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★ピタラス諸島第五、アーレイク島編★

684:「はい」

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『第四の試練! 終了~!! 手に入れた鍵でもって、更なる上階を目指すのだ!!! 愚かなる挑戦者達よ!!!!』

 決まり文句を、声高高に宣言するリブロ・プラタ。
 
 雪山で、荒れ狂うドラゴンを見事鎮めた俺達は、金の扉を抜けて、塔内の巨大昇降機へと戻ってきた。
 しかしながら、ドラゴンに攻撃を仕掛けた事によって、ギンロとマシコットが……

「やはり、ギンロ様とマシコットは、試練に敗れたという事に……?」

 パロット学士の言葉に、グレコが絆の耳飾りに手をかざす。

「グレコよ。ギンロ、聞こえたら返事をしてちょうだい。……ギンロ? 聞こえる?? 駄目ね、また通じないわ」

 ちょっぴりイラっとした様子で、グレコはそう言った。

「また」というのは、何故だか分からないが、ギンロとは絆の耳飾りで交信ができないのだ。
 リザドーニャの時もそうだった。
 一方的にあちらの音は聞こえてくるものの、此方に対するギンロの返答は無かったのである。

 でも、後から聞いた話だと、あの時ギンロは応答したと言っていた。
 それも、心の中で……
 まさかとは思うんだけど、ギンロのやつ、絆の耳飾りの使い方を理解していないのか?

「ギンロ~? こちらモッモ。えと……、もし聞こえているなら、声に出して返事して欲しいんだ。声を出さないと、相手には聞こえないよ?? 聞こえてたら、はいって返事して」

 グレコに代わって、俺が交信を試みる。
 俺の言葉にグレコは、

「嘘でしょ? まさかギンロ……、使い方を知らないの??」

 と、小さく呟いている。

「声に出して返事って……、え? ギンロのやつ……、ぶふっ!? マジかっ!??」

 状況が理解出来たらしいカービィが、思わず噴き出し笑いをする。

 苛立つグレコと、ニヤニヤするカービィに挟まれて、ギンロの返答を待つ俺。
 すると……

「はい」

 お! ギンロの声だ!!
 しかも……、今、「はい」って言ったか?
 俺が「はい」って言えって言ったからだろうけど……、ギンロの口から「はい」だなんて、これまで一度も聞いた事無いから、かなり新鮮だ。

 ギンロの声は、俺の両隣に立つカービィとグレコにも届いたようだ。
 二人とも「はい」と返事をしたギンロに対し、どうしたんだ? といった表情である。

「ギンロ! 良かったよ通じて!! で……、今どこ? 塔の外に出ちゃったのかな??」

 問い掛ける俺。

「は、はい……。今は、外……、です」

 何故だか、いつもの古臭い言葉遣いでは無く、現代風の標準語で喋るギンロ。
 まさかとは思うけど、絆の耳飾りを使う時は丁寧に喋らないといけない、とでも思ってしまったのだろうか?

「そっか。マシコットは一緒?」

「う……、はい、近くにいます」

 ぐっ……、ぶふふっ!
 なんでそんな喋り方なんだよ!?
 どうしたんだよギンロ!!?
 読者にキャラ変したって思われるぞ!?!?

 聞き慣れないギンロの口調に、思わず吹き出しそうになる俺とグレコとカービィ。

「そっか、分かった! とりあえずまぁ……、そこで待ってて!!」

「しょ、承知……、しま、した」

 笑うのを我慢して、俺が交信を切ろうとすると……

「モッモ……」

 ギンロが会話を続けてきた。

「ん? なぁに??」

 なんの気無しに答える俺。
 すると……

「……すまない」

「え???」

 ギンロが、いつもとは全然違う、消え入りそうな声で謝ってきた。

「我はまた、役に、立てなかった……。我が、お主を、守らねばならぬのに……」

 おおう、凹んでらっしゃるわね。
 試練に敗れて、塔の外に出された事がショックなようだ。
 いつもの中二病全開のギンロに比べると、声のトーンが随分と低い。

「我は、お主を守る為に、ここまで来た。なのに、我はいつも、肝心な所で役に立たぬ。本当にすまない……、お主を、守ってやれずに……」

 何やら、めちゃくちゃ反省しているらしいギンロは、今にも泣きそうな(ギンロの泣いたところなんて見た事ないけど)声でそう言った。

 まぁ確かに、ここ最近は、ギンロの出番が少ないというか……
 けど、ニベルー島でもロリアン島でも、ギンロとは別行動の事が多かったから、仕方のない話である。
 それに今回は、試練の内容がハッキリ分からない上で起こった事で……、つまりは事故のようなものだ。
 あんな恐ろしいドラゴンを前に、攻撃しちゃいけないだなんて、戦闘大好きなギンロには無理な話だろう。
 正直、予想外の展開だったし……

「ギンロが謝る事ないよ」

 俺は、声のトーンに気をつけながら話す。
 暗くならないように……、でも、明るくなり過ぎないように。
 ギンロの心中を察しつつ、言葉を選ぶ。

「なんていうか……、仕方ない! 試練の内容も分からなかったし……、あんなドラゴンを前にしたら、そりゃ戦わなくちゃって、ギンロなら思って当然だよ!! だって……、さっきだって、僕を守らなきゃって、思ってたんでしょ?」

「…………うむ」

 ちょっと返事までの間が長いのが気になるけど、ギンロは嘘をついたりなどしないはずなので、俺はにこりと笑う。

「大丈夫! カービィとグレコがいるから!! ちゃんと無事に塔を攻略して、そっちに戻るからさ。そしたらまた、守ってよ!!!」

 俺の言葉は、全然カッコ良くは無いけれど、ギンロの心を軽くする事は出来たようだ。

「……うむ、そうであるな。我らの旅はまだまだ続くのだ。次は必ず、我が、お主を守ってみせようぞ!」

 力強く、ギンロは言った。

「うん! よろしくね!!」

 ふぅ~、とりあえずこれで大丈夫かな。
 俺は一安心して、絆の耳飾りの交信を切った。

「ポポゥ、やっぱりギンロちゃんとマシコットは、試練に敗れたポね?」

 ノリリアが悲し気な顔で尋ねる。

「んだな。まぁ……、仕方ねぇよ! ここはそういう仕組みなんだ、割り切っていこう!!」

 切り替えの早いカービィ。

「そうね。この先にマシコットがいないのは、少し不安だけど……。でも、なんとかするしかないわね!」

 そもそも、ギンロを頼りにしてなかったらしいグレコ。

「外でみんな待ってるんだ……。さ、僕達は早く、次の階に行こう! ここにいる全員で、残りの試練に打ち勝って、塔を攻略しよう!!」

 俺の言葉に、ノリリア、パロット学士、ロビンズ、ライラック、カービィにグレコ、みんなが頷いた。

 ロビンズが、手に入れた赤い宝玉を、昇降機中央の柱の穴に埋め込む。
 フューンと音がして、ガタガタと昇降機が揺れ始める。
 ライラックが、柱のハンドルに手を掛けて、力強く回し始めると、俺達を乗せた昇降機はゆっくりと、第五階層へと上昇していった。






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 封魔の塔・第四階層にて、白薔薇の騎士団メンバー、前衛、マシコット・ロロー、及び、ギンロ、脱落。
 残る挑戦者、計7名。

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