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★ピタラス諸島第五、アーレイク島編★

672:真の望み

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 マシコットは炎がメラメラのお父さん。
 パロット学士はオランウータン学士。
 そして、次のライラックは……

「ぬぉっ!? トゥエガ師匠!??」

 なんと、白薔薇の騎士団が副団長の一人、筋肉ムキムキ樹木人間のトゥエガが、巨大な鏡の向こうに現れたでは無いか。

「ぶはっ!? なんでっ!!?」

 トゥエガの登場に、噴き出して笑うカービィ。
 騎士団のメンバーも、顔見知りのトゥエガの登場に、各々何とも言えない表情になる。
 グレコとギンロはというと、トゥエガとは初めましてなので、頭の上にクエスチョンマークを浮かべていた。

「は、はい! はい!! あ、それは勿論でさ、はい!!! はい、心得ておりやす!!!! えっ!? あ、了解でさ!!!!!」

 ライラックは、何やら鏡の中のトゥエガと会話しているらしい。
 両手を体の両側に真っ直ぐ付けた、ピシッ! とした気を付けの姿勢のまま、キビキビと受け答えしているではないか。
 鏡の中のトゥエガの言葉が聞こえない俺達には、ライラックの様子がなんともシュールで……
 
「ぐ……、ぶふふっ、何喋ってんだろうな?」

 笑いを堪え切れないカービィが、ニヤニヤとそう言った。
 するとライラックは、鏡の中のトゥエガに深く一礼した後、石の上から降りて、こちらに戻ってきた。

「ポ、トゥエガさんはなんて言ってたポ?」

 普通に聞くノリリア。

「あ、はい、それが……。プロジェクトに出発する前に、自分に手渡した鍛錬ノートの内容を毎日しっかりこなしているかの確認と、ブリックも同じ様にこなしているかの確認と……。最後には、毎日筋肉との対話を忘れるな、そして帰ったら新メニューを考えている、と」

 ライラックの返答に、一同無言になる。
 そしてカービィは……

「ぶわっはっはっはっ! なんじゃそりゃっ!? あいつ、そんな事言う為にこんな所まで!!? ぶわっはっはっはっはっ!!!」

 ツボにはまったらしい、転げ回って大笑いしている。

「ポポゥ、なんてどうでもいい事を……」

 ノリリアの呟きに、俺も思わずプッと軽く噴き出した。
 俺の隣では、何の事だかさっぱりなグレコとギンロに対し、マシコットが大まかに説明していた。

「こうなると、益々分からなくなってきた」

「どういう事ですの?」

 ロビンズの言葉に、インディゴが疑問を呈す。

「先程までの二人の結果から、一つの仮説を立てていたのだが……。マシコットの父上と、ディアノ・メノス学士は、双方共に他界されている。故にこの鏡は、死者と疎通出来るものではないのか、とな。しかし残念ながら、トゥエガさんは御存命だろう?」

 ロビンズの辛辣な言葉に、ノリリア達は難しい顔で考え込み、カービィはヒーヒー言いながら更に笑い転げている。
 まさか、自分の知らないところで、御存命である事を残念がられる日がくるとは、トゥエガ本人は微塵も思うまい、可哀想に……

「一つだけ共通している点は、三人とも、男性であるというね」

 ん? あ~、なるほど。
 でも、グレコの言う事は間違ってないが……、そこはあんまり重要じゃ無い気がするな。

「ポポ、考えていても埒があかないポ。次はあたちが立ってみるポよ!」

 そう言って、前に進み出るノリリア。
 石の上に立ち、巨大な鏡に向き合うと、そこに現れたのは一人の少女。
 見覚えのあるその少女は、真っ白なゴスロリ調の服に身を包んでいて……

「ポポポポッ!? ローズ団長!!?」

「なんでだよっ!?!?」

 驚き慌てるノリリアと、騎士団のメンバー。
 そして、キレのいいツッコミを入れながらも、もはや腹が捩れそうなほどに笑い続けているカービィ。
 
「ポッ!? えっ!!? は……、はいっ! 頑張りますポッ!!」

 ノリリアもまた、ライラックと同じく、鏡に向かって深く一礼をして、こちらに戻ってきた。
 その表情は嬉々としていて、さっきよりも晴れやかである。

「団長はなんと?」

 パロット学士の問い掛けにノリリアは……

「プロジェクトの成功を祈っている! あたちなら必ず成し遂げられるポと、団長は背中を押してくれたポよ!!」

 めちゃくちゃ嬉しそうな声で、そう言った。

「マシコットの父上に、ディアノ・メノス学士に、トゥエガ副団長……、そしてローズ団長……。となると、男女の関係は無さそうだな」

 ロビンズの言葉に、グレコ案は撃沈。
 しかしグレコはそんな事全く気にしていない様子で、こう言った。

「真の望みを映す鏡……、石碑にはそう書かれていたわ。となると、今一番会いたい人が、この鏡の中に現れる……、とか?」

 第二グレコ案を提示され、みんなはう~んと考える。

「僕は別に……、お父さんに会いたいとは、そこまで願って無かったと思うんだけど……?」

 マシコットが否定。

「私も、ディアノ・メノス学士は心より尊敬する御方ではあるものの、今会いたいかと問われると、別にそうでも無いような……?」

 パロット学士も否定。

「自分は、トゥエガ師匠に会えて嬉しかったでさぁ」

 ライラックは賛成。

「ポポゥ、あたちは……。次に団長に会うのは、プロジェクトが無事に成功してからって決めていたポから、今すぐ会いたい相手かと問われると、ちょっと違う気がするポよ」

 ノリリアも、やんわり否定した。
 つまり、第二グレコ案も撃沈、と……

「真の望み……、はっ! もしかして……!?」

 何やら思い付いたらしいロビンズが、スタスタと歩いて行く。
 石の上に立ち、巨大な鏡に向き合うロビンズ。
 すると、ウネウネと表面がうねった後、鏡には一人の美しい女性が現れた。

 その女性は、白い長袖のロングワンピースのような衣服を身にまとい、ウェーブのかかった長い銀髪をなびかせながら、こちらに向かって微笑んでいる。
 透き通る様に真っ白な肌と、ビー玉の様な水色の瞳。
 そして、最も特徴的なのが、上に向かってピンと尖っている両耳。
 即ち彼女は、間違いなく、エルフだった。

 女性の姿をその目に捉えたロビンズは、何も言葉を発する事なく、石の上から降りて、スタスタとこちらに戻ってきた。

「分かったぞ、この鏡の謎が」

 えっ!? 本当にっ!!?

 してやったり顔のロビンズは、どこぞの少年探偵の様な推理力でもって、答えを導き出した。

「この鏡は、真の望みを映す鏡……。即ち、自分が心から尊敬する相手より、望む言葉を与えてくれる鏡なんだ」

 な……、なるほど、そうだったんだぁ~。
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