769 / 801
★ピタラス諸島、後日譚★
756:爪
しおりを挟む
お買い物道中4軒目、武器屋にて。
「槍よか爪の方がいいんじゃねぇか?」
カービィが唐突にそう言った。
今俺達がいる場所は、フゲッタの東大通りに面した武器屋。
間に合わせで持ってきた槍が早々に壊れてしまい、バーバー族から貰った槍も役に立たなかった哀れなティカの為に、新しい槍を買おう! という事になったのだ。
この武器屋の店主である、カバみたいな獣人、その名もワポン。
(その外見は、一瞬、河馬神タマスを俺に思い起こさせたが、声がダンディー且つ口調がハッキリしているからして、喋ると全く別人だと認識できた、当たり前だけど……)
閉店間際だったが故に他に客が居なかった為、店主である彼に案内してもらいながら、槍コーナーへとやった来た途端、カービィが先程の言葉を口走ったのだ。
「いきなり何を言い出すのよ? ティカは槍が欲しいんでしょう??」
先程までの苛々を封印したらしいグレコが、いつも通りの声色でティカに尋ねる。
ティカは無言で頷いて、目の前に並ぶ槍へと視線を向けた。
壁に立て掛けられている、大小様々な、数百本の槍。
先端の刃の形も、持ち手の装飾も様々で、いろんなものがあって見ていて楽しくなる。
……まぁ全部、俺には扱えないんだけどね。
「う~ん、でもなぁ~……。ティカの並外れた身体能力と攻撃力を最大限活かすには、爪の方が確実に良い! とおいらは思うんだよな~」
ドヤ顔しつつ、二重顎に手を添えて、尚もそんな事を口走るカービィ。
「並外れた身体能力と攻撃力」という単語に反応したらしい、ギンロの耳がピクリと動き、同時にティカもクルッと此方に顔を向けた。
「あ~……、爪とは???」
尋ねる俺。
「ほら、クトゥルーとの戦いでさ、槍が無かったティカは自分の爪で戦ってたろ? その姿を見て思ったんだ。ティカは、何か武器を使うより、格闘技を駆使した肉弾戦というか……、接近戦の方が向いてるんじゃねぇのかなって。槍も悪くは無いだろうけど、ティカは体もでかいし、槍の分のリーチを考えて動くとなると、素早い相手には逆に不利になる事もあるだろう。船の上でギンロとやり合った時も、身のこなしが重いっていうか……、いまいちしっくりきてない感じが見受けられたからな。あんだけ厄介なクトゥルーの触手に対応出来たのも、たぶん余計な武器を持たずにいたからだと思うんだ。だから、ティカは槍よか爪の方が断然いい! うん!!」
ほう? つまり……、槍はやめて、爪で戦えと??
なら、爪はティカの指に元々生えてるんだから、ここでは何も買わないという事かしら???
「なるほどの。店主や、ここには爪装備は置いてあるんか?」
武器屋に入る直前に、何故だかフードをしっかりと被り直していたテッチャが、店主のワポンに問い掛ける。
ね……、ネイル、グローブだと?
何その名前??
直訳したら、爪の手袋だけど……、何それ???
爪の一本一本に、小さな袋でも被せるんですか????
「あるにはあるが……、ここいらじゃ爪使いはあまり居なくてな。三年ほど前に入荷したのが最後だ。新品は新品だが、型落ちの旧品になる。それで良いのなら見せるが……?」
ワポンはあまり乗り気じゃなさそうだ。
でも……
「だとよ。どうするティカ?」
ティカに尋ねるカービィ。
するとティカは……
「見よう」
即答した。
え、見るんだ?
槍はいいの??
どうやら、カービィの先程の言葉が効いているらしい。
ティカはあっさりと槍を諦めた。
ワポンに続いて、広い店内の片隅へと向かう俺達。
そこには、明らかに残り物ですって感じのいろんな武器と、埃を被った木箱が並んでいて、その中にお目当ての物があるらしい。
壁際に無造作に積まれている木箱を開けて、ガサガサと漁るワポン。
そして、近くにあったテーブルに、取り出した物を並べていった。
おぉ~!
これが爪かっ!!
なるほどそれで、《ネイル・グローブ》なんて呼ばれているわけねっ!!!
初めて見るそれらに、俺は深く納得する。
爪装備は、その名の通りに手袋であった。
勿論ただの手袋では無く、毛糸で出来ているわけでもない。
頑丈な皮と金属で出来た手袋、その指の付け根より少し下の部分から、鋭利に輝く長い刃物が着いているのだ。
刃物の色や形は様々で、それらは猛禽類の足の爪のようだったり、ティカのような竜人の手にあるそれとよく似ていたり、或いは猫の爪のように小さい物もあるが、どれも見るからに殺傷能力が高そうである。
「これで全部だ。悪いな、品揃えが悪くて」
ワポンはそう言って、ふ~っと息を吐いた。
ワポンが木箱から取り出した爪装備は全部で14個。
そのどれもが、凶器として申し分無い迫力を放っている。
こんなのを手に着けた奴と対峙した日にゃ~、俺なんか一瞬で、ペラッペラのスライスピグモルにされてしまうだろうな~、ははははは~。
アホでネガティブな妄想をする俺。
そんな時、一対の爪装備が目に留まった。
一際輝きを放つ、緑色の刃物。
極限まで磨き上げられているのであろうそれは、キラキラと宝石のように美しく煌めいている。
装着する為のバンドの部分は赤い鱗で覆われており、ティカの体表にあるそれにとてもよく似ていた。
「確かに物は少ないが……、なかなかにええもんを揃えておるのぉ~」
一つ一つ手にとって、繁々と観察していくテッチャ。
そして、俺が気になっていた、緑色の刃物がついた爪装備を手にした……、その時だ。
「これはまた、素晴らしい翡翠じゃな! 磨き方も一級品じゃて、何故こんなものが、こんな所に埋まって……、ん?うぬっ!? こっ!!? これはっ!?!?」
テッチャが叫んだ。
ワナワナと体を震わせるながら、両目をカッ! と見開いて、緑色の宝石のような刃物がついた爪装備の、バンド部分にある長さ調節の為の小さな金属のバックルを凝視している。
「何? どうしたの??」
「んんん???」
グレコ、ギンロ、ティカ、いつの間にか椅子に乗っていたカービィが、それを覗き込む。
俺は、高さが足りなくて、机の下で待機です……、けっ!
「あら? 何か書いてあるわね」
グレコがそう言った。
何が書いてあるんですかぁ~?
「み、ず、た、き……、ミズタキ? 名前かこれ??」
カービィがそう言った。
ミズタキだと? ……誰だ??
すると、テッチャは小刻みに震えながら話し始めた。
「ミズタキ・トゥーフ。この名前を知らぬはドワーフに在らず……。我が祖国デタラッタにおいて、最上級の鍛治職人である証、ゴッド級マスターの称号を作りし権威……。独自の技術で編み出した加工法によって、様々な武器防具をこの世に生み出し、数多の英雄に授けて回ったという、伝説の鍛治職人じゃよ。ミズタキは翡翠を用いて物を創るという噂じゃったが……。なるほどのぉ、噂は真であったか……」
…………え? 何が??
「どういう事? よく分からないんだけど……。この武器は、その伝説のドワーフ鍛治師が作ったって事なのかしら??」
ほぼ独り言に近いテッチャの言葉を、ちゃんと理解出来たらしいグレコが問い掛けた。
「うむ、簡単に言うとそういう事じゃ。店主……、これが何故ここに?」
テッチャが尋ねると、今度は店主のワポンが、テッチャを見ながらワナワナと震えているでは無いか。
「ま、まさかとは思っていたが……、お、お前……、お前っ! ドワーフかっ!?」
ビシィッ! という効果音が似合いそうなほどに、ぶっとい人差し指をテッチャに向けて突き立てるワポン。
「がっ!? しまったっ!!?」
慌てるテッチャ。
え!? なになにっ!!?
今度は何なのっ!!??
「なはははっ! バレちまったかっ!!」
笑うカービィ。
何が何だか分からず、クエスチョンマークが頭の上に浮かぶ俺、グレコ、ギンロにティカ。
「ドワーフがこの店に何の用だ!? くっそ……、怪しいと思ったんだ! こんな閉店間際に、羽振りが良さそうな団体客が来るなんてっ!!」
一人、腕をめちゃくちゃバタバタしながら、血相を変えて叫ぶワポン。
するとテッチャは、潔くフードを脱ぎ捨てて……
「すまんすまんっ! 隠すつもりは無かったんじゃが、こうなると思っての、静かにしてるつもりじゃったんじゃ!! しかし店主よ、これは値打ち物じゃぞ!? いったいどこで手に入れた!!?」
話を爪装備に戻そうとする。
だけどワポンは、気が動転しているらしく……
「まさかっ!? この店を買収しに来たんじゃっ!!? まだローンが残ってるんだぞ!!??」
ブルブルと全身を震わせながら、訳の分からない事を叫び続けている。
以下、テッチャとワポンのやり取りが続く……
「そんな事はせんてっ! それよりこの爪装備、幾らで売ってくれる? わしが見た限り、原価は20万センス程度じゃが、ミズタキの作った物となると、その数百倍の価値が……。いやしかし、箱の中に眠っとったくらいじゃて、廃品一歩手前だったわけじゃろ?? なら、原価の20万でどうじゃ???」
「なっ!? 何言ってんだお前っ!!? ドワーフに物を売るわけがないだろうっ!!??」
「買うのはわしじゃない! こっちの竜人の旦那が使うもんじゃて、問題なかろう!?」
「いや駄目だっ! ドワーフに武器を売ったなんて、噂でも立ってみろ!? この店が潰れてしまうだろうがっ!!?」
「ガハハッ! それほどやわな店には見えんがのぉ!? まぁいい……、とりあえずこれを20万で売ってくれっ!! そいで、金はこっちの小こいのが払うでの。わしは先に店から出ておくから、それでええじゃろ?」
「待てっ! 一人で外に出るなっ!! 逆に目立つだろうがっ!!!」
「お? それもそうじゃな。じゃあ……、もう少し、店内を見させてもらおうかの。まだ掘り出し物がありそうじゃて♪」
「なっ!? くぅっ!!? あぁあぁぁ~~~!!??」
ご機嫌な様子で、店内を見ようと歩き出すテッチャ。
頭を抱えて苦悩するワポン。
えっとぉ……、何?
何が、どうなってんの??
首を傾げている俺、グレコ、ギンロとティカに向かって、事態を把握出来ているらしいカービィが……
「にししし。後で説明してやるよ」
と、悪い顔で笑いながら言った。
「槍よか爪の方がいいんじゃねぇか?」
カービィが唐突にそう言った。
今俺達がいる場所は、フゲッタの東大通りに面した武器屋。
間に合わせで持ってきた槍が早々に壊れてしまい、バーバー族から貰った槍も役に立たなかった哀れなティカの為に、新しい槍を買おう! という事になったのだ。
この武器屋の店主である、カバみたいな獣人、その名もワポン。
(その外見は、一瞬、河馬神タマスを俺に思い起こさせたが、声がダンディー且つ口調がハッキリしているからして、喋ると全く別人だと認識できた、当たり前だけど……)
閉店間際だったが故に他に客が居なかった為、店主である彼に案内してもらいながら、槍コーナーへとやった来た途端、カービィが先程の言葉を口走ったのだ。
「いきなり何を言い出すのよ? ティカは槍が欲しいんでしょう??」
先程までの苛々を封印したらしいグレコが、いつも通りの声色でティカに尋ねる。
ティカは無言で頷いて、目の前に並ぶ槍へと視線を向けた。
壁に立て掛けられている、大小様々な、数百本の槍。
先端の刃の形も、持ち手の装飾も様々で、いろんなものがあって見ていて楽しくなる。
……まぁ全部、俺には扱えないんだけどね。
「う~ん、でもなぁ~……。ティカの並外れた身体能力と攻撃力を最大限活かすには、爪の方が確実に良い! とおいらは思うんだよな~」
ドヤ顔しつつ、二重顎に手を添えて、尚もそんな事を口走るカービィ。
「並外れた身体能力と攻撃力」という単語に反応したらしい、ギンロの耳がピクリと動き、同時にティカもクルッと此方に顔を向けた。
「あ~……、爪とは???」
尋ねる俺。
「ほら、クトゥルーとの戦いでさ、槍が無かったティカは自分の爪で戦ってたろ? その姿を見て思ったんだ。ティカは、何か武器を使うより、格闘技を駆使した肉弾戦というか……、接近戦の方が向いてるんじゃねぇのかなって。槍も悪くは無いだろうけど、ティカは体もでかいし、槍の分のリーチを考えて動くとなると、素早い相手には逆に不利になる事もあるだろう。船の上でギンロとやり合った時も、身のこなしが重いっていうか……、いまいちしっくりきてない感じが見受けられたからな。あんだけ厄介なクトゥルーの触手に対応出来たのも、たぶん余計な武器を持たずにいたからだと思うんだ。だから、ティカは槍よか爪の方が断然いい! うん!!」
ほう? つまり……、槍はやめて、爪で戦えと??
なら、爪はティカの指に元々生えてるんだから、ここでは何も買わないという事かしら???
「なるほどの。店主や、ここには爪装備は置いてあるんか?」
武器屋に入る直前に、何故だかフードをしっかりと被り直していたテッチャが、店主のワポンに問い掛ける。
ね……、ネイル、グローブだと?
何その名前??
直訳したら、爪の手袋だけど……、何それ???
爪の一本一本に、小さな袋でも被せるんですか????
「あるにはあるが……、ここいらじゃ爪使いはあまり居なくてな。三年ほど前に入荷したのが最後だ。新品は新品だが、型落ちの旧品になる。それで良いのなら見せるが……?」
ワポンはあまり乗り気じゃなさそうだ。
でも……
「だとよ。どうするティカ?」
ティカに尋ねるカービィ。
するとティカは……
「見よう」
即答した。
え、見るんだ?
槍はいいの??
どうやら、カービィの先程の言葉が効いているらしい。
ティカはあっさりと槍を諦めた。
ワポンに続いて、広い店内の片隅へと向かう俺達。
そこには、明らかに残り物ですって感じのいろんな武器と、埃を被った木箱が並んでいて、その中にお目当ての物があるらしい。
壁際に無造作に積まれている木箱を開けて、ガサガサと漁るワポン。
そして、近くにあったテーブルに、取り出した物を並べていった。
おぉ~!
これが爪かっ!!
なるほどそれで、《ネイル・グローブ》なんて呼ばれているわけねっ!!!
初めて見るそれらに、俺は深く納得する。
爪装備は、その名の通りに手袋であった。
勿論ただの手袋では無く、毛糸で出来ているわけでもない。
頑丈な皮と金属で出来た手袋、その指の付け根より少し下の部分から、鋭利に輝く長い刃物が着いているのだ。
刃物の色や形は様々で、それらは猛禽類の足の爪のようだったり、ティカのような竜人の手にあるそれとよく似ていたり、或いは猫の爪のように小さい物もあるが、どれも見るからに殺傷能力が高そうである。
「これで全部だ。悪いな、品揃えが悪くて」
ワポンはそう言って、ふ~っと息を吐いた。
ワポンが木箱から取り出した爪装備は全部で14個。
そのどれもが、凶器として申し分無い迫力を放っている。
こんなのを手に着けた奴と対峙した日にゃ~、俺なんか一瞬で、ペラッペラのスライスピグモルにされてしまうだろうな~、ははははは~。
アホでネガティブな妄想をする俺。
そんな時、一対の爪装備が目に留まった。
一際輝きを放つ、緑色の刃物。
極限まで磨き上げられているのであろうそれは、キラキラと宝石のように美しく煌めいている。
装着する為のバンドの部分は赤い鱗で覆われており、ティカの体表にあるそれにとてもよく似ていた。
「確かに物は少ないが……、なかなかにええもんを揃えておるのぉ~」
一つ一つ手にとって、繁々と観察していくテッチャ。
そして、俺が気になっていた、緑色の刃物がついた爪装備を手にした……、その時だ。
「これはまた、素晴らしい翡翠じゃな! 磨き方も一級品じゃて、何故こんなものが、こんな所に埋まって……、ん?うぬっ!? こっ!!? これはっ!?!?」
テッチャが叫んだ。
ワナワナと体を震わせるながら、両目をカッ! と見開いて、緑色の宝石のような刃物がついた爪装備の、バンド部分にある長さ調節の為の小さな金属のバックルを凝視している。
「何? どうしたの??」
「んんん???」
グレコ、ギンロ、ティカ、いつの間にか椅子に乗っていたカービィが、それを覗き込む。
俺は、高さが足りなくて、机の下で待機です……、けっ!
「あら? 何か書いてあるわね」
グレコがそう言った。
何が書いてあるんですかぁ~?
「み、ず、た、き……、ミズタキ? 名前かこれ??」
カービィがそう言った。
ミズタキだと? ……誰だ??
すると、テッチャは小刻みに震えながら話し始めた。
「ミズタキ・トゥーフ。この名前を知らぬはドワーフに在らず……。我が祖国デタラッタにおいて、最上級の鍛治職人である証、ゴッド級マスターの称号を作りし権威……。独自の技術で編み出した加工法によって、様々な武器防具をこの世に生み出し、数多の英雄に授けて回ったという、伝説の鍛治職人じゃよ。ミズタキは翡翠を用いて物を創るという噂じゃったが……。なるほどのぉ、噂は真であったか……」
…………え? 何が??
「どういう事? よく分からないんだけど……。この武器は、その伝説のドワーフ鍛治師が作ったって事なのかしら??」
ほぼ独り言に近いテッチャの言葉を、ちゃんと理解出来たらしいグレコが問い掛けた。
「うむ、簡単に言うとそういう事じゃ。店主……、これが何故ここに?」
テッチャが尋ねると、今度は店主のワポンが、テッチャを見ながらワナワナと震えているでは無いか。
「ま、まさかとは思っていたが……、お、お前……、お前っ! ドワーフかっ!?」
ビシィッ! という効果音が似合いそうなほどに、ぶっとい人差し指をテッチャに向けて突き立てるワポン。
「がっ!? しまったっ!!?」
慌てるテッチャ。
え!? なになにっ!!?
今度は何なのっ!!??
「なはははっ! バレちまったかっ!!」
笑うカービィ。
何が何だか分からず、クエスチョンマークが頭の上に浮かぶ俺、グレコ、ギンロにティカ。
「ドワーフがこの店に何の用だ!? くっそ……、怪しいと思ったんだ! こんな閉店間際に、羽振りが良さそうな団体客が来るなんてっ!!」
一人、腕をめちゃくちゃバタバタしながら、血相を変えて叫ぶワポン。
するとテッチャは、潔くフードを脱ぎ捨てて……
「すまんすまんっ! 隠すつもりは無かったんじゃが、こうなると思っての、静かにしてるつもりじゃったんじゃ!! しかし店主よ、これは値打ち物じゃぞ!? いったいどこで手に入れた!!?」
話を爪装備に戻そうとする。
だけどワポンは、気が動転しているらしく……
「まさかっ!? この店を買収しに来たんじゃっ!!? まだローンが残ってるんだぞ!!??」
ブルブルと全身を震わせながら、訳の分からない事を叫び続けている。
以下、テッチャとワポンのやり取りが続く……
「そんな事はせんてっ! それよりこの爪装備、幾らで売ってくれる? わしが見た限り、原価は20万センス程度じゃが、ミズタキの作った物となると、その数百倍の価値が……。いやしかし、箱の中に眠っとったくらいじゃて、廃品一歩手前だったわけじゃろ?? なら、原価の20万でどうじゃ???」
「なっ!? 何言ってんだお前っ!!? ドワーフに物を売るわけがないだろうっ!!??」
「買うのはわしじゃない! こっちの竜人の旦那が使うもんじゃて、問題なかろう!?」
「いや駄目だっ! ドワーフに武器を売ったなんて、噂でも立ってみろ!? この店が潰れてしまうだろうがっ!!?」
「ガハハッ! それほどやわな店には見えんがのぉ!? まぁいい……、とりあえずこれを20万で売ってくれっ!! そいで、金はこっちの小こいのが払うでの。わしは先に店から出ておくから、それでええじゃろ?」
「待てっ! 一人で外に出るなっ!! 逆に目立つだろうがっ!!!」
「お? それもそうじゃな。じゃあ……、もう少し、店内を見させてもらおうかの。まだ掘り出し物がありそうじゃて♪」
「なっ!? くぅっ!!? あぁあぁぁ~~~!!??」
ご機嫌な様子で、店内を見ようと歩き出すテッチャ。
頭を抱えて苦悩するワポン。
えっとぉ……、何?
何が、どうなってんの??
首を傾げている俺、グレコ、ギンロとティカに向かって、事態を把握出来ているらしいカービィが……
「にししし。後で説明してやるよ」
と、悪い顔で笑いながら言った。
0
お気に入りに追加
496
あなたにおすすめの小説
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
異世界は流されるままに
椎井瑛弥
ファンタジー
貴族の三男として生まれたレイは、成人を迎えた当日に意識を失い、目が覚めてみると剣と魔法のファンタジーの世界に生まれ変わっていたことに気づきます。ベタです。
日本で堅実な人生を送っていた彼は、無理をせずに一歩ずつ着実に歩みを進むつもりでしたが、なぜか思ってもみなかった方向に進むことばかり。ベタです。
しっかりと自分を持っているにも関わらず、なぜか思うようにならないレイの冒険譚、ここに開幕。
これを書いている人は縦書き派ですので、縦書きで読むことを推奨します。
幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない…
そんな中、夢の中の本を読むと、、、
深遠の先へ ~20XX年の終わりと始まり。その娘、傍若無人なり~
杵築しゅん
ファンタジー
20XX年、本当にその瞬間がやってきた。私は宇宙の管理者に1番目の魂の扉に入るよう指示され、扉を開け一歩踏み出したところで、宇宙の理の渦(深遠)の中に落ちていった。気付けば幼女に・・・これはもう立派な宇宙人として、この新しい星で使命を果たすしかない・・・と思っていたこともありました。だけど使命を果たせるなら、自由に生きてもいいわよね? この知識や経験を役立てられるなら、ちょっとくらい傍若無人でいいってことよね? 暗殺者や陰謀なんて無関係に生きてきたのに、貴族の事情なんて知ったこっちゃないわ。早く産業革命してラブロマンスを書くのよ!
月が導く異世界道中extra
あずみ 圭
ファンタジー
月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。
真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。
彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。
これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。
こちらは月が導く異世界道中番外編になります。
異世界のんびりワークライフ ~生産チートを貰ったので好き勝手生きることにします~
樋川カイト
ファンタジー
友人の借金を押し付けられて馬車馬のように働いていた青年、三上彰。
無理がたたって過労死してしまった彼は、神を自称する男から自分の不幸の理由を知らされる。
そのお詫びにとチートスキルとともに異世界へと転生させられた彰は、そこで出会った人々と交流しながら日々を過ごすこととなる。
そんな彼に訪れるのは平和な未来か、はたまた更なる困難か。
色々と吹っ切れてしまった彼にとってその全てはただ人生の彩りになる、のかも知れない……。
※この作品はカクヨム様でも掲載しています。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい
翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。
それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん?
「え、俺何か、犬になってない?」
豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。
※どんどん年齢は上がっていきます。
※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる