最弱種族に異世界転生!?小さなモッモの大冒険♪ 〜可愛さしか取り柄が無いけれど、故郷の村を救う為、世界を巡る旅に出ます!〜

玉美-tamami-

文字の大きさ
上 下
126 / 801
★オーベリー村、蜥蜴神編★

【閑話】タウの初恋 〜プレゼント〜

しおりを挟む
●タウ目線●


 我が名はタウ、勇敢なるバーバー族の戦士である。
 訳あって、故郷の森を捨て、一族を率いてこのテトーンの樹の森へとやってきた。
 心地よい風が吹く、明るく穏やかな良い森である。

 我はそこで、一人の少女に出会った。
 少女の名はポポ、ダッチュ族という、容姿が鳥と似ている種族である。
 柔らかく丸みを帯びたその体は、フワフワとした羽毛に覆われており、太陽の光を浴びるとキラキラと輝いてとても美しかった。

 ポポは、我とよく似た境遇であった。
 故郷の村を敵に襲われ、沢山の仲間を失った。
 そして命からがら、生き残りし仲間と共に、このテトーンの樹の森へと流れてきたという。

 しかしながら、そのような境遇にあるにも関わらず、ポポはいつも笑顔を絶やさない。
 自分よりも小さな子らの面倒をよく見、先住民であるピグモル族の畑仕事を喜んで手伝っている。
 そのようなポポの姿が、我には天使のように見えた。

 そしていつしか、我はポポに恋をしていた。

 ポポは今日も、畑仕事を手伝っている。
 畑仕事のなんたるかをよく知らぬ我だが、とても忙しく、とても大変である事は理解していた。
 だから我は、ポポにある贈り物をしようと考えた。

 ポポはよく、何もない草むらで探し物をしていた。
 きっと、花を探しているのだと思う。
 雌はみんな花が好きなのだと、ピグモル族の雄共が話していたのだ。
 しかしながら、この時期、この森に花は少ない。
 ポポはなかなか花を見つけられずにいるのだろう。
 だから毎日毎日、草むらを漁っているのだろう。

 そこで我は考えた。
 我がポポの為に、花を見つけようと。
 物知りのドワーフの話によれば、この森より南には美しい花畑があるという。
 少々歩かねばならぬというが、狩りをせずとも食物が手に入るこの森では、我に与えられた自由な時間はたっぷりとあるのである。

 ポポの為に、花を探そう!

 我は、朝日が昇るのと時を同じくして、南へと出かけて行った。






●ポポ目線●


「ん~っ! 朝だっ!!」

 朝の光で目を覚まし、あたいは大きく伸びをした。
 今日もとっても良い天気。
 楽しい一日が始まるよ!

「ポポ、おはよう♪」

「ポポ、お腹空いた!」

「はいはい、ちょっと待ってね~」

 あたいの一日は、朝ごはん作りから始まる。
 沢山の兄弟たちと、みんなで協力して作る。
 あたい達には面倒を見てくれる親がいないから、なんだって自分達でしなきゃならないんだ。
 でも、全然大変じゃないよ!
 村のみんなが助けてくれるから!!

 このテトーンの樹の村にやってきたあの日から、もう随分と経った。
 季節は夏から秋に変わって、ここの生活にも段々と慣れてきた。
 村は平和そのもので、恐ろしい魔物もいなければ、おかしな考えの大人もいない。
 だからあたいは、とっても幸せだ!

 ……でも最近、気になる事が一つある。

 あたい達がこの村にやって来てからしばらくして、別の種族が村の一員に加わった。
 バーバー族っていう、トカゲのような姿をした種族なんだけど……
 彼らはこう、なんていうか、いつも無表情だ。
 大きい目と大きい口があるのに、あんまり動かない。
 動かないのは顔だけじゃなくて、体もあんまり動かない。
 あたい達はみんなで畑仕事を手伝うけど、バーバー族は手伝わない。
 家造りとか、井戸作りとかはするけど、何故か畑仕事はしないんだ。
 なのに作物はガバガバ食べる。
 正直、それってどうなの? ってあたいは思うけど。
 村の住人であるピグモル族のみんなは何も言わないし、夜は楽しそうに一緒に食事をしているから、別にいいかな、とも思う。

 あたいが気になるのは、そんなバーバー族の一人、タウの事だ。
 タウは、バーバー族の中でも中心的存在だと、あたいは考えている。
 よくピグモル族のみんなと何かを話し合っているし、物知りなドワーフおじさんとも仲良しだ。
 だからたぶん、タウはバーバー族の代表なんだとあたいは思っている。

 そんなタウの様子が、最近変なんだ。
 ふと気がつくと、タウがあたいをジッと見ているんだよ。
 それも、一度や二度じゃない。
 ここ数日は毎日、どこか目につくところにタウがいて、あの大きな目と大きな口で、あたいをジッと見てるんだ。
 最初は気のせいかとも思ったけど、みんなもタウがあたいの事を見てるっていうから間違いないと思う。

 タウ、どうしたんだろう?
 何かあたいに言いたい事でもあるのかな??

 あたいは、まだまだ子供で小さいけれど、生き残った兄弟達の中では一番お姉さんだ。
 だからあたいは、ダッチュ族の代表をしている。
 代表といっても、特別何かをするわけじゃない。
 ピグモル族のみんなに食事を分けてもらう相談をしたり、物知りなドワーフおじさんと家を建てる事を話し合ったりするだけだ。
 だから全然大変じゃないよ!

 それで……、タウはバーバー族の代表だ。
 でも、ちゃんと二人で話した事はない。
 もしかすると、代表同士、何か話したい事でもあるのかな?
 けど、あたいはバーバー族のあの無表情が苦手だ。
 たまに笑う事もあるけれど、笑っている顔はそれはそれでちょっと怖い。
 だから……、あたいはちょっぴり、バーバー族が苦手なんだ。
 タウはあたいに用事があるのかも知れないけれど、出来ればジッと見るのはやめて欲しいなぁ。

 そんな事を考えながら、あたいは今日も草むらを漁る。
 畑仕事を終えて、夕食の前に、あたいはいつもこうしている。
 ちょっと探し物があってね、えへへ♪

「ポ! ポポッ!!」

 突然名前を呼ばれて、あたいは驚いて振り返った。
 そこには小さなトカゲが……、あ、違った、タウだ。
 小さなタウが、モジモジとした様子で立っていた。

「な……、なぁに? タウ」

 初めて声を掛けられたので、ちょっぴりドギマギしちゃう。
 いつも遠くから見るタウは、とても小さく感じていたけど、近くで見るともっと小さかった。
 あたいが大きくなったからかな?
 タウの背丈は、あたいの半分くらいしかないように見えた。

「こ! これっ!!」

 タウはそう言って、あたいに何かを差し出して来た。
 プルプルと震えているタウの青い手に握られたそれは、小さな小さな白い花だ。

「花? 花がどうしたの?」

「これ! ポポに!! あげるっ!!!」

 タウは、バーバー族特有の片言でそう言った。
 あげると言われても……、あたいは花なんて欲しくない。
 けど、あげると言われたのだから、貰わなければいけないのかな?

「じゃあ……、貰うね」

 あたいは戸惑いつつも、その花を受け取った。
 するとタウは、今まで見た事のないような、とっても怖い顔をした。
 口が大きく開いて、目も大きく開いて……
 あまりに怖いその顔に、あたいはギョッとしてしまった。
 食われるんじゃないかと心配したが、タウはくるりと回って、何処かへと走り去って行った。

 ……なんだったんだろう?
 タウは、何がしたかったんだろう??

 あたいは改めて、手渡された花を見る。
 するとそこには……

「あぁっ!? 芋虫っ!!」

 その花には、緑色でふっくらとした体の、とってもとっても美味しそうな芋虫がついていた。

 そうか! 
 タウはあたいに、この芋虫をプレゼントしてくれたのかっ!!

 芋虫は、あたいたちダッチュ族にとってはおやつだ。
 故郷の村にいた頃は、芋虫ばっかり食べていた。
 この森にも芋虫が沢山いて……、だけど秋になると、随分と数が減って見当たらなくなってしまった。
 だからあたいは毎日、畑仕事の手伝いが終わってから、草むらで芋虫を探してたんだ。
 夕食を待つ間に、小腹が空いちゃうからね。

 あたいは、花についた芋虫をピョイと指でつまんで、パクッと口へと放り込んだ。

 あぁあ~! 美味しいっ!!
 このムチムチとした舌触りに、芋虫独特の甘さの中にあるほろ苦い味がたまらないっ!!!

 あたいは、久しぶりの芋虫を、目一杯堪能した。

 タウって、顔は怖いし体は小さいし、畑仕事はしないけど……、結構良い奴だったんだね!

 満足したあたいは、いらなくなった花をポイっと捨てて、兄弟たちが待つ家へと帰った。






●タウ目線●


 渡してしまった……
 我の気持ちに、ポポは気付いただろうか?
 我の気持ちを、ポポは受け入れてくれるだろうか??
 ポポが花を受け取ってくれた事が嬉しくて、嬉しくて……
 我は思わず、満面の笑みを浮かべてしまった。
 戦士たるもの、いついかなる時でも平常心を持たねばならぬというのに、我は……
 あまりに緩んだ表情を、想い人の前に晒してしまったのだ。
 あの締まりのない顔を見て、ポポは幻滅しただろうか?
 嫌われてはいないだろうか??

 この日の夜、我は生まれて初めて、眠れなかった。

 翌日……

「タウ~! タウ~!」

 ぼんやりと過ごしていた我の元に、なんとポポが走って来たではないか!
 ニコニコとした、天使のような微笑みを讃えながら!!

「タウ、昨日はありがとうね! あたい、とっても嬉しかったよ!! それで……、あの、また気が向いたらでいいからさ……、また頂戴ね!!!」

 ポポは恥ずかしそうにそう言うと、我の元から走り去って行った。

 ポ、ポポに、喜んでもらえ……、た!?

「ううう……、ピューーーーン!!!」

 喜びのあまり、我は雄叫びを上げた。

 ポポに喜んでもらえた!
 ポポに受け入れてもらえた!!
 やったぁあっ!!!

「よし! 今日も、行こう!!」

 我は、急ぎ足で南へと駆けて行った。
 ポポに贈る花を、探す為に。



 *おしまい*
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

転生した体のスペックがチート

モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。 目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい このサイトでは10話まで投稿しています。 続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?

山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。 2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。 異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。 唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

処理中です...