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★ピタラス諸島第五、アーレイク島編★
677:ホタテ
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ザザーン……、ザザザーーーン……
チャプチャプ、チャプチャプチャプ……
「はぁ、はぁ……、モッモ、だ……、大丈夫?」
荒い呼吸を整えながら、グレコが問う。
「だ、だいじょうびゅ~」
未だ真上を向いたままの俺は、砂浜の波打ち際に、大の字になって寝転がっている。
情け無い哉、海の上を引っ張られてきただけだというのに、俺は随分と疲弊していた。
く、口の中が……、塩辛い、ぐへっ……
「いやぁ~……、参ったなぁ~」
近くには、ローブの裾をギュッと絞りながら、ヘラヘラと笑うカービィと、
「魚どもめ。陸に上がりさえすれば、我がこの手で捌いてやろうものを……」
ギラギラとした目付きで海の彼方を睨むギンロの姿があった。
なんだってこんな、酷い目に……?
あいつらいったい、何だったんだ??
何がどうなって……、うぅ~、気持ち悪いぃ~。
口の中に残った海水を、俺はペッペッと吐き出した。
マーマン達の襲撃が嘘だったかのように、寄せては返す波の音だけが響いていて、辺りはとても静かだ。
夜空に輝く満月は、先ほどまでと何も変わらず、煌々と輝いていた。
「ぜ、全員、無事ポか?」
肩で大きく息をしながら、全身ずぶ濡れのノリリアが周りを見渡してそう言った。
体をブルブルと震わせて、海水を撒き散らすライラック。
水の中を泳いだというのに、炎がメラメラなままのマシコット。
かなり不機嫌そうに眉間に皺を寄せているロビンズに、泳ぐのは苦手だったのだろう、クタクタな様子で地面に膝をついているパロット学士。
そして……
「……ポ? インディゴは、どこポ??」
ノリリアの言葉に、みんなはキョロキョロと周囲に視線を泳がせる。
しかしながら、近くにインディゴの姿は無い。
「まさか……、まだ海の中に!?」
焦った声でそう言ったのはマシコットだ。
ザバザバと波打ち際に走って行き、声を上げる。
「インディゴ!? 何処だ!?? インディゴ~!!??」
虚しく響く、マシコットの声。
俺は、この目で見た事を伝えなければと、なんとか身を起こし、こう言った。
「インディゴは、つ、連れて行かれたよ……。マーマン達に……」
俺の言葉に、騎士団メンバー全員の表情が強張る。
「そんな……、まさか……」
「インディゴが何故……?」
言葉を失う騎士団メンバー達。
中でもマシコットはかなり動揺しているようだ、その場に立ち尽くしてしまっている。
すると、少し離れた所でしゃがんでいたカービィが……
「なぁ! これ見てみろっ!!」
現状にそぐわない明るい声でそう言った。
立ち上がり、クルリとこちらを向いたその手には、何やら大きな貝殻を持っている。
ホタテのような、比較的大きな二枚貝であるそれは、綺麗にパカッと開いており、中には真珠のようなものがキラリと光っていた。
でも……
カービィこの野郎!
インディゴがマーマンに攫われたってのに、何呑気に貝殻拾ってんだ馬鹿野郎!!
空気を読め、空気をっ!!!
夏休みで海に遊びに来た小学生みたいな顔しやがってぇ~……、嬉しそうにヘラヘラ笑うんじゃ無いよ、クソ野郎っ!!!!
と、俺は心の中で悪態をついた。
しかし、どうやらそれは、ただのホタテでは無いらしく……
「ポポッ!? それはもしかして、鍵ポかっ!!?」
ノリリアの言葉に、俺達はみんなハッとした。
カービィの手の中にあるそれは、俺達が探し求めていた、次の階層へと向かう為に必要な鍵であった。
パカッと開いたホタテの中にある、一見すると真珠のように見えるその玉は、淡いピンク色をしていた。
金色に輝く扉を抜けて、俺達は封魔の塔の巨大昇降機内へと戻ってきた。
不思議な事に、海の潮でベタベタになっていた体は、扉を抜けるとカラッと乾いてしまった。
『第三の試練! 終了~!! 手に入れた鍵でもって、更なる上階を目指すのだ!!! 愚かなる挑戦者達よ!!!!』
声高らかに宣言するリブロ・プラタ。
するとノリリアは、真顔で、リブロ・プラタをジッと見つめて……
「ポポゥ……。この封魔の塔の番人、兼案内役であるリブロ・プラタに、聞きたい事があるポよ」
静かな声で、そう尋ねた。
『聞きたい事? ふむ……、申してみよ!』
「ポ……。この封魔の塔を攻略する為には、各階層に試練が用意されている、それは分かっているポが……。ここまであたち達は、いったい何を試されてきたのポ? 試練に敗れた者は、どうして……? インディゴは、何故試練に敗れたのポ!?」
ノリリアの声は、少しばかり震えている。
おそらくは、この第三の試練でインディゴを失った事を悔やんでいるのだろう。
そしてその理由を、ノリリアは知りたがっているのだ。
『試練の内容について、またその精査について、我は答える事が出来ぬ。我は封魔の塔の番人、兼案内係であるからして、常に中立の立場でなければならぬ。故に、敗者の理由について語る事は出来ぬ』
リブロ・プラタの言葉に、ノリリアは悔しそうに下唇を噛む。
ロビンズも、ライラックも、マシコットもパロット学士も……、インディゴを失ってしまった事を悔やみ、俯く。
『しかしながら、哀れな貴様らに、一つだけ教えてやろう。この封魔の塔で試されるは、目に見える力では無い。腕力、魔力、知力……、それらは全て、この塔内においては無意味である。この封魔の塔で試されるは、それ即ち、心の強さ』
心の、強さ……?
こりゃまた、曖昧な事を仰ってますなぁ……
「心の強さ? ポポッ、それはいったい……??」
『これ以上は答えられぬ。我は塔の番人、兼案内役であるからして、常に中立の立場でなければならぬ存在故、これ以上の教授は許されぬ……。さぁ! 馴れ合いはここまでだ!! 手に入れた鍵でもって、更なる上階を目指すのだ!!! 愚かなる挑戦者達よ!!!!』
フワフワと空中を浮遊しながら、リブロ・プラタは嘲笑うかのようにそう言って、書物のページをパラパラとめくるのだった。
-----+-----+-----
封魔の塔・第三階層にて、白薔薇の騎士団メンバー、通信係、インディゴ・プラソン脱落。
残る挑戦者、計9名。
-----+-----+-----
チャプチャプ、チャプチャプチャプ……
「はぁ、はぁ……、モッモ、だ……、大丈夫?」
荒い呼吸を整えながら、グレコが問う。
「だ、だいじょうびゅ~」
未だ真上を向いたままの俺は、砂浜の波打ち際に、大の字になって寝転がっている。
情け無い哉、海の上を引っ張られてきただけだというのに、俺は随分と疲弊していた。
く、口の中が……、塩辛い、ぐへっ……
「いやぁ~……、参ったなぁ~」
近くには、ローブの裾をギュッと絞りながら、ヘラヘラと笑うカービィと、
「魚どもめ。陸に上がりさえすれば、我がこの手で捌いてやろうものを……」
ギラギラとした目付きで海の彼方を睨むギンロの姿があった。
なんだってこんな、酷い目に……?
あいつらいったい、何だったんだ??
何がどうなって……、うぅ~、気持ち悪いぃ~。
口の中に残った海水を、俺はペッペッと吐き出した。
マーマン達の襲撃が嘘だったかのように、寄せては返す波の音だけが響いていて、辺りはとても静かだ。
夜空に輝く満月は、先ほどまでと何も変わらず、煌々と輝いていた。
「ぜ、全員、無事ポか?」
肩で大きく息をしながら、全身ずぶ濡れのノリリアが周りを見渡してそう言った。
体をブルブルと震わせて、海水を撒き散らすライラック。
水の中を泳いだというのに、炎がメラメラなままのマシコット。
かなり不機嫌そうに眉間に皺を寄せているロビンズに、泳ぐのは苦手だったのだろう、クタクタな様子で地面に膝をついているパロット学士。
そして……
「……ポ? インディゴは、どこポ??」
ノリリアの言葉に、みんなはキョロキョロと周囲に視線を泳がせる。
しかしながら、近くにインディゴの姿は無い。
「まさか……、まだ海の中に!?」
焦った声でそう言ったのはマシコットだ。
ザバザバと波打ち際に走って行き、声を上げる。
「インディゴ!? 何処だ!?? インディゴ~!!??」
虚しく響く、マシコットの声。
俺は、この目で見た事を伝えなければと、なんとか身を起こし、こう言った。
「インディゴは、つ、連れて行かれたよ……。マーマン達に……」
俺の言葉に、騎士団メンバー全員の表情が強張る。
「そんな……、まさか……」
「インディゴが何故……?」
言葉を失う騎士団メンバー達。
中でもマシコットはかなり動揺しているようだ、その場に立ち尽くしてしまっている。
すると、少し離れた所でしゃがんでいたカービィが……
「なぁ! これ見てみろっ!!」
現状にそぐわない明るい声でそう言った。
立ち上がり、クルリとこちらを向いたその手には、何やら大きな貝殻を持っている。
ホタテのような、比較的大きな二枚貝であるそれは、綺麗にパカッと開いており、中には真珠のようなものがキラリと光っていた。
でも……
カービィこの野郎!
インディゴがマーマンに攫われたってのに、何呑気に貝殻拾ってんだ馬鹿野郎!!
空気を読め、空気をっ!!!
夏休みで海に遊びに来た小学生みたいな顔しやがってぇ~……、嬉しそうにヘラヘラ笑うんじゃ無いよ、クソ野郎っ!!!!
と、俺は心の中で悪態をついた。
しかし、どうやらそれは、ただのホタテでは無いらしく……
「ポポッ!? それはもしかして、鍵ポかっ!!?」
ノリリアの言葉に、俺達はみんなハッとした。
カービィの手の中にあるそれは、俺達が探し求めていた、次の階層へと向かう為に必要な鍵であった。
パカッと開いたホタテの中にある、一見すると真珠のように見えるその玉は、淡いピンク色をしていた。
金色に輝く扉を抜けて、俺達は封魔の塔の巨大昇降機内へと戻ってきた。
不思議な事に、海の潮でベタベタになっていた体は、扉を抜けるとカラッと乾いてしまった。
『第三の試練! 終了~!! 手に入れた鍵でもって、更なる上階を目指すのだ!!! 愚かなる挑戦者達よ!!!!』
声高らかに宣言するリブロ・プラタ。
するとノリリアは、真顔で、リブロ・プラタをジッと見つめて……
「ポポゥ……。この封魔の塔の番人、兼案内役であるリブロ・プラタに、聞きたい事があるポよ」
静かな声で、そう尋ねた。
『聞きたい事? ふむ……、申してみよ!』
「ポ……。この封魔の塔を攻略する為には、各階層に試練が用意されている、それは分かっているポが……。ここまであたち達は、いったい何を試されてきたのポ? 試練に敗れた者は、どうして……? インディゴは、何故試練に敗れたのポ!?」
ノリリアの声は、少しばかり震えている。
おそらくは、この第三の試練でインディゴを失った事を悔やんでいるのだろう。
そしてその理由を、ノリリアは知りたがっているのだ。
『試練の内容について、またその精査について、我は答える事が出来ぬ。我は封魔の塔の番人、兼案内係であるからして、常に中立の立場でなければならぬ。故に、敗者の理由について語る事は出来ぬ』
リブロ・プラタの言葉に、ノリリアは悔しそうに下唇を噛む。
ロビンズも、ライラックも、マシコットもパロット学士も……、インディゴを失ってしまった事を悔やみ、俯く。
『しかしながら、哀れな貴様らに、一つだけ教えてやろう。この封魔の塔で試されるは、目に見える力では無い。腕力、魔力、知力……、それらは全て、この塔内においては無意味である。この封魔の塔で試されるは、それ即ち、心の強さ』
心の、強さ……?
こりゃまた、曖昧な事を仰ってますなぁ……
「心の強さ? ポポッ、それはいったい……??」
『これ以上は答えられぬ。我は塔の番人、兼案内役であるからして、常に中立の立場でなければならぬ存在故、これ以上の教授は許されぬ……。さぁ! 馴れ合いはここまでだ!! 手に入れた鍵でもって、更なる上階を目指すのだ!!! 愚かなる挑戦者達よ!!!!』
フワフワと空中を浮遊しながら、リブロ・プラタは嘲笑うかのようにそう言って、書物のページをパラパラとめくるのだった。
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封魔の塔・第三階層にて、白薔薇の騎士団メンバー、通信係、インディゴ・プラソン脱落。
残る挑戦者、計9名。
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