、出来れば死にたく無いでしょっ!?
普通に考えてさっ!!?
とにもかくにも、俺は一命を取り留めたのだ。
九死に一生を得る、とはまさにこの事である。
ここからは気を抜かず、集中して、森を進まなくては……
油断せず行こうっ!!!
日が暮れてきた。
辺りが夕日のオレンジ色に染まり始める。
幸いにも、あの巨鳥以降、何ものにも出会わずに済んだ俺は、今晩の寝床を探そうと頭上を仰ぎ見た。
地面で眠るのは……、うん、危険過ぎるだろう。
やはり樹上が安全だ。
けれど、さっきの巨鳥みたいな奴が他にもいるかも知れないし、眠る場所は慎重に選ばないとな。
くるくると辺りを見回しながら歩いていると、なんだか懐かしい匂いを、よく効く俺の鼻が嗅ぎ取った。
その匂いを頼りに歩いて行くと、なんとラッキーな事に、一本のテトーンの樹を発見した。
よしっ! これで今晩は安心だ!!
小走り気味に、テトーンの樹に近寄る俺。
しかし、樹の真ん前まで来たところで足が止まる。
……なんだろう? 妙な匂いと音がする。
シュッシュッシュッ、という何かを削る音と、なんだか甘~い、嗅いだ事のない良い匂い。
おそるおそる樹に近付いてみると、俺がいる場所とは反対側の樹の根元に、何者かが座り込んでいるではないか。
その体格、服装、特徴的な耳からして、相手が何者であるか察しが付く俺。
ドキドキと、心臓の鼓動が速くなっていく。
も、もしかして……?
いや、もしかしなくても、あれは……!?
だがしかし、ピグモルになってからは一度も出会った事のない種族だ。
というか、前世でもきっと、出会った事はないだろう。
何故ならば前世では、それは幻想世界の生物で、架空の生き物だったのだから。
でも、あそこに居るのはきっと、本物だ……!!
ドキドキドキドキ
ピンと上を向いて尖った耳に、陶器のように白い肌。
美しいウェーブのかかった、長く、輝くような金髪。
緑を基調とした衣服を身にまとい、背には弓矢を背負っている。
シュッシュという音は、短剣で木の枝を削いでいる音らしい。
こちらに気付く気配の無い彼女からは、俺が先程から感じていた、ほのかに甘い香りが漂っている。
間違いない、あれは……!!!
「エルフ?」
おっ!? 思わず声に出してしまったぁっ!
「誰っ!?」
彼女は瞬時に立ち上がり、こちらを向いて、手に持っていた短剣を身構える。
そのお顔立ちはとても美しく、赤い瞳が印象的な、女の子でたる。
思っていたよりも年は若いようで、幼さの残るあどけない顔つきをしている。
「どこにいるっ!? 出てきなさいっ!」
エルフの女の子は、短剣を構えたまま、森の中に目を凝らす。
既に、両手を上げて降参のポーズをとっていた俺だったが……
あ……? そうだ、俺……
今、透明なんだった!
「出て来ないなら、こっちから行くわよっ!?」
キッと俺の方を睨み、ゆっくりと近づいてくるエルフの女の子。
相手が見えないというのに、なんて勇敢な行動だろう。
だがしかし、この状況……
いったいどうすればいいんだ?
確か、エルフは人間のことが嫌いな種族だ。
自らを高潔な種族だと考えているとかなんとか、薄らとだがそういった記憶がある。
そういう種族に、無闇に近づいていいものか……
けれど、今の俺は人間ではない。
世界で最弱の種族、ピグモルだ。
決してあの子に危害を加えるような事はしないし、できないし……
恐らく、相手も俺の姿を見て、攻撃しようとは思わないはずだ。
……まぁ、ピグモルって種族を知っていればの話だけれども。
どうしよう、どうしようと悩み、どんどんと近づいてくるエルフの女の子を前にドキドキしていると、その子は俺の脇をスッと歩いて、通り過ぎて行ってしまった。
あ……、気付かれなかった……?
そりゃそうか、透明だもんね。
ど、どうしよう……??
もう夕暮れ時だし、テトーンの樹から離れるのはあの子も危険なはずだ。
こうなりゃ、一か八かだな。
「あのう……」
隠れ身のローブをそっと脱いで、後ろを向いてしまっているエルフの女の子に向かって、俺はおそるおそる声をかけた。
「そこかぁっ!? きゃっ!!?」
勢いよく振り向いたその子は、自分の足で自分の足を絡めとってしまい、盛大に尻餅をついた。
「痛ぁ~い……。んん?」
お尻をさするエルフの女の子。
ポカーンとする俺。
そして、互いの目が、バッチリと合って……
「え? なに?? 可愛い……???」
俺を見て、戸惑っているかのような表情でそう言った彼女の言葉に、俺はニヘラと笑った。
あ、いや……、どうしよう、この状況……?
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