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★始まりの場所、テトーンの樹の村編★
4:不安に決まっているだろ馬鹿野郎っ!!
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出発の準備があるからと、俺は足早に広場を後にした。
俺の家があるテトーンの樹に上り、下を見下ろすと、まだまだどんちゃん騒ぎを続けるつもりの陽気な大人達の姿が見えた。
まぁ、普段はこんなにテンション上げる事なんてないからな、今夜くらいはいいか……
ふ~っと息を吐きながら、家の扉を開けると、入ってすぐの台所にあるテーブルで、母ちゃんが何やら裁縫をしていた。
「ただいまぁ」
「……おやモッモ、もうお帰りかい?」
広場の音はここまで聞こえている。
その中心にいるべきな主役の帰宅に、母ちゃんはびっくりした顔をした。
「うん、明日からの準備をしようと思ってさ。母ちゃんは何してるの?」
「これかい? これはね、明日あんたが持っていくものだよ」
母ちゃんは、獣の皮を縫い合わせて、何やら袋を作っているようだ。
「北の山々までは遠いからね、何日かかるか分かりゃしないよ。持てるだけの食糧を持っていきな」
うぅ……、母ちゃんの言葉に、俺、泣きそう……
「母ちゃん……、ぐすん」
「おやおや、なぁ~に泣きそうな顔してんだよぉ? 大丈夫、あんたならちゃんとできる! 母ちゃんは信じているからね!! ちゃんと聖地まで行って、神様からお告げを頂いて……、元気にここへ帰ってくるんだよっ!!!」
母ちゃんは泣くまいと、大きな瞳に涙をタプタプに溜めている。
俺は思わず、母ちゃんのふくよかな体に抱きついた。
「大丈夫、大丈夫……」
優しく俺の頭を撫でてくれる母ちゃん。
俺は我慢できなくなって、声を出して泣いた。
いくら前世の記憶があって、いろんな知識があるからって、俺はまだ十五歳なんだよっ!
誰も行った事のない北の山々の、どこにあるかもわからない聖地に一人で行くなんて……
不安に決まっているだろ馬鹿野郎っ!!
夜が明けた。
窓から日の光が差してきて、俺は目を覚ます。
結局昨晩は、母ちゃんの腕の中で泣いたまま眠ってしまい、知らない間に自室のベッドに運ばれていた。
ベッドの脇には、母ちゃんが用意してくれたであろう旅の荷物が置かれている。
ゴソゴソと中を確認し、全くもって完璧な事に、俺はまた泣きそうになる。
せっかく、せっかくこんな恵まれた生活をしてるっていうのに……
なぜにっ!? なぜにだっ!??
俺は生まれて此の方、村の外に出た事がない。
俺だけじゃない、この村に住むほとんどのピグモルがそうだろう。
野菜や果物は村の中で採れるし、村外れの小川では新鮮な魚が獲れる。
ピグモルはそうして、村から一歩も外に出ずに、一生を平和に暮らしていくんだ。
なのに、なぜっ!!??
村の外、即ちテトーンの樹の群生地帯の外側は、全く未知の世界だ。
噂によると、恐ろしい魔獣が、うようよいるとかいないとか……
しかし、誰も外に出た奴がいないから、どれもこれも噂の範疇なのだが……
それでもやっぱり不安すぎる。
……こうなりゃもう、賭けだな。
俺はある秘策を胸に、出発の決意を新たにした。
「気をつけて行くんだよぉ!」
見送りに来てくれたのは、まだ幼い双子の妹を両脇に抱えた母ちゃんだけだった。
昨晩あんなに盛り上がっていた大人たちは、おそらく盛り上がりすぎたが故に、二日酔いという地獄にうなされているのだろう、誰も外へは出てこなかった。
俺の父ちゃんも、一緒に行くと言っていたはずのコッコとトットもだ。
けっ! けっ!!
薄情者共めぇっ!!!
「母ちゃん! 僕、ちゃんと帰ってくるからねっ!!」
少し離れた場所から手を振って、俺は叫んだ。
母ちゃんは、また大きな瞳に涙を一杯溜めて、コクコクと何度も頷いて見せた。
着慣れた服、履き慣れた靴を身に着け、腰には木の棒、背には沢山の食糧が入った荷物を持って、俺は村を旅立った!
そして、旅立って数分後……、俺は歩みを止めた!!
村からはかなり離れたけれど、ここにはまだテトーンの樹が群生している。
ここならば、恐ろしい魔獣に襲われることはないだろう。
俺は、適当に見繕ったテトーンの樹によじ登り、隠れるのにちょうど良さそうな洞に潜り込む。
中に他の生き物の痕跡が無い事を確認した後、俺はゆっくりと腰を下ろした。
さてさて……、北の山々までは歩いておよそ五日かかると長老は言っていた。
つまり、往復すると十日、もしくはもうちょいかかるだろう。
とすればだ、十二日間ほど、ここに隠れて大人しくしておいて……、その後真っ直ぐ、村に帰ればいいわけだ。
そして、帰ったらこう言おう。
「聖地に行きましたが、神のお告げは賜れませんでした。僕は、神の子ではなかったようです」
これで、万事上手く行く!
俺のお気楽ハッピーライフも守られるぞ!!
ヒャッホーイ!!!
俺の家があるテトーンの樹に上り、下を見下ろすと、まだまだどんちゃん騒ぎを続けるつもりの陽気な大人達の姿が見えた。
まぁ、普段はこんなにテンション上げる事なんてないからな、今夜くらいはいいか……
ふ~っと息を吐きながら、家の扉を開けると、入ってすぐの台所にあるテーブルで、母ちゃんが何やら裁縫をしていた。
「ただいまぁ」
「……おやモッモ、もうお帰りかい?」
広場の音はここまで聞こえている。
その中心にいるべきな主役の帰宅に、母ちゃんはびっくりした顔をした。
「うん、明日からの準備をしようと思ってさ。母ちゃんは何してるの?」
「これかい? これはね、明日あんたが持っていくものだよ」
母ちゃんは、獣の皮を縫い合わせて、何やら袋を作っているようだ。
「北の山々までは遠いからね、何日かかるか分かりゃしないよ。持てるだけの食糧を持っていきな」
うぅ……、母ちゃんの言葉に、俺、泣きそう……
「母ちゃん……、ぐすん」
「おやおや、なぁ~に泣きそうな顔してんだよぉ? 大丈夫、あんたならちゃんとできる! 母ちゃんは信じているからね!! ちゃんと聖地まで行って、神様からお告げを頂いて……、元気にここへ帰ってくるんだよっ!!!」
母ちゃんは泣くまいと、大きな瞳に涙をタプタプに溜めている。
俺は思わず、母ちゃんのふくよかな体に抱きついた。
「大丈夫、大丈夫……」
優しく俺の頭を撫でてくれる母ちゃん。
俺は我慢できなくなって、声を出して泣いた。
いくら前世の記憶があって、いろんな知識があるからって、俺はまだ十五歳なんだよっ!
誰も行った事のない北の山々の、どこにあるかもわからない聖地に一人で行くなんて……
不安に決まっているだろ馬鹿野郎っ!!
夜が明けた。
窓から日の光が差してきて、俺は目を覚ます。
結局昨晩は、母ちゃんの腕の中で泣いたまま眠ってしまい、知らない間に自室のベッドに運ばれていた。
ベッドの脇には、母ちゃんが用意してくれたであろう旅の荷物が置かれている。
ゴソゴソと中を確認し、全くもって完璧な事に、俺はまた泣きそうになる。
せっかく、せっかくこんな恵まれた生活をしてるっていうのに……
なぜにっ!? なぜにだっ!??
俺は生まれて此の方、村の外に出た事がない。
俺だけじゃない、この村に住むほとんどのピグモルがそうだろう。
野菜や果物は村の中で採れるし、村外れの小川では新鮮な魚が獲れる。
ピグモルはそうして、村から一歩も外に出ずに、一生を平和に暮らしていくんだ。
なのに、なぜっ!!??
村の外、即ちテトーンの樹の群生地帯の外側は、全く未知の世界だ。
噂によると、恐ろしい魔獣が、うようよいるとかいないとか……
しかし、誰も外に出た奴がいないから、どれもこれも噂の範疇なのだが……
それでもやっぱり不安すぎる。
……こうなりゃもう、賭けだな。
俺はある秘策を胸に、出発の決意を新たにした。
「気をつけて行くんだよぉ!」
見送りに来てくれたのは、まだ幼い双子の妹を両脇に抱えた母ちゃんだけだった。
昨晩あんなに盛り上がっていた大人たちは、おそらく盛り上がりすぎたが故に、二日酔いという地獄にうなされているのだろう、誰も外へは出てこなかった。
俺の父ちゃんも、一緒に行くと言っていたはずのコッコとトットもだ。
けっ! けっ!!
薄情者共めぇっ!!!
「母ちゃん! 僕、ちゃんと帰ってくるからねっ!!」
少し離れた場所から手を振って、俺は叫んだ。
母ちゃんは、また大きな瞳に涙を一杯溜めて、コクコクと何度も頷いて見せた。
着慣れた服、履き慣れた靴を身に着け、腰には木の棒、背には沢山の食糧が入った荷物を持って、俺は村を旅立った!
そして、旅立って数分後……、俺は歩みを止めた!!
村からはかなり離れたけれど、ここにはまだテトーンの樹が群生している。
ここならば、恐ろしい魔獣に襲われることはないだろう。
俺は、適当に見繕ったテトーンの樹によじ登り、隠れるのにちょうど良さそうな洞に潜り込む。
中に他の生き物の痕跡が無い事を確認した後、俺はゆっくりと腰を下ろした。
さてさて……、北の山々までは歩いておよそ五日かかると長老は言っていた。
つまり、往復すると十日、もしくはもうちょいかかるだろう。
とすればだ、十二日間ほど、ここに隠れて大人しくしておいて……、その後真っ直ぐ、村に帰ればいいわけだ。
そして、帰ったらこう言おう。
「聖地に行きましたが、神のお告げは賜れませんでした。僕は、神の子ではなかったようです」
これで、万事上手く行く!
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ヒャッホーイ!!!
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